国際的な子の奪取の民事面に関する条約

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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
通称・略称 ハーグ条約
起草 ハーグ国際私法会議
署名 1980年10月25日署名開放(ハーグ)
効力発生 1983年12月1日
寄託者 オランダ王国外務省
条約番号 平成26年条約第2号
(日本について効力発生:2014年4月1日)
言語 英語、フランス語
主な内容 国境を越えた子供の連れ去りへの対応[1]
条文リンク 日本語仮訳 (PDF) - 日本外務省
英語正文 - ハーグ国際私法会議
仏語正文 - ハーグ国際私法会議
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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 [2] (英語: Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction / フランス語: Convention de La Haye sur les aspects civils de l'enlèvement international d'enfants) とは、 子の利益の保護を目的 [3] [4] [5] [6]として、親権を侵害する[7] [8] 国境を越えた子どもの強制的な連れ去りや引き止めなどがあったときに、迅速かつ確実に子どもをもとの国(常居所地)に返還する国際協力の仕組み等を定める [9] [10] 多国間条約で、全45条からなる。日本は2013年5月に国会で承認された[11]ハーグ国際私法会議にて1980年10月25日に採択され1983年12月1日に発効したハーグ条約のひとつである。未成年者が連れ出された国および連れ込まれた国両方が条約加入国である場合のみ効力を有する条約である。

2011年7月28日現在は欧州および北南米の86カ国が加盟している一方でアジアやアフリカの国の殆どは加盟していないが[12] [13][14] [15] 本条約は欧米諸国を中心に作成され調印されたものである。調印当時、途上国出身(特に夫に親権が自動的に与えられる回教国)の夫が離婚後に母親に親権を(半自動的に)与える欧米の家庭裁判所の判決を不服として夫の出身国に略取することが社会問題化しており、これに対応するために条約が作成されたため「子供の元の居住国への迅速な送還」を重点に条文が書かれた。このため、略取先の国の家庭法および略取における両親の個人的な内情などは意図的に一切考察されない。略取先の国は外国の裁判所で親権に対する判断がなされた事実が確認された時点で迅速に強制執行を行わなければならない。しかし非欧米の国と欧米の国の国際結婚の場合は大抵の場合は欧米の国が子供の居住国となっているので実際の執行においては大抵の場合は非欧米国から欧米国に子供を引き渡すという内容となるため欧米の文化圏(欧州、北米、南米)以外の国は日本も含めてほとんど条約に調印しなかった。 近年、批准国は増加しつつある[12]。Wikipedia英語版によれば、2012年末現在で89ヶ国が加盟しており、韓国では2013年の3月より条約の効力が生じる。 近年、国際結婚後、欧米、特に米国に移住した日本人女性が結婚の破綻後に子供を日本に連れて戻った結果、子供を連れ去られた外国人の配偶者が長年に渡り(あるいは半永久的)子供から引き離されて救済手段がないという事態が過去の累計で数百件ほど起こっており、この理由から欧米加盟国から日本の加入が要求されていた。

日本では家族法上子の親権者を夫婦のどちらか一方に決めておかなければ離婚は認められず、子の養育の権利・責任(親権)は母親が引き受ける法判断が定着している(判例では、母親側によほどの問題がない限り、親権は母親に渡されるのが通例である。ただし10歳以上の子が自らの意思で父親を選ぶ場合は除く)。ただし、法律的には母親に親権を与えると明記されているのではなく、単に離婚裁判が起こった時点での子供の居住者に親権を与えるという判断がくだされるだけで、この場合の居住者の大半が母親であるという事実を追認しているにすぎない。一方で欧米の場合は養育者・育児者(Primary Carer)に親権を与える判例が確立しており、この場合に母親が育児を行う場合が多いという一般の家庭事情を反映している。米国やフランスなどでは両方の親に親権が与えられ、他の母親に親権を与える国でも父親の面接権を確保するために母親と子供の(外国への)移住を法的に制限するなど法令が制定されているため、この条約を締結および執行した場合、単独親権制に基く日本の伝統的な慣行(親権を取った母親は父親の同意なく子を移住させて構わないし、父親に認められた面接交通権を実施してなくても問題ない)と衝突して、国内で摩擦を生むこと、現実問題として、日本人の母親が米国などの外国の現地法を犯して子を日本に連れ帰っていることが殆どであり、連れ帰った母親からの非難が予想されたため、加入には消極的であった。しかし、国内外において国際離婚に伴う子の略取問題への関心が高まっていることと、欧米、特に米国の強い圧力などの理由から2011年5月に政府は加盟方針をうち出し [16] [17]、 国内法制との整合性調整等の条約締結へ向けた準備を開始し[18][19]、2014年4月1日から日本について効力が発生することとなった[20]

概要[編集]

この条約は、親権を持つ親から子を拉致したり、子を隠匿して親権の行使を妨害したりした場合に、拉致が起こった時点での児童の常居所地への帰還を義務づけることを目的として作られた条約である(条約前文)。あくまでも子供の居住国の家庭裁判所の権限を尊重するために作られたもので、子供の親権や面接交渉権に関して判断を下すものではないが、条約の執行において結果的に居住国側の法律が優先されて執行することとなる。

子どもが16歳に達すると、この条約は適用されなくなる(第4条)。また拉致された先の裁判所あるいは行政当局は、子の返還を決定するに際して、子が反対の意思表示をし、子の成熟度からその意見を尊重すべき場合は、返還しない決定をすることもできる(第13条2項)。ただしアメリカでは、「子の意見を聞くことは、子の心に負担をかける。親のうち一方を選び他方を捨てる判断を子にさせるべきではない。」との意見から、子は自分の意見を返還裁判で言うことすら許されない運用をされる場合がある[21]

この条約は最終的な親権の帰属を規定するものでなく、あくまでも児童の常居所地国への返還を規定するものであり、親権の帰属については別途法手続きを行うことになる[22]。ただし、親権者が誰になろうが、子は強制的に返還された国から出られなくなる点には注意が必要で、単に裁判管轄を決める条約ではなく、子が生育する場所を最終的に決めてしまう[要出典]という重大な効果を持つことを認識すべきである。

この条約は子の利益を守ることを目的とすると条約前文には記載されている。しかし、もともとは先進国で子供が外国、特に途上国に連れ去られた場合に、その子供を取り戻すことを第一の目的に作成された条約であるため、子供の元の常居国に子供を返還することを第一目的に作られている、[要出典]。子供の福祉に関しては、あくまでも子供の常居国の家庭裁判所の判断が最適であるとの前提で成り立っている。よって条約が実際に子供の福祉を最優先にしているのか、あくまでも調印国の政治的意図を優先しているのか判断が分かれる。しかし国際結婚等で夫婦間が不和となり、あるいは離婚となった場合、一方の親が他方の親に無断で児童を故国などの国外に連れ去ることがあり、それが児童の連れ去られた元の国では不法行為であっても、連れ去られた先の国に国内法が及ばないことから、連れ去られた側が事実上泣き寝入りを強いられる場合でも、常居国の家庭裁判所の権限の事実上の無効化を防ぐために子供を常居国に返還することを目的とするもので、どの国の家庭裁判所の親権や面接権に対する判断が子供の福祉に適するかを判断するものではない。 加入国は2011年6月14日現在85カ国[12]であり、まだ国連加盟国192カ国の半数には達していない。ヨーロッパ、北米、南米、南アフリカ、オーストラリアなどの西洋文化圏の国のほとんどがこの条約を締結している。一方でアジアアフリカ中東のほとんどの国がこの条約を締結していない (締約国を参照)。

日本では、平成23年5月20日に加入が閣議決定されている[23]。(「日本における事案・加入をめぐる議論」の節参照)が、この条約およびそれに伴う日本の家庭法の改訂は実際の運営において子供を連れ去った親(大抵は母親)から半永久的に引き離す結果となる可能性があるなど、個人の家族の営みに直接介入し不可逆な結果に至る場合があるだけでなく、調印国の間でも条文のDV被害に対する不備などのために虐待する夫が出身国に逃れた母親と子供を強制的に連れ戻す手段として悪用している事実が確認されていたり(下記:DV問題)、その他にも日本人女性の配偶者などに子供を日本に連れ去られ、面会交流も実施されず長期間父子の引き離しの被害にあっている親子の問題点(下記「実務上の問題点」参照)などが識者の間でも指摘されており批准の今後の進展が注目されている。

条文[編集]

子の利益[編集]

本条約に基づく子の常住居国への身柄の返還は、原則、子の利益(「子を返還することが子にとって良いことか?」)を考慮することなく行われる[24]。このことに関し、ハーグ国際私法会議が発行するExplanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction Conventionはパラグラフ23で「違法に連れ去られた子の迅速な返還に関して、条約には子の利益を考慮する明文の規定は存在しない」と解説し、その理由として「子の利益は曖昧な概念で法的判断に適さないこと」(パラグラフ21)および、「連れ去られた先の裁判所が子の利益を判断すると、その国の文化的、社会的価値観を反映した子の利益になり、連れ去られた元の国の価値観と会わない」(パラグラフ22)を上げている[25]。しかしながら、現実の事件に当たり「返還することが本当に子のためになるのか」という問を考えずに機械的に子を返還する本条約のシステムに賛同できるかは、本条約に加入する際に考慮すべき点の一つである。
また本条約は、子の利益に関連して返還をしない決定をできる特例を2つ上げている[26]

  • 「子を肉体的、精神的な危害にさらす」または「子を耐え難い状況に置く」重大な危険がある(本条約13条b)
  • 子が返還に反対の意思を示し、子の意見を聞くだけの年齢に達している(本条約13条2項)

「子を耐え難い状況に置く」という特例は幅広い解釈が可能であるが、「子の利益に反する」より限定された極端な場合にしか適用することはできない。
子の意思に関して、何歳から子の意見を聞くべきかについては、条約起草段階でも議論されたが結論が出ず、個別の事案について判断することとされた[27]。 ただし、アメリカでは、「子の意見を聞くことは、子の心に負担をかける。親のうち一方を選び他方を捨てる判断を子にさせるべきではない。」との意見から、子は自分の意見を返還裁判で言うことすら許されない運用をされる場合がある[28]
なお、この2つの特例は「裁判官が返還を命じなくても良い」特例であり、子の権利として「返還を命じられない」というものではなく、返還を命じるか否かは裁判官の裁量である。このため、十分意思表示できる子が明確に返還に反対の意思表示をしても、返還されない保証はなく、裁判官が裁量で返還を命じた場合にはそれに従わざるを得ない。また、返還されると子に危害が及ぶ場合でも、返還されない保証はなく、裁判官が返還を命じれば、子は命令に従わざるを得ない。こういった点にも本条約の子の利益を軽視する体質が出ている。
日本における法制審議会の議論でも、「子に対する危険(DVなど)や、子が返還を拒否している場合など、条約上の返還拒否事由がある場合、返してはならないと国内法を整備すべきだ」という意見に対し、「外務省の意見」ということで「条約上返還拒否事由がある場合でも、国は子を返還させることができるように法律を作る」という意見が出され、了承されている[29]

運用面の実態[編集]

