大いなる業

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大いなる業(わざ、ラテン語でMagnum opus、英語ではThe Great Work:グレート・ワーク)(しばしば Opus magnum。特別な人の「大いなる業」というより、単に「大いなる業」という意味[1]。複数形はmagna opera。)はラテン語で、偉大な仕事という意味で[2]、最も大きな、そして恐らく最良の、偉大な、最も人気のある、または最も名高い成功をした作家美術家作曲家の作品や業績を指す。

また、この言葉は、いくつかの精神的な伝統にも使われ(カバラテレマ錬金術等)、主に賢者の石を指す複合的な意味がある。[3]

芸術世界で[編集]

「大いなる業」という言葉は、大規模な仕事であることを要求され、一般的に創作者の最も成功した作品であることを要求されず、最高傑作とは区別されている。最高傑作は、小さかったり、短かったり、少なかったりするかも知れないが、高度に成功している。大いなる業は、概して失敗と見なされることもある。例えば、何人かの十九世紀の作曲家はオペラを書くのに膨大な時間を費やしたが、主としてもっと短く労力の少ない作品が覚えられた。シューベルトシューマンイサーク・アルベニスフランツ・リスト等がそうである。また、文学の分野では、ウィリアム・ワーズワーストマス・ピンチョンジョン・キーツ等である。他の芸術家は、ビートルズベートーヴェンワーグナーミケランジェロラファエロ等、彼らの作品の二つの言葉が合致している。——彼らの最大の作品がそれらの中で最高の作品になっている。

錬金術で[編集]

大いなる業は卑金属をへ完全に変換する、または賢者の石の創造を指すヨーロッパ中世の錬金術の言葉に由来している。後にヘルメス主義で、意識変容を表すメタファーとして使われた。これには次の三つの段階がある。[4]

  • 「ニグレド(腐敗)」黒化(腐敗):個性化、浄化、不純物の燃焼、も参照
  • 「アルベド」白化:精神的浄化、啓発
  • 「ルベド」赤化:神人合一、有限と無限の合一

カバラ(Qabalah)で[編集]

ゾーハル形成の書などの古典的なカバラの教典に「大いなる業」という言葉は存在しない。しかしながら、ルネッサンス期のカバリストの書物にはそのコンセプトが見られる。

あなた自身の欲求のために祈ってはいけない。そうすれば、あなたの祈りは遂げられないであろう。しかし、あなたが祈るとき、頭の重さのためにそうしなさい。あなたに足りない物は、聖なる存在にも足りないのだから。
人は「神の高いところの一部」であるから、足りない部分が何であれ、それはまた、全体の中に存在し、全体はその部分が足りないと感じ、それ故に、あなたは全体の欲求のために祈るべきである。(a disciple of the Kabbalist R. Israel Baal Shem Tovより)

ヘルメス主義で[編集]

近代西洋儀式魔術第一人者の一人で黄金の夜明け団に影響を与えたエリファス・レヴィ(1810-1875)は、大いなる業を詳細に論じた。彼は次のように定義した。

大いなる業は、すべての物事、彼自身による人間の創造より前にあり、彼の知識と将来のすべての完全な征服と言える。それは特に彼の意志の完全な解放である。[5]

セレマで[編集]

セレマでは、大いなる業は、一般的に、自己と「すべて」の神秘的な合一を導く精神的実践として定義されている。——「大いなる業は反するものの合一である。それは魂と神、ミクロコズムとマクロコズム、女と男、エゴと非エゴの合一を意味する。」[6] アレイスター・クロウリー(1875–1947)によると、これは、彼が「聖守護天使との知識と会話」と呼ぶものによって最初に明言される。[7] 別の視点では、彼はまた、大いなる業は、自己認識の探求のため、「自己存在の本性と能力の知識を獲得」するためだと考えていた。[8]クロウリーはしばしば、大いなる業を「成功する」または、「達成する」という考え方を論じ、また、この過程は継続するものであると認識していた。

聖杯の探求、賢者の石の捜索——名前は何であれ我々が大いなる業と呼んでいるもの——は、それ故に終わりがない。成功は、卓越した可能性の新しい手段にのみ開かれている。そうだ、本当に、その通り!課題は限界のない疲れ知らずとその喜びにある。つまり、世界全体のため、その中にあるすべて、そこはしかし冠を被り征服した子供の無限の遊び場、飽くことのない、無邪気で、宇宙と永遠の終わりのない歓喜の継承者、その名は人間?[9]

複数形[編集]

ラテン語で、magnum opusの複数形はmagna operaであり、伝統主義者にはその用法が好まれているのは事実はあるものの、オックスフォード英語辞典など多くの辞書ではmagnum opusesとして許容されている。

脚注[編集]

  1. ^ Bill Bryson, Troublesome Words, Third Edition published in Penguin Books 2002
  2. ^ The American Heritage Dictionary of the English Language, Fourth Edition, Retrieved December 10, 2006, from Dictionary.com
  3. ^ Redgrove, Herbert Stanley, Alchemy: Ancient and Modern, Section 43: Bernard Trévisan, Copyright 1999, by the Rector and Visitors of the University of Virginia
  4. ^ Meyrink und das theomorphische Menschenbild
  5. ^ Levi, Eliphas. Dogma et Rituel de la Haute Magie, Ch. 12.
  6. ^ Crowley, Aleister. Magick Without Tears, "Letter C." New Falcon Publications, 1991. ISBN 1-56184-018-1
  7. ^ Crowley, Aleister. "One Star in Sight"
  8. ^ Crowley, Aleister. The Confessions of Aleister Crowley, p. 560. Penguin, 1989. ISBN 978-0140191899
  9. ^ Crowley, Aleister. Little Essays Toward Truth. "Man." New Falcon Publications, 1991. ISBN 1-56184-000-9

関連項目[編集]

参考書籍[編集]

  • Crowley, Aleister. Magick: Book 4. 2nd ed. York Beach, Me. : S. Weiser, 1997.
  • ____ Magick Without Tears. Phoenix, AZ : Falcon Press, 1992.
  • ____ Liber CXCVII. Sir Palamedes the Saracen Knight In: "A poetic account of the Great Work and enumeration of many obstacles."
  • Levi, Eliphas. Dogme et rituel de la haute magie, published in English as Transcendental Magic. A.E. Waite, trans.
  • Thelemapedia. The Great Work., 2004. Retrieved April 14, 2006.