大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン

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大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン
Gamera vs. Barugon
監督 田中重雄
脚本 高橋二三
製作 永田雅一
ナレーター 若山弦蔵
出演者 本郷功次郎
江波杏子
夏木章
藤山浩二
早川雄三
音楽 木下忠司
撮影 高橋通夫
編集 中静達治
製作会社 大映東京撮影所
配給 大映
公開 日本の旗 日本 1966年4月17日
上映時間 101分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 大怪獣ガメラ
次作 大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス
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大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(だいかいじゅうけっとう ガメラたいバルゴン)は、大映東京撮影所が製作し、1966年(昭和41年)4月17日に公開された日本の特撮映画作品。「ガメラシリーズ」の第2作。同時上映は『大魔神』。総天然色、大映スコープ、101分。

ストーリー[編集]

火星から舞い戻ったガメラは黒部ダムを破壊する

半年前に打ち上げられたZプランロケットが宇宙空間で隕石に衝突し、中に閉じ込められていたガメラが脱出。ガメラは地球へと舞い戻り、エネルギーを求めて黒部ダムを破壊した後、噴火した火山に潜伏した。

一方、大阪で航空士のライセンスを得たばかりの平田圭介は独立して観光飛行機会社を設立するための元手を集めるために、勤めていた会社を辞めて兄・一郎の計画へと参加した。兄は戦時中ニューギニア奥地の洞窟で発見した巨大なオパールを隠しており、片脚の不自由な彼に代わって仲間の小野寺、川尻と共に「戦死した友人の遺骨収集」を名目にした密輸計画が実行されることになる。

現地に到着した3人は、洞窟へと続くジャングル手前の集落で村人達と暮らしている日本人医師の松下博士から、その洞窟が「虹の谷」と呼ばれる禁忌の魔境と聞かされ、諌められるものの、欲に目のくらんだ一行は強引に突破していく。深いジャングルを進む途中、小野寺が底なし沼に落ちるものの、3人は何とか洞窟へとたどり着き、ついにオパールを発見した。そのとき、オパールを前に狂喜乱舞する川尻の脚に毒サソリが上っていたが、小野寺はわざとこれを教えず、川尻がサソリに刺されて悶え死ぬのを見殺しにした。これを機に、強欲な本性を現した小野寺は川尻の死に嘆く圭介ごと洞窟を爆破、1人オパールを携え、外国航路の日本船「あわじ丸」で日本へと向かう。

バルゴンによって凍らされ破壊される大阪通天閣

日本への途上、マラリア水虫を患った小野寺は、あわじ丸の船医、佐藤の奨めによって赤外線による治療を受ける。しかし、神戸港へ着いた夜に船員から麻雀に誘われ、赤外線治療機の電源を切り忘れてしまう。小野寺がベッドの上に隠していたオパールは赤外線を浴びてひび割れ、やがて中から1匹のトカゲのような生物が生まれた。これはオパールではなく、伝説の怪獣「バルゴン」の卵だったのだ。

同じ頃、中国人宝石ブローカーとオパールの商談のため神戸港で密会していた一郎は、突然炎上沈没したあわじ丸を見て弟の圭介の安否を気遣う。一郎に対し、小野寺はニューギニアで圭介が谷に落ちたと嘘をつき、さらには目的のオパールがあわじ丸と共に沈んでしまったと説明する。その時、赤外線によって巨大化したバルゴンが、海面に紫色の体液を噴き上がらせながら神戸港に上陸。港を破壊し、大阪へと東進していった。

大阪へと一旦引き上げた一郎と小野寺は、オパールの引き上げ回収を巡って口論となり、小野寺が思わず口を滑らせたことで圭介殺害を一郎に知られてしまう。乱闘になる2人だが、脚の不自由な一郎は一方的に叩きのめされ、止めに入ってきた一郎の妻も小野寺の手にかかり、家具に押し潰されてしまう。金を奪った小野寺は一郎の家に火を放って逃走した。

