名目所得ターゲット

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名目所得ターゲット(めいもくしょとくたーげっと、:Nominal income target)は中央銀行による政策のひとつであり、将来の所得水準に関する目標を定めたものである。NGDPターゲット、名目所得目標とも呼ばれる。

解説[編集]

具体的には名目GDP(Nominal Gross Domestic Product)の数値目標を定め、その目標を量的緩和など金融政策で達成することである。マネタリストらが支持するインフレーションターゲットは中央銀行による物価目標であるが、名目所得ターゲットでは名目GDP値が中央銀行の達成目標となる。マネーサプライが経済活動水準の決定要因とする従来のマネタリズムに懐疑的であるマーケットマネタリズムからNGDPターゲットの必要性が唱えられている。またマーケットマネタリズムの観点からは、必ずしも金利上昇がクラウディングアウトに結びつくわけではないとされる。貨幣流通速度は利子率と関連性があり、利子率が上昇すれば、投資家はハイリターンを求めて流動性資産もしくは固定資産を買おうとし、それらの決済の増加で貨幣流通速度も上昇[1]する。ゆえにマネーサプライを所与とすれば、利子率の上昇は物価と名目GDPの上昇を伴う。この結果はクラウディングアウトと相反する。

中央銀行がNGDP水準の責任をも持つと市場に宣言することで、消費者が将来の経済成長と所得増加を期待し消費を拡大させると考えられる。また企業は売り上げが伸びると期待するので投資を増やす効果がある。フォワード・ガイダンスによって政策金利がいつ上昇するのかという不確定性を取り除くことも重要である。

経緯[編集]

1930年代の世界恐慌の際も、当時の大統領フランクリン・ルーズベルトが所得水準を恐慌以前のレベルまで引き上げると宣言したことで景気回復に大きな役割を果たしたとされている。

歴史的には、NGDPターゲットはジェームズ・ミードジェームズ・トービンがその創始者ともされ[2]シカゴ学派が創始者ともされる[要出典][3][出典無効]、今日では左派右派問わず幅広く支持されている。

従来のような、中央銀行がバランスシートをアグレッシブに拡大させるとお金は実体経済に流れていき需要を作り出すとするミルトン・フリードマンの説に対してマイケル・ウッドフォードは反駁し、ベン・バーナンキが述べるようなポートフォリオバランスチャンネル論の改良の必要性を唱えた。そしてウッドフォードは、量的緩和を成功させるためには、中央銀行が宣言した金融政策目標とりわけNGDP目標に専念し続けることだと唱えた[4]

カナダ中央銀行が2009年4月にインフレ率が目標値に達しない限りは2010年の第二四半期まで政策金利を0.25%に据え置き続けることを明確に市場に宣言したが、この宣言によって市場に将来への期待が生じ、短期債券の中でも比較的長めの債券の利回りの低下率が顕著だった。

クリスティーナ・ローマーは、世界金融危機 (2007年-)後の米国の長引く不況と高い失業率への対策としてバーナンキとFRBにNGDPターゲットを採用するよう提案している[5]

脚注[編集]

  1. ^ Money demand slopes downward. Higher interest rates raise velocity. Period. End of story. TheMoneyIllusion
  2. ^ Nominal GDP targeting is Left, Right? Jeffrey Frankel, Project Syndicate, May 2, 2013
  3. ^ Evans-Pritchard, Ambrose (2011-11-27). "Should the Fed save Europe from disaster?". The Telegraph. Retrieved 2011-12-01.
  4. ^ Forget Bernanke: A paper at Jackson Hole may have changed the future of economics Business Insider, September 2, 2012
  5. ^ Ben Bernanke needs a Volcker momentChristina Romer, New York Times Oct 29th 2011

関連項目[編集]