坂本工宜

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工宜(坂本 工宜)
基本情報
国籍 日本の旗 日本
出身地 滋賀県高島市
生年月日 (1994-08-19) 1994年8月19日(29歳)
身長
体重
176 cm
82 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 投手
プロ入り 2016年 育成選手ドラフト4位
初出場 2019年4月13日
最終出場 2019年4月14日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

坂本 工宜(さかもと こうき、1994年8月19日 - )は、滋賀県高島市出身の元プロ野球選手投手)。右投右打。兵庫ブレイバーズでの登録名は工宜(こうき)。

経歴[編集]

プロ入り前[編集]

祖父が大の巨人ファンだった影響で、小学3年から野球を始める[1]。高島市立安曇川中学校から関西学院高等部に進学。部員約180人の硬式野球部外野手としてレギュラーを目指したものの、公式戦ではベンチ入りすら果たせないまま、系列校の関西学院大学に進んだ。

関西学院大学で投手への転向を志したが、硬式野球部が「高校時代までの投手経験者しか投手として公式戦に出場させない」という方針を取っていたことから、外野手として準硬式野球部へ入部[2]。2年時に投手に転向してからは、ストレートで最速147km/hを計測するまでに成長した。関西六大学準硬式野球のリーグ戦では、4年時の春季にチーム9季振りの優勝へ貢献。最多勝利・最多奪三振・MVPのタイトルも獲得した。

2016年のNPB育成ドラフト会議で、巨人から4巡目で指名。支度金300万円、年俸240万円(金額は推定)という条件で、育成選手として入団した。入団当初の背番号は006[3]

巨人時代[編集]

2017年には、フューチャーズの一員として臨んだ4月12日の対東京ヤクルトスワローズとの非公式戦で実戦デビューを果たした。公式戦での登板機会はなかったが、三軍戦では5勝3敗、防御率2.92を記録。シーズン終了後に台湾で開かれた2017アジアウインターベースボールリーグには、二軍(イースタン・リーグ)公式戦での登板実績がないにもかかわらず、NPBイースタン選抜のメンバーに名を連ねた[4]

2018年には、イースタン・リーグ公式戦で、ヤクルトとの開幕カード第2戦の先発投手に抜擢。その後は、先発・救援の両方で実戦経験を積みながら、通算23試合の登板で3勝4敗、防御率4.85という成績を残した[5]

2019年には、春季1次キャンプを二軍で迎えたが、キャンプ中の紅白戦で好投。育成選手からただ1人、2次キャンプから一軍に合流[6]すると、オープン戦でも開幕から救援で好投を続けた[7]。3月2日には、育成選手契約から支配下選手契約へ移行するとともに、背番号を58に変更することが発表された[8]。3月4日付で、NPBから支配下登録選手として公示[9]。4月13日の対東京ヤクルトスワローズ戦(東京ドーム)で2点を追う8回表に5番手として登板し、これが一軍初登板となった。しかし、田代将太郎に適時三塁打を打たれるなど3者連続適時打を浴び、1回3失点というデビューになった[10][11]。翌4月14日の試合(対ヤクルト)では敗色濃厚の5点差の9回表に6番手で登板し、2安打されながらも1回を無失点で抑えたが、4月15日に一軍登録を抹消された[12]。二軍で23試合に登板し、4勝5敗、防御率3.28という成績を挙げるも[13]再度一軍に昇格することはなく、10月1日、戦力外通告を受ける[14]。11月12日に大阪シティ信用金庫スタジアムで開催された12球団合同トライアウトに参加し、打者3人に対して2三振を奪うなど無安打で抑え込む好投を見せ[15]、「まだまだやれると思っている」と語った[16]

無所属時代[編集]

トライアウト後、どの球団からも声が掛からなかったが無所属のまま、兵庫県西宮市の野球専門施設「ベースボールメディカルセンター」を拠点に練習を続けた[17]。現状ではプロでは通用しないと判断して独学でアンダースローの投球法を習得、独立リーグへの入団を模索した[18]

神戸三田・兵庫時代[編集]

2021年4月28日、関西独立リーグ(さわかみ関西独立リーグ)の神戸三田ブレイバーズに入団することが発表された[19]。登録名は「工宜」[19]。5月9日の対和歌山ファイティングバーズ戦(串本町の総合運動公園 サン・ナンタンランド)で救援として公式戦初登板。同月25日に行われたオリックス・バファローズとの交流戦にも登板し、ともに1回を無失点に抑えた[20][21]。6月11日の対和歌山戦(アメニスキッピースタジアム)で、入団後初めて先発登板したが、制球難から球数がかさみ、3回を投げて被安打8、5失点(自責4)と炎上した[22]。以降は、登板なくシーズンを終えた。

