否定神学

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否定神学(ひていしんがく、ギリシア語 apophatike theologia)とは、キリスト教神学において、を論ずる際に使われた方法論の一つ。ラテン語では via negativa 否定の道 とも呼ぶ。

概要[編集]

神は人間に思惟しうるいかなる概念にも当てはまらない、すなわち一切の述語を超えたものであるとして、「神は~でない」と否定表現でのみ神を語ろうと試みる。肯定神学とともに、キリスト教神学における二潮流を形作る。神秘主義との関連が強く、またドイツ語圏を中心に哲学へも影響を与えた。

歴史[編集]

偽ディオニュシオス・ホ・アレオパギテースの書、『神名論』『神秘神学』(6世紀ごろ)で展開されたが、ネオプラトニズムプロティノスの著作(エネアデス「善なるもの一なるもの」)にその原型を見出すことが出来る。偽ディオニュシオスは肯定神学と否定神学の二つの道を示す。神はすべてを超え出ている。しかしそのような知識は神についての一面的な知識に過ぎず、否定神学によって否定される。たとえば、肯定神学は神を善を超えたものとして示す。否定神学においては、神は、善ではない[要出典]。ただしそれは神が悪であるという意味ではなく、人間の思考しうるいかなる「善」をも超えているという意味である。人間や事物は神の善性に似ることができる。なぜなら善の源は神であるから。しかしそれは神が善性において人間と似ていることを意味しない。したがって、神は、人間が把握しうる限りでの善ではない。こうして一切の述語は否定される。否定神学の終局は、一切の形、音、概念、人間に把握されるすべてを捨てて、いわば概念の闇と沈黙において、すべてを超えた光のうちに、神と合一することにおかれる。

偽ディオニュシオスは、ダマスコのイオアンネース(ダマスコのイオアン)など、後世に影響を与えた。正教会神学における静寂主義の成立に影響するとともに、ラテン語訳された偽ディオニュシオスやダマスケネスは、西方神学にも影響を与えた。 ヨハネス・スコトゥス・エリウゲナトマス・アクイナスエックハルトニコラウス・クザーヌスにその受容と影響をみることができる。

エックハルトでは、放下(Gelassenheit)によって「名前無き無」としての神との合一がとかれ、これはドイツ神秘主義に影響を与えた。

ドイツ神秘主義の影響の下にあるクザーヌスにおいては、神は万物の原理であるために、かえって神に作られた万物は原理としての神を完全に理解できないとされ、神の人間に対する本質は「知解されえない」ことにおかれる。この人間の本質的な無知を自覚することが、人間にとって最上の知、「知ある無知」である。


関連項目[編集]