ぜんざい

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善哉から転送)
汁のあるぜんざい(餅入り)
汁のないぜんざい(関東)

ぜんざい(善哉)は、(主に小豆)を砂糖で甘く煮た日本の食べ物である。

白玉団子、栗の甘露煮などと共に供されることが多い。一般的には豆の原形が存在するものを指して用いられるが、例外もある。

定義[編集]

関東地方では汁気のないそのものをぜんざいと呼ぶが、関西地方では粒餡を用いた温かい汁物をぜんざいと呼び、漉し餡を用いた汁物は「汁粉」と呼び分ける [1]。これは西日本から東日本へと伝播する過程において、ぜんざいと汁粉の区別が正しく伝わらなかったからともいう[2]。汁気のない餡を用いたものは、関西では「亀山」や「小倉(おぐら)」と呼ばれている。

ぜんざいとおしるこの違い[3][2]
関東(角餅) 関西(丸餅)
汁気あり つぶあん おしるこ(田舎汁粉あるいは小倉汁粉) ぜんざい
こしあん おしるこ(御膳汁粉) おしるこ
汁気なし ぜんざい 亀山、金時、小倉など

語源[編集]

ぜんざいの語源は主に2説ある。

1つは仏教用語である「善哉(ぜんざいよきかな)」を由来とする説である。一休宗純が最初に食べたとされ、この食べ物の美味しさに「善哉」と叫んだ事から名称とされた。「善哉」とは仏が弟子を褒める時に使う言葉であり、サンスクリット語の素晴らしいを意味する「sadhu」の漢訳である。

もう1つは、出雲地方の神事「神在祭」で振る舞われた「神在餅」を由来とする説である。「神在餅」の「じんざい」が訛り、「ぜんざい」へと変化したと言われている。島根県松江市鹿島町の佐太神社のホームページ[1]にはこのような記載がある。

11月25日は神々をお送りする神等去出(からさで)神事が執り行われます。この日はカラサデさんといわれ、神前に供えていた餅と小豆を一緒に煮て小豆雑煮を作り再び供えていました。これを「神在餅(じんざいもち)」と呼び、今も宮司宅では家例としてこの日に小豆雑煮を作り、屋敷内の祖霊社、稲荷社、邸内の歳神にお供えいたします。昔は里人の間でもこの日の朝に餅を搗き参拝する慣わしがあり、参拝するものは必ず一重ねのオカガミ(餅)をもって参った後、小豆を入れた雑煮餅を作って家の神棚に供えてから銘々も頂く風習があったようです。この「神在餅」が転化して「ぜんざい」になったといわれているのです。  — 『ぜんざい発祥の地』佐太神社

松江藩の地誌『雲陽誌(うんようし)』佐陀大社の項に「此祭日俚民白餅を小豆にて煮家ことに食これを神在餅といふ出雲の国にはしまる世間せんさい餅といふはあやまりなり」とあります。その他、いくつかの古文献にも「神在餅」についての記述があるところから当社は「ぜんざい発祥の地」であるといわれています。」と書かれており、実際に出雲地方の正月に食べる雑煮は小豆汁の雑煮であるなど小豆との関係が強い。神前に供えた餅自体が「善哉」であり、この餅を食べる為の小豆を使用した食事をも善哉と呼ぶようになったとする説。

行事[編集]

正月の行事の一環として、鏡開きの餅を寺院等でぜんざいに入れて振る舞われる他、家庭の鏡餅でも作られる。

沖縄県のぜんざい[編集]

沖縄のぜんざい(沖縄県西表島にて)

現在の沖縄県で「ぜんざい」と呼ばれる食べ物は、砂糖あるいは黒糖で甘く煮た金時豆かき氷をかけたものである[4]白玉などが入ることもある[4]。もともとは「あまがし」という緑豆大麦を甘く煮て冷やした食べ物であったが、戦後は主に金時豆で作られるようになり、冷蔵庫の普及と共にかき氷を載せるようになった[4]。本土のように温かくして食べることもないわけではないが、提供する店は少なく冬季限定のメニューとされていることが多い。

宮古島には「宮古あずき」と呼ばれる黒ささげを使った「宮古ぜんざい」がある。

鯛ぜんざい[編集]

南国市など高知県香長平野では、水煮して出汁を取った後の尾頭付きのを丸ごとぜんざいの中に入れ、宴席で取り分ける「鯛ぜんざい」という料理が存在する。

バリエーション[編集]

  • 抹茶ぜんざい…抹茶の汁に小豆餡、白玉などを加える。抹茶の緑色が目立つ甘味。

脚注[編集]

  1. ^ ぜんざいとおしるこの違い 食育大事典、2023年4月2日閲覧
  2. ^ a b 関西のぜんざい、関東ではおしるこ 呼び方なぜ違う NIKKEI STYLE 2013年11月17日 2019年11月25日閲覧
  3. ^ 見た目や材料はそっくり 冬の甘味「おしるこ」「ぜんざい」は何が違う? オトナンサー 2019年11月21日 2019年11月25日閲覧
  4. ^ a b c 沖縄の「ぜんざい」は夏の風物詩”. オリオンビール. 2023年4月2日閲覧。

関連項目[編集]