国際ボクシング協会 (AIBA)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
国際ボクシング協会
Association Internationale de Boxe
略称 AIBA
設立年 1946年
種類 ボクシング組織
本部 スイスの旗 スイス
ローザンヌ
関連組織 国際オリンピック委員会(IOC)
ウェブサイト www.aiba.org
テンプレートを表示

国際ボクシング協会(こくさいボクシングきょうかい、Association Internationale de BoxeAIBA)は、オープンボクシング(2013年まではアマチュアボクシング)を統括する国際機関である。国際オリンピック委員会(IOC)に加盟しているため、数多くの団体が乱立するプロとは異なり、このAIBAは世界のアマチュア全体をまとめる唯一の機関である。

2008年北京オリンピックに関するIOCの評価報告書では加盟国は196か国とされており、その地域構成比はヨーロッパ50(25.5%)、アフリカ46(23.5%)、アジア44(22.4%)、アメリカ42(21.4%)、オセアニア14(7.1%)となっている[1]

歴史[編集]

1920年8月24日イングランドフランスベルギーブラジルオランダの5ヶ国により、「国際アマチュアボクシング連盟(FIBA)」として創設。

1946年、FIBAを解散するとともに、新たな統括機関として「国際アマチュアボクシング協会(AIBA)」を創設。

2006年、「国際ボクシング協会」に改められ、「アマチュア」の文字が取れた。しかし略称はAIBAのままである。

2009年8月から、それまで年に1度発表していたランキングを毎月公開している[2]

2010年より初のプロ大会となる「ワールド・シリーズ・オブ・ボクシング(World Series of Boxing)」を開催することが決定した。

2011年8月1日、本格的なプロ部門として「AIBA Pro Boxing(APB)」をロンドン五輪後に立ち上げることを発表した[3]

2012年現在、最新のスコアリングシステムの従来との主な違いは、それまで連打しても1ポイントにしかならなかったのが3ポイント、4ポイントと加算されるようになったことと、スコアが5人の副審の中で最も接近した3人の平均点で決定されるようになったことであり[4][5]、このシステムは2012年1月、ロンドンオリンピックアジア予選の日本代表選考会から採用された[4]

2013年3月、北京開催の会議で、オリンピックアジア競技大会に出場できる年齢の上限を34歳から40歳に引き上げることを決議した[6][7][8]。また同時に、同年6月1日からは、脳震盪頭部外傷を減らすためとして精鋭男子 (Elite Men) の国際試合におけるヘッドギアの着用を禁止することを決めている[8][9]。このルールは同年10月、カザフスタン開催の世界選手権から実施される。IOCにはまだ認可されていないが、女子やジュニア、ユースの選手にも適用されていく見込みである[6]

2014年10月1日、韓国仁川で開催された第17回アジア競技大会において、女子ボクシングのライト級で疑惑の判定の末に敗れ3位に入ったインドのサリタ・デビが、疑惑の判定への抗議の意思表示として表彰式で泣きながら銅メダルの受け取りを拒み、準決勝で敗れた韓国のパク・チンアの首に銅メダルをかけた。このデビの行動に対して、アジア大会の組織委員会は、「選手には試合の結果を受け止める義務があり、それを尊重しなければならない」、「彼女がメダルの受け取りを拒んだことは、スポーツマン精神に反している」としてフェアプレーの徹底を求めAIBAへ書面を送った[10]

デビの行為に激怒したAIBAは処分の協議に入り、AIBAは声明で、インド代表団がAIBAの呉経国会長に渡した書簡の中で、デビが「表彰式での不適切な行為について謝罪した」ことと、デビが「感情を爆発させた」ことに対して「無条件で謝罪」したことを明らかにし、デビに出場停止処分を科した[11][12]

買収報道[編集]

2011年9月22日、バクー世界選手権が開催される直前に、英国国営放送の英国放送協会 (BBC) はニュース番組 Newsnight で、開催国・アゼルバイジャンの政府高官が900万米ドルワールド・シリーズ・オブ・ボクシング (WSB) の幹部イワン・コダバシュに送金し、代わりにロンドンオリンピックのボクシング競技で2つの金メダルを保証されたというスクープを放送し、関係者の証言やメールのやりとりも公表した[13][14][映像 1]。AIBAの弁護士はこの報道を否定し[13]、AIBA会長のCK・ウーは支払いを受けたことは事実だが、アゼルバイジャンの政府ではなく匿名の一投資家からの寄付行為だとして、買収は事実無根と主張した[15]

AIBAはこの放送直後に開かれたバクーでの臨時総会で特別調査委員会の設置を決議した。この委員会は規律委員長のトム・バーゲットを委員長として弁護士、法律家ら5名から成り、10月6日の第1回会合ではBBCに撮影テープの提供などを求めたが、BBCは取材ソース秘匿を原則としてこれを拒否した。IOC会長のジャック・ロゲは特別調査委員会の設置を歓迎したが、ウーもIOCメンバーの一人であり、調査が公正に進行するかどうか皮肉な見方をする関係者もあった[15]

