召喚魔術
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召喚魔術(しょうかんまじゅつ、英: conjuration)は、主に一群の西洋の古いグリモワールや近代オカルティズム、あるいは近代西洋儀式魔術などの魔術結社の体系において、天使や悪魔や元素霊などを呼び出す魔術である。降魔術・召喚・召喚術・悪魔召喚などともいう。
黄金の夜明け団の系統の魔術体系では、召喚(しょうかん)と喚起(かんき)という、タイプの異なる二つの魔術作業がある。この二つは一般向けオカルト本[1]などでは「召喚魔術」と一括りにされることもあるが、本来は「儀式魔術」という括りの中の別々の技法である。一般に流布している召喚魔術、召喚術、悪魔召喚などの言葉とそのイメージは、英: conjuration や 、英: summoning に当たり、どちらかと言えば、ここで言う喚起魔術の方に該当する。魔術の専門家でも一般向けに喚起のことを召喚と書いている例もみられ、一般に流布している用語法と専門分野での用語法の間に齟齬と混乱が見られる。
- 特殊な場合を除き、上位の超越的存在(神、天使など)が召喚対象となり、比較的下位の存在(悪魔、精霊など)が喚起対象となる。存在の上位・下位の基準は、黄金の夜明け団などによって確立されたヘルメス的カバラに基づく階層宇宙論によって設定されている。
- この際、術者の心身を守るため魔法円を床に描くことがある。
- なお、この召喚という言葉は、1980年代、国書刊行会の『世界魔法大全』の編集過程で朝松健らによって訳語にあてられたものという。
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[編集] 召喚と喚起
召喚(英: invocation)と喚起(英: evocation)は英語圏でも往々にして混同されるが、黄金の夜明け団の系譜を引く魔術体系では、ある程度明確に区別される技法となっている。invoke の語源は「呼びかける」を意味する羅: invocareであり、「祈る」という意味も含む。evoke の語源は「呼び出す」を意味する羅: evocare である。これに応じて、召喚と喚起には以下のような方向性の違いがある。
- 召喚では霊的存在に呼びかけ、その来臨を請う。喚起では霊的存在に命令して呼びつける。
- 召喚では霊的存在は魔術師の内側に呼び入れられ、喚起では霊的存在は魔術師の外側に呼び出される。
- 召喚では通常、神々や天使など、ヒエラルキーにおいて上位の存在が対象となり、喚起では四大元素の精霊や悪魔など、ヒエラルキーにおいて下位の存在が対象となるのが普通である。
アレイスター・クロウリーは次のように定義している:
「喚起」が前方または外へ「呼び出す」ことであるのに対し、「召喚」は「呼び入れる」ことである。これが魔術のふたつの部門の本質的な差である。召喚においては大宇宙 (訳注:召喚対象の神) が意識に満ちあふれる。喚起においては、大宇宙となった魔術師が小宇宙 (訳注:喚起対象の霊) を創造する。諸君は神を円環の中へ「召喚」し、霊を三角形の中へ「喚起」するのである[2]。
なお、この召喚と喚起という言葉は、国書刊行会の翻訳魔術書を編集した朝松健と翻訳者らの会議で訳語として定められたものという[3]。召喚(invocation) と降霊(evocation)[4] 、召霊 (invocation)と祈神(evocation)[5] という訳例もある。
[編集] 召喚魔術
召喚魔術(英: invocatory magic)は、神格に請願し、その力を自らの内に呼び降ろし、そして一時的に自分が神の乗り物と化すことを図る魔術作業である。要するに、自分が神と一体化する、もしくは自身に神を憑依させる技法である。アレイスター・クロウリーはその方法を「祈りながら汝自身を燃え上がらせよ」と要約している[6]。聖守護天使の召喚は魔術師が目標とするもののひとつである。
IOS学習主任の秋端勉は、召喚には請願召喚と憑依召喚の二種類の方法があると指摘している[7]。憑依召喚はアレイスター・クロウリーが定義するように術者と召喚対象が融合する召喚作業であり、杯の業ともいう。これに対し請願召喚は術者と召喚対象が分離したまま行われる召喚である。
[編集] 喚起魔術
喚起魔術(英: evocative magic, evocational magic)は、霊に対して、魔術師の外部の特定の領域に現れるよう命令し、現れた霊を魔術師の目的のために働かせる魔術作業である。召喚を杯の業というのに対し、喚起を剣の業という。「人工精霊 (英: artificial elemental) の創造」はこの変種と言える。
最もよく知られた典型的な喚起魔術は、近世のグリモワール『ゴエティア』に基づくものであろう。英: goetic evocation(ゴエティックエヴォケイション)、英: goetian magic(ゴイーシアンマジック)と呼称される。魔術師は地に描いた魔法円の中に身を置き、円外に配置された魔法三角の中にデーモンを呼び出す。呼び出された霊はユダヤ・キリスト教の神の威光を借りた魔術師の命令に服する。
刊行されている『ゴエティア』に付された図版[8]では三角形の中に円が描かれているが、これは魔法鏡であるとも解釈されており、魔法鏡をスクライングの窓として用いるのは、よくある方法である。魔法円は魔術師を防護するためのものだが、物理的に描く必要はなく、十分に習熟した追儺儀式で事足れりとする意見もある[9]。伝承では、香の煙や動物の血などによって、呼び出した霊を物質化させ、目に見えるようにすることができるとされる。現代では、このようなことは不要であり、幻視や雰囲気の変化で十分とも言われている。
[編集] 脚注
- ^ たとえば、羽仁礼『図解 近代魔術』新紀元社、2005年、ISBN 4775304100
- ^ Crowley, Aleister. Magick, Book Four, Pt. III, Chap. 1. ISBN 0877289190
- ^ 朝松健『魔術戦士 VOL.1 蛇神召喚』(スーパークエスト文庫)、小学館、1997年、ISBN 4094405216、p262
- ^ W・E・バトラー『新版 魔法入門』大沼忠弘訳、出帆新社、2000年、ISBN 4915497607
- ^ ローズマリ・エレン・グィリー『魔女と魔術の事典』荒木正純・松田英 監訳、原書房、1996年、ISBN 4562028580
- ^ アレイスター・クロウリ-『魔術 理論と実践』(新装版)、国書刊行会、1997年、ISBN 4336040435、p200
- ^ 秋端勉『実践魔術講座』硯文社、1998年、ISBN 4882007770、p201-202
- ^ Mathers, S. L. MacGregor, et al. The Goetia - the Lesser Key of Solomon the King. 1995. York Beach, ME: Samuel Weiser. ISBN 087728847X. p70
- ^ Kraig, Donald Michael. Modern Magick. 2nd Ed. 1998. St. Paul, MN: Llewellyn Publications. ISBN 0875423248. p382