ハーグ国際私法会議の事務局はProfessor Nigel Loweに依頼して、2003年における運用実態をまとめたレポート「2003年に行われた1980年10月25日ハーグ条約に基づく申請の統計分析(A statistical analysis of applications made in 2003 under the Hague Convention of 25 October 1980 on the Civil Aspects of International Child Abduction (PDF) )」を2008年に公表(アドレス)している。調査は条約締結国に報告を求める形で行われている。

それによれば、2003年に行われた申請は全世界合計で、子の帰還に関するものが1259件、面接交渉に関するものが238件であった。 子の帰還に関する申請では、子を連れ去ったとされる者は、母854件(68%)、父367件(29%)、親族25件(2%)、その他7件(1%)であり、圧倒的に母が多い。父母で97%を占め、本来この条約は営利誘拐などにも適用出来るはずのものであるが、「離婚の後始末条約」的実態が色濃く出ている。

国別では、訴えられた国では、1位アメリカ286件(23%)、2位イギリス142件(11%)、3位スペイン87件(7%)、4位ドイツ80件(6%)、5位カナダ56件(4%)となっている。訴えた国では、1位アメリカ167件(13%)、2位イギリス126件(10%)、3位ドイツ107件(9%)、4位メキシコ105件(8%)、5位オーストラリア75件(6%)と、アメリカの突出ぶりが目立ち、同国での親権侵害の常態化が伺える。

申請の結果については、子の帰還となったもの(自発的帰還を含む)628件(50%)、帰還が認められなかったもの413件(33%)、審議中113件(9%)、その他87件(7%)となっている。

年間の全世界での申請数がわずか1259件というのは、費用の面(各国が中央捜査機関Central Authorityを維持する費用、条約事務局を維持する費用など)を考えると、1件当たり非常に高価なものになっていると思われる。

連れ去りが子どもに与える影響[編集]

連れ去りにおいてもっとも心理的に悪影響を及ぼすのは、親による子の奪取が犯罪となっているアメリカなどの国で、親が子供を奪取した結果、子供が逃亡生活を余儀なくされる場合である。子どもから見て、連れ去った親は、唯一の情報源である。しかし、子どもは、連れ去った親に「父親は死んだ」とか「母親はもうお前のことを愛していない」とか、嘘をつかれることが多い[30]。子どもは、片親に会う機会を奪われるだけでなく、唯一の扶養者である立場を利用したマインド・コントロールにより、他の親への精神的なつながりも消去される[31]

しかし、離婚後に子供の事実上の育児者である母親が事情をちゃんと説明した後で子供を母親の国に連れ去った場合には、大半の子供は「仕方ない」との意見をおべており、親の離婚を経験する子どもとして当たり前の感想が述べられ、上記のような過激な結果は見られないことがイギリスにおける子の国際的奪取を専門とするNGOであるReuniteの調査で確認されている。[3]ただし、このNGOでも子供がハーグ条約に調印していない国に連れ去られた場合でも夏休みにもう片親の国で過ごせるようにするなど、両方の親との接触が維持されるのが最善であると結論している。

子供の略取に大きな害が確認されているのは親による子の奪取が犯罪となっているアメリカで、この場合、連れ去る親も必死であるため、子どもは、連れ去った親に「母親は死んだ」とか「母親はもうお前のことを愛していない」とか、嘘をつかれることが多い。子供は連れ去った親と、法の目をかいくぐりながら引越しを繰り返し、偽名を使っての生活を余儀なくされる。子どもは、玩具、ペット、友人、先生、学校、慣れ親しんだ遊び場、行きつけの店を失う[31][32]。また、日々の日課、安全の感覚を失う。祖父母やいとこや、片親の文化を失う。会いたい親に会わせてもらえないことにより、同居親との信頼関係も失う[33]。子どもは、自分を最も愛してくれる人を失って、嘆き悲しむ[34] 。とくに、親による奪取が犯罪として扱われるアメリカでは、当然として逃亡生活を余儀なくされ、このような過激な状態での子供の環境は劣悪である。連れ去られた子どもは、その後、人から見捨てられる不安を持つ。また、人間関係を信頼することが困難になる。また、抑うつ症状、孤独感、過度の恐れ、惨めさ、怒りを持つ場合がある。連れ去りによってしばしば子どもに引き起こされる精神的障害は、分離不安、ADHD、PTSD、摂食障害、学習障害、行動障害などである[35]。連れ去った親は、子どもをかくまい、隠匿する。小さい子どもは、会えない時間が長くなると、残された親のことを次第に思い出せなくなる[36]。たいていの場合、子どもは、連れ去った親により、一人の意思を持った人間として尊重されるのではなく、交渉を有利に進めるための道具、仕返しのための道具として使われる[31]。子どもを他の親から引き離すのは、子どもの利益を第一に考えるからではなく、怒って仕返しをするためであることが多い[37]

また、子供に対する愛情よりも、単に、一方の親に対する当て付けとして子供を連れ去るという場合には、子どもを連れ去った後に、子どもへの虐待が多く行われる事例が報告されている[37]。連れ去った後で23%の親が、子どもへの身体的虐待をしていたという調査がある[38]。連れ去った親にとって、就職や新しいパートナー探しをする上で、子どもの存在が邪魔になることがある。子供の略取虐待の公的統計や病院の集計において、虐待者である比率が最も高いのは、同居の母親である。連れ去った親にできた新しい相手は、子どもに多くのお金が出費されることに賛成しない場合がある。子どもは、新しい相手から性的虐待を受ける場合がある。いくつかの動物では、新しい相手により子殺しが行われる。子どもは、連れ去りにより、誰の目も届かない状況に置かれる[39]。子どもは、誰の助けも無い状態で、自分を連れ去った親や、その新しい相手と対峙しなければならない。連れ去った親が、子どもを他の親に会わせないのは、子どもを大切にしていないなど、会わせられるような状況ではない場合がある。子どもはお金を持っていないので、子どもの権利を守ろうとする人は少ない。子どもは同居親に対して、強い怒りを覚えることがある。しかし怒りは、別の親に向かうこともある。子どもの目から見れば、非同居親は、会いに来てくれず、自分を探してくれないのであり、見捨てられたように見える。また、怒りは子ども自身に向かうこともある。子どもは、離婚は自分のせいで起きたと誤って思い込んでいることが多い。連れ去られた子どもの抑うつ症状や自殺は、まれなことではない[33]。連れ去られた子どもの心に与えられた打撃は、長く子どもの心に残る[34]

連れ去りは、最も悪質な児童虐待とする意見が北米では多く述べられ[33][37][39]、これらの国では、重罪として処罰されているが、逆に他の国では、普通に子供が母親の側に引き取られる場合は子供にそれほど心理的悪影響が及ばないことが確認されている(上記のイギリスのNGO調査)だけでなく、夫の虐待から逃れるために子供を連れ去る母親が多いとの事実が十分認識されており、親による子供の連れ去りを犯罪化すると、逆に子供に深刻な害が及ぶとの意見があるためにこのような立法は行われていない。

日本における事案・加入をめぐる議論[編集]

菅政権は、ハーグ条約に加盟することを念頭に、国内法の骨子案を作成した[40]。2011年5月20日に加盟が閣議決定されている。

国際結婚が破綻(はたん)し、一方の親が自国に子どもを勝手に連れ帰った場合に元の国に戻すことなどを定めた「ハーグ条約」をめぐり、米国のキャンベル国務次官補が2010年2月2日、都内で記者会見した。日本が同条約を締結しない理由として、家庭内暴力(DV)から逃れて帰国する日本人の元妻らがいることを挙げていることについて「実際に暴力があった事例はほとんど見つからない。相当な誤認だ」と語った。  同次官補は「大半は米国内で離婚して共同親権が確立しており、これは『誘拐』だ」と強調し、「解決に向けて進展がないと、日米関係に本当の懸念を生みかねない」と語った。 日本人女性による子の連れ去りがDVであるという主張にたいしては疑問がある。外国人配偶者によるDVで子供を連れ去りをしないと危険が切迫している状態なら、現地の警察、日本人大使館に逃げ込むなど、緊急の行動が必要なのに、わざわざ準備期間が必要な日本国への連れ去りを選択するのはなぜだろうか。準備期間中に、DV被害が拡大する可能性がある。 日本人女性による子の誘拐事案がDVから逃れるためだという主張は当事者やその周辺の人間の言い分であり客観的に証明できる資料を日本国民には公開していない。その状態を、キャンベル国務次官補は、「子どもと切断されて、さらに虐待や暴力の濡れ衣まで着せられていることは、非常に痛ましいことだ」と表現している。[41]。しかし、ただし、DVはもともと家庭内で行われるため客観的証拠を示すこと自体が難しいものであり、各国の複数の報告書で実際にDVを逃れて子を国に連れ帰る母親が多く、本条約ではDVそのものが存在しても夫が子供に対して危害を加えているという明確な証拠がない限りは強制送還を行はなければならないことは条約の調印国の間でも問題となっている。(下記「DV暴力の問題」参照)

またこれは、アメリカの観点から日本のDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)の違いを指摘している。ハーグ条約締約国の中でもアメリカでは特にDVを刑法で対応しようとしているのが特徴である。[42]。 それらの国では、DVの疑いがあるとの市民の通報で、すぐに拘束され取り調べられる。DVが立証されれば、刑事罰が与えられるのである。しかし、DVは家庭内で行われるので「推定無罪」を原則とする刑事事件での立件そのものが非常に難しい物である。このため、刑法での対処であると大半のDVが何の対処もされず長期化するか、深刻な傷害や手遅れの殺人に至った段階で介入が行われるという悲惨な事態に陥る可能性が高くなる。そのため日本も含め他の先進各国では、明らかに傷害罪が確立する場合は既存の刑法で対処するにしても、DVにおいては刑法よりも、DVの被害者が加害者から離れることを容易にする環境を行政が提供することが優先される。[43]日本のDV防止法が民事法であり、このようにあくまでも女性に言い分だけで行政からのサポートが受けられるのはこのためである。(ただし、これが行政によるDV認定としてDV冤罪との言葉も生まれているが、もともと日本にDV法は刑法によるDV対応の不備を埋めるためにあるためDV保護申し立て=DV認定=DV有罪という社会的認識に問題がある)

DVに関しては調印国の間でも問題になっておりハーグ条約調印国の間で出された報告書に記載されている調査書の第3項によればハーグ条約の執行申請事件の368件のうちの54%においてDVの存在が確認されておりその中で34%の残された側の親(夫)は暴力を認めているかあるいは以前に暴力行為を行ったとの疑いが持たれている。またオーストラリアで行われた国内での奪取も含めた問題に関する全国調査では奪取の6%は暴力を逃れるためであったとの結果が報告されている。[4]さらに追記(Annex)において「報告書で指摘された重要事項」(Key issues raised by the Report)の4項において、報告書の調査における母親達は「深刻な身体的および性的暴力および人命を危うくするような夫の行動を経験した後に自分及び子供の命が危険に晒されていると結論するに至った」だけでなく、そのうちの40%は条約の執行において決定的な判断材料となる居住国そのものが夫による強制あるいは欺瞞による結果であり、また夫から別居および子の親権を獲得したあとでも、居住国にとどまっている間は夫からの執拗なストーカ行為および暴力の被害にあっていることが確認されている。さらに同章の第5項においてこれらの被害者は居住国において何度も公式および非公式の救済措置を求めるが効果がなく、いくつかの場合には逆に虐待する夫に有利な措置が取られた件が報告されている。6項において、アメリカの多くの州では母親の身の安全に特に感心はなくこれらの母親がDVの被害者である場合も過半数の場合は強制送還が執行されており、さらに12件中7件の場合は暴力を振るう父親の方に子供が引き渡される結果になったと記述されている。[44]