2022年5月12日、古巣・巨人三軍との交流戦(読売ジャイアンツ球場)で、同じく元巨人の折下光輝山川和大村上海斗とともにリーグ選抜メンバー入り[23]。3回に救援登板したが、1回を投げて被安打3、3失点を喫した[24]

2023年4月2日、淡路島ウォリアーズとの開幕戦(キッピースタジアム)で開幕投手として先発登板し、7回無失点で勝利をあげる[25]。昨年まで試行錯誤している段階だった投球フォームが安定し[26]、この年は登板11試合のうち、9試合で先発投手として起用され、リーグの規定投球回に到達。4勝2敗、防御率1.68の成績で最優秀防御率のタイトルを獲得した[27]。11月4日、2024年からウエスタン・リーグへの参加が内定しているくふうハヤテベンチャーズ静岡(当時は正式球団名未発表、仮名称ハヤテ223)のトライアウトに参加した[28]。15日には2回目となる12球団合同トライアウトにも参加し[29]、打者3人と対戦。この日の最高球速は128km/hで、田中俊太に安打を許したものの、ほか2人からは変化球で三振を奪う投球を見せた[30][31]。12月10日、球団公式X(旧Twitter)にて、2023年シーズンをもって任意引退で退団することが発表された[32]

現役引退後[編集]

2024年からは、かつて所属した巨人が運営する幼児から小学生を対象とした野球スクール・ジャイアンツアカデミーのコーチを務める[33][34]

選手としての特徴[編集]

最速149km/hのストレートを武器とする本格派右腕。投球フォームは、2段モーションからやや上体をのけぞらせて角度をつけるオーバースロー[17]。持ち球はスライダーチェンジアップカーブフォーク[35]

巨人退団後、2019年12月にアンダースローに転向[36]。転向後も140km/h前後の球速は出せるようになっている[17]。変化球もオーバースロー時代から減らさないようにした結果、アンダースローとしては非常に珍しいフォークを投げることができ、これを決め球としている[36]。2023年の時点ではクォータースローとも呼ばれる、膝あたりの位置から投球するフォームに落ち着いている[26]

人物[編集]

高校時代の野球生活については、巨人への入団後に「不完全燃焼という感じで、悔しいことの方が多かった。いい思い出はない」と述懐している[37]。しかし、関西学院大学の準硬式野球部へ所属していた3年時に、準硬式野球の関西選抜チームの一員として台湾に遠征したことが転機になった。それまでは一般企業への就職を志していたが、台湾で硬式球へ触れた際に、「硬式球が指にしっかりと引っかかる」という感覚をつかめたという。この遠征を機に、進路をNPBの球団に絞ったため、就職活動から手を引いた[37]

巨人へ入団するきっかけになった2016年のNPBドラフト会議で、東北楽天ゴールデンイーグルスから6位で指名(後に支配下登録選手として入団)した鶴田圭祐(指名の時点では帝京大学準硬式野球部投手)とは、同郷(滋賀県出身)のよしみから連絡を取り合うほど仲が良い[37]

学生時代は自身と同姓・同じ関西地方(兵庫県)出身の坂本勇人の大ファンで、勇人の背番号(6)のレプリカユニフォームを身にまとって、阪神甲子園球場阪神タイガース対巨人戦で巨人を応援したこともある[38]。巨人への入団を機にチームメイトになったため、入団が決まった直後に勇人へ挨拶すると、関西弁で「お前が入ってきたせいで(名前で区別するために)俺が『坂本勇』って3文字になったやん」と突っ込まれた[35]

詳細情報[編集]

年度別投手成績[編集]





















































W
H
I
P
2019 巨人 2 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 12 2.0 5 0 0 0 1 3 0 0 3 3 13.50 2.50
NPB:1年 2 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 12 2.0 5 0 0 0 1 3 0 0 3 3 13.50 2.50
  • 2019年度シーズン終了時

年度別守備成績[編集]



投手












2019 巨人 2 0 1 0 0 1.000
通算 2 0 1 0 0 1.000
  • 2019年度シーズン終了時

記録[編集]

投手記録

独立リーグでの投手成績[編集]





















