大阪へとやってきたバルゴンは、冷凍液を使って数々の名所や建築物を凍らせ、関西方面防衛隊を全滅させる。人類は鈴鹿のミサイル基地から、遠方からの攻撃を試みるものの、動物的本能で危険を察したバルゴンはプリズム状の背中のトゲから「悪魔の虹」(殺人虹光線)を放って周囲の人間を焼き尽した。しかし、その光に誘われて大坂城に飛来したガメラと戦闘になる。炎に強い体で火炎放射を凌ぎ、一度は不意打ちの反撃に遭ったものの、ガメラを完全に凍結させこれを退けた。バルゴンはそこから京都を目指して名神高速道路[1]をさらに東進していった。

一方ニューギニアでは、圭介が村人達の介抱を受け、命を取り留めていた。圭介は松下博士の助手カレンを伴って帰国し、兄が小野寺に殺されたと知って乱闘になり、彼を殴り倒す。その後、大阪府知事を交えた防衛隊の作戦本部では、天野教授によってバルゴンの弱点が水であることが判明。またカレンは部落から持ってきた、代々バルゴンを殺すのに村人が用いたという巨大なダイヤモンドの提供を申し出る。対策本部ではこのダイヤモンドの光を拡大し、ヘリコプターでバルゴンを琵琶湖へ誘導し、溺死させる作戦を決行するが、バルゴンはなぜかダイヤの光に目もくれず、京都への更なる東進を許してしまう。

作戦の失敗により、圭介とカレンは大阪府知事から責められるが、作戦室を訪れた佐藤船医の証言により、このバルゴンが赤外線によって急激に成長した突然変異種であることが判明する。赤外線によって成長したバルゴンは赤外線を好む性質となっていたのだ。そこで殺人光線発射機を改造して、ダイヤを組み込み、その光でバルゴンを琵琶湖へ誘導、沈める作戦が実行された。その計画が実行されるまでバルゴンを足止めするため、人工雨が降らされ、これにより水に弱いバルゴンは冷凍液を吹く力を失う。

琵琶湖が両怪獣の決戦の場となった

計画が実行されると、強まったダイヤの光によってバルゴンの誘導は見事成功し、琵琶湖畔までたどり着いた。しかし、これを聞きつけた小野寺が琵琶湖に現れダイヤを強奪し、ダイヤごとバルゴンに飲み込まれたことで、作戦は失敗に終わってしまう。しかし、バルゴンの虹で破壊されたミサイル基地で、唯一溶けずに残されていた自動車のバックミラーから、殺人虹光線が鏡に反射することが判明。自衛隊は、その反射を利用した巨大反射装置による「バックミラー作戦」をさらに決行し、バルゴンに重傷を負わせることに成功する。が、学習したバルゴンが殺人虹光線を封印したことで、この作戦も手詰まりとなってしまった。

だがここに至ってバルゴンが撒き散らした冷凍液の影響が徐々に薄れ、氷が解けるとガメラも復活し、バルゴンの元へと飛来した。二大怪獣による琵琶湖を挟んだ「大怪獣決闘」が繰り広げられることになる。

解説[編集]

バルゴンの舌によって根元から倒される神戸ポートタワー

大怪獣ガメラ』の半年後に公開された作品で、再び現れたガメラと新怪獣バルゴンとの闘争を描く、ガメラシリーズ初の総天然色による第2作。「古都対決」が打ち出され、日本の怪獣映画としては初めて、「大怪獣決闘」と副題がつけられた作品である。大映東京撮影所作品。

前年公開された『大怪獣ガメラ』が大ヒットとなったため、第2弾として急遽企画された作品だが、永田秀雅専務によると、大映本社は『大怪獣ガメラ』について、「東宝のゴジラの二番煎じで、よくこんなものをやれるな」と営業部でも危険性を感じていたという。ところが『大怪獣ガメラ』は予告編が劇場で流れてから前売りが急激に売れ、大ヒット。本社側もこれを受け、永田雅一社長が直々に製作者名として自らの名をクレジットさせ、破格の予算を投入して製作に乗り出す意気込みとなった。