1988年のソウルオリンピックライトミドル級決勝では、ロイ・ジョーンズ・ジュニアが一方的に朴時憲を攻めたが、地元・韓国の朴が3-2のスプリットデシジョンで勝利し、アマチュアボクシング史上最大のスキャンダルと言われている。この時、ジャッジが買収されていたとして3人が処分を受けたが判定は覆らず、これを機にIOCはAIBAに改善を求め、コンピュータ採点が導入された。しかし、この採点法は有効打に対してジャッジが人為的にボタンを押すというもので、不正は完全に回避されていない。BBCの番組ではこの試合の画像がしきりに映し出された[13]

WSBはAIBAと広告代理店が共同出資し[13]、大口スポンサーからの広告料やテレビの放映権料によって運営されるが、米国の2チーム(マイアミ、メンフィス)が撤退して経済基盤は苦しく、アゼルバイジャンからの投資は赤字補填金とも報じられた。旧ソ連勢はアマチュアボクシングの強豪国としてAIBAへの政治的な影響力を保っており、アゼルバイジャンはWSBに「バクー・ファイヤーズ」というチームを持っている。英国のメディアは2011年の世界選手権に出場したアゼルバイジャンの選手9名のうち5名が実際のランキングより優遇されてシードされていたことを指摘しており、同大会準決勝終了の時点でアゼルバイジャンからは2選手がオリンピック出場権を獲得していた[15]

このスキャンダル報道の背景として、英国はAIBAの会長選挙で候補者を立てながらウーに敗れており、新執行部から疎まれているとされている[15]

AIBA主催大会[編集]

ここではAIBAが主催、もしくは主管となって開催する大会を挙げる。

APB[編集]

AIBAプロボクシング(APB)は、AIBAが立ち上げたプロボクシング団体で、2014年10月に最初のイベントが開催される[16]2016年リオデジャネイロ五輪でボクシング競技もプロに門戸を開く方針を明らかにしたが、WBAWBCなど既存のプロ団体は除外され、AIBA独自路線で世界ランキングを設定して運営することになった[17]

2012年11月8日の時点では、50か国・地域より80名を超える選手がAPBに参加を表明しており、日本の選手も要請を受けていたが不参加を表明していた[18]。しかし、2016年のリオデジャネイロオリンピックではAPBからの出場枠の比重が高まり、2011年の世界選手権では銀メダリストとなった村田諒太も五輪出場権を得られたが、2015年大会では優勝者にしか出場権が与えられない可能性がある。このため、日本も参加国への追随を決定した[19]。なお、村田はAPB参加を巡りAIBA及びJABFとの間でトラブルが発生し、JABFは村田に対し異例の引退勧告を下す結末となった。2013年7月にAPB初の興行を韓国・済州島で開催し、オープンボクシングのエキシビションとして山崎静代が韓国選手と対戦予定だった[20]が、興行自体が中止になった。

後述の通り、五輪と同様の10階級で実施され、各階級に世界王者は1名のみ[21]。APBに参加できるのはオリンピックや世界選手権での実績により選出された各階級8選手のみであり、変則トーナメントで王座を決定するが、各階級から4名が勝ち上がった段階でランク付けをし、初年度は1位選手対4位選手、2位選手対3位選手の各勝者が決定戦で王座を争う。五輪開催の前年のランクで各階級上位2選手に五輪出場権が与えられる[22]

ロンドンオリンピック・スーパーヘビー級銅メダリストのマゴメドラサル・メジドフは、「多くの優秀なアマチュア選手がプロへの転向に消極的なのは、従来のプロボクシングでは後戻りができなくなることがわかっているからだ」と話し、同大会ヘビー級銀メダリストのクレメンテ・ルッソは、「AIBAのアマチュアでの試合のように、選手たちが各国を代表して戦うことができる」と、それぞれAPBの利点を挙げている[映像 2]

概要[編集]

AIBAで検討されている概要は以下の通り[23]

  • 参加資格はAPBとの契約選手のみ。
  • 契約金は約440万円で期間は4年間。
  • 毎月約30万円が支払われ、試合ごとにファイトマネーも支給。
  • プロ同様の採点法を採用。
  • ヘッドギア非着用。

階級[編集]

  • ライトフライ級(49kg級)
  • フライ級(52kg級)
  • バンタム級(56kg級)
  • ライト級(60kg級)
  • ライトウェルター級(64kg級)
  • ウェルター級(69kg級)
  • ミドル級(75kg級)
  • ライトヘビー級(81kg級)
  • ヘビー級(91kg級)
  • スーパーヘビー級(91kg超級)

脚注[編集]

