国鉄DD93形ディーゼル機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

DD93形ディーゼル機関車(DD93がたディーゼルきかんしゃ)は、かつて日本国有鉄道(国鉄)が試用した液体式ディーゼル機関車である。国鉄による試用の後、名古屋臨海鉄道に移籍し同社のND551形となった。

製造の背景[編集]

国鉄がディーゼル機関車の開発を模索していたころ、日本国内の車両メーカーは国鉄および日本国外への売り込みをはかるべく、独自の機関車を設計・試作した。これらの機関車は、合計9形式が国鉄に借り入れられ、40番台、のちに90番台の形式を与えられて試用された。一部の形式は国鉄が正式に購入した。それらの試作機関車のうち、入換用として製造されたのが、本形式である。1960年(昭和35年)に日本車輌製造本店で製造された。

構造[編集]

エンジンは、三菱日本重工横浜造船所西ドイツMAN社と技術提携して製作した1,100馬力ディーゼル機関である。動力伝達方式は液体式を採用した。液体変速機富士電機フォイト製である。車体はDD13形の初期形に酷似しているが、側面から見ると運転室は中央からわずかにずれている。これは、片側のボンネットに機関を搭載し、もう片側のボンネットには冷却装置などを収めているためである。

主要諸元[編集]

  • 全長:12,600 mm
  • 全幅:2,846 mm
  • 全高:3,900 mm
  • 運転整備重量:53.0 t
  • 機関:三菱日本重工横浜造船所製L12V 18/21形ディーゼル機関1基
  • 液体変速機:富士電機フォイトLT306r
  • 軸配置:B-B
  • 出力:1,100 ps/1,500 rpm
  • 最大牽引力:15,900 kg
  • 動力伝達方式:液体式
  • 最大運転速度:70 km/h

国鉄での運用[編集]

製造当初はDD93形ではなく「DD1000HV」という形式を表記したナンバープレートを装着していた。そのまま同年のARCアジア鉄道首脳者懇談会に展示された。国鉄が借り入れてからは名古屋機関区(現・名古屋車両区)に配属され、名古屋駅笹島駅入換に使用された。1965年(昭和40年)3月に日本車輌製造へ返却された。

名古屋臨海鉄道での運用[編集]

1965年(昭和40年)8月、名古屋港貨物専業名古屋臨海鉄道が開業する。開業にあわせて名古屋臨海鉄道では、DD93形をND551形 (ND551 1) と改名して貨物列車牽引および入換作業用に導入した[1]。転入にあたって、エンジンをDML61S形(DD51形ディーゼル機関車が搭載)に換装している[2]

形式名ND551形の「N」は名古屋 (Nagoya)、「D」は動軸の数(4軸)、「55」は自重(55トン)、「1」はエンジン数を意味する[3]。同様に開業にあわせて導入された形式にエンジン2台搭載のND552形がある。

1972年(昭和47年)6月に廃車となった[4]

脚注[編集]

  1. ^ 名古屋臨海鉄道(編)『十五年のあゆみ』、名古屋臨海鉄道、1981年、p36
  2. ^ 岩堀春夫 『名古屋臨海鉄道』、ないねん出版、2003年、p46
  3. ^ 『十五年のあゆみ』、p37
  4. ^ 『十五年のあゆみ』、p155