ゴールデンウィーク」興行作品として、大映京都撮影所との分担制作による『大魔神』との本作の「特撮二本立て」興行は、円谷英二1人が全特撮作品を担当していた東宝にも実現できないものだった。永田社長もこの二本立て興行に並々ならぬ注力を見せ、3月末には新聞各紙にこの興行の一面広告を載せ、「日本映画は必ず復興する」と題した一文を寄せて意気込みを示している。

脚本担当の高橋二三によると、「8作も続くとは思わなかったが、『大怪獣ガメラ』のあと、これは次も来るなという感触があった」そうで、実際に本作の製作が決定した時には「ほら見ろ、さあ何作でもいらっしゃい」と思ったという。小野寺が一郎に問い詰められて口を滑らせ、開き直って殺人を重ねるシーンがあるが、高橋はこのくだりを喜劇のセンスで描いたという。高橋は本作について「メロドラマと怪獣特撮がひとつになった作品」と評している。

クレジットはされていないが、永田社長の実子で専務の永田秀雅がプロデューサーに就いている。永田は「子供を出すように」と現場に要望しているが、田中重雄監督側は劇中に一切子供の登場しない[2]作劇を通し、昭和ガメラシリーズで唯一ストーリーに子供がからまない、一般向けの内容の映画に仕立てている。

本作は興行的に大ヒットとなったが、特撮に予算を使いすぎて赤字になった。また大ヒットにもかかわらず、湯浅特撮監督らは内容に不満が多かったという。その理由は作劇が「主軸観客層である子供向けでないこと」であり、劇場での子供たちの反応を基にしてのスタッフの反省会では、「バルゴンが出てくるまでが長すぎて子供の集中力が続かない」、「大人向けのドラマは子供たちには退屈」などの意見が出された。こうして湯浅監督が全編監督となり、翌年制作された『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967年)では、子供たちを飽きさせない演出が最重点に置かれ、子供を主役とする湯浅監督の理想とする作劇が徹底されることとなった。

登場怪獣[編集]

ガメラ[編集]

前作に続き、本作にあわせてエキスプロが新規製作した。鋭い目つきが特徴で、公開当時、「敵役のバルゴンより善玉のガメラのほうが顔が怖いのはいかがなものか」と映画評に書かれたそうである[要出典]。ガメラは基本的に四足歩行するが、これは湯浅特撮監督の「動物的にリアルに見せたい」との意向によるもので、最初は必ず這わせ、戦いになって初めて二足になるよう演出したという。

「手足を引っ込めての回転ジェット」の飛行シーンは、前作ではアニメーションで描かれたが、本作から「迫力が違う」との湯浅特撮監督の意向で火薬を仕込んだミニチュアを使ったものとなった。棒の先に火種を付け、四つの噴射口に同時に点火したが、タイミングが合わず、また撮影中に消えてしまうことも多く、苦労が多かった。このジェット噴射の火炎の色は、口から吐く火炎放射の赤色と区別して、青い色にされている。

1尺サイズと3尺サイズの回転ジェット用ミニチュアが作られたが、湯浅監督は迫力にこだわり、なるべく3尺ミニチュアを使ったという。ミニチュアは三点でピアノ線と繋がれ、放射状に組んだ三本の支柱で吊るされており、支柱の中心の回転軸でミニチュアを回転させる仕掛けだった。この回転ジェットの撮影では、操演用のピアノ線が切れてしまうことが多く、見学に来ていた子供たちに笑われたこともあったという。

冷凍怪獣 バルゴン[編集]

  • 体長:80メートル
  • 体重:70トン

ニューギニアの孤島にある魔境“虹の谷”に隠されていたオパールに似た卵から誕生した、現地で「千年に一度誕生する」と言い伝えられている伝説の怪獣。鼻先から前方へ伸びる大きな角を持つワニオオトカゲを合わせたような外見の四足歩行生物である。