  1. ^ Report on the 26 core sports for the games of the XXXI Olympiad – FILA” (英語). 国際オリンピック委員会. p. 7 (2009年9月). 2013年3月7日閲覧。
  2. ^ AIBAの世界ランキング発表 日本の8選手も”. ボクシングニュース「Box-on!」 (2009年8月22日). 2012年8月15日閲覧。
  3. ^ 善理俊哉. “AIBAプロのロゴ”. せりしゅんや的アマボク通信. 2012年3月24日閲覧。
  4. ^ a b 『ボクシング・ビート』 2012年3月号, p. 106
  5. ^ AIBA Technical and Competition Rules – Effective March 24, 2011 (Latest amendments: March 27, 2012)” (英語). Rules for Competition Management – Rule 11. Scoring Points – 11.1.2. (p.15), Appendix L: AIBA Scoring System – 2. Scoring Method – 2.2. (p. 78). AIBA. 2012年8月9日閲覧。
  6. ^ a b Nitin Sharma (2012年3月13日). “Boxers can fight till 40: AIBA” (英語). The Indian Express. http://www.indianexpress.com/news/boxers-can-fight-till-40-aiba/1087177/ 2012年3月15日閲覧。 
  7. ^ “アマチュアボクシング 年齢制限を40歳に引き上げ”. スポーツニッポン. (2013年4月9日). http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2013/04/09/kiji/K20130409005577860.html 2013年5月6日閲覧。 
  8. ^ a b 一般社団法人日本ボクシング連盟 「AIBA世界ボクシング連盟のルール変更について(重要)」2013年4月12日
  9. ^ Shirley S. Wang (2012年3月14日). “Boxing Group Bans Headgear to Reduce Concussions” (英語). ウォール・ストリート・ジャーナル. 2012年3月15日閲覧。
  10. ^ アジア大会組織委、ボクシングのメダル拒否受け「フェアプレーの徹底を」”. AFPBB News (2014年10月2日). 2014年10月29日閲覧。
  11. ^ インドの女子ボクサー、メダル受け取り拒否を謝罪”. AFPBB News (2014年10月3日). 2014年10月29日閲覧。
  12. ^ 国際ボクシング協会、メダル受け取り拒否の女子ボクサーに出場停止処分”. AFPBB News (2014年10月23日). 2014年10月29日閲覧。
  13. ^ a b c d 『ボクシング・ビート』 2011年11月号, p. 112
  14. ^ Anna Adams, Meirion Jones (BBC Newsnight) (2011年9月22日). “Allegations of deal to fix 2012 Olympic boxing medals” (英語). 英国放送協会. 2012年8月4日閲覧。
  15. ^ a b c d 『ボクシング・ビート』 2011年11月号, p. 113
  16. ^ AIBA announces date of first official APB Event” (英語). AIBA. 2014年4月19日閲覧。
  17. ^ “五輪にプロ参加の見通し プロ主要4団体は除外”. スポーツニッポン. (2012年11月4日). http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2012/11/04/kiji/K20121104004483620.html 
  18. ^ “女子ボクシング リオ五輪で階級増へ”. スポーツニッポン. (2012年11月9日). http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2012/11/09/kiji/K20121109004514980.html 
  19. ^ “AIBA、独自プロ大会への対策委員会設立”. スポーツ報知. (2013年2月4日). http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/box/news/20130203-OHT1T00240.htm 2013年2月4日閲覧。 
  20. ^ “しずちゃん7月に韓国で試合”. 日刊スポーツ. (2013年5月25日). http://www.nikkansports.com/sports/news/f-sp-tp0-20130525-1132909.html 2013年5月25日閲覧。 
  21. ^ “Join APB – AIBA” (英語). AIBA. (2012年). pp. 7, 9, 10, 12, 19. http://www.aiba.org/documents/site1/AIBA_Brochure_Final_Full_2_BR.pdf 2013年2月4日閲覧。 
  22. ^ アマ側が立ち上げたプロボクシング組織APB”. サンケイスポーツ. p. 2 (2014年4月11日). 2014年4月13日閲覧。
  23. ^ “村田の全日本社会人選手権出場に“待った”…世界協会が出場資格に異議”. スポーツ報知. (2012年11月7日). オリジナル2012年11月6日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20121106234150/http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/box/news/20121107-OHT1T00028.htm 

映像資料[編集]

  1. ^ (英語) Olympics: Allegations of boxing bribe (ニュース番組 Newsnight より抜粋). 英国放送協会.. (2011年9月23日). http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-15034317 2012年8月4日閲覧。 
  2. ^ (英語) AIBA Pro Boxing (APB) (YouTube動画). AIBA Pro.. (2012年12月23日). 該当時間: 2:03, 2:37. http://www.youtube.com/watch?v=5TaHPu_Nd6o 2013年2月4日閲覧。 

参考文献[編集]

  • MACC出版「須佐ら5選手、五輪予選出場決定」、『アイアンマン』3月号増刊(『ボクシング・ビート』3月号)、フィットネススポーツ、2012年2月15日、 p. 106。
  • MACC出版「アゼルバイジャンは7億円払って金メダル2個を約束されていた?」、『アイアンマン』11月号増刊(『ボクシング・ビート』11月号)、フィットネススポーツ、2011年10月15日、 pp. 112–113。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]