天体暦

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天体暦(てんたいれき、ephemeris)とは、天体太陽衛星惑星恒星及び人工天体)の運行位置・軌道及び天象日食月食天体の出没など)を推算した予報を書き下した情報である。(れき)、軌道暦とも言う。 なお、天体暦と似た言葉で天文暦があるが別のものである。

現在、天体暦は基本暦 (fundamental ephemeris) と視天体暦 (apparent ephemeris) に分けることができる。基本暦は天体の運動方程式を積分して得られる天体の幾何学的な位置を扱い、視天体暦は基本暦を基に座標変換や惑星光行差の補正等をして得られる天体の視位置を扱っている。

計算[編集]

天体暦は太陽系内の天体の位置のさまざまな観測データをもとに、力学的な理論予測がそれに適合するようにして構築される。 よって、天体暦は天体の位置予測だけではなく、理論のパラメータとなる惑星の質量天文単位の大きさなどさまざま天文定数を同時に決定し、それらの情報源ともなっている。 現代ではレーダーによる惑星の距離測定や惑星探査機との交信データの利用など近代的な手法の発達により、天体暦の精度はますます精緻なものとなっている。

天体暦の力学的計算には長らく摂動論にもとづいた解析的な方法を用いることが主流であった。 現在でもフランスの VSOP (fr:Variations Séculaires des Orbites Planétaires) はこのような考えで作成されている。

一方で近年はコンピュータの発達により、数値積分による大規模な計算が可能となり、数値的な天体暦が主流となっている。 特に惑星探査機の運用に必要であったためもあり、このような数値的暦はアメリカとロシアにおいて精密なものが作られるようになった。 NASA ジェット推進研究所 (JPL) の DE (Development Ephemeris) とロシア科学アカデミー応用天文学研究所 (Институт прикладной астрономии, Institute of Applied Astoronomy) の EPM (Ephemerides of Planets and the Moon) がこのような数値的天体暦として代表的なものである[1]。 日本では、2009年まで海上保安庁海洋情報部から年刊の視天体暦『天体位置表』が刊行されていた[2]

GPS衛星[編集]

人工天体人工衛星GPS衛星を含む)の軌道を事前若しくは事後推算した天体暦は専門機関によって計算されている。

GPS衛星自身も測位計算において必要とする事前推算の天体暦の情報を送信信号に乗せて放送している。また、事前推算の天体暦として、より長期間に適用可能(ただし概略精度)のものも合わせて放送しており、こちらはGPSの仕様書ではオールマナック(アルマナック、"almanac")と呼んで区別している。

出典・注釈[編集]

  1. ^ 荒木田英禎 (2007年). “天文単位は永年増加するか!? 太陽系天体の精密位置測定からの新たな問題”. 「高精度アストロメトリ観測の時代を迎えた21世紀の天文学」研究会. JASMINE ホームページ. 2010年11月10日閲覧。
    Folkner, William M., James G. Williams, and Dale H. Boggs (2009). “The Planetary and Lunar Ephemeris DE 421” (PDF). Interplanetary Network Progress Report 42-178: C. http://tmo.jpl.nasa.gov/progress_report/42-178/178C.pdf. 

    Pitjeva, E. V (2005). “High-precision ephemerides of planets—EPM and determination of some astronomical constants” (PDF). Solar System Research 39 (3): 176–186. http://iau-comm4.jpl.nasa.gov/EPM2004.pdf.  (trans. from Астрономический вестник 39 (3): 202–213).
  2. ^ 各種天体暦の刊行案内”. 海上保安庁海洋情報部 測地・天文・観測所. 2010年11月11日閲覧。

外部リンク[編集]