垂直跳び
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
垂直跳び(すいちょくとび)とは、直立姿勢から助走せずにその場で両足の力で垂直に飛び上がるジャンプ。その場跳び。サージャントジャンプ[1]、Vertical Jumpなどともいう。似た単語にvertical leapがあるが、こちらは助走の有無を問わず一度の跳躍でどれだけ跳べるかを測定する。
目次 |
測定方法 [編集]
- 上方に伸ばした手の位置を壁にマーキングし、跳躍時の手の相対位置関係より求める。
- 日本の中学校・高等学校の体力測定(スポーツテスト)では、床面に設置された重りに繋がれた紐を胴体に固定し、跳躍した際に紐の飛び出した距離を測定する装置が使用されることがあるが、その場合著しい誤差が生じる懸念もある。
記録 [編集]
- 成人において男性は70cm以上、女性は60cm以上跳べると非常に優れているとされる[2]。
- NBAの平均記録は67cm[3]、陸上の跳躍競技トップ選手達は70cm台とされる。
- 日本の高校3年生の平均記録は男子62cm、女子44cm[4][5]とされる。
垂直跳びの仕組み [編集]
- 垂直跳びは大きく3つの段階(初期・中期・後期)でその運動形態を分けることができる.垂直跳びのためのパワー発揮は,素早い上体の沈み込み(抜重動作)によって股関節が屈曲し,股関節周辺の単関節筋である股関節屈筋群(主に大臀筋,以下①)が急激に引き伸ばされ,伸張反射によって強い収縮が引き起こされることにより股関節の伸展が開始することから始まる.この時,ほぼ同時に膝関節周辺の単関節筋群(以下②)が伸張反射を引き起こし,膝関節が伸展しようとするが,股関節伸展と膝関節屈曲に関与する二関節筋のハムストリングス(以下④)が股関節伸展のために収縮しているので,②と打ち消しあうことで,股関節の伸展は促進され上体は立ち上がるが,膝関節の伸展は抑えられる(初期).上体が立ち上がることで④の収縮が弱まり,股関節屈曲と膝関節伸展に関わる二関節筋群(主に大腿直筋,以下⑤)が引き延ばされ,これも伸張反射によって強い収縮をすることで,今度は股関節伸展が抑えられ,膝関節の伸展が促進される(中期).⑤によって膝関節が急激に伸展を開始すると,膝関節屈曲と足関節底屈に関わる二関節筋(腓腹筋,以下⑥)が引き延ばされ,活発に力を出し始める.この時,⑤は①に逆らって胴体の後方への回転を抑えながら,①のパワーを膝へと伝えている(膝関節伸展へ貢献している).⑥は膝関節を曲げようとするが,大腿や下腿の回転の勢いなどにより膝関節は伸展を続けるので,結果的に⑥によって踵が上へ引っ張られ,足関節を急激に底屈させる(後期).もちろんこれらのことは1秒もかからないほんの一瞬で起きていることなので,意識することはできないが,①~⑥が前述のように非常に巧みに連動することで跳躍が可能となるのである.
- 単関節筋が発揮した力と二関節筋が発揮した力が互いに打ち消しあう,というようなことがあり,パワー発揮の面で損をしているように思えるが,これが重要な働きなのである.なぜなら,筋肉は収縮速度が遅い方が大きな力を発揮できるからである(Hillの方程式).二関節筋が単関節筋の収縮速度を適正に保つことによって(パワーを上手に伝えているとも言える),人により差はあるにせよ,跳躍を可能にする大きなパワーを生み出すことができるのである.また,高く飛ぶためには大腿四頭筋を鍛えなければならないと思われている場合が多いが,前述の仕組みによると,大腿直筋は①のパワーを膝関節へ伝えたにすぎないので,最大筋力が筋の横断面積に比例することからも,膝関節伸展のパワーの多くは①から伝わったものだと考えることができる.また,足関節底屈筋群は,股関節伸展筋群や膝関節伸展筋群に比べて細いのに(最大筋力は筋の横断面積に比例する),足関節が跳躍の際に,他の下肢関節により発揮されて伝わってきた大きなパワーを強力な底屈によって地面へ伝えることができるのは,太くて長い腱(アキレス腱)が,パワーの多くを弾性エネルギーとして蓄え,それが強力に縮む,ということが起きているからである.全身の運動に関して,弾性要素である腱は,弾性エネルギーの利用という面で大きな役割を担っている(「バネのある動き」とは弾性要素が有効に発揮できている動き).最近流行している言葉でもあるSSC(伸張短縮サイクル,Stretch-Shortening Cycle)が上手に使えているかどうかも,垂直跳び動作の根幹をなす重要なことである.
- 高い垂直跳びパフォーマンス発揮するためには,鋭い抜重動作とタイミングの良い腕の振り(反動動作)が必要となる.抜重動作には,物理的に,一時的に重心を下方へ加速させることで床反力を減少させ,重心が上昇局面に移る時に,それまでに得た加速度の分だけ増加した床反力を得られる,という効果がある.簡単に表すと下記の式のようなことになる.(Fはその時の床反力,mは跳躍者の体重,gは重力加速度,aは重心の加速度,上方を正,下方を負とする)
- 静止状態:F = mg
- 沈み込み時:F = m(g - a)
- 切り替わり時:F = m(g + a)
- この考えからすると,抜重動作によって地面反力を0に近づけることができれば,作用反作用により,より大きな床反力を得ることができるということになる.