日本で離婚を経験し、子供の親権を失い、日本で家族法の改革運動を行なっているコリン・P・A・ジョーンズ氏は著書で[45]の中でDVに関する問題について次のように述べている。
(1)もちろんDVが要因であるケースもあるはずだが、「ほとんど」という部分は統計等の裏づけがなく、主張だけが一人歩きしている。
(2)何もかもがDV・虐待にされる今の日本では、探せばすべての夫婦・親子関係において"男性からの暴力"を見つけ出すことが可能だろう。どんな些細なことでもDVと言うならばこの主張は間違っているわけではないが、それに意味があるのだろうか?
(3)この主張を受け入れるとすれば、日本より充実したDV等の防止・被害者救済の諸制度が整っている可能性のある子供の常居所国の事情を、場合によっては完全に無視する必要がある。
(4)また、DVから逃れるために、日本人が外国から子供を連れ去るのを認めるとするならば、同じ理由で日本から外国人が子供を連れ去っても認められるべきなのでは?
(5)DVは世界の中で日本人特有の問題ではないが、他の86の国と地域が条約を批准できているのはなぜなのだろうか。


ハーグ条約の批准については、国内で賛成派と反対派が対立しているが、反対しているのは主に女権団体および日本人で子供を外国から連れ帰った女性を受け持つ弁護士およびハーグ条約のDV関連の条文の不備を指摘する学者達である。賛成しているのは日本人の母親に子供を連れ去られた外国人の父親、および彼らの政府による外圧と外交問題の解決に積極的な日本の外務省、またハーグ条約による恩恵を受けることはできないが、日本がハーグ条約を調印することによって日本の家庭法が条約に近いものに改正されるのではないかと期待する日本で面接権獲得運動を行なっている父親の団体や連れ去りにあった母親の団体などである。

これについてはハーグ条約とも法的理論において密接な関係がある、離婚後の親子関係を重視する制度(離婚後の両親の法的権利を同等とする共同親権制度や、面会交流権、その延長である、実質的養育を両親それぞれが別に担う共同養育、共同監護と呼ばれる並行的な養育制度、これらを法的に担保する養育計画の強制策定制度等がある。)の導入に当たり、賛成を表明していた日本弁護士連合会が、司法制度改革によって弁護士の数が激増した後、一転して反対に転じた経緯から、これらの制度導入により離婚紛争が円満に解決され、弁護士の業務量が減少することを恐れているのではないかとの指摘があるが、これは見当違いである。[要出典]アメリカでは面接権も養育費も家庭裁判所が両者がその判決に納得しているかとは関係なしにその判決を強制できる。このため父親と母親がお互いに多額の弁護士費用をかけて家庭裁判所で争わなければならない。日本においては家庭裁判所はもともと強制力がなく、調停が原則なのでこのように多額の費用を使う理由が少ない。日本の家事審判の調停は前提主義に過ぎない。養育費と面会交流は、調停が乙類なので、不成立の場合は審判になり、判決が出される。調停成立での調停証書、もしくは審判決定での審判書があれば、養育費は強制され、未払いの場合は申立により、給料などの差し押さえも可能になる。しかし面会交流については、債務名義の文言があっても、子供を差し押さえて、面会交流を実現することは不可能であり、間接強制にとどまる。日本の家庭裁判所の実務は、調停が成立した後は、養育費については強制力があるのに、面会交流については、強制できない状態である。養育費だけを支払い、子供には会えない状態にもなることもある。また日本の家庭裁判所の面会交流の判例では、DVなど、子供や配偶者に暴力を振るっていなくても、直接的な面会交流を認めずに、写真送付のみの決定と言う判例もある。

2009年10月には福岡県柳川市で、アメリカ日本二重国籍の男性が子供を母親から略取し、アメリカの領事館に逃げ込もうとしたところを未成年者略取の容疑で警察に逮捕される事件が発生した [46]。 報道によると、男性は妻の父親の援助で[47] 九州大学の医学博士を取得[48]した後に結婚、日本に帰化、日本で東京証券取引所マザーズに上場している製薬関係のベンチャー企業[49]の社長になるなどしていたが、アメリカの大学時代のガールフレンドと不倫の挙句[50]復縁するために[要出典]日本に家族を残し渡米。妻と子供たちがその後を追ってアメリカの空港に到着した翌日に離婚を申請[51]。訴訟において、財産の半分と私養育費も支払う代わりに母と子はテネシー州内に滞在し、子が年に4か月間父と暮らすこと、父母のどちらかが子と州外に引っ越す場合は事前に相手に連絡し同意を得ることなどが裁判所の調停で定められた。男性は離婚の裁定が出た1か月後に同じように離婚した愛人と結婚している[52][53][54][55][56][57][58]。その後母親が裁判所における取り決めに反して無断で子どもを日本に連れ帰ったため、テネシー当局は母親の逮捕状を発行している。[5]

逮捕された父親は罪を認め反省を示したため、起訴されなかった。このケースにおいて、もし日本が条約を批准していたとしても、子のアメリカ滞在が短いため、常居所地がアメリカと認定されるとは限らず[59]、子がアメリカに強制的に送還されて問題が解決するとは限らない。さらに、条約を批准していない現状においても、父親から子の引渡しを求める法的手段は存在するため[60]、この例をもって条約の必要性を言うには疑問がある。
その後、父親が元妻に損害賠償を求めた民事訴訟で、米テネシー州の裁判所は、慰謝料など610万ドル(約4億9000万円)の支払いを元妻に命ずる判決を下した。[61]

これらの事案とは逆に、外国国籍を有する親によって子供が日本から外国へと連れ去られる事件も発生している[62]

近年この問題への関心が高まっており、欧米においては条約未締結国である日本が問題を放置しているとして批判されることが多い。

2009年3月にアメリカのヒラリー・クリントン国務長官は、中曽根弘文外務大臣(当時)にハーグ条約加盟を要請し、中曽根外務大臣はこれに対して前向きに検討することを約束した[63]

2009年10月、ハーグ条約締約国であるアメリカおよび西欧諸国の大使は共同で日本政府に対して条約締結を要請した[46]民主党現政権の岡田克也外務大臣(当時)もこの要請に対して「前向きに検討する」と回答している。外務省に「子の親権問題担当室」が設置された[64]

2010年8月14日日本政府は、ハーグ条約を翌年に批准する方針を固めた[65][66]

2010年9月29日、アメリカ下院は、子どもの連れ去りは拉致であるとして日本を非難する決議を行った[67][68]

2011年1月10日日本政府は、ハーグ条約の締結に向け、月内にも関係省庁による副大臣級の会議を設置する方針を固めた。[69]

2011年1月には、フランス上院が早期批准を促す決議を行った[70]

2011年2月2日、外務省は2010年5月から11月まで行った「条約加入の是非についてのアンケート」の結果の概要をホームページで公開した。11月までに64件の回答があり、締結すべきとするものが22件、締結すべきではないとするものが17件だった[71]。なお、この「アンケート」は郵送式や電話式のものではなく、外務省のホームページ(当時のアドレス(リンク切れ))上で「国際的な子の移動に関する問題の当事者となった経験者」に記入を呼びかける形式のもので、本当に当事者であったかは確認できないうえ、広報があまり行われていなかったので知らなかった当事者も多数いると思われる。日本国外では「誘拐」と扱われてしまうケースもあるが、子供をDVから保護するため、加盟には与党である民主党も含めて慎重論も根強い[72]

2011年4月米国で離婚訴訟中に長女を日本に連れ帰った日本人女性が、2011年4月にたまたまハワイに行った際に米国司法当局から身柄を拘束された。この事件については、2011年11月23日に米国ウィスコンシン州の裁判所で、30日以内に母親が米国の父親に長女を引き渡すことで正式な司法取引が成立した。この母親は、ニカラグア出身の米国籍の男性(39歳)と2002年にウィスコンシン州で婚姻し、2人の間には長女(9歳)が誕生した。しかし、2人の夫婦関係は悪化し、2008年に男性は同州の裁判所に離婚訴訟を起こしたが、その直後に、日本人女性は男性のDVがあったなどと主張して、日本に長女を連れて帰国した。同州の裁判所は、2009年6月に、離婚を認めるとともに、男性を長女の単独親権者とすること、直ちに長女をアメリカに連れ戻すか、日本で男性に長女を引き渡すことなどを命じ、この判決が確定した。これに対して、女性も、兵庫県で離婚と親権者の指定・養育費の支払いを求める裁判、親権者の変更を求める裁判を日本において起こしており、日本では母親に親権が認められ、米国人男性が争っていた。[73]子ども連れ去り問題に長年取り組んでいる米共和党のクリストファー・スミス(Christopher Smith)下院議員は、この事例について「問題解決へ向け迅速に行動する必要があると、改めて日本政府に警鐘を鳴らした」事例だと指摘している。[74]

2011年7月28日、米国国務次官補キャンベルは、下院外交委員会において「日本の対応は遅い。アメリカ合衆国の忍耐にも限度がある。」と述べた[75]