本来は孵化から10年近い年月を経て成長するところを、卵の状態で医療用の赤外線を浴びたため、孵化後わずか数時間で巨大化した、特異体質の変異個体である。ダイヤモンドの放つ光に引き寄せられる習性があるため、ニューギニアの部族に伝わるバルゴン誘導のための特別なダイヤが自衛隊の誘導作戦に使われるものの、こういった事情で、赤外線を当てて増幅されたダイヤの光でなければ認識できなくなっている。

カメレオンのような長い舌を持ち、人間に巻きつけて捕捉したり、建造物を破壊することもできる。先端からは零下100度の霧状の冷凍液を噴射し、この冷凍液で大阪城および市街地とガメラを凍結させた。噴射直後にはバルゴンの歩き回った周辺が凍結することもあり、料亭旅館やその周辺が、バルゴンが通過しただけで、ものの数秒で凍結させたシーンも描かれた。自分の身に何かしらの危険が迫ると、その殺気を遠くからでも敏感に感じ取れるほどの優れた動物的本能や感覚を持つ。

バルゴンの冷凍液でガメラとともに大坂城が凍らされる

背筋に並ぶ光り輝くトゲからは「悪魔の虹」と恐れられる色の殺人光線を放つ。この光線はあらゆる物質を破壊できるが、鏡の光を反射する性質で無効化される。体組織は水に弱く、長い間水中に留まると細胞が溶け出してしまい、同時に舌先からの冷凍液が噴射できなくなる。「バックミラー作戦」で体表を負傷した際には相当なダメージを受けはしたものの、命を落とすことはなかった。このあと、動物本来の本能に従い、断末魔まで虹光線は出さなかった。

ガメラを大坂城ごと凍結させて1度は勝利するも、琵琶湖での戦いでは人間たちの奮闘によって得意の冷凍液や殺人虹光線などが使用できなくなったことが災いし、噛み付きや舌による直接攻撃などで応戦するも次第に劣勢となり、最後はガメラに湖に引きずり込まれたために皮膚が溶解し、そのまま絶命した。

大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』(海外版)、『ガメラ対大魔獣ジャイガー』、『宇宙怪獣ガメラ』にライブフィルムで登場。『宇宙怪獣ガメラ』での登場シーンは、編集の都合で大阪から直後に琵琶湖に移動するようになっている。

平成ガメラシリーズ2作目の敵怪獣候補には当初、本作より大型の個体として登場が予定されていた。[3]

バルゴンの美術・造形[編集]

ぬいぐるみ高山良策によって造型され、エキス・プロダクションが細部の仕上げを行った。バルゴンのまぶたは横方向に開くが、これは当時の撮影所所長をモデルにしたものだった。湯浅監督によると、この所長は実際にそういうイメージの顔をしていたそうである。またバルゴンの頭が大きいのは人間体型を出来るだけ隠すためで、撮影では足元を写さないよう気をつけたという。湯浅監督は「バルゴンは見栄えよりも動きを優先させて作った」とコメントしている。

高山良策の怪獣造形は、「動きやすさ」を重視して作られ、非常に軽いぶん傷みやすかった。撮影でも痛みが激しく、連日補修が欠かせなかったという。ラストの琵琶湖に沈むシーンではぬいぐるみがなかなか沈まず、ハサミで腹を切り裂いて水を入れ、最後はほぼ頭だけの状態にしてようやく目的を達した。これには見学に来ていた子供たちも大笑いしたという。

ぬいぐるみと同サイズで、垂れ目気味で上半身だけの、舌が伸びるギミック入りのギニョールも高山によって作られた。舌を伸ばす仕掛けは、3人がかりで行うものだった。長い舌を伸ばしての冷凍液の噴霧には消火器が使われたが、舌を長く伸ばすのは、噴霧を拡散させて遠方まで冷凍液を飛ばしているように見せるためだった。

3尺サイズのギニョール人形も、同サイズのガメラと併せて琵琶湖セットでの撮影に使用された。卵から生まれる幼体のバルゴンはギニョール人形を使い、下から手を入れて動かしている。ギニョール制作はエキスプロ。孵化シーンで漂う煙には煙草が使われ、幼体バルゴンを覆うねばねばした粘液は、アメリカ製の特注素材を使っている。この「バルゴンの孵化シーン」は、湯浅監督が「本作で最も気に入っているシーン」だそうである。