W
H
I
P
2021 神戸三田
兵庫
2 1 0 0 0 0 1 0 1 .000 26 4.0 10 0 3 - 1 1 0 1 5 4 9.00 3.25
2022 15 1 0 0 0 0 1 0 3 .000 95 19.0 17 1 20 - 5 13 2 0 17 17 8.05 1.95
2023 11 9 0 0 0 4 2 0 1 .667 193 53.2 36 0 10 - 6 59 2 0 14 10 1.68 0.86
通算:3年 28 11 0 0 0 4 4 0 5 .500 314 76.2 63 1 33 - 12 73 4 1 36 31 3.64 1.25
  • 2023年度シーズン終了時

背番号[編集]

  • 006(2017年 - 2019年3月3日[9]
  • 58(2019年3月4日[9] - 同年終了)
  • 39 (2021年 - 2023年)

登録名[編集]

  • 坂本工宜 (2017年 - 2019年)
  • 工宜 (2021年 - 2023年)

代表歴[編集]

登場曲[編集]

  • 「Beautiful Now feat. Jon Bellion」Zedd(2019年)

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 大学倶楽部・関西学院大:巨人から育成枠で指名 準硬式野球部の坂本工宜投手”. 毎日新聞 (2016年10月23日). 2021年12月30日閲覧。
  2. ^ 【巨人】坂本工宜、準硬式野球と出会い自分が何をすべきか考えるようになった”. スポーツ報知 (2018年5月1日). 2021年12月30日閲覧。
  3. ^ 【巨人】育成4位・坂本、準硬式出身でも「やれるんだ」支配下登録へやる気満々”. スポーツ報知 (2016年10月25日). 2017年4月22日閲覧。
  4. ^ a b 2017アジアウインターベースボールリーグ(AWB)NPBメンバー一覧”. 日本野球機構 (2017年10月19日). 2017年11月2日閲覧。
  5. ^ シーズン成績
  6. ^ 巨人育成の坂本工宜、沖縄キャンプ行き決定 戸根、大城、吉川大、立岡も”. Full-Count (2019年2月11日). 2019年3月4日閲覧。
  7. ^ 巨人・坂本工が1回1/3完全!支配下登録にまた前進”. サンケイスポーツ (2019年2月11日). 2019年3月4日閲覧。
  8. ^ 【巨人】準硬式出身の坂本工宜が支配下契約会見「やってやろうという気持ちは人一倍強かった」”. スポーツ報知 (2019年3月2日). 2019年3月2日閲覧。
  9. ^ a b c 新規支配下選手登録 | 2019年度公示”. 日本野球機構. 2019年3月4日閲覧。
  10. ^ “巨人坂本工宜3失点ほろ苦デビュー「悔しい初登板」”. 日刊スポーツ. (2019年4月13日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/201904130000934.html 2019年11月27日閲覧。 
  11. ^ “【巨人】準硬式出身の坂本工、3失点でホロ苦1軍デビュー”. スポーツ報知. (2019年4月13日). https://hochi.news/articles/20190413-OHT1T50145.html?page=1 2019年11月27日閲覧。 
  12. ^ 出場選手登録および登録抹消 | 公示”. 日本野球機構 (2019年4月15日). 2019年11月27日閲覧。
  13. ^ 2019年度 読売ジャイアンツ 個人投手成績(イースタン・リーグ)”. 日本野球機構. 2019年11月27日閲覧。
  14. ^ 【巨人】坂本工宜に戦力外通告 準硬式出身右腕、異色の経歴持つ育成の星”. スポーツ報知 (2019年10月1日). 2019年10月1日閲覧。
  15. ^ “元巨人・坂本工、トライアウトで打者3人相手に2奪三振とアピール”. SANSPO.COM. (2019年11月12日). https://www.sanspo.com/article/20191112-XJPZVLOW6VIGPBDVWIQLZYVQXI/ 2019年11月27日閲覧。 
  16. ^ “元巨人坂本工宜がトライアウトで2K「まだやれる」”. 日刊スポーツ. (2019年11月12日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/201911120000564.html 2019年11月27日閲覧。 