2011年10月、日本の法務省はハーグ条約受け入れのための国内法の原案を作成し、一般からの意見を公募した。法務省の原案は、子どもの連れ去りが暴力的な配偶者から逃げる目的であった場合や、連れ去った親が誘拐について訴追される恐れがあるような場合には、子どもを返還する必要がないとしている。これに対して、アメリカ合衆国、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの6か国政府は、共同で意見書を提出した。
Japan Timesは、6か国政府の意見書において「法務省の原案はハーグ条約から外れるものである。子どもを返還しなくて良いのは、返還すれば子どもに重大な危険 grave risk が生じる場合だけであり、配偶者の暴力などは、これに該当しない。」との意見書を提出した。[76]後日、法務省から公表されたパブリックコメント[77]はこれに関する記述はない。日本ではあくまでもDVが存在する場合は強制執行を停止するのが可能であるとの建前で条約調印が推進されているが、これは実際の条約の条文ではあくまで子供に「深刻な危険」を及ぼすDVだけが有効な拒否理由であり「深刻な危険」とみなされない軽度の虐待(各国の解釈によれば躾)、(元)配偶者に対する「深刻な危険」はこの範疇には含まれない。憲法上、条約は国内法よりも上位の法規範であるため、DV対策でどのように国内法を整備しても条約に抵触する内容はその限りで無効となる。ドメスティックバイオレンスと条約上の返還拒否の関係については、ハーグ条約事務局の文書[78]によれば条文に母親の保護のことは最初から記載されていないためドメスティックバイオレンスが拒否事由になるのはあくまでも夫の妻に対する暴力が子にも及び、さらにそれが条約に記入されている「深刻な危険」と認定できる場合だけである。この判断に関する条約加入国各国の裁判官の判例はまちまちである。報告書の132項で条約には子供の親に対するDV暴力からの保護が明記されていないことが条約の限界であると指摘されている。さらに追記(Annex)において「報告書で指摘された需要事項」(Key issues raised by the Report)の4項において、報告書の調査における母親達は「深刻な身体的および性的暴力および人命を危うくするような夫の行動を経験した後に自分及び子供の命が危険に晒されていると結論するに至った」だけでなく、そのうちの40%は条約の執行において決定的な判断材料となる居住国そのものが夫による強制あるいは欺瞞による結果であり、また夫から別居および子の親権を獲得したあとでも、居住国にとどまっている間は夫からの執拗なストーカ行為および暴力の被害にあっていることが確認されている。さらに同章の第5項においてこれらの被害者は居住国において何度も公式および非公式の救済措置に頼るも効果がなく、いくつかの場合には逆に虐待する夫に有利な措置が取られた件が報告されている。6項において、アメリカの多くの州では母親の身の安全に特に感心はなくこれらの母親がDVの被害者である場合も過半数の場合は強制送還が執行されており、さらに12件中7件の場合は暴力を振るう父親の方に子供が引き渡される結果になったと記述されている。[79]。さらに、25の判例では条件付きで返還が認められているが報告書の107項によるとその条件の内容も母親の飛行機代を払う、あるいは米国では犯罪である子供の奪取に対する母親の告訴を取り下げ母親が子供と一緒に帰国することを可能にするなどドメスティックバイオレンスからの子および親の安全を確保するものと無関係なものも多く、また実際に母親との接触を禁じるものもがるが当然これらの条件を執行する権限は変換先にありこれが厳守される保証はない。[80]、「配偶者の暴力などが返還拒否事由に該当する」というのは子供に深刻な危険が認められる場合に限られている。同志社大の教授でアメリカの弁護士資格を持つ COLIN P. A. JONES氏はJapanTimes紙で” the prevailing view has been that this means children should not be returned to war zones, famine conditions or other extremely harmful environments — claims of domestic violence, however, should be left up to the legal system of the country from which the child was abducted, just like child custody issues.”と述べ、内戦や飢饉などの特別な事情のみが考慮されDVは送還拒否の理由にならないとするのが支配的意見だと主張している。DVはあくまでも子供に危険が及ぶとの判断が可能な場合は返還拒否事由となるが母親に対する危険は拒否理由にならないのは実際の条文にこれに関する項目が存在しないことからも明らかである。この問題を扱った海外の法律家の論文において、残酷なDV被害の存在の明らかであるにもかかわらず強制送還が執行され母親が子供のために虐待を覚悟してまで夫も元に戻った例が書かれている。[6]
2012年2月、法制審議会がまとめた法律要綱に対し、子の利益の観点から懸念が表明されている。

法的問題点[編集]

子に対する強制執行の問題[編集]

条約に加入するためには、子を連れ去って来た者から子を強制的に引き離し、外国に移送する法手続きの整備が必須である。しかし、「運用面の実態」にあるように、連れ去って来た者は大多数が母親であるため、このことは、裁判所の命令で同居する母親から子を引き剥がし、外国に送ってしまうということになる。特に米国では子の奪取が刑法で罰せられるため、自動的に母親が親権を失うだけでなく、母親は米国に戻れば犯罪者として処罰を受けることになるため、日本国内では一部に感情的な反発が見られた。 現行法では、人の引渡しの直接強制は、

  1. 民事執行法の動産執行を準用する方法[81]
  2. 人身保護法に基づく方法

の2種類がある。1の方法は、物に対する動産執行を人に準用する所に根本的な問題が存在する。2の方法は、最高裁判所第三小法廷平成5年10月19日判決平成5(オ)609号で人身保護法が適用されるのは「違法性が顕著である」ことが示された場合のみであることから、一般の場合に使えるとは限らず、本条約のケースを全てカバーすることはできない。このため、条約に加入するには、法改正が必要であるという主張もなされた。

本国法主義と住所地法主義の対立[編集]

日本では子の親権の問題については、子の国籍国の法である本国法(lex patriae)を適用する本国法主義[82] を基調としている。これに対し、アメリカなどでは住所地法(lex domicilli)を適用する住所地法主義を基調としている。

本国法主義では、どこに住んでいるかにかかわらず本国の法律が適用されることになる。「住んでいる国の法律に従うのは当然」などと言われるが、本国法主義ではそうはならない。日本が親子関係について本国法主義を取っているのは、親子関係は極私的な問題であり、住んでいる国の秩序に与える影響は少なく、当事者の伝統風習を反映した本国の民法を優先すべきであり、それが子利益の保護につながるという考えのためだからとされる。このため、日本の裁判所は、外国人の親子関係については、外国法を使って裁判をしており、韓国法や中華人民共和国法を準拠法とする判例も多数存在する。

外国にいる日本国籍の子の親子関係については、日本法が適用されるべきであり、相手国が本国法主義の国であれば、矛盾は生じない。しかし、相手国が住居地法主義の場合、日本法を無視して住所地法を適用してくる可能性が高く、そういった裁判は日本から見れば法の適用を誤った裁判であり、容認できないものとなる。相手国の裁判所が日本法を無視することが予想される場合、本条約に基づき子をその国に送ることは、容認できない裁判を自ら招来しているものであり、矛盾した行為である。本条約加入により、本国法主義を一部修正したことになるという解釈もあるが、整合性が取れない体系になってしまう。

親権の所在の問題[編集]

一方の親から本条約による子の返還の申し立てがあった場合、「そもそも返還を請求した親に親権があるのか」という点が問題となる。親権の存在は本条約3条の「違法な連れ去り」の前提になり、また親権がないことは本条約13条(a)の返還拒否の理由となる。
例えば、米国人の男と、日本人の女が米国内で結婚し、共に米国内で生活し、子(日米二重国籍)を産んだ後、離婚し、子の親権は共同親権となった後、日本人女が子を日本に連れ帰ったとする。この場合、親子間の法律関係の準拠法は、次の法律に従い決められる。

法の適用に関する通則法(平成十八年六月二十一日法律第七十八号)
第32条(親子間の法律関係)  親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。
第38条(本国法)  当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。

この例では、子は日米二重国籍なので、本国法は第38条ただし書きにより日本法となり、母親の本国法と一致するため、両親と子の3者間の法律関係の準拠法は日本法が適用される。(なお、第32条は「両親と子の3者の準拠法を1つに決める」という趣旨で、「父子間の準拠法、母子間の準拠法を別々に決める」という意味ではない[83][84][85]。)すると、日本法では離婚後の共同親権は認められないため、米国での共同親権の決定は違法となるため無効となってしまう。この場合に返還請求をした米国人男に親権があるかが問題となるが、「先に親権者の指定が行われないと返還請求できない」という考えや、「親権者の指定がないので、婚姻中の共同親権が暫定的に残り、返還請求できる」という考えなど、非常に微妙な問題となってしまう。もし裁判所が前者の考え方を取れば、返還請求は認められないことになる。

転居の自由との衝突[編集]

転居の自由日本国憲法第22条で認められている基本的人権である。しかし、アメリカなどでは離婚の際、両親の面接権を確保するため、親権のある方の親の転居を禁止、ないし著しく制限することが通例である(例えば転居をする場合、裁判所の許可を必要とするなど)。 このようなアメリカの裁判所の決定は、日本国憲法に照らせば基本的人権の侵害であり、違憲・無効(日本国憲法第98条)であるという極端な考え方も一部にはある。 しかし、アメリカの裁判所の決定の効力については、日本の裁判所に判断が委ねられている。[86]。 また、母親は子を伴わない限り、何ら制約なく自由に移転できるのであり、親権を放棄しさえすれば、もはや外国政府には母親の移動の自由を制約すべき何らの動機もなくなる。要するに、母親は子に対する親権・監護権と、自らの転居の自由の間で選択を迫られているに過ぎない。権利の行使(この場合、監護権を保持したままの転居)が、他人(父親)の権利(面接交通権など)を侵害するのであれば、その権利行使が制約されるのは、日本国憲法に限らず、およそ近代憲法の原則に照らしてもごく当然のことである、との反論がなされよう。

また、本条約の子の出国を違法とする条項は、児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)10条2項に定める子及び親の出入国の自由に違反するという考えもある[87][88]。子供の権利条約第10条2項は、親と子が会うために、親および子が自由に国境を越えて出入国する権利を定めており、本条約が子の国境を越えた移動を禁止する考えと相容れない。児童の権利に関する条約を批准していない国は、全世界でアメリカとソマリア南スーダンの3国だけで、他の193カ国は条約を批准している。

実務上の問題点[編集]

在留資格との不調和の問題[編集]

離婚後共同親権制を取る国で生活していた夫婦のどちらが外国人で、離婚に至り、かつ父母が子の親権や居住地について合意できなかった場合、当該国で外国人である親は離婚により在留資格を失うにも拘らず、合法的に子を出身国に連れ帰ることが出来ず、犯罪を犯して連れ帰った場合も本条約により連れ戻され、結局、子と引き離されてしまう結果になるという問題がある。
これは、「国内で未成年の子を養育する外国人親」に対し特に在留資格を与えない移民政策を取るアメリカにおいて、特に問題を顕在化させやすい。例えば、H-1Bビザ(専門職職業ビザ)でアメリカ国内に滞在する非米国人と日本人がアメリカ国内で結婚し、日本人はH-4ビザ(Hビザの家族のビザ)の資格で共にアメリカで結婚生活を送り、子が生まれた後、子の居住地について合意のないまま離婚した場合、日本人の母親は、本条約により米国人の親の同意がない限り、アメリカ国外に連れ出せなくなるが、日本人の親は離婚によりH-4ビザを失うので、子をアメリカに残しアメリカから退去しなければならなくなる。[89]また、H-1Bビザを持つ者同士がアメリカで結婚し、子が生まれた後離婚した場合、失業してH-1Bビザを失った段階で、子をアメリカに残し親はアメリカを出国しなければならない。 これは、外国人から見ると酷なように見えるが、米国政府にとっては、連邦議会の定めた法律に則って適正な出入国管理を行いつつ、自国民の法的権利(離婚後共同親権に基く面会権など)を守るという基本的な責務を果たしているに過ぎない。そもそも、外国人が在留資格を失った途端に国外追放となるのは、離婚にも米国にも限られない。日本政府が自国民の利益を保護するためには、現地の移民政策・離婚などに関する法制度を熟知しないまま、国際結婚などで軽率に移住すると、重大な不利益をうけることがあることを啓蒙する以外に対策はない。

経済的不利益の問題[編集]

