器物損壊罪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

器物破損 から転送)

器物損壊罪(きぶつ そんかいざい)とは、他人の物を損壊し、または動物を傷害する罪である。刑法261条で定められている。損壊の対象となった物が境界標である場合は、境界損壊罪が成立する(262条の2)。以下は器物損壊罪について中心に述べ、境界損壊罪については補充的に記述する。

器物損壊罪

法律・条文 刑法261条
保護法益 損害対象の財産権
主体
客体
実行行為 損壊・傷害
主観 故意犯
結果 必要(即成犯
既遂時期 損壊・傷害
量刑 3年以下の懲役、30万円以下の罰金、科料
未遂・予備 親告罪(246条)


目次

[編集] 法定刑

3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料である。 (境界損壊の場合は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)

[編集] 保護法益

損壊の対象となった物に対する財産権である。個人的法益。 (なお、境界損壊罪については個人的法益と同時に境界を公的に区分するという国家的法益の保護が要請されるので、そのため後述する親告罪か否かという点に差異が生ずる。)

[編集] 構成要件

他人の物を損壊すること、または他人の動物を傷害することである。

[編集]

ここでいう物に、公用文書、私用文書、建造物は含まれない。別途、処罰規定(文書等毀棄罪建造物等損壊罪)が存在するためである。土地は本条の対象となる。

[編集] 損壊とは

学説は多岐にわたるが、通説判例は、その物の効用を害する一切の行為をいうとしている。ゆえに物理的な損壊に限らず、心理的に使用できなくするような行為も損壊といえる。

  • 大審院判例は、料理店の食器に放尿した行為について、器物損壊罪の適用を認めている(大判明治42年4月16日刑録15輯452頁)。
  • その他具体例を示す。
    • 掛け軸に「不吉」と書く行為(掛け軸としての効用を害する)
    • 建物に太陽光線を採光して通常使用する効用を害する、ガラス窓に数百枚のアジビラを貼り付ける行為(争議行為で被用者組合側が使用者側に対して行っている)(最決昭和46年3月23日刑集25巻2号239頁)
    • 自由に運動させる場という効用を害する、校庭に杭を打ち込んで保健体育の授業を妨害する行為(最決昭和35年12月27日刑集14巻14号2229頁)

(なお、境界損壊罪においては、「損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により土地の境界を認識することができないようにする」ことが実行行為とされており、効用を害する一切の行為の内容が明示的に列挙してある)

[編集] 傷害とは

他人の動物を殺傷する行為である。損壊と同様に動物としての効用を害する行為、たとえば、他人の池の鯉を流出させる行為も傷害といえる(大判明治44年2月27日刑録17輯197頁)。他人の鳥かごを開放して、飼育されているカナリヤなどを逃がしてしまう行為も同様に、傷害である。

[編集] 補足

一般に、他人の動物を殺傷する行為も器物損壊罪といわれる。しかし、法的に動物は物であるとはいえ、その用語例への抵抗からか、動物の殺傷行為については、動物傷害罪と記載する文献もある。

なお、動物の愛護及び管理に関する法律動物愛護法)は、第27条第1項に、愛護動物(牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる、もしくは、その他の哺乳類、鳥類又は爬虫類で、人が占有している動物 同条第4項)をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する旨の罰則を規定している。

また、器物損壊罪は、親告罪であり(264条),損壊された物の本権者または適法な占有者が告訴権を有する(最判昭和45年12月22日刑集24巻13号1862頁)。なお、境界損壊罪は保護法益が個人的法益に尽きるわけではないから非親告罪である。


前:
建造物等損壊罪

刑法「第二編 罪」
261条~262条の2、264条

次:
信書隠匿罪


ウィキブックス
ウィキブックス刑法各論関連の教科書や解説書があります。