取鍋

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取鍋に入った溶融した鉄を、鋼に換えるために溶鉱炉に注ぎ込んでいるところ。Allegheny Ludlum Steel Corp. 社にて, 1941年

取鍋(とりべ)とは、鋳造の際に、溶融した金属をすくって型に流し込むためのひしゃくのような容器である。必要な機能としては、

  • 重い金属を保持するに耐え得る強度
  • 溶鉱炉のような耐熱性
  • 溶融した金属から熱が逃げたり、周囲が高温になりすぎないような断熱性

小さい鋳造品のためなら、台所のスープ用おたまのような手で持てる取鍋(ひしゃくと云う)に、持つ人間が熱くない程度に長い柄をつけるだけで十分である。

製鋼所のように、より大きな鋳造品のためには、車輪付きの特製の運搬車や、頭上クレーンからスリングで吊り下げるなどの対応が必要である。

取鍋は、鋼で作られていることが多い。最もよく見られるのは円筒型。'魚雷型'取鍋として知られるものは、2つのボギー車(台車)の間にとりつけられた水平の円筒型のものであり、溶鉱炉から液体状の鉄を移し変えるのに良く用いられる。鉄製の外殻の内側には耐熱性の耐火物が 1 mm (0.04インチ) から 150 mm (6インチ)の厚みで付けられている。耐火物は、鉄製の殻を保護するとともに、保温材として働く。

取鍋は "lip pour傾動式" 型と "bottom pour底注ぎ式" 型があり、

  • lip pour 型では、水差しから水を注ぐように、取鍋を傾けて溶融した金属を注ぎ出す。
  • bottom pour 型では、取鍋の底に注ぎ出し口があり、ストッパー棒が差し込まれている。金属を注ぐにはストッパーは垂直に立っており、金属を取鍋の底から注ぎ出せるようになっている。注ぐのを止めるには、ストッパー棒をドレン口に挿し戻す。製鉄産業で用いられるような大きな取鍋では、タップ孔の下にあるスライド口を用いる。

取鍋は、上部が開いているものもあればカバーがついているものもある。カバーが付いているものでは、(取り外せるものもあるが)ドーム型のフタで輻射熱を保持できるようにしてあり、上部が開いているタイプよりも熱が逃げるのが遅くできる。小さな取鍋はカバーが無いことが多いが、(使えるなら)セラミック布で代用することができる。

中型や大型の取鍋は、トラニオンと呼ばれる回転軸のある箱のついたクレーンに取り付けられる。取鍋を傾けるにはウォームギヤが用いられ、円筒型の外殻を傾けるとともに、箱が重量を支える。ギア機構は大きなハンドルで手作業で操作したり、電気式や空気圧式のモーターで操作される。取鍋を傾ける速度を調整するのには、内部の摩擦ブレーキが用いられる。最も大きな取鍋から注ぎ出すには、特殊な2つのウィンチクレーンを使い、主のウィンチは取鍋を動かすために、2つ目のウィンチは取鍋の底にある取っ手に取り付けられている。2つ目のウィンチを巻き上げることでトラニオンまわりに取鍋が傾動できる。

ある種の取鍋は溶融金属に合金を加えるなど、特定の用途向けに設計されている。また、取鍋の底部にポーラスプラグが差し込まれており、ガスが取鍋を通って溶湯中をバグリングする事とにより、合金化や金属処理(精錬)を促進できるようになっている。


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