バルゴンの鳴き声[編集]

経緯は不明だが、ガメラとバルゴンの鳴き声は、『ゲゲゲの鬼太郎』第2作(1971年)の「妖怪牛鬼」の鳴き声や、『マジンガーZ』(1972年)の「機械獣」の声など、東映動画のTV作品に頻繁に流用されている。また、バルゴンの高音部分の鳴き声は、同年制作の円谷特技プロのテレビ映画、『ウルトラマン』(TBS)に登場した怪獣「グビラ」のもの、低音部分の鳴き声はアレンジされて、同プロのシリーズ作品『ウルトラセブン』に登場した「恐竜戦車」、『ウルトラマンタロウ』に登場した「パンドラ」に流用された。

『ガメラ対バルゴン』の特撮[編集]

前作『大怪獣ガメラ』では、東京撮影所の中で「継子扱いだった」という湯浅監督ら撮影スタッフは、『大怪獣ガメラ』の大ヒットで「大威張りだった」という。続く本作では、湯浅監督は特撮監督に、前作に引き続き築地米三郎を考えていたが、築地が撮入前にTV番組『コメットさん』(TBS)の準備のために国際放映に引き抜かれてしまった。これには湯浅監督は「ショックだった」と振り返っている。大型予算が組まれたため、デビュー3年目の湯浅監督は「大作監督にはまだ早い」とする本社の意向で築地に代わって特撮専任となり、本編監督にはベテランの田中重雄が据えられた。

こういった経緯で、本作では湯浅監督は特撮班に回され、元々大映の撮影所では特撮班があまり重視されてこなかったこともあって、前作以上に撮影所からは軽い扱いを受けることが多く、現場では本編監督が重視されたという。本編重視で特撮部分があまりにカットされ、湯浅監督が「特撮担当だって監督なんだ、こっちのカットを変えないでくれ」と撮影所所長の元へ直接抗議に向かったこともあったという。大映のスタッフは基本的に縁故採用であり、「これに起因する近親憎悪だった」と湯浅監督は語っている。

しかしベテラン中心の本編スタッフに対し、特撮現場が若いスタッフ中心となったため、湯浅監督ら特撮班は逆に結集して仕事に燃えることができたそうで、これに伴い、特撮パートもかなり長いものになっている。前作から特殊美術を担当しているエキスプロでは、八木正夫社長以下スタッフ総出で特撮セットに入り、ミニチュアの制作の他に、操演も担当している。

A級予算が組まれた作品だが、湯浅監督によると、東宝ほどの予算編成は望めないため、特撮は出来るだけ現場で処理したそうで、バルゴンが噴射する冷凍液には光学合成ではなく消火器を使った。大映には現像所が無かったため、予算を圧迫する光学合成は東洋現像所に一任する形となるので、虹色光線も自分で現像所に行って焼きこんだという。東洋現像所も導入したばかりのオプチカル・プリンターの実験を兼ね、グロス受注で虹光線の合成を行ってくれた。バルゴンが通り過ぎる旅館の中を逃げる人影は、16mmフィルムで逃げる人々を撮影し、建物内に映写したものである。

前作『大怪獣ガメラ』とのつながりを示すものとして、ガメラを封じた「Zプランロケット」のカプセルの宇宙シーンが新撮され冒頭に登場するが、前作のミニチュアとは大きさ、形状が全く異なっている。バルゴンがポートタワーを舌で押し倒すシーンは、工作部のスタッフがポートタワーを頑丈に作り過ぎてなかなか壊れず、ミニチュアが倒れ切る前にフィルムが尽きてしまった。撮り直しはきかず、余韻のないものになってしまったと湯浅監督は惜しんでいる。

