四酸化三鉄

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四酸化三鉄
識別情報
CAS登録番号 1317-61-9 チェック
PubChem 16211978
ChemSpider 17215625 チェック
UNII XM0M87F357 チェック
ChEBI CHEBI:50821 チェック
特性
化学式 Fe3O4
FeO.Fe2O3
モル質量 231.533 g/mol
外観 黒色粉末
密度 5.17 g/cm3
融点

1597 °C

屈折率 (nD) 2.42[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

四酸化三鉄(しさんかさんてつ、: triiron tetraoxide)または酸化鉄(III)鉄(II)(さんかてつ さん てつ に、: iron(II) iron(III) oxide)は、組成式 Fe3O4 で表される酸化物の一種であり、自然界では鉱物磁鉄鉱(マグネタイト)として見出される。いわゆる「黒錆」のこと。

Fe2+ イオンと Fe3+ イオンを含む為、時として FeO.Fe2O3 と表される。錯体混合物ではなく、一定の結晶構造を持つ純物質混合原子価化合物)である。実験室では四酸化三鉄は黒色粉末の形状で提供されていて、常磁性フェリ磁性を示す[2]。時として誤ってフェロ磁性と表される場合がある。

また、製法により粒子のサイズや形状が異なるため、鉱石由来より合成によって製造された黒色顔料が非常に広く利用される[3]

製法[編集]

良質の Fe3O4 色素は、産業廃棄物やスクラップ鉄あるいは鉄塩を含む溶液(例えば、鋼鉄を Pickling した際の副産物)から製造される。

C6H5NO2 + 9 Fe + 2 H2O → C6H5NH2 + Fe3O4

  • Fe+2化合物の酸化では、水酸化鉄(II)のような鉄(II)塩は注意深く pH を制御しながら曝気処理をすることで目的の酸化物を得られる[3]
  • Fe2O3 の水素による還元[4][5]

3 Fe2O3 + H2 → 2 Fe3O4 + H2O

  • Fe2O3CO による還元[6]

3 Fe2O3 + CO → 2 Fe3O4 + CO2

赤熱した水蒸気を作用させると生ずる。

四酸化三鉄のナノ粒子は化学的に生成される。例えば鉄(II)塩と鉄(III)塩との混合物を塩基性にするとコロイド状 Fe3O4 が沈殿する。実験条件は微妙であり、条件の差異で粒子サイズが決定づけられる[7]

反応[編集]

磁鉄鉱は溶鉱炉内で一酸化炭素により還元され、鉄となり鋼の生産の一部に利用される[2]

Fe3O4 + 4 CO → 3 Fe + 4 CO2

Fe3O4 の酸化を調節することで、褐色顔料の γ-Fe2O3磁赤鉄鉱)を生成することができる[8]

2 Fe3O4 + 1/2 O2 → 3 γ-Fe2O3

他の焼成法(空気中での加熱)では、良質の赤色顔料であるα-Fe2O3赤鉄鉱)を与える[8]

2 Fe3O4 + 1/2 O2 → 3 α-Fe2O3

構造[編集]

Fe3O4逆スピネル格子の立方晶系で、立方格子の頂点に酸素が配置し、酸素を中心とする八面体頂点の半分に Fe2+ イオンが、残りの八面体頂点の半分と四面体頂点に Fe3+ イオンが配置している。

FeOγ-Fe2O3 も酸素の配置は同じく立方格子をとる。酸化反応あるいは還元反応により容易にこれらの3種の化合物は相互に変化するが、その際の最終的な構造の違いは小さい[2]

試料によっては Fe3O4不定比化合物の場合もある[2]

Fe3O4フェリ磁性は八面体中心にある Fe2+ イオンと Fe3+ イオンの電子スピンが強磁性的に結合すると共に、四面体中心の Fe3+ イオンのスピンがそれらに対して反強磁性的に結合していることに起因している。この両者の磁気的な寄与がつりあっていないことから永久磁石の性質を示す[2]

特性[編集]

Fe3O4フェリ磁性キュリー温度は858 Kである、そして120 Kにおいてフェルベイ転移 (Verwey transition) と呼ばれる相転移を生じ、構造、電気伝導性、磁性が不連続的に変化する[9]。この現象は研究対象として注目を集め、様々な理論的説明が提唱された。しかし完全には解明されていない[10]

Fe3O4Fe2O3 に比べて、非常に大きい電気伝導性 (X 106) を示す。これは Fe2+ と Fe3+ との間で原子価間電荷移動する為である[2]

鉄釘や鉄鍋などの表面に形成された「黒錆」は非常に緻密な皮膜となって内部を保護する[11]

用途[編集]

生物学的見地[編集]

マグネタイトは走磁性細菌中にナノ結晶 (42-45 µm) として見出される[3]。また伝書鳩のくちばしの組織中にも見出されている[14]

脚注[編集]

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  1. ^ Pradyot Patnaik. Handbook of Inorganic Chemicals. McGraw-Hill, 2002, ISBN 0070494398
  2. ^ a b c d e f Greenwood, N. N.; Earnshaw, A. (1997). Chemistry of the Elements (2nd Edition ed.). Oxford:Butterworth-Heinemann. ISBN 0-7506-3365-4. 
  3. ^ a b c d Rochelle M. Cornell, Udo Schwertmann 2007 The Iron Oxides: Structure, Properties, Reactions, Occurrences and Uses Wiley-VCH ISBN 3527606440
  4. ^ US patent 2596954, 1947, Process for reduction of iron ore to magnetiteHeath T.D.
  5. ^ Kinetics of reduction of iron oxides by H2 Part I: Low temperature reduction of hematite, A. Pineau, N. Kanari, I. Gaballah, Thermochimica Acta, 447, 1, 1 (2006), 89-100 doi:10.1016/j.tca.2005.10.004
  6. ^ The effects of nucleation and growth on the reduction of Fe2O3 to Fe3O4 Hayes P. C., Grieveson P Metallurgical and Materials Transactions B (1981), 12, 2, 319-326,doi: 10.1007/BF02654465
  7. ^ Arthur T. Hubbard (2002) Encyclopedia of Surface and Colloid Science CRC Press, ISBN 0824707966
  8. ^ a b c Gunter Buxbaum, Gerhard Pfaff (2005) Industrial Inorganic Pigments 3d edition Wiley-VCH ISBN 3527303634
  9. ^ Electronic Conduction of Magnetite (Fe3O4) and its Transition Point at Low Temperatures, Verwey E. J. W., nature 144, 327-328 (1939) doi:10.1038/144327b0
  10. ^ The Verwey transition - a topical review Walz F. J. Phys.:Condens. Matter (2002) 14, 285-340 doi:10.1088/0953-8984/14/12/203
  11. ^ “さび”の文化と錆の科学
  12. ^ a b c Sunggyu Lee (2006) Encyclopedia of Chemical Processing CRC Press ISBN 0824755634
  13. ^ Synthesis of Iron Oxide Nanoparticles Used as MRI Contrast Agents: A Parametric Study, Babes L, Denizot B, Tanguy G, Le Jeune J.J., Jallet P. Journal of Colloid and Interface Science, 212,2, (1999), 474-482, doi:10.1006/jcis.1998.6053
  14. ^ Superparamagnetic Magnetite in the Upper Beak Tissue of Homing Pigeons Hanzlik M., Heunemann C., Holtkamp-Rötzler E., Winklhofer M., Petersen N., Fleissner G. BioMetals, (2000), 13, 4, 325-331 doi:10.1023/A:1009214526685

関連項目[編集]