上記の場合でも、外国人の親が他の在留資格を確保していれば、引き続き親権を行使できるが、親権を行使するには居住国から移住できなくなる。外国において働き、生計を立てて子を養育することは、言語能力の問題、文化風習の違いの問題、在留資格(ビザ)による就労制限、社会的な外国人差別などにより、困難を伴い場合が多く、出身国で働く場合に比べて受け取る賃金が低くなることも稀ではない。特にアメリカでは、「雇用において自国民を外国人より優先することを違法としない」という外国人差別を是認する法律があり[90]、事態は深刻である。自らが経済力を持ち得ない国で婚姻し子を養育することにいかなるリスクが伴うかを十分認識し、国際結婚などによって移住する際には慎重の上にも慎重を期すよう自国民を啓発することが各国政府に求められている。

返還後の子の監護者不在の問題[編集]

本条約で子が常居所国に返還された後、誰も子を監護をせず、子が施設に入れられるケースが発生し問題となっている。 オーストラリアで暮らしていたオーストラリア人とスイス人の夫婦(Mr. Russell Wood and Mrs. Maya Wood-Hosig)の事件(Wood事件と言われる)で[91]、オーストラリアで離婚後、スイス人の元妻が10歳と8歳の子をスイスに連れ帰り、本条約により子はオーストラリアに返還されたが、オーストラリア人の元夫は子を引き取ることが出来ず、子はオーストラリアの施設に入れられてしまったという事件である。その後、スイス人元妻の訴えにより、子はスイスの元妻に再度返還されている。
このケースなどは、本条約が「どちらが子にとってより良い環境か」という「子の福祉」を考慮することをせず、「常居所地への返還」を機械的に行うことを目的として作られたものであるため発生するケースだと考えられる。スイス政府はこの事件を受け、子を返還しなくても良い例外を定める本条約第13条(b)項の「耐え難い状況(intolerable situation)」を柔軟に解釈して、このような場合に返還を認めない方針を打ち出している。しかし、スイスの方法では「返還すると子にとって明らかに環境が悪化し、返還しない方が子にとって明らかに良いが、返還すると耐え難い状況になるとまでは言えない」場合は結局子を返還せざるを得ず、子の福祉を完全に保護することはできない。

DV暴力の問題[編集]

21世紀に入って、日本が条約加盟に動いた際、反対派の多くは、条約調印国の中で日本人の女性との国際結婚の最も多い米国では子の海外や他州への奪取が刑法違反であるため、母親が子供を日本に連れ帰った場合は自動的に母親が親権を失うだけでなく、母親は米国当局からは犯罪被疑者として扱われるため、帰還すれば逮捕されるか、あるいは入国ビザが下りない、よって、条約に加盟し執行すれば、子供を母親から半永久的に引き離すことになる、と主張した。 しかし、これには以下のような有力な反論がなされた。即ち、居住していた米国の法律を犯せば、外国籍の者であっても米国で処罰を受けるのは当然であり、米国人たる夫や子の権利を侵害する連れ去りであれば、被疑者を厳しく追及するのは米国当局にとっては重要な義務である。離婚後共同親権制が取られるアメリカの多くの州では、父親の面接権を守るため、母親が子を連れて(他州および他国への)引越しを禁じる措置が取られる。国際結婚などに伴う移民であれば、移住先のこうした基本的な法制度について無知であったという抗弁は当然通用しない。父親の合意なしに子を連れ去ることが出身国では犯罪とされないからといって、それが異なる法制度を持つ国ではおよそ通用しないことを無視して現地で重罪と看做される行為に及んだ者を、同国民であるからという理由だけで擁護しようとするのはエスノセントリズムも甚だしい、と。 更に、条約加盟反対派は、母親が子供を略取する案件の中には、夫のDVから逃れようとしたケースが多いことを強調した。ハーグ条約調印国の間で出された報告書に記載されている調査書の第3項によれば、ハーグ条約の執行申請事件の368件のうちの54%においてDVの存在が確認されており、その中で34%の残された側の親(夫)は暴力を認めているか、あるいは以前に暴力行為を行ったとの疑いが持たれている、という。しかし、オーストラリアで行われた、国内での奪取も含めた問題に関する全国調査では、暴力を逃れるための奪取はわずか6%だったとの結果[7]が報告されており、調査のバイアスも疑われる。 いずれにせよ、日本の加盟反対派は、本条約では「子供の居住国への迅速な送還」を最優先にして条文が作成されたため強制執行を略取先の国が停止することができる条件は条文で”grave risk”(深刻な危険)と規定されており、これはに当てはまるものとして送還先の国が飢饉や戦争、あるいは夫が子供を虐待していた(妻に対する虐待は含まない)という明確な証拠が存在する時のみとの厳しい条件がつく運用面の実態こと、元々DVは家庭内での犯罪であるためにその事実の証明が非常に難しいことなどを強調し、DV被害者たる母親と子を加害者たる夫の元に追い返すのかと加盟推進派を非難した。 加えて、既に見たように、アメリカなどではDVが刑事司法の対象になるため、公的機関に訴えても迅速な保護措置が取られにくいこともある。他方、近時の日本では、被害を防げなかったとしばしば非難されたことに行政が過剰反応し、女がDVやストーカーの被害を訴えただけで、客観的証拠の有無を問わずに保護措置をとることも多い。この落差を加盟反対派は強調しようとしたが、民間のシェルターなどはアメリカなどの方が遥かに発達しており、裁判所の決定は日本より遥かに迅速で実効性を持つことを理解していない極論だとの反論がなされている。 DV被害者の外国人配偶者が頻繁に子の国外連れ去りを犯すのは、下記のような事情が想定される。即ち、国際結婚によって外国に移住した女が、居住国の言語を十分習得できていない場合、経済的にも社会的にも夫に依存しがちとなりやすく、DV被害を訴えて行政機関などの支援を得ることは容易ではないと判断されよう。そのため、女の出身国が本条約に加盟していない間は、子供を連れて出身国に逃げることが最も迅速で安易な解決法となる。しかし出身国が本条約を締結した後は、こうした安易な解決策を取れば、子を連れ戻されてその後、会うことができなくなるか、子と共に元の居住国に戻って犯罪者として裁かれ、服役するかの選択を迫られることになる。 従って、出身国の本条約締結後は、国際結婚によって外国に移住する女は、言語面のハンデを早期に克服し、DV被害にあった際には決して逃げ出さず、現地のDV被害者同様、現地の行政・司法機関に訴え、あるいはNPOなどの支援団体を利用して、自力で事態を解決せねばならないことを各締約国政府が啓発することが求められる。

米国務省「ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)遵守状況報告」[編集]

アメリカ国務省は、アメリカ合衆国議会の決議に基づき、1999年以降毎年、アメリカの立場から見た各国の本条約の遵守状況の報告書を作成している。アメリカの立場から見た報告書であるため、アメリカ自身の遵守状況は記載されていないし、アメリカから連れ出された子の返還を各国が行っているかのみに関しての報告書となっている。
2010年の報告書「Report on Compliance with the Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction April 2010」では、不遵守国としてブラジル、ホンジュラス、メキシコ、不遵守傾向国としてブルガリアが名指しで非難されている。

ブラジル:返還する場合、しない場合、どちらが子の利益になるかを裁判所が考慮していることを本条約16条違反とし、条約不遵守国として非難している。
ホンジュラス:2件の長期継続事件(6年超と4年超)があるため、条約不遵守国として非難している。
メキシコ:アメリカの隣国であるため件数が118件と最も多く、それに対し18か月経っても未解決のものが53件あり、十分な人員を配置していないこと、メキシコ当局の事件解決の優先順位が他の犯罪に比較し低いことをもって条約不遵守国と非難している。
ブルガリア:奪取された子について専門家が生育環境の報告書を作成することについて、無用な返還の遅れを招いていると非難している。

「ハーグ条約に加入すれば、子の返還が担保されるため、アメリカからの旅行が認められるようになる」ということを本条約加入のメリットとする論があるが、遵守状況が悪いとか、不返還事例が存在するとかの場合、アメリカの裁判所はアメリカからの旅行を認めない傾向がある。
なお、日本は条約未加入のため、条約遵守状況の非難の対象にはなっていない。

ブラジルのハーグ条約不遵守による経済制裁の危機[編集]

2009年から2010年はじめにかけて、ゴールドマン親子のケースがメディアの注目を集める。6年にもわたり、ブラジルとアメリカでゴールドマンの子どもをブラジルから取り戻す裁判が行われた。ハーグ条約不遵守国の貿易利益を停止しようとするHR2702草案[92]や、3240HR草案[93]がアメリカ議会に提出された。 ニュージャージー州の議員であるフランク・ルーテンバーグ議員が、ブラジルの無関税貿易条約に署名することを保留すると発表した[94]その数日後、ブラジル最高裁判所は、子どもをアメリカに戻すことを決定した。

現行法による子の引渡し[編集]

本条約に加入しなくても、現行の日本法に基づき、外国人が日本国内の子の引渡しを求めることは可能である。しかし、アメリカ国務省のホームページでは、「外国判決は日本国内では効力はなく、家庭裁判所の判決の履行は任意である」と間違った説明がなされており[95]、これがアメリカ人やアメリカ議会の日本に対する本条約加入の要求の先鋭化に繋がっている。
子の親権者を定め、子の引渡しを命じる外国の裁判所の確定判決は、民事訴訟法118条の条件を満たせば、日本の裁判所より民事執行法24条の執行判決を受けることにより、強制執行が可能になる[96]。これにより、子の引渡しの強制執行(直接強制)が可能であり、裁判所の執行官により子を同居親から取り上げ、正当な権利者に引き渡すことができ、実際にそのような例が報告されている[97]

反対に、本条約に加入しなくても、アメリカの現行法に基づき、アメリカに連れ去られた子どもが、日本に引き渡された判例もある。[98] これは、子の扶養・監護手続に関する統一州法 (the Uniform Child Custody Jurisdiction and Enforcement Act、略称UCCJEA)という法律に抵触し、子どもは過去6か月以上アメリカに住んだ事実がなく、子どもの居住地は日本であると認められたからである。

日本と欧米での家族法の相違[編集]

以下は条約とは直接関係なく、背景となる事情である。
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」は、共同親権、単独親権に関しては中立で、どちらの場合にも対応している[99]。このため、条約批准の前提として離婚後共同親権の導入がある訳ではない[100]。しかしながら、ハーグ条約加盟と並行して共同親権導入に向けた議論は活発になってきている。

また、面接交渉権に関しては、条約の第21条のみで規定されており、そこで引用されている第7条の非強制的解決のみが準用されるため、面接交渉のための強制的子の引渡しまでは認められていない[101]。また、一方の親の面接交渉に対する他方の親の妨害は、第3条に言う「違法な子の連れ去りまたは隠匿(wrongful removal or retention of a child )」に該当しない[102]

離婚後の共同親権と単独親権[編集]