大型予算を受け、大坂城のミニチュアセットはフルスケールで作られたが、美術監督の井上章が縮尺を正確にしすぎて、セットに入りきらなくなってしまったという。バルゴンの冷凍液によって凍りつく大坂城の描写はコマ撮りの手法を使って徹夜で撮影されたが、現像が上がってみると、湯浅監督いわく「パラパラ漫画」のようになっていた。このため、1コマずつ現像で尺を伸ばし、オーバーラップで画を重ねて編集している。ガメラの表面の氷が徐々に溶けて流れるカットは、セットを斜めにして氷を溶かし、流水を表現した。

冒頭でガメラが破壊する黒部ダムの特撮セットは、石膏製のフルスケール模型が作られた。この向こう側に12トン超の貯水量の木製水槽が置かれ、観音開きで一斉放水してダム決壊のシーンを10倍速の高速度で撮影した。万全の用意の末にいざ撮影が始められたところが、30人の大道具係が開いた水槽の扉のタイミングがずれてしまい、濁流が二段階で流れ出てしまった。10倍速撮影のため、1秒のずれは10秒に拡大されてしまい、かえって迫力のある決壊描写となった。このとき、ダムの下流では火災描写の効果を出すため赤い照明が当てられていたが、濁流で火が消えた後に照明を消すのをスタッフが忘れてしまった。結局撮り直すことはできず、このシーンは赤い照明のまま使われた。

小野寺が飲み込まれるシーンのために、実物大のバルゴンの頭が作られた。日本の怪獣映画としては初めての、人間が怪獣に食べられる様を描写した作品である。 湯浅監督の「東宝のゴジラとは違う画を創ろう」との意向で、怪獣同士の戦いにも、切ったり突いたりといった絡みが採り入れられ、円谷英二の方針で流血を避けた東宝の怪獣映画と差別化され、本作以降、ガメラシリーズでは怪獣の流血描写が頻繁に見られるようになった。バルゴンの角やトゲもそういった意向でデザインされている。カラー画面を考慮して、必要以上の残虐風味を避けるためガメラやバルゴンの血の色は緑や紫にされた。「四つ足怪獣同士の戦い」という本作の構図も、従来の東宝作品に見られなかったものだった。これも斉藤米二郎プロデューサーや湯浅監督らの「ゴジラが二本足なら、こっちは四本足で」という前作から続く東宝ゴジラへの対抗意識の現れだった。

登場人物[編集]

平田 圭介(ひらた けいすけ)
本作の主人公。航空士として大空を駆け回る夢を持ち、独立して小さな観光飛行機会社の設立を目指す。そのため、航空士のライセンスを得ると勤めていた航空会社を辞め、兄の計画に参加することになる。
カレン
本作のヒロイン。ニューギニアの秘境「虹の谷」近辺の集落の酋長の娘。村に住み着いている日本人医師、松下博士の助手を勤めており、日本語を流暢に話せる。幼い頃からバルゴンの伝説を聞かされているため、バルゴンの特徴や弱点などに詳しい。
平田 一郎(ひらたいちろう)
圭介の兄。戦時中、兵士としてニューギニアにいた過去があり、その時に足を負傷する。現在は写真館を経営している。捕虜収容所へ入れられる前、虹の谷で巨大なオパール(バルゴンの卵)を発見した後、元の場所へと隠した。20年後、そのオパールを密輸するために弟の圭介、小野寺、川尻の3人を現地へ向かわせたが、仲間を罠に嵌めて帰国した小野寺の手にかかって妻共々殺されてしまう。
小野寺(おのでら)
一郎の友人である山師。「金目の物は全て俺の物」がモットーの極めて強欲かつ自分本位な性格であり、利益を独占するために仲間や友さえも平気で手にかけ、それを悪びれもしない厚顔無恥な外道。日本に帰国してからも圭介の兄夫婦を乱闘の末に殺害して逃走し、最後はバルゴンを琵琶湖に誘導するためのダイヤを強奪し逃げようするが、それに反応したバルゴンにダイヤもろとも食べられて死亡するという自業自得な結末を迎えた。大阪在住だが、愛人ともども標準語を話す。
川尻(かわじり)
一郎の友人である貨物船「あわじ丸」の船員。オパール密輸計画のために圭介と小野寺の船員手帳を偽造する。妻子持ちであり、計画が成功した後は船員を辞めて家族と一緒に暮らそうと考えていたが、オパールを発見した直後、毒サソリに刺されて死亡。家族の写真は肌身離さず所持していた。大阪弁を話す。
自衛隊司令官
バルゴン退治のために様々な作戦を練る。作戦助言者として名乗り出た圭介とカレンを作戦室に受け入れる。
佐藤(さとう)船医
貨物船「あわじ丸」に乗船する船医。日本への帰途、マラリアと水虫を患った小野寺の治療を務める。後にバルゴンの卵に赤外線が当てられていたことを証言、またバルゴンの習性を生かした誘導作戦を作戦室で提案する。大阪弁を話す。
天野(あまの)教授
殺人光線の研究に努め、ルビー殺人光線照射装置を開発する。バルゴン誘導作戦のために装置を赤外線照射装置に改造した。
松下(まつした)博士
風土病の研究のためにニューギニアの集落に15年前から住み着いている日本人医師。その際、妻を風土病で亡くしている。
平田 さだ江(ひらた さだえ)
一郎の妻。琴稽古の教室を開いている。大阪在住だが標準語を話す。一郎と小野寺の乱闘の仲裁に入るも、逆に怒り狂った小野寺の手にかかって殺されてしまう。
林(はやし)助手
天野教授の助手。やや落ち着きがない様子で、天野教授から必ず落ち着くように諭されることが多い。
岸本(きしもと)
圭介が勤めていた航空会社の元上司。航空士のライセンスを取得したばかりの圭介が会社を辞めることを不思議がる。
李(リー)
平田がオパールの買い取り商談を持ちかけた中国人宝石ブローカー。

