夢 (アンリ・ルソーの絵)

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『夢』
フランス語: Le Rêve
作者アンリ・ルソー
製作年1910年
種類油彩、キャンパス
寸法204,5 cm × 298,5 cm (805 in × 1,175 in)
所蔵ニューヨーク近代美術館ニューヨーク

』(ゆめ、フランス語:La Rêve)は、アンリ・ルソー1910年に製作した油彩画ジャングルをテーマとするルソーの25を超える絵の1つである。ルソーが1910年9月2日に死去するまでに制作された最後の作品であり、死去する数か月前の1910年3月18日から5月1日まで、アンデパンダン展で展示された。

作品[編集]

本作品はルソーが手掛けたジャングルの絵のうち最大の作品で、6フィート8インチ×9フィート9インチ(204.5センチメートル×298.5センチメートル)の大きさである。ルソーの若いころのポーランド人の恋人ヤドヴィガ(Yadwigha)がモデルとされる裸婦が絵の左側に横たわり、ハスの花やジャングルの青々と生い茂った草むらや、鳥、サル、ゾウ、雌雄のライオン、ヘビなどの動物たちをじっと見つめている[1]

型にはまった方法で描写されているジャングルの植物は、作者ルソーのパリ自然誌博物館(Paris Museum of Natural History)のパリ植物園(Jardin des Plantes)での観察にもとづいている。裸婦の左腕は、ライオンたちと、満月の薄明かりの下、ジャングルの暗がりの中でかろうじて見える、画面の中央で正面を向き縦笛を吹く、黒人のヘビ使いのほうに伸びている。下生えのあいだを滑るように進むピンク色のヘビも描かれている。

ルソーは、鑑賞者が絵の意味を理解しないものもいるかもしれないとして、「『夢』のための献詞 (Inscription pour La Rêve)」と題した詩(以下)を書いて絵に添えた。

美術批評家アンドレ・デュポン(André Dupont)あてのルソーの手紙で、ルソーは、ジャングルでフルート奏者に耳をかたむけている夢を見ている、パリの横たわる女性を描いたと書いている。横たわる裸婦という題材は、ティツィアーノの1538年の絵『ウルビーノのヴィーナス』から、マネの1863年の絵『オリンピア』に至る、古典的で伝統的な題材である。ルソーは、作家ゾラと針子の女性とのあいだの愛を題材にした小説『夢想』(Le Rêve)から着想を得たのかもしれない。『夢』を描いているあいだ、ルソーは店員レオニー(Leonie)と恋愛関係にあった。

評価[編集]

ルソーの初期の諸作品は否定的な評価を受けたが、この作品に対して詩人で批評家のギヨーム・アポリネールは「この絵は美にあふれているということには議論の余地はない。今年は誰も(訳注: この作品を)嘲笑しないだろう」と述べた。

その後[編集]

1910年2月にフランスの画商アンブロワーズ・ヴォラールがルソーからこの絵を買い取った。1934年1月にニューヨークノードラー・ギャラリーズ (Knoedler Galleries) を介して、被服製造業者シドニー・ジャニス (Sidney Janis) に販売された。1954年にジャニスはこの絵をネルソン・A・ロックフェラー (Nelson A. Rockefeller) に売り、ロックフェラーはそれを創立25周年となった近代美術館(Museum of Modern Art, MoMA)に寄贈した。この作品は現在も MoMA に収蔵されている。

関連する作品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 光嶋裕介『建築という対話 僕はこうして家をつくる』筑摩書房、2017年、223頁。ISBN 978-4-480-68980-1 
  2. ^ 「bien pensant」の訳:「正統派」あるいは「穏健な」または「体制的な」。
  3. ^ 大野ゆり子 (2018年7月6日). “原田マハ『楽園のカンヴァス』仏語版を称賛したフランス人の「心象風景」”. ハフポスト. https://www.huffingtonpost.jp/foresight/harada-maha-20180706_a_23474977/ 2019年3月10日閲覧。 

参考文献[編集]

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