日本では、民法819条により離婚後は両親のいずれかの単独親権となる。

一方、離婚後共同親権とは、離婚後も両親が共に参画して親権を行使することを意味し、片親が勝手に親権を行使することは許されず、両親の合意で親権を行使することを意味する。子の養育に関する様々な判断、例えば「どこに住む」「どの学校に進学する」「課外活動に何をさせる」「どのような医療を受けさせる」「どのようなアルバイトを許可する」「お小遣いをどうする」などは全て両親の合意において決められる。しかし、現実には離婚後このような合意を一々行うことは困難である[要出典]ため、離婚の際に詳細な取り決めを行い、「両親が合意できない場合は、父母どちらの意見を優先するか」とか、「合意できない場合に中立の仲裁者を立てて決める」とかの取り決めを行う。特に、居所指定権(どこに住むかの決定)については詳細に取り決められることが多く、「1週間のうち何日は誰と過ごす」「1年のうち何か月は誰と過ごす」などが決められる。一旦取り決めが行われると、その取り決めを変更するには両親の合意が必要であるが、現実には合意は不可能に近い[要出典]。このため、一旦居所が外国に決まると、子が成人するまで、その国から子も両親も転居することは不可能に近くなる。

離婚後の親権については、欧米では殆どの国が共同親権であるというのは完全な誤解である[要出典]。欧州の殆どの国では、基本的に子供の福祉の観点から、PrimaryCaregiverDoctrine(主要養育者原則)を採用しており[要出典]、ほとんどの場合、母親に親権が与えられる[要出典]。例外としてフランスなどは伝統的に離婚後も共同親権が原則となっている[要出典]。アメリカでは州ごとに制度が違い、ニューヨーク州カリフォルニア州などリベラル色の強い地域を始めとする過半数の州では両親の合意がある場合には共同親権・共同監護が適用される。監護権を持たない方の片親には面接権が認められている。しかし、現実には、単独母親親権が75%、単独父親親権が15%であり、共同親権・監護を適用しているのは、たった10%にしかすぎない。親権を持っていない親の40%は、面会権さえも持っていない。[103]また面接権が欧米では充実しているというのも誤解である[要出典]。母親が父親に対する当て付けに面接を拒む場合は、刑法で対処するにも罰金刑も禁固刑も子供の福祉に影響するためこれらの刑が適用されないため、行政側もお手上げという場合が多い[要出典]。イギリスでは子供と会うことができない父親がFather4Justiceという抗議団体を組織して、派手な抗議活動を行いマスコミに取り上げられた。[8]

ヨーロッパの状況[編集]

ヨーロッパでは、元来多くの国が隣接しており、国外へ子どもを連れ去ることが容易であったが、大半の国は「欧州監護条約[104][105]」(子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する欧州条約)を締結している[106]。また、「ブリュッセルII新規則[107]」(婚姻関係事件及び親責任事件に関する裁判管轄ならびに裁判の承認及び執行に関する理事会規則)は、2005年3月1日以後、デンマークを除くEU加盟国において適用されるEUの域内統一規則になっている[108]

アメリカ合衆国の状況[編集]

米司法省の推定では、アメリカでは毎年203,900人の子が家族に奪取されている[109]。このうち本条約の対象になる国境を越えた奪取は少ないとされるが、アメリカの年間離婚件数が120万件ということを考えると、6人にひとりという割合で、毎年これだけ多くの子が奪取されるのは、複雑な家庭事情や離婚後共同親権が影響していると考えられている[要出典]。

米国各州の状況は、「子どもの養育と恒久的計画のための国立資源センター」(NRCFCPP)が行った調査によって概要を知ることができる[110]。例えば大半の州では、別居が始まれば2か月以内に、交流の計画案が、他の案件に先立って決定され実施されている。親子関係を切らないための配慮である。

米国において、離婚後に単独親権を持つ親や共同親権を持つ親が、子どもと引越しを行うには、ある一定の距離を越える場合には、事前に裁判所の許可を得ることが必要である。裁判所の許可を必要とする移動の距離は、州によりまちまちで、郡の外に出る場合、50から150マイルの決められた距離を越える場合、州の外に出る場合など、いろいろである。裁判所は、個々のケースについて、その引越しの必要性と、親子の交流が困難になる度合いを、比較計量して判断する。また引越しをする親は、事前にもう一方の親に通知する義務がある。住んでいる州の法律や規則に違反して移動を行うと、それは通常は親権の喪失を意味する。誘拐に該当する場合は、刑務所に入る可能性がある[111][112][113][114]

子の奪取の刑事法上の扱い[編集]

「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」に基づく手続きは民事によるもので、刑事事件については規定していない。また多くの国では親による子供の連れ去りは犯罪として扱われていない。ただし、アメリカなどの幾つかの国では、子の連れ去りは、刑法上の重罪にあたるため、日本の在外大使館は、在外邦人に注意を呼びかけている[115]

連れ去る親は、配偶者ないし元配偶者に対して、非常に強い敵意を持ち、相手を動揺させ、攻撃し、コントロールするために、子どもを利用するのである[116]。連れ去る親は、子どもが親を頼る信頼感を悪用して子どもを内的に支配し、子どもと相手との親子関係を消滅させようとする。これは、児童虐待の基本的な定義の一つそのものである[116]。 として、連れ去りは、最も悪質な児童虐待であると判断されている[117][118][119]が、これは連れ去りが犯罪とされているアメリカでは、連れ去る親と連れ去られた子供は逃亡生活を余儀なくされるためで、連れ去りが犯罪ではない国では、このような深刻は子供に対する被害は確認されていない。[9]

アメリカ合衆国[編集]

アメリカの連邦法は、親が子を国外に連れ去ることを犯罪としている。[120]、国内での連れ去りについては、州境を超えると連邦法(PKPA)上の犯罪として捜査するが、FBIが犯人を逮捕した後は、犯人は元の州に連行されて州法で裁かれるので、連邦法での訴追は無い場合がある[121][122]。州法では、全ての州が親による国内での誘拐を犯罪としている。ただし、刑期の長さなどの細部は州ごとに異なる。[123][124]。一方の親が単独で親権を持っていたとしても、他方の親が面接交渉権を持っていれば、単独親権者による子の国外への連れ去りは、面接交渉権の侵害として誘拐の犯罪となる。これは、本ハーグ条約でも接触(面接交渉)の権利の侵害で、子の返還を認めること(第1条)と同じである。日本の外務省が提供する「海外安全ホームページ」では、米国について、次のように述べている。「父母のいずれもが親権(監護権)を持つ親であっても、一方の親権者の同意を得ずに子の居所を移動させること(親が日本に帰国する際に子を同伴する場合を含みます)は、子を誘拐する行為として米国の国内法では重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています。」

カナダ[編集]

カナダについても、同様である。在カナダ日本大使館は、次のように述べている。「父母のいずれもが親権または監護権を有する場合に、または、離婚後も子どもの親権を共同で保有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています。(14歳未満の子の連れ去りの場合、10年以下の禁錮刑等を規定。(刑法第282、第283条))」

イギリス[編集]

イギリスにおいては、単なる誘拐(kidnap)とは別に子供の奪取は親権を持たない親が親権を持つ親に無断で国外に子供を一ヶ月以上連れ出した場合に犯罪となる。一方で、国内での子供の奪取は犯罪とならない。「1984年子の誘拐法(Child Abduction Act 1984)」[125]による罪で、「子を連れ出した者が親または後見人等である」場合は、「子が16歳未満である」「イギリス国外に連れ出した」「子の他の親や後見人の同意を得ていない」の3条件を満たした場合犯罪となる。ただし、「イギリス国外に連れ出した期間が1か月以内である場合」または「裁判所のresidence orderがある場合」には犯罪とならない。「子を連れ出した者が親または後見人等以外」の場合は、「子が16歳未満である」「子を法的権限者(親など)の支配下から離脱させる目的で連れ去った」場合に犯罪となる[126]
このように「child abduction」と「kidnap」では、「子の年齢に16歳未満という制限があるか否か」「暴力または偽計を必要とするか否か」「同意は連れ去られる本人のものか、連れ去られる子の親や後見人等のものか」「イギリス国外への連れ去りが必要か否か」という違いがある。また、成文法による罪かコモンローによる罪かという違いもある。
在英日本大使館は次のように述べている。「Child Abduction Act 1984は、親権を持つ片方の親を含む「子と関連する者(a person connected with a child)」が、他に親権を持つ者の同意なしに16歳未満の子を英国外に連れ出した場合は刑法上の罪(子の奪取:child abduction)を構成すると規定しています。たとえ両親が離婚していたとしても、通常もう片方の親も引き続き親権を有していますので、「子の奪取」が成立する可能性があります(裁判所が子を国外に連れ出すことについて許可している場合はこの限りではありません)。「子の奪取」で有罪とされた場合、略式手続による場合は6ヶ月以下の拘禁刑若しくは罰金又はその両方、正式手続による場合は7年以下の拘禁刑に処されます」。親による誘拐については、この法律の他に、コモン・ロー(不文の慣習法)により処罰される[127]

オーストラリア[編集]

オーストラリアにおいては、親による子の誘拐は原則刑事上の犯罪とはされないが、裁判所の監護に関する命令に反する形での連れ去りは犯罪(家族法65Y, 65Z違反)とされる[128][129]。これは、オーストラリアの家族法審議会(Family Law Council)が、「親による子の連れ去りは、本質的に犯罪ではない」「親による子の連れ去りを犯罪としても、子の返還に寄与しない」「他の方法の方が、子の返還に効果的である」等の理由で、「親による子の連れ去りを犯罪とすべきではない」との答申(Recommendation)を出しているためである[130]

その他[編集]

その他フランス、ドイツ[10]ニュージーランドアルゼンチンなどで連れ去りは犯罪とされている。

日本[編集]

日本においては、国内であっても、子である未成年者を略取、誘拐することは犯罪とされる(刑法224条)。しかし、母親が子を連れて実家に帰っても通常は犯罪とならないのは、それが略取(暴力を用いて連れ去ること)にも誘拐(嘘や甘言を使い連れ去ること)にも通常該当しない為である。略取や誘拐に該当する行為があれば、母親が子を連れて実家に帰る場合でも未成年者略取誘拐の犯罪になる。未成年者略取誘拐罪は親告罪であり、正式な告訴が6か月の告訴期限内に行われない限り、警察も検察も犯罪事件としては取り扱わない。外国人の父親が子供を日本の国外に連れ去ろうと略取して有罪(ただし執行猶予付き)となった例がある[131]。父親が実子を略取し未成年者略取の罪に問われ有罪となった例もある。[132]

その他[編集]

欧米でも日本と同じように子どもの権利の条約に調印しており、この条約の条文には両親との交流をできるだけ維持させ、子が親に会う権利を保証するとあるが、これが「親の面接権」、つまり子供の要望に関わらず親権を持たない方の親が法的に子供と面会を強制できる、あるいはアメリカの数州で行われているように月曜から金曜の昼までは母の家、金曜の晩から日曜の晩までは父の家などのように子供を強制的に2つの住居に交互に住まわせるかについては日本の最高裁判所は権利ではないとの判断が出ている[要出典]。ただし、日本では例えば子供が片方の親との居住あるいは面会を希望する明確な意思表示をした場合などは「子供の権利」が生じるためこの要望を法律によって妨げてはならないとなっている。日本に対する欧米諸国の抗議は、「日本の司法は、子どもの権利を無視し、親子関係を消滅させ、実子誘拐を助長し支援している」という点についてであるが、日本の司法の観点からすれば欧米では子供の権利を隠れ蓑に実際には条約にはない親の権利を立法化しているだけでなく、条約の精神に反し子の権利を親の権利に従属させているとみなされる。実際に面接権を求める(父)親の団体のほとんどの動機は自分らが子供に会いたいのに、たいていは「子供を親に会わせてあげよう」との論点(あるいは組織名)を主張するのは、厳密には「親が子供に会う」という権利には法律的な根拠がないからである[要出典]