キャスト[編集]

本作では人間側の主演として本郷功次郎が起用されているが、これには本郷は甚だ不本意だったという。デビュー7年目で「やっと一人前の俳優になれた」と思っていた矢先に本作の話が本社から来て、「周りの俳優はみんな逃げてしまい、自分だけつかまった」、「自分が目指しているものとは違う」と大弱りだったという。そこで本郷は仮病を使って大阪のホテルに逃げ込みを決め、このためついに本編撮入が一カ月遅れることになった。

本郷は制作部の部課長の前で、看護婦に注射(中身は栄養剤)まで打ってもらって仮病を通そうとしたというが、「治るまで待つ」と言われ、結局引き受けることになった。「相手が(目の前にいない)怪獣じゃ、まったく(演技の)勉強をしてられない」ということで、「現場では台本は貰ったが読まなかった」という。しかし、本作が予想外にヒットし、後年になって「まさかこんなに時代に残るとは思ってもみなかった、今ではもう財産になってしまった。ガメラに出られたことを本当に感謝してますよ」と語っている。

ニューギニアのシーンはすべてスタジオ内で撮影された。カレン役の江波杏子が南国風衣装で踊る特写スチールが撮られているが、本編ではこのようなシーンは無い。江波のスチールはその後、ロビーカードの素材に使用され、『対ジグラ』では怪獣ジグラに食べられているものもあった。

「あわじ丸」船長役の星ひかる(星光)は、湯浅憲明特撮監督の実父である。星はバルゴンの表情モデルになった東京撮影所所長とは同期の仲間だった。村の娘役の西尋子は、本作がデビュー作。後に東映京都撮影所に移籍して賀川雪絵(現:賀川ゆき絵)と芸名を変え、現在に至っている。関西を舞台とする作品であるが、登場人物はごく一部を除き関西弁を話さない。

1作目は大映特殊技術部のスタッフがガメラを演じているが、本作からは専門のスタントマンを起用している。本作から『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』までは荒垣輝雄がガメラを演じた[4]。湯浅監督は「ガメラのぬいぐるみの甲羅は鉄線で骨組みを作ってあるので入るだけで大変なんですが、荒垣さんは実に軽快に動いてくれました」とコメントしている。

スタッフ[編集]

≪特殊技術≫

漫画化[編集]

