妙寿尼

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みょうじゅに
妙寿尼
生誕 天文14年2月5日
1545年3月27日)
播磨国志方
死没 慶長18年11月19日
1613年12月30日)
筑前国福岡
墓地 福岡県宮若市龍徳の光明寺
国籍 日本の旗 日本
配偶者 上月景貞
子供 女(平岡頼勝室)、黒田正好
櫛橋伊定
親戚 兄弟政伊妙寿尼照福院黒田孝高室)、左内右馬助正俊
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妙寿尼(みょうじゅに、天文14年2月5日1545年3月27日) - 慶長18年11月19日1613年12月30日))は、戦国時代から江戸時代初期にかけての女性。播磨国佐用郡兵庫県佐用郡佐用町上月城主・上月景貞(景高・定之)[1]の正室で、平岡頼勝室と黒田正好の母。実名は不詳。院号は遍照院(へんしょういん)。

生涯[編集]

天文14年(1545年)2月5日、播磨国印南郡兵庫県加古川市志方城主・櫛橋伊定の長女として出生。兄に櫛橋政伊、妹に黒田孝高室(光・照福院)がいる。 

永禄3年(1560年)、16歳で播磨国守護職赤松氏の一族である上月景貞に嫁ぎ、その後2人の子を産む。

天正5年(1577年)11月末より、上月城では織田軍と毛利軍との間で約7ヶ月間にわたり数度の攻防戦が繰り返され、天正6年(1578年)2月には毛利方に属した夫の景貞が宇喜多直家の命により城主となるが、同年3月下旬に織田方の羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)らの軍勢による猛攻と、配下の江原親次の謀反により落城する。景貞は負傷しながらも城外へ脱出し、わずかな手勢を率いて高倉山の秀吉の本陣を目指し奮戦するが叶わず、千種川沿いの櫛田(兵庫県佐用町櫛田)の山中にて自刃または討死したとされる[2]。 この時、夫人は2人の子と共に義弟である秀吉軍の黒田孝高(官兵衛)の陣中を頼る。孝高はその悲境を憐み、秀吉の許しを得て3人を黒田家で引き取ることになった。後に夫人は出家して妙寿尼と称し、また2人の子のうち、姉は小早川秀秋の家老・平岡頼勝に嫁ぎ[3]、弟は元服して名を上月次郎兵衛正好と改めた。

天正18年(1590年)3月、豊前国下毛郡中津(大分県中津市)の中津城にいた黒田如水(孝高)の招きで播磨国を離れ、同地へ移り住む。嫡男の正好は黒田姓を称し、中津で黒田家の旗本となるが、文禄元年(1592年)の文禄の役に参陣し朝鮮へ渡り、同年6月15日の大同江の戦い平壌にて戦死している(享年25)。

慶長5年(1600年)12月、甥の黒田長政筑前国福岡県)へ国替になったことに伴い、中津城から糟屋郡名島城福岡市東区名島)へ移る。 その後、那珂郡警固村福崎(福岡市中央区城内)の地に福岡城が築かれると、同城内の本丸西の屋敷で妹の照福院(光)と同居し、余生を送った。

慶長18年(1613年)11月19日、筑前国福岡にて没した。享年69。戒名は遍照院殿量誉妙寿尼公大姉。

墓所は福岡県宮若市龍徳の光明寺。

脚注[編集]

  1. ^ 『新訂 黒田家譜』・『上月城史』・『宮田町誌』による。夫を赤松政範とする説もあるが、政範は天正5年12月3日(1578年1月10日)に落城した当時(第一次上月城の戦い)の上月城主であり、この時に妻や2人の幼姫らと共に城内で自刃している(『上月城史』)。
  2. ^ 『上月城史』・『上月町史』・『真説 黒田官兵衛』による。現在も櫛田の山中には景貞の墓とされる五輪塔が残されている(『上月城史』)。一方、『新訂 黒田家譜』には天正5年12月(1578年1月)に城中の謀反人が上月十郎(景貞)の首を取って差し出し、残る者は皆助命されたことが記されている。
  3. ^ 『新訂 黒田家譜』では平岡石見守に関して「長政の母の姪婿、黒田次郎兵衛の姉婿」と記しており、黒田長政は妻の従兄弟にあたる。平岡は慶長5年(1600年)9月の関ヶ原の戦いにおいて主君の小早川秀秋に東軍(徳川家康方)への寝返りを進言した中心人物であるが、長政は以前から姻戚関係を持つ平岡と密かに連絡をとりながら、小早川家の内応工作に深く関与していた。

参考文献[編集]

  • 川添昭二・福岡古文書を読む会校訂『新訂 黒田家譜』第一巻、文献出版、1983年
  • 竹本春一『上月城史』上月町役場・佐用郡歴史研究会、1968年
  • 上月町史編纂委員会編『上月町史』上月町、1988年
  • 山下晃誉『上月合戦―織田と毛利の争奪戦』兵庫県上月町、2005年
  • 宮田町誌編纂委員会編『宮田町誌』上巻、宮田町役場、1978年
  • 原田泰『井上之房とその一族』西日本新聞社、2004年
  • 鷺山智英「黒田如水・長政と寺院―真宗徳栄寺開基光心の由緒を中心に」『福岡地方史研究』第51号、2013年
  • 本山一城『黒田軍団―如水・長政と二十四騎の牛角武者たち』宮帯出版社、2008年
  • 本山一城『秀吉に天下を獲らせた男 黒田官兵衛』宮帯出版社、2014年
  • 加来耕三『真説 黒田官兵衛』学陽書房、2013年
  • 不破俊輔『黒田官兵衛 その生涯』明日香出版社、2013年

関連作品[編集]

外部リンク[編集]