また同条約についてアジアでは、虐待をした父親に法的正当性を与える暴論だと認識されている。[要出典]また、アメリカでは国内での子の連れ去りを犯罪としないのに、国外への子の連れ去りのみを犯罪とするのは、実質的に外国人差別であるという見方もある。さらにアメリカでは、片親が外国人でアメリカ永住権を持っていない場合、離婚後ビザが切れた段階で国外退去となるため、子の単独親権を取ったとしても、子をアメリカ国内に残し国外に退去しなければならない。このことも外国人差別と考えられている。

なお、子供の権利条約を締結した欧州では「Visitation(面接)」という言葉は、「Contact(交流)」という言葉に置き換えられている。「面会」という言葉は、「両方の親を持つ」という子どもの権利を消し去っているからである。ただし、アメリカは条約を締結していないためVisitation(面接)が使われているとの意見もある。


東京大学教授であるダニエル・フットは、近年、日本では司法改革が進んでいるが、日本の産業界は欧米における企業活動の経験から、欧米の司法制度の長所を理解するようになっており、近年の司法改革を支持しているとの意見を自著に記載している。[133]

締約国[編集]

地図は2011年10月時点での締約国を示している。

Signatory Countries to the Convention (Conference member countries in dark blue)
  本条約の締約国 (ハーグ国際司法会議の構成国)
  本条約の締約国 (ハーグ国際司法会議の構成国ではない国)

脚注[編集]

