同担拒否

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同担拒否(どうたんきょひ)とは、おたく用語で、同じ対象を応援する他のファン(愛好家、同担)と交流を持ちたくないという姿勢を指す。逆に同じ対象を応援する他のファンと積極的に交流しようとする姿勢は「同担歓迎」という。いずれも元はジャニーズ事務所に所属するアイドルグループのファンの中で使われていた用語である。

概要[編集]

ジャニーズ事務所に所属するアイドルグループファンは、メンバーAを応援しているファンのことを「A担当」と呼び、そのファンはAを指して「担当」と呼ぶ[1]:27-28。またこのファンは、同じくAを応援するファンを「同担」と呼び[1]:28、「同担」とは距離を置く、親密な関係にはなれないということを意味する語が「同担拒否」である。「同担NG」とも言われる[1]:34

1990年代末頃のジャニーズファンは、自分が誰の「担当」であるかを示す名刺を持ち歩いており、これが同担拒否にも利用されていた[2]:35。後に「担当」や派生語の「同担」といった用語は、ジャニーズファンだけではなく、アイドルファン一般、さらにはアニメファンにも拡大して用いられるようになった[3]

心理[編集]

同担拒否の中でも様々な種類があるようで、同担なら誰でも拒否するとは限らない。自分のコミュニティー内にいるファンなら同担でも拒否しないが、コミュニティー外なら拒否感情をいだくという同担拒否者もいる。また普段は同担同士で仲が良い間柄だが、コンサート会場など応援対象者の目前で隣席となった場合に、競争意識から拒否感情が出てくる、という場合もある[3]

同担に対する拒否感情には、この語を生んだジャニーズ系ファン層に見られる共通した特徴が影響している。ジャニーズ系ファンは応援対象者を親近感を持って見ており、対象者との関係をより充実させることを重視する。これは、対象者の芸能活動を憧れの感情を持って見る、という従来の音楽ファン層とは異なっている[4]:251。こうした背景から、応援対象者との関係を邪魔し、ライバルとなったり嫉妬の対象となったりすることのあり得る同担との交遊は拒否される[4]:253。また本人との同担のみならず、親しい友人との同担も拒否する場合もある。これはファンのグループの中で担当が重ならないようにすることで、グループ内の関係を良好に保つことを目的としている[5]:30-31

「同担」を回避するため、ジャニーズ系ファンのグループは少人数にとどまるのが常で、同じアイドルのファンが大人数で群れをなす親衛隊とは異なっている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 徳田真帆「ジャニーズファンの思考」『くにたち人類学研究』第5号、くにたち人類学会、2010年、21-46ページ。
  2. ^ 辻泉「「同担拒否」再考――アイドルとファンの関係、ファン・コミュニティ」『新社会学研究』第3号、新曜社、2018年、34-49ページ。ISBN 978-4-7885-1592-5
  3. ^ a b Kikka (2017年10月6日). “あなたはどのタイプ? 同じ推しを応援する「同担」に4つの分類があると話題に”. ねとらぼ. 2019年10月2日閲覧。
  4. ^ a b 辻泉「関係性の楽園/地獄 ジャニーズ系アイドルをめぐるファンたちのコミュニケーション」『それぞれのファン研究 I am a fan』風塵社〈ポップカルチュア選書 レッセーの荒野〉、2007年、243-289ページ。ISBN 978-4-7763-0035-9
  5. ^ 辻泉「「観察者化」するファン――流動化社会への適応形態として――」『AD studies』第40号、吉田秀雄記念事業財団、2012年、28-33ページ。

関連項目[編集]