咀嚼

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咀嚼(そしゃく)とは、摂取した食物で咬み、粉砕すること。これにより消化を助け、栄養をとることができる。噛むなどとも表現される。また、「食物の咀嚼」とは別に「物事や言葉の意味をよく整理して理解すること」という意味で使われるケースが多い。

役割[編集]

咀嚼は単に食物を粉砕し、嚥下(えんげ)しやすくするのみでなく、口腔内を刺激することにより各臓器の消化液の分泌を促進し、口腔内の自浄を行い、また、食物と共に口腔内に進入した異物の除去などの役割がある。また、内の血液量の増加、覚醒効果やリラックス効果、噛むことは歯を丈夫にするだけでなく、肥満ぼけ視力低下、姿勢悪化、虫歯ガンなどを予防し、内臓の働きを助け、大脳の働きを活発にし、精神を安定させ、ダイエット効果もある。 何より食事を美味しく食べられるなど効果は計り知れない。 そしてよく噛むことで顎の筋肉を使うため、顎が引き締まり顔がすっきりするとも言われる。

ただし、異常な圧力や不正咬合の状態で咀嚼することによって歯周病咬耗症顎関節症となることもしばしばある。 そのため、噛み合わせの異常な状態では、むしろ咀嚼が体に害を及ぼすことが分かっている。


咀嚼系[編集]

咀嚼に関わるシステムを咀嚼系(咀嚼器官)という。咀嚼のみならず発音嚥下にも関わる。咀嚼系に含まれる組織は以下の通りである。

これら各組織の受容体からのフィードバックにより、咀嚼運動は行われている。

回数の変化[編集]

神奈川歯科大学の斉藤滋が食文化史研究家永山久夫とともに古代から現代までの食事から卑弥呼弥生時代)、紫式部平安時代)、源頼朝鎌倉時代)、徳川家康江戸時代初期)、徳川家定(江戸時代中期)、昭和10年代庶民、現代食の食事を復元し学生に食べさせ咀嚼回数と、食事時間を計測した。卑弥呼食は3990回噛んで食べきれず、紫式部食は1366回、源頼朝食2654回、徳川家康食1465回、徳川家定食1012回、昭和10年頃庶民食1420回、現代食620回という結果が出た。紫式部や徳川家定、現代のように戦争がなく、食生活が豊かになると噛む回数が減ることが伺える。

生物一般[編集]

噛むとは、対を成している、固くて可動のの間に何かを強く挟む動作をさす。そのような顎をもっているのは、脊椎動物の大部分のほか、節足動物の大部分、軟体動物頭足類環形動物多毛類、その他に見られる。脊椎動物では顎の骨が関節をもって上下に動くことで、消化管の入り口を開き、口腔として使うところに特徴がある。それ以外のものでは、顎は左右から挟み、食いちぎるための仕組みである場合が多い。

脊椎動物[編集]

脊椎動物では、無顎類以外のものは顎をもち、上下に開くことができる。鳥類以外では、顎にはが並び、これによって餌を保持し、噛み潰し、食いちぎるなどのために使用する。しかし、歯を使って餌を切り取り、すりつぶすなどのことができるのは、哺乳類に限られる。

  • 哺乳類では、歯に切り裂く歯(犬歯)とすりつぶす歯(臼歯)の分化が生じており、顎の関節もそれを効果的に使えるよう、前後左右の動きが確保されている。
  • 爬虫類など、それ以外のものでは、顎と歯は餌を確保するか、噛みつぶすか、せいぜい切り裂くことができるのみであり、くいちぎるには体の動きを利用する必要がある。例えばワニが餌にかみつくと、体を回転させ、それによって獲物から肉片を食いちぎろうとする。ヘビの場合、下顎が左右独立して動き、大きな獲物も丸のみにするために動かせるようになっている。その代わり、歯は細くて獲物に引っ掛かるだけで、切ったり削ったりはできない。
  • 鳥類では歯がなくなり顎はクチバシになり、食いちぎるか、さもなければ丸のみにする。
  • 現生の魚類の場合、噛むための顎を、前に突き出して吸い込む仕組みに変え、そのため、噛むことはできないものがある。種によってはそれに代わって、喉の部分に咽頭歯と呼ばれる構造ができて、これによって固いものを噛み潰すことができる。

節足動物[編集]

節足動物では、分類群によって異なるが、消化管の入り口のすぐ後ろに一対か二対の左右に並ぶハサミのようになった構造があり、これを顎と呼んでいる。顎は消化管の入り口を広げるものではなく、したがって噛むのは顎で挟むだけで、それによって食いちぎったりすりつぶしたかけらを消化管に送り込む。噛む仕組みについては、軟体動物環形動物もほぼ同じである。クモ類アリジゴクなどでは、噛むことで顎を突き刺して、そこから消化液を注入し、消化したものを吸い取る。

関連項目[編集]