本作公開後、馬場秀夫による漫画化作品が、『少年ブック』(集英社)の1967年正月増刊号付録として発行された。ほかに『大魔神逆襲』と『大巨獣ガッパ』の漫画も併載された。

映像ソフト化[編集]

  • ビデオ
    • 1990年にVHSが発売。
  • レーザーディスク
    • 1995年に発売。
  • DVD
    • 2001年10月11日発売の「ガメラTHE BOX(1965-1968)」に収録されており、単品版も同時発売[5]
    • トールケース版は2007年10月26日発売。
    • 2006年8月31日発売の「ガメラ 生誕40周年記念Z計画 DVD-BOX」にも収録されている。
  • Blu-ray
    • 2009年7月24日発売の「昭和ガメラ ブルーレイBOXI」に収録されており、単品版も同時発売。

宣伝興行[編集]

大映は本作公開のイベントとして、公開前に投票券を配り、劇場で15,000人を対象に「ガメラ バルゴンどちらが勝つか? 大懸賞」と題して勝利予想を懸賞公募した。商品はカラーテレビやピアノ、自転車、写真機、8ミリキャメラ(シングル8)、テープレコーダーなど。

また、「初の総天然色興行」ということで、劇場内を飾るガメラと新怪獣バルゴンの決闘を描いたロビーカードも、本作から人工着色によるものが初めて使用された[6]

テレビ放送について[編集]

1980年代には地上波で度々放送されたが、1995年から1999年までの平成ガメラ三部作が作られた折に、日本テレビ系列の『金曜ロードショー』などでガメラシリーズが放送された際、本作は見送られた。2009年にHDリマスター版が日本BS放送にて放映された際は、冒頭で「芸術性と当時の時代背景を尊重し、そのまま放送する」旨のテロップを表示している。神戸のテレビ局サンテレビなどでは現在も時折再放送されている。

関連作品[編集]

  • 大怪獣激闘 ガメラ対バルゴン COMIC VERSION』(2003年)
    本作を元にした近藤和久作の漫画作品。
  • 『ともだち 小さき勇者たち 〜ガメラ〜』(蕪木版ノベライズ本)
    オリジナル怪獣「Gバルゴン」が登場する。
  • 大群獣ネズラ
    1963年に企画され、お蔵入りした特撮映画。怪獣「ネズラ」の声が、本作で洞窟内のコウモリの声に流用された。

脚注[編集]

  1. ^ 開業4年目だった
  2. ^ 子供らしい子供は避難民で映るだけである
  3. ^ てれびくんデラックス愛蔵版 ガメラ2レギオン襲来 超全集(1996年 小学館
  4. ^ ガメラ対大悪獣ギロン』と『ガメラ対大魔獣ジャイガー』では泉梅之助がガメラを演じた
  5. ^ 「綴込特別付録 宇宙船 YEAR BOOK 2002」、『宇宙船』Vol.100(2002年5月号)、朝日ソノラマ2002年5月1日、 170頁、 雑誌コード:01843-05。
  6. ^ 前作『大怪獣ガメラ』では、劇場で観客が総天然色作品と錯誤しないよう、白黒のロビーカードが飾られた

参考文献[編集]

  • 『ファンタスティックコレクションNO13 世紀の大怪獣 ガメラ』(朝日ソノラマ)「湯浅憲明、築地米三郎インタビュー」
  • 『テレビランドワンパックNO29 ガメラ大怪獣図鑑』(徳間書店)「湯浅憲明インタビュー」
  • 『怪獣とヒーローを創った男たち』(辰巳出版)「村瀬継蔵・八木宏インタビュー」
  • 『大怪獣ガメラ秘蔵写真集』(角川書店)「永田秀雅・本郷功次郎特別インタビュー」
  • 『ガメラを創った男』(アスペクト)
  • 『大映特撮映画大全』(角川書店)
  • 『ガメラから大魔神まで 大映特撮映画のすべて』(近代映画社)「井上章・高橋二三・湯浅憲明・八木正夫インタビュー」

外部リンク[編集]