受刑者

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受刑者(じゅけいしゃ)とは、刑事施設の被収容者のうち自由刑すなわち懲役禁錮刑又は拘留刑の執行のため刑事施設に拘置されている者をいう。

法令上は「受刑者」とは懲役受刑者、禁錮受刑者、拘留受刑者の総称をいい(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条4号)、「懲役受刑者」「禁錮受刑者」「拘留受刑者」はいずれも刑事施設に拘置されている者をいう(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条5号~7号)。

以上が法令上の定義であるが、仮釈放が刑の終了を意味するものではないため、一般用語としては仮釈放中の身にある者も含めて用いられることもある。

なお、死刑の言渡しを受けて拘置されている者は「死刑確定者」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条11号)といい、法令上、「被収容者」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条1号)には含まれるが「受刑者」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律2条4号)には含まれない。

以下、特に指定のない場合には、主に日本の受刑者について記述する。

概要[編集]

日本の場合には、受刑者は衣食住を保障されており、また懲役刑に処されている者は刑務作業を科せられている。刑務作業の種類は、金属製品の加工、木材加工、靴や衣類の制作、印刷などさまざまであるが、大半は単純作業である。また、刑事施設内の営繕保守、清掃、被収容者向け図書の貸出など、刑事施設運営にかかる作業をもすべて受刑者に行わせている。

受刑者の処遇においてもっとも問題となるのが、被害者感情への配慮と受刑者の贖罪意識の醸成である。開放的な処遇を行えば、被害者のおかれた状況に照らして優遇されすぎだとなり、厳しい処遇で怪我人が出ると人権問題となる。また、贖罪意識を植えつけるための指導やカウンセリングには費用がかかる上、手法によってはマインドコントロールだなどという批判も起き得る。

待遇[編集]

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律によれば、「受刑者の処遇は、その者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする。」とされている。

受刑者は、定期的に慰問を受けており、「祝祭日には菓子が給与」、「正月にはおせち料理が支給」など、一概に待遇は悪いとは言えない。しかし刑務所内の規則に違反した受刑者には懲罰房監禁などの過酷な制裁が行われ、刑務所内での秩序維持がはかられている。また、受刑態度の良いと認められた受刑者であっても刑事施設の規律秩序の維持及び移動時の事故防止等の観点からの「数字を繰り返し叫びながらの行進方法」(ややもすると「軍隊的行進」と呼称されることもある)や、刑務官による法令に基づいた指導による「規律正しい生活」を求められ、24時間行動を監視されて自由行動が制限されている。また、日本国籍の男子受刑者に対しては一律に丸刈りが強制されている(外国人や女子には強制されていない)。

しかし、「刑事施設は罪を償う場所であるから有形力の行使を伴う懲戒(愛の鞭)は許される」ようなことはなく、これらは違法(特別公務員暴行陵虐罪(刑法第195条))である。「日本の刑務官の労働環境は過酷で労働基本権すら認められていないので、仕事上の不満が受刑者に対する違法な対応につながっている」との指摘もあるようだが[要出典]、無論それらにより違法・犯罪性が阻却されるわけではない。

なお、公職選挙法第11条により、選挙権と被選挙権がない。

作業報奨金[編集]

作業に従事している受刑者には作業報奨金が支給されるが、1時間あたり数銭~数円単位で計算される額の低さから、釈放後の更生資金にもなりえないという批判があるようだが、作業報奨金は恩恵的性格を持つものであり、サラリーマンにおける賃金のような労働対価と異なる。反則行為をした受刑者に対する懲罰として、刑事施設の長は報奨金計算額の3分の1以内を削減することができる。

日弁連では、最低賃金を下回る作業報奨金しか与えられない刑務作業によって、受刑者の製造した製品が民間企業の利潤に供されているという実態があることが明らかになれば、刑務所における労働は日本が批准している「ILO第29号条約」第1条によって禁止されている「強制労働」に該当することとなる旨の意見表明を繰り返し、刑務作業の実施にあたっては、作業報奨金は最低賃金を下回らないよう計算するとともに、慰問やカウンセリング等の機会を増やすべきであると主張している。

諸外国との比較[編集]

生活水準[編集]

世界的には、日本の刑務所における生活水準は高い方である。

ロシアでは未決囚も既決囚も一緒に、何十人もが一房に詰め込まれている状況がある。タイの刑務所では、強盗で服役している受刑者が看守に賄賂をつかって、昼間だけ塀の外でアルバイトをしていたという不祥事があった。

中南米諸国においては、未決も既決も罪の種類もかまわず詰め込まれた仮監房では、受刑者同士での傷害事件や同性愛の強要、少ない糧食をめぐっての殺し合いにまで発展することさえある。

なお日本では刑務所に入れば衣食住が保証され、医療も提供されるため、結果的に自立して生きる術のない障害者(知的障害者、精神障害者、認知症の老人など)の「セーフティーネット」となっている(累犯障害者)という指摘があるが、アメリカ合衆国などでも刑務所が社会的弱者の「福祉施設」化しているのではないかという問題が議論されている。

外部交通権[編集]

開放処遇の進み具合や外部交通権という点では、日本は先進国中では制限が多い。ドイツにおいては服役態度の優良な受刑者が、通勤刑務所のような形での処遇に浴しており、米国の刑務所では外部との電話連絡が許されているところもある。

日本では最も態度優良な、それも出所前の受刑者だけが、刑務所の庭などの清掃作業、あるいは刑務所付属の農場や伐採場での作業を行っている。

刑事施設の長は、開放的施設において処遇を受けていることその他の法務省令で定める事由に該当する場合において、その者の改善更生又は円滑な社会復帰に資すると認めるときその他相当と認める時は、電話その他政令で定める電気通信の方法による通信を行うことを許すことができる(刑事収容施設被収容者処遇法146条)。

面会時間を制限する場合には30分を下回ってはならないが、面会の申出状況、面会場所その他の事情に照らしてやむを得ないと認める時は、5分を下回らない範囲内で30分を下回る時間に制限することができる。面会できる者は、受刑者の親族、受刑者の身分上、法律上または業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者及び受刑者の更生保護に関係のある者、受刑者の釈放後にこれを雇用しようとする者その他の面会により受刑者の改善更生に資すると認められる者である。たとえば、受刑者本人の事情によっては友人・ジャーナリストとは面会することができ、刑事施設の長の指名する職員は原則として面会に立ち会わないので、外部交通権が保障されていない、事件関係の会話などが許されないということはない(刑事収容施設被収容者処遇法より抜粋)。

関連項目[編集]