原田和典

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

原田 和典(はらだ かずのり、1970年)は、日本の音楽評論家編集者である。雑誌「ジャズ批評」の元編集長。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン理事。

2019年、米ジャズ誌「ダウンビート」国際批評家投票のメンバーに選出された。

ジャズロックブルース歌謡曲などのポピュラー・ミュージックに精通し、多数のCDの解説、監修を行なっている。父親は元ドラマーの原田季雄、いとこにサックス奏者の原博巳がいる[1]

来歴・人物[編集]

北海道旭川市生まれ。幼少時の一時期を札幌で過ごし、ジャズ好きの両親、クラシック・ギター教師の叔母、演歌好きの祖母、プロレス・ファンの祖父、ロックや落語好きの叔父の影響で、幼い頃から音楽を含むエンターテイメントに関心を持つ。家にあるドラムやギターがおもちゃ代わりだったという[2]。初めて意識した音楽は3歳で接したソニー・ロリンズの札幌公演、及び誕生日にプレゼントされたハービー・ハンコックの『ヘッド・ハンターズ』。後者については、「ウサギのジャケットが良かった」と語っている[3]。作文が学校の先生に誉められたことで執筆に興味が向かい[2]、1980年代後半に高野斗志美から文章の手ほどきを受ける[4]

高校卒業後に上京し、「ジャズ批評」誌の編集部で働く。2000年から2005年までは編集長を務めた。その間の1995年には「コテコテ・デラックス」(のちに「元祖コテコテ・デラックス」として再発)を出版した。当時あまり認知されていなかったソウル・ジャズジャズ・ファンクを日本のファンに広く紹介し、そこに掲載されていた数々の作品が世界で初めてCD化された。また1998年から2003年にかけてミュージック・バードでラジオ番組「ザ・ソウル・ソサエティ」の構成、パーソナリティを務めた。

2005年に独立、フリーランスの音楽評論家として活動を開始する。その理由のひとつは「活躍する範囲やジャンルを狭めたくない」からだという[5]。原田もニューヨークを始めとする海外にも年に数度赴き、多くの気鋭ミュージシャンを取材、紹介している。2012年からは「ミュージック・マガジン」誌でJポップ/歌謡曲のアルバム評を担当する。

熱狂的な映画ファンとしても知られ、「映画は監督よりも俳優で見るもの」という主義を持っている[6]。2007年にはトークショー「映画のポケット〜告白的女優論」にゲスト出演した。

大の動物好きでもあり、猫が登場するレコード・ジャケットを集めた本「猫ジャケ」[1]、「猫ジャケ2」[2]では全作品のコメント執筆を担当した。実家ではトイプードルの犬太郎(いぬたろう)を飼っている[7]

ライヴ重視の「現場主義」を貫き、「ブルーノート東京」では初日に行なわれるほぼ全ステージを取材している[8]東京JAZZサマーソニックTOKYO IDOL FESTIVAL等にも足を運んでいる。2018年から「DJコテコテ」として、DJ活動も開始している[9]。2021年、音楽評論家・瀬川昌久、音楽評論家・鈴木道子への動画取材をおこない、それぞれYouTubeにアップされている。

2023年、ラジオ番組「原田和典の音楽定食」(FMりべーる)開始。

著書[編集]

  • 『コテコテ・デラックス』 ジャズ批評社、1995年
  • 『元祖コテコテ・デラックス―Groove, Funk & Soul』ジャズ批評社、1999年10月
  • 『コルトレーンを聴け!』ロコモーションパブリッシング、2005年12月
  • 『世界最高のジャズ』 光文社光文社新書〉、2006年8月
  • 『清志郎を聴こうぜ!』 主婦と生活社、2006年
  • 『新・コルトレーンを聴け!』 ゴマブックス〈ゴマ文庫〉、2008年1月
  • 『猫ジャケ』 ミュージック・マガジン、2008年8月
  • 『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』 プリズム、2008年11月
  • 『猫ジャケ2』ミュージック・マガジン、2009年3月
  • 吉田豪南波一海との共著『アイドル・ソング・クロニクル 2002―2012』 ミュージック・マガジン、2012年8月
  • 馬飼野元宏らとの共著『80年代アイドルカルチャーガイド』洋泉社MOOK、2013年9月
  • 松下佳男らとの共著『オール・アバウト・ウェザー・リポート』シンコーミュージック、2014年5月
  • 馬飼野元宏との共著『昭和歌謡ポップスアルバムガイド1959-1979』シンコーミュージック、2015年8月
  • 映画秘宝編集部らとの共著『新世紀ミュージカル映画進化論(映画秘宝セレクション)』洋泉社、2017年7月
  • 馬飼野元宏らとの共著『昭和歌謡職業作曲家ガイド』シンコーミュージック、2018年3月
  • 『コテコテ・サウンド・マシーン』スペースシャワーネットワーク、2019年3月
  • 『モダン・ジャズ (アルバム・セレクション・シリーズ)』ミュージック・マガジン、2023年8月

監修[編集]

  • 『Jazz Sax』 シンコーミュージック〈The Dig Presents Disc Guide Series〉、2008年9月
  • 『Jazz Piano』 シンコーミュージック〈The Dig Presents Disc Guide Series〉、2009年8月
  • 『Jazz Trumpet』 シンコーミュージック〈The Dig Presents Disc Guide Series〉、2010年7月
  • 『ブルーノート80ガイドブック』ユニバーサルミュージック、2018年11月

主なCD解説作品[編集]

パンフレット[編集]

  • ミュージカル『TOP HAT』 (主演:坂本昌行、多部未華子 2018年)
  • マイ・フーリッシュ・ハート (監督:ロルフ・ヴァン・アイク 2019年日本公開)
  • マイルス・デイヴィス クールの誕生 (監督:スタンリー・ネルソン 2020年日本公開)
  • ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン (監督: ジョン・シャインフェルド 2021年日本公開)
  • ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ (監督: リー・ダニエルズ 2022年日本公開)
  • 『BLUE GIANT 劇場パンフレット』 (原作:石塚真一、監督:立川譲 2023年公開)

脚注[編集]

外部リンク[編集]