- 腕の振りの役割は大きく2つある.一つ目は反動動作,もう一つは上体の引き上げである.後方に勢いよく振り上げた腕が,振りおろしによって下向きに加速すると,下降から上昇に切り替わる時,腕はそれまでの加速と腕の質量の積と等しい力で肩関節を下向きに引っ張る.その力は最終的には地面が足裏を押す力となる.つまり,腕の振りによって床反力を増加させることができるのである.この力は,最終的に下肢にかかっているので,下肢の関節を伸展させる筋肉を強制伸張し,反動動作の目的である収縮力の増加をもたらしている.続いて,腕の上昇速度が胴体の上昇速度よりも早い速度で上昇し,胴体の上昇速度と腕の上昇速度が同じになる過程で,腕には下向きの加速度が生じる.すなわち,肩関節には上向きの力がはたらき,腕の振り上げが胴を上方へ引っ張ることになる.
垂直跳び記録 [編集]
※海外の記録には、垂直跳び(No Step Vert)ではなく、何歩か歩ったあとにジャンプ(Step Vert)したものの数値を載せている場合がある。
- TDub(興行ダンクチームTFBのメンバー):127cm
- レオネル・マーシャル(バレーボール):127cm
- デイヴィッド・トンプソン(NBA):122cm[6](ギネス)
- マイケル・ジョーダン(NBA):122cm(ギネス)
- スパッド・ウェブ(NBA):117cm
- バーノン・デービス(NFL):107cm 2006NFLスカウティングコンバインでの計測
- ケイダー・ジアーニ(バスケットボール)105cm (助走あり 147cm)[7]
- アレン・アイバーソン(NBA):104cm [8]
- ケニー・グレゴリー(NBA):100.3cm 2001年プレドラフトキャンプ時の身体データ[9]
- ニック・ヤング(NBA):100.3cm 2007年プレドラフトキャンプ時の身体データ[10]
- アレックス・スカルズ(バスケ):97.8cm 2000年プレドラフトキャンプ時の身体データ[11]
- ドウェイン・ミッチェル(NBA):95.3cm 2006年プレドラフトキャンプ時の身体データ[12]
- ロナルド・ドゥプリー(NBA):95.3cm 2003年プレドラフトキャンプ時の身体データ[13]
- ドナルド・トーマス(走高跳):93cm(助走付き)NHKの特集番組ミラクルボディーより
- ヴィンス・カーター(NBA):91.4cm 1998年プレドラフトキャンプ時の身体データ[14]
- ネイト・ロビンソン(NBA):90.2cm 2004年プレドラフトキャンプ時の測定[15]
- 南山真(バスケットボール):90cm 2002年元日放送スポーツマンNo.1決定戦より
- デリック・ローズ(NBA):87.6cm 2008年プレドラフトキャンプ時の身体データ[16]
- 蒲谷正之(バスケットボール):87cm 三菱電機公式HPのプロフィールより
- 糸井嘉男(野球):87cm 深夜放送の『FFFFF』(北海道テレビ放送)のインタビューにて
- ケイン・コスギ(俳優):86cm TV番組『日本のミカタ』の出演者プロフィールより[17]
- 宮崎大輔(ハンドボール):84cm TV番組で計測
- 原田雅彦(スキージャンプ):82cm 明確なソース無し(チーム雪印プロフィール)
- 上坂太一郎(野球・阪神):80cm 球団の体力測定
- O.J.メイヨ(NBA):77.5cm 2008年プレドラフトキャンプ時の身体データ
- マイケル・ビーズリー(NBA):76.2cm 2008年プレドラフトキャンプ時の身体データ
- 岩舘学(野球・巨人):76cm 入団時の体力測定
- 赤松真人(野球・広島):75cm 阪神入団時の体力測定
- ケビン・ラブ(NBA):74.9cm 2008年プレドラフトキャンプ時の身体データ
- 五十嵐圭(バスケットボール):74cm テレビ番組bodyで計測
- 斉藤浩哉(スキージャンプ):68cm 明確なソースなし(チーム雪印プロフィール)
- 高橋勇丞(野球・阪神):67cm 入団時の体力測定
- 岡部孝信(スキージャンプ):61cm 明確なソースなし(チーム雪印プロフィール)
- なかやまきんに君(芸人):60cm テレビ番組bodyで計測
- 中田大輔(トランポリン):60cm テレビ番組所さんの目がテン!で計測
- ステファン・ホルム(走高跳):60cm NHKの特集番組ミラクルボディーより(走り高跳び自己ベスト:2m40)
関連項目 [編集]
脚注 [編集]
- ^ Sargent jump test。アメリカの体育教育の先駆者ダドリー・サージャントの名前に由来する。Sergeant (軍曹、巡査部長)jump とされることが多いが、これは誤用。[1]
- ^ 垂直跳びの成績表
- ^ 「ミラクルボディー第3回ハイジャンプ翼なき“天才”」より。
- ^ http://www.urban.ne.jp/home/tm512/suitobi.html
- ^ 高校生の体力、運動能力調査結果(茨城県)
- ^ “[第3回 バスケットボール&フェライト焼成]筋力も磁力も酸素が決め手”. TDKテクノマガジン (2006年12月). 2010年2月5日閲覧。
- ^ kadour ziani profile
- ^ 2001年8月10日発行「Allen Iverson The ANSWER」日本スポーツ企画出版社
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2001
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2007
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2000
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2006
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2003
- ^ DraftExpress pre draft measurements 1998
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2004
- ^ DraftExpress pre draft measurements 2008
- ^ http://www.ntv.co.jp/mikata/profile/