  17. ^ a b c 桑原幹久 (2020年4月4日). “絶対諦めない巨人戦力外の坂本工宜が下手投げ挑戦 - プロ野球番記者コラム”. 日刊スポーツ. https://www.nikkansports.com/baseball/column/bankisha/news/202004030000289.html 2020年9月28日閲覧。 
  18. ^ 元巨人・坂本工宜、アンダースロー挑戦で再起誓う! 独立から再びプロ入りへ”. サンケイスポーツ (2020年4月3日). 2020年4月3日閲覧。
  19. ^ a b 新入団選手のお知らせ - 神戸三田ブレイバーズ(2021年4月28日)2021年4月28日閲覧。
  20. ^ 工宜(神戸三田ブレイバーズ)-選手名鑑”. 一球速報.com. OmyuTech. 2021年9月22日閲覧。
  21. ^ 広尾晃 (2021年6月30日). “巨人育成ドラ4→一軍で2試合登板→戦力外… “大谷世代”独立Lでサブマリン転向・坂本工宜は「プロをあきらめきれない」”. Number Web: p. 3. https://number.bunshun.jp/articles/-/848649?page=3 2021年9月22日閲覧。 
  22. ^ “元巨人・坂本工宜、独立リーグで初先発…アンダースローに転向、3回8安打5失点”. スポーツ報知. (2021年6月12日). https://hochi.news/articles/20210612-OHT1T51006.html?page=1 2021年9月22日閲覧。 
  23. ^ 【読売ジャイアンツ(三軍)との交流戦についてのお知らせ】”. さわかみ関西独立リーグ (2022年5月5日). 2022年7月2日閲覧。
  24. ^ “【巨人】3軍戦で元G戦士たちが躍動 折下光輝が2安打2打点 投手転向の村上海斗は1回無失点”. スポーツ報知. (2022年5月12日). https://hochi.news/articles/20220512-OHT1T51138.html?page=1 2022年7月2日閲覧。 
  25. ^ 淡路島 vs 兵庫 試合経過-さわかみ関西独立リーグ2023公式戦”. 一球速報.com. OmyuTech (2023年4月2日). 2023年10月11日閲覧。
  26. ^ a b 玉寄穂波「「諦めずにやる」元巨人戦士・坂本工宜の姿勢に胸アツ…」『スポーツ報知』、2023年8月17日。2023年11月7日閲覧。
  27. ^ 【2023年度】個人タイトルのお知らせ”. KANDOK さわかみ関西独立リーグ (2023年9月30日). 2023年9月30日閲覧。
  28. ^ 戦力外の7選手が再起へ、静岡新球団に挑戦 第2次戦力外は39人のまま…4日の去就」『Full-Count』、2023年11月4日。2023年11月3日閲覧。
  29. ^ 【トライアウト】巨人・鍬原拓也は参加辞退 元巨人では田中豊樹、太田龍、保科広一ら8人参加」『スポーツ報知』、2023年11月15日。2023年11月15日閲覧。
  30. ^ 阪神高山俊がマルチ安打 59人が参加 プロ野球12球団合同トライアウト/詳細”. 日刊スポーツ. プロ野球ライブ速報 (2023年11月15日). 2023年11月16日閲覧。
  31. ^ 【トライアウト】元巨人・坂本工宜がアンダースローに転向して参加 2奪三振の好投」『スポーツ報知』、2023年11月15日。2023年11月16日閲覧。
  32. ^ 兵庫ブレイバーズ [@hbs_202112] (2023年12月10日). "【任意引退のお知らせ- ̗̀📣】". X(旧Twitter)より2023年12月11日閲覧
  33. ^ 元木新校長、新コーチ就任のお知らせ”. 読売ジャイアンツ (2024年1月5日). 2024年1月19日閲覧。
  34. ^ 「諦めずに努力すれば、何にでもなれる」 元プロ野球選手・坂本工宜さん、巨人アカデミーコーチに ブレイバーズでも活躍」『神戸新聞NEXT』2024年2月1日。2024年2月6日閲覧(要登録)
  35. ^ a b 【巨人】育成・坂本工宜、強気の投球で支配下登録へ前進 原監督「見事でしょう」”. スポーツ報知 (2019年2月12日). 2021年12月30日閲覧。
  36. ^ a b 19年巨人戦力外の坂本工宜、独立Lで下手投げに転向「必ずNPBに復帰して恩返ししたい」”. スポーツ報知 (2021年6月2日). 2021年6月2日閲覧。
  37. ^ a b c 球界ここだけの話(1375)】“ジュンコー”が熱い! 巨人育成・坂本工、準硬式からプロの道へ 成長の軌跡
  38. ^ 巨人の育成D4・坂本工、坂本勇との対面望む「いろいろ聞いてみたい」”. サンケイスポーツ (2016年10月26日). 2021年12月30日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]