外国為替平衡操作

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外国為替平衡操作(がいこくかわせへいこうそうさ)とは、日本において財務省の命令で日本銀行が行なう為替市場への介入のことである。日本以外の為替当局が行うものについても本項で扱う。

概要[編集]

目的[編集]

変動相場制において、為替レート変動の過度な動きを緩和するのが目的。

為替レートが諸般の事情で投機の対象となった場合、急激なレート変動が実体経済に対して悪影響を与える場合がある。このようなとき、財務省の命令により金融当局(日本銀行)が、市場取引に参加し通貨の売買をする。

介入の方法[編集]

介入する際は、財務省において外国為替資金特別会計から捻出される資金を持って取引が行なわれる。円売りドル買い介入の場合、日本の債券市場において政府短期証券(FB)を発行。1993年3月まではFBの全量を日銀が直接引き受けていたが、2000年4月からはFBの市中完全入札により介入資金を調達している。これにより調達した円資金を為替市場で売却し、ドルを買い入れる。ドル売り介入の場合は、外貨準備から米国債を取り崩して工面する。介入の実績は、財務省から公表される。

アナウンス効果を目的とした発言だけで、行動が伴っていないと解釈されれば口先介入と呼ばれる場合もある。 一国だけが介入する場合を単独介入、複数の国が同時に介入する場合を協調介入と呼ぶ。

介入の効果[編集]

介入は、覆面で非公開で行なわれる。このため、過度なレート変動時には金融当局による介入が危惧され、自律的に変動が緩和されることもある(アナウンス効果)。

実際の介入における金額も巨額で一定の効果を持つ。協調介入ではなく、一国の単独介入では効果は極めて小さい。為替介入の効果は短期的な為替レートの変動をけん制する役割がせいぜいのところであることに留意すべきである[1]

また、介入によって得られた外貨準備と調達資金の金利差から得られる利ざやは国庫に収められ歳入となる。しかし、自国通貨高が進んでしまうと、為替差損が発生してしまう。

2011年現在の制度を前提とするかぎり、同額の金融緩和策とセット(非不胎化介入)でない為替介入により供給された資金は早晩吸収されてしまう[1]

歴史[編集]

1973年の変動相場制移行後、ドルに対して増価する過程を歩んできた。このため、基本的に円売りドル買いの市場介入の方が多く、米国債を中心とした外貨準備はプラスとなっている。アジア通貨危機の際には、ドル売りインドネシアルピア買い介入が行われている。

日本による円売りドル買い介入は、しばしば日本の輸出企業に対する事実上の補助金であるとして批判されている。

政府(日銀)による主な市場介入
時期 介入総額 通貨 財務大臣(大蔵大臣) 目的
1995年2月17日9月22日 4兆9589億円 円売、ドル買 武村正義 79円台にまで進んだ円高による日米貿易摩擦を懸念
1998年4月9日4月10日 2兆8158億円 ドル売、円買 松永光 1ドル130円台にまで進んだ円安の是正
1999年6月10日7月21日 4兆4073億円 円売、ドル・ユーロ買 宮沢喜一 120円台の円高の是正
2001年9月17日9月28日 3兆2107億円 円売、ドル・ユーロ買 塩川正十郎 アメリカ同時多発テロ事件の影響による円高の阻止
2002年5月22日6月28日 4兆162億円 円売、ドル・ユーロ買 塩川正十郎 123円台後半まで急騰した円高の是正
2003年5月8日2004年3月16日 32兆8694円 円売、ドル・ユーロ買 塩川正十郎谷垣禎一 デフレーションの克服。円高の是正
(テイラー・溝口介入)
2010年9月15日 2兆1249億円 円売、ドル・ユーロ買 野田佳彦 15年ぶりに82円台後半まで上昇した円高の是正
2011年3月18日 6925億円 円売、ドル買 野田佳彦 震災後の投機的な市場の抑制。(左記は日銀公表分で協調介入総額は2兆円以上)
2011年8月5日 4兆5129億円 円売、ドル買 野田佳彦 投機的な市場の抑制
2011年10月31日 8兆722億円 円売、ドル買 安住淳 投機的な市場の抑制
2011年11月1日11月4日 1兆195億円 円売、ドル買 安住淳 投機的な市場の抑制。(当介入は覆面介入であったことを財務省が2012年2月7日に正式発表[2]

日本政府の外貨準備高は2012年3月時点で1兆1160億ドルであり、為替差損は数十兆円規模に拡大していると思われる。財務省は外貨準備の為替差損については公表していない。

日銀が保有する政府短期証券(FB)の残高は、2010年末が19兆8252億円、2011年末は24兆564億円である。

日本以外における為替介入[編集]

アメリカ[編集]

米国財務省は、1970年代から1980年代にかけて頻繁にドル売り・ドル買い介入を繰り返してきたが、1995年ロバート・ルービン財務長官に就任して以来は2,3回しか介入を行っておらず、2000年以降は2011年までまったく介入を実施していない。巨大な為替市場を相手に相場の操作を試みるのはもはや無駄との考えからである[3]

アイスランド[編集]

2008年に入ってからの同国通貨クローナの対ユーロ下落に対してクローナ買いユーロ売り為替介入を行った。

ウクライナ[編集]

2008年9月からわずか一ヶ月で同国通貨グリブナが40%以上下落、グリブナ買いの為替介入を行った。

スイス[編集]

2009年ギリシャ危機以降、対ユーロで同国通貨スイス・フランが上昇、スイスフラン売りユーロ買いの為替介入を約1年間続けた。しかし、急激な上昇を食い止めるのがやっとで上昇傾向そのものは変わらず、スイス国立銀行は1兆円に上る巨額の損失を計上した。また同国外貨準備高は介入の影響で1年で5倍となった。 2010年6月には介入の打ち切りを発表。 2011年9月6日、スイス国立銀行は1ユーロが1.2スイスフランを下回った時点で無制限に介入を行う旨を発表した。[4]

ロシア[編集]

2009年10月頃から同国通貨ロシア・ルーブルの対ドル上昇を抑制する為、15億ドルから20億ドル程度のルーブル売りドル買い介入を行った。[5]

新興国[編集]

2011年9月、欧州の財政不安をきっかけとして、リスク回避で新興国から資金流出が発生した。ブラジルやアジア、東欧の新興国が、ドルなどを売って自国通貨を買う為替介入を相次いで実施した。[6][7][8][9][10]

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]