  1. ^ 子の連れ去りをめぐる「ハーグ条約」と日本”. わかる!国際情勢. 外務省. 2013年6月2日閲覧。
  2. ^ 2011年現在において、外務省による翻訳と政府法制審議会による検討中の条約名としては、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」であり、「ハーグ条約」と略称されている。「ハーグ条約概要 (PDF) 」 - 外務省
  3. ^ 条約前文「子の利益が最も重要であることを深く確信」
  4. ^ Convention on the Rights of the Child / 子どもの権利条約
  5. ^ 児童の権利に関する条約
  6. ^ 法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会においては、子どもの権利条約と最近のハーグ条約の解釈運用をめぐる国際的動向が、ハーグ条約の解釈運用においては留意されるべきことが示されている。大谷 / 相原 / 磯谷, 「ハーグ条約「担保法」検討のための基本的視点」 - 法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会
  7. ^ 「ペレス・ベラ報告書」Explanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction Convention - HCCH
  8. ^ 日本弁護士連合会, 「国際的な子の奪取に関するハーグ条約関係裁判例についての委嘱調査報告書」 - 法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会
  9. ^ 早川, 「ハーグ子奪取条約について
  10. ^ 外務省, 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 (ハーグ条約)
  11. ^ 東京新聞 2013年2月14日
  12. ^ a b c Status table - 28: Convention of 25 October 1980 on the Civil Aspects of International Child Abduction - HCCH
  13. ^ 2011年10月1日に加入のロシアをふくむ。 The Russian Federation becomes the 86th Contracting State to the Hague Child Abduction Convention - HCCH, July 28, 2011. Russia to join Hague Abduction Convention - Voice of Russia, Mar 30, 2011.
  14. ^ ロシア加入によりG8諸国での未締結国は日本のみとなる。 外務省, 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 (ハーグ条約).
  15. ^ 欧州連合(EU)諸国27か国は全て加盟国である。 国際的な親による子の奪取に関する共同声明 - 駐日欧州連合代表部, 2011年2月9日.
  16. ^ ハーグ条約:国内法整備、来月諮問 加盟へ、あす閣議了解--法務省 - 毎日新聞 2011年5月19日
  17. ^ 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結に向けた準備について」 - 首相官邸 閣議了解 2011年5月20日
  18. ^ 人権外交 - 国際的な子の連れ去り問題について - 外務省 2011年6月
  19. ^ 法制審議会 - ハーグ条約 (子の返還手続関係) 部会 - 法務省
  20. ^ 2014年(平成26年)1月29日外務省告示第33号「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の日本国による受諾に関する件」
  21. ^ [1] 519 F.3d 33 (2008) Dominik KUFNER, Petitioner, Appellee, v. Tina KUFNER, Respondent, Appellant. No. 07-1523. United States Court of Appeals, First Circuit. Heard January 9, 2008. Decided March 7, 2008.
  22. ^ Article 17 - The sole fact that a decision relating to custody has been given in or is entitled to recognition in the requested State shall not be a ground for refusing to return a child under this Convention, but the judicial or administrative authorities of the requested State may take account of the reasons for that decision in applying this Convention.
    Article 19 - A decision under this Convention concerning the return of the child shall not be taken to be a determination on the merits of any custody issue.
  23. ^ 日経新聞 平成23年5月15日
  24. ^ 日経トレンディー2011年7月4日温井 ちまき執筆「『ハーグ条約批准』で何がどうなる? 国際離婚」p2「またハーグ条約では、子どもを元在住国へ返還することが子どもにとっての利益になるかどうかを考慮しないため、そのことが、問題を複雑にしている。つまり、「子どもが連れ去られた」と訴えている父親がいかに最低最悪であっても、それは別問題なのだ。」
  25. ^ Explanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction ConventionElisa Pérez-Vera, パラグラフ21-23
  26. ^ Explanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction ConventionElisa Pérez-Vera, パラグラフ29
  27. ^ Explanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction ConventionElisa Pérez-Vera, パラグラフ30
  28. ^ [2] 519 F.3d 33 (2008) Dominik KUFNER, Petitioner, Appellee, v. Tina KUFNER, Respondent, Appellant. No. 07-1523. United States Court of Appeals, First Circuit. Heard January 9, 2008. Decided March 7, 2008.
  29. ^ 法制審議会ハーグ条約部会2011年11月28日議事録p34 ○金子幹事(法務省民事局民事法制管理官) ちょっと整理のために一言申し上げます。前回、横山委員のほうから、日本の担保法を作るに当たって、一つの態度決定として返還拒否事由があれば返さなければいけないというようなことで、更にその上に裁量で返還するということは、しなくてもいいのではないかというのが一つの御意見としてあったと思います。そうしますと、今は5の(1)のところは、申立てを却下するものとするとしまして、その上で(3)を無くす。これが恐らく横山委員の感覚に一番合うのだと思います。他方、条約上それでいいのかと。それ以外のことを考慮して返すという場合を条約上想定していないのかというのは、これは条約の解釈でありまして、この辺は外務省にこの前お聞きして、これはやはり裁量的に返すという場合があるのではないかというようなことがございまして、実際、他国でも1から6全部とは申しませんが、返還拒否事由に当たるとしつつ返還を命じている例があるということも、今までの資料等にもありました。そうすると(3)を無くすと、(1)の文は申立てを却下することができると書かざるを得ないのかなというふうになります。それが前回までの案だったんですね。
  30. ^ Parental Kidnapping: Prevention and Remedies 米国弁護士会の文書
  31. ^ a b c Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse
  32. ^ ISBN 978-0029129753 When parents kidnap, Greif 1993年
  33. ^ a b c Parental Child Snatching: An Overview 米国政府文書
  34. ^ a b The Crime of Family Abduction 米国法務省の文書
  35. ^ Parental Child Abductions Victims of Violence - カナダ政府が出資している機関
  36. ^ Psychological Impact of Abduction Parental Abduction: A Review of the Literature 米国政府文書
  37. ^ a b c "The Kid is With A Parent, How Bad Can It Be?": The Crisis of Family Abduction 「子どもは、一人の親と一緒にいるではないか。それで何が悪いというのか」:家族による誘拐という危機 (ハワイ州政府文書)
  38. ^ ISBN 978-0029129753 When Parents Kidnap, Geoffrey Greif 1993年
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  40. ^ 2011年5月13日の朝日新聞
  41. ^ ISBN 9784582855760 子どもの連れ去り問題 コリン・ジョーンズ
  42. ^ 在サンフランシスコ日本国総領事館の日本人旅行者に対する注意 在サンフランシスコ日本国総領事館 Consulate-General of Japan in San Francisco
  43. ^ 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第4条2項は、「母性保護を目的とする特別措置は差別と解してはならない。」と規定する。なおこの条約の加盟国は187カ国で、ハーグ条約締約国の中で唯一アメリカが未批准である。
  44. ^ "DOMESTIC AND FAMILY VIOLENCE AND THE ARTICLE 13 “GRAVE RISK” EXCEPTION IN THE OPERATION OF THE HAGUE CONVENTION OF 25 OCTOBER 1980 ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION: A REFLECTION PAPER
  45. ^ ISBN 9784582855760 子どもの連れ去り問題 PP.243-244  コリン・ジョーンズ
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  47. ^ Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日 (PDF)Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日(続き) (PDF) 74ページ3行 "Well, he had taken care of that, but Mrs. Savoie wanted it either paid off or wanted her father's name, who had been a co-signor on it, off of it, or somethinglike that."
  48. ^ 役員紹介”. 2011年1月5日閲覧。
  49. ^ 会社概要
  50. ^ Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日 (PDF)Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日(続き) (PDF) 71ページ9行 "And there was some things about the divorce, and the affair, and the relationship with what's now his new wife, and the failing to pay funds in those e-mails along the way; weren't there, Ma'am?"
  51. ^ Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日 (PDF)Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日(続き) (PDF) 121ページ17行 "The papers were filed on June the 16th, 2008. I don't know that you can glean it from the file, but I believe that that was, in fact, the day after she got here."
  52. ^ CNN記事 2009.10.1
  53. ^ CNN記事 2009.10.2
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  55. ^ ORDER GRANTING SOLE CUSTODY OF THE PARTIES' MINOR CHILDREN TO CHRISTOPHER SAVOIE 2009年8月17日 (PDF)
  56. ^ PETITION FOR MODIFICATION AND FOR ENFORCEMENT OF PARENTING PLAN AND FOR CONTEMPT 2009年3月16日 (PDF)
  57. ^ Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日 (PDF)Transcript of Hearing on Temporary Restaining Order 2009年3月30日(続き) (PDF)
  58. ^ ORDER GRANTING SOLE CUSTODY OF THE PARTIES' MINOR CHILDREN TO CHRISTOPHER SAVOIE 2009年8月17日 (PDF)
  59. ^ 法務省民事局長通達「法例の一部を改正する法律の施行に伴う戸籍事務の取扱いについて」(平成元年10月2日付民二第3900号)では、日本国籍を持つ者の場合、日本出国後1年以内の場合は、例え2重国籍者がもう一方の国籍国に行った場合でも、常居所は日本とされる。本件では出国後1年以内である。ただし、裁判所の判断が通達で縛られる訳ではない。
  60. ^ 杉山初江; 園尾隆司(監修) (2010). 民事執行における「子の引渡し」. 民事法研究会. ISBN 978-4-89628-595-6. 
  61. ^ $6.1M awarded in Japan child custody battle 2011年5月10日AP通信
  62. ^ チェコ人夫が5歳児海外連れ去り 岐阜の母、返還要求できず
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  69. ^ ハーグ条約で副大臣会議設置へ=政府(時事ドットコム2011年1月10日)
  70. ^ 2011年2月3日の朝日新聞朝刊29面
  71. ^ 2011年2月3日の朝日新聞朝刊29面
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  75. ^ FNNニュース
  76. ^ ジャパン・タイムズ 2011.11.10
  77. ^ 法制審議会ハーグ条約部会第8回会議(2011年11月28日)部会資料9 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」を実施するための子の返還手続等の整備に関する中間取りまとめに関する意見募集の結果について
  78. ^ "DOMESTIC AND FAMILY VIOLENCE AND THE ARTICLE 13 “GRAVE RISK” EXCEPTION IN THE OPERATION OF THE HAGUE CONVENTION OF 25 OCTOBER 1980 ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION: A REFLECTION PAPER 2011年5月、ハーグ条約事務局著
  79. ^ "DOMESTIC AND FAMILY VIOLENCE AND THE ARTICLE 13 “GRAVE RISK” EXCEPTION IN THE OPERATION OF THE HAGUE CONVENTION OF 25 OCTOBER 1980 ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION: A REFLECTION PAPER 2011年5月、ハーグ条約事務局著、第37段落"Thirty-two cases resulted in a judicial refusal of return based on Article 13(1) b)."
  80. ^ "DOMESTIC AND FAMILY VIOLENCE AND THE ARTICLE 13 “GRAVE RISK” EXCEPTION IN THE OPERATION OF THE HAGUE CONVENTION OF 25 OCTOBER 1980 ON THE CIVIL ASPECTS OF INTERNATIONAL CHILD ABDUCTION: A REFLECTION PAPER2011年5月、ハーグ条約事務局著、 第38段落"Out of the 49 cases where a return was ordered, it was indicated in 25 of the decision texts that undertakings or other conditions were (or would be) attached to the order of return with the goal of facilitating safe return of the child and / or accompanying parent (see discussion below, at para. 102 et seq.)."
  81. ^ 杉山初江、園尾隆司 (監修) 『民事執行における「子の引渡し」』 民事法研究会、2010年ISBN 978-4-89628-595-6P70「直接強制説」
  82. ^ 法の適用に関する通則法(平成十八年六月二十一日法律第七十八号)
    第32条(親子間の法律関係)  親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。
    第38条(本国法)  当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。
  83. ^ 夫(英国籍)と妻(仏国籍)の離婚に関し、子(英仏二重国籍)の本国法を関係の深さから英国法とし、3者間の準拠法を英国法とした例、水戸家裁平成2年(家イ)565号平成3年3月4日審判、家庭裁判月報45巻12号57頁、別冊ジュリストN133渉外判例百選[第3版]P128再録、有斐閣、池原季雄、早田芳郎
  84. ^ 夫(英国籍)と妻(日本国籍)の離婚に関し、子(日英二重国籍)の本国法を日本法とし、3者間の準拠法を日本法とした例、東京家裁平成4年(家)5093号平成4年9月18日審判、家庭裁判月報45巻12号63頁、別冊ジュリストN133渉外判例百選[第3版]P18再録、有斐閣、池原季雄、早田芳郎
  85. ^ 法務省平成元年10月2日民二第3900号民事局長通達「法例の一部を改正する法律の施行に伴う戸籍事務の取扱いについて」「第7親権」
  86. ^ 民事訴訟法第118条「外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
    三  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。」
  87. ^ 児童の権利に関する条約10条2項「父母と異なる国に居住する児童は、例外的な事情がある場合を除くほか定期的に父母との人的な関係及び直接の接触を維持する権利を有する。このため、前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、締約国は、児童及びその父母がいずれの国(自国を含む。)からも出国し、かつ、自国に入国する権利を尊重する。出国する権利は、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この条約において認められる他の権利と両立する制限にのみ従う。」
  88. ^ UN Convention on the Rights of the ChildArticle 10. Paragraph 2. "A child whose parents reside in different States shall have the right to maintain on a regular basis, save in exceptional circumstances personal relations and direct contacts with both parents. Towards that end and in accordance with the obligation of States Parties under article 9, paragraph 1, States Parties shall respect the right of the child and his or her parents to leave any country, including their own, and to enter their own country. The right to leave any country shall be subject only to such restrictions as are prescribed by law and which are necessary to protect the national security, public order (ordre public), public health or morals or the rights and freedoms of others and are consistent with the other rights recognized in the present Convention. "
  89. ^ 離婚と移民法琴河・五十畑法律事務所、弁護士琴河利恵
  90. ^ U.S. Code TITLE 8, CHAPTER 12, SUBCHAPTER II, Part VIII, Sec. 1324b. Unfair immigration-related employment practices
    (4) Additional exception providing right to prefer equally qualified citizens
    Notwithstanding any other provision of this section, it is not an unfair immigration-related employment practice for a person or other entity to prefer to hire, recruit, or refer an individual who is a citizen or national of the United States over another individual who is an alien if the two individuals are equally qualified.
  91. ^ "Intolerable Situations and Counsel for Children: Following Switzerland's Example in Hague AbductionCases", by Merle H. Weiner, American University Law Review, Volume 58, Issue 2 December 2008, page 338, Russell Wood and Maya Wood-Hosig case
  92. ^ H.R. 2702: To suspend the application of Generalized System of Preferences for Brazil until such time as...
  93. ^ To ensure compliance with the 1980 Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction by countries with which the United States...
  94. ^ Montopoli, Brian (2009年12月18日). “David Goldman Custody Battle Leads to Block of Trade Bill”. CBS News. http://www.cbsnews.com/8301-503544_162-5995670-503544.html 
  95. ^ International Parental Child Abduction Japan, US Department of StateJapanese lawyers and divorced parents have reported to the Embassy that court orders issued by a foreign or Japanese court are not enforced in Japan. Compliance with family court rulings is essentially voluntary, which renders any ruling unenforceable unless both parties agree.
  96. ^ 東京高等裁判所平成4(ネ)388号平成5年11月15日判決
  97. ^ 杉山初江; 園尾隆司(監修) (2010). 民事執行における「子の引渡し」. 民事法研究会. ISBN 978-4-89628-595-6. P70「直接強制説」には強制執行が成功した例が9件載っている。
  98. ^ Stuart A. CARTER, Appellee, v. Nahoko Hata CARTER Nebraska court rules Japan has jurisdiction in child custody case
  99. ^ Explanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction ConventionElisa Pérez-Vera, 71段落"Actually, in terms of article 3. custody rights may have been awarded to the person who demands that their exercise be respected, and to that person in his own right or jointly. It cannot be otherwise in an era when types of joint custody, regarded as best suited to the general pronciple of sexual non-discrimination, are gradually being introduced into internal law. "「第3条に関しては、親権は行使が尊重されるべき人に、単独あるいは共同で与えられていることがありうる。性に関し差別しないという一般的な原則に最も合うと思われる種々のタイプの共同親権が徐々に国内法に導入されつつあった時代においては、そうせざるを得なかった。」
  100. ^ 本条約には離婚後共同親権を前提とする規定は存在しない。
  101. ^ アメリカ合衆国連邦最高裁判所判決ABBOTT v. ABBOTT ( No. 08-645 ) 542 F. 3d 1081のOpinion of the Court "The Convention also recognizes “rights of access,” but offers no return remedy for a breach of those rights. Arts. 5 (b) , 21, id., at 7, 11."「条約は面接交渉権も認めるが、その権利の侵害には子の返還による救済を認めていない。」
  102. ^ 条約第3条は"wrongful removal or retention of a child"に該当する要件として"in breach of rights of custody"「親権(監護権)の侵害」を規定しており、面接交渉権の侵害ではこの要件を満たさない。
  103. ^ Child Custody Statisticsアメリカの国勢調査より
  104. ^ 欧州監護条約
  105. ^
  106. ^ 椎名規子 離婚後の子の監護 (PDF)
  107. ^ ブリュッセルII新規則
  108. ^ 樋爪誠 国際的な子の引渡し(1) (PDF)
  109. ^ Children Abducted by Family Members: National Estimates and CharacteristicsU.S. Department of Justice, Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention, "Table 2: Estimates of Family Abducted Children"
  110. ^ NRCFCPP (PDF)
  111. ^ Relocating with Children after Divorce
  112. ^ Post-Divorce Relocation Of Children Becomes Hot Topic In Connecticut Family Law
  113. ^ Relocation After Divorce
  114. ^ Relocation And Child Custody
  115. ^ 外務省の在外大使館
  116. ^ a b Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse  Dorothy S. Huntington、1982
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  118. ^ Parental Kidnapping: Prevention and Remedies Hoff、アメリカ弁護士協会、2000
  119. ^ Parental Child Snatching: An Overview  William Rigler、米国政府文書
  120. ^ TITLE 18 > PART I > CHAPTER 5 > Section 1204. International parental kidnapping
  121. ^ Parental Kidnapping Prevention and Remedies 米国弁護士会 p9
  122. ^ TITLE 18 > PART I > CHAPTER 5 > Section 1201. Kidnapping、"except in the case of a minor by the parent thereof"
  123. ^ Parental Kidnapping: Prevention and Remedies p9
  124. ^ 各州法
  125. ^ Child Abduction Act 1984, Section 1.
  126. ^ Child Abduction Act 1984, section 2.
  127. ^ 英国政府
  128. ^ International parental child abduction to and from Australia, 31 October 2011, Commonwealth of Australia 2011, ISBN 978-1-74229-536-73.2 "There are limited circumstances in which the wrongful removal of a child (or children) from Australia is recognised as a criminal offence. The primary means of recognition occurs under sections 65Y and 65Z of the Family Law Act, where the removal is committed in breach of parenting orders, or in the course of proceedings for such orders."
  129. ^ 在オーストラリア日本国大使館
  130. ^ PARENTAL CHILD ABDUCTION- A REPORT TO THE ATTORNEY-GENERAL, THE FAMILY LAW COUNCIL, JANUARY 1998 page v, "RECOMMENDATION 3 (para 4.34) Parental child abduction, whether at the international level or within Australia, should not be criminalized and alternative means of improving the recovery rate of abducted children should be explored."
  131. ^ 最高裁判所第二小法廷平成14(あ)805号国外移送略取,器物損壊被告事件平成15年03月18日決定
  132. ^ 最高裁判所第二小法廷平成16(あ)2199号未成年者略取被告事件 平成17年12月06日決定
  133. ^ ダニエル・フット『裁判と社会』p.120

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

公式条文関連


各国公式コミュニケ, プレス・リリース 情報提供等
欧州連合/EU


フランス


英国


カナダ


米国




外務省(日本大使館) による在外邦人サポート情報


各種論考


ハーグ条約と子どもの権利, 親子の引き離し, 共同親権


ハーグ条約と家庭内暴力(DV), 子どもの失踪・人身売買


ハーグ条約反対論 論者・グループ


法実務関連


統計等


マスコミ報道関係 等