加藤繁

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加藤 繁
人物情報
生誕 (1880-09-03) 1880年9月3日
日本の旗 日本島根県松江市
死没 1946年3月7日(1946-03-07)(65歳)
日本の旗 日本静岡県
出身校 東京帝国大学
学問
研究分野 東洋史
研究機関 臨時台湾旧慣調査会慶應義塾大学東京帝国大学
学位 文学博士
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加藤 繁(かとう しげる[1]/しげし[2]1880年9月3日 - 1946年3月7日)は、明治から昭和前期にかけての東洋史学者

人物[編集]

1880年、島根県松江にて、旧松江藩士内田家の4男として生まれる。1歳のとき、同じ元松江藩士の加藤家の養子となる。松江中学時代に三宅雪嶺の支那(中国)研究論に惹かれて東洋史を志す。国民英学会を経て22歳で東京帝国大学史学科支那史学科選科に入学、途中日露戦争に伴う召集による休学を挟んで1906年に25歳で卒業した。この間に内田銀蔵の日本土地経済史の研究と師である白鳥庫吉の影響を受けて、当時日本ではほとんど研究されていなかった中国経済史の研究をテーマとして定めた。

1907年臨時台湾旧慣調査会の事務嘱託となり、1915年までの8年間京都にて織田萬狩野直喜の指導の下で土地制度・産業・法制に関する調査、浅井虎夫と共に『清国行政法』の改訂作業に参加した[3][4]。その後、慶應義塾大学教授となる。1925年に文学博士を授与される。1925年に東京帝国大学講師となり、助教授を経て1936年に56歳で教授となった。1941年の定年退官後も著作活動を行ったが、太平洋戦争敗戦から半年後に疎開先の静岡県で死去した。

また絵画評論や俳句にも才能を発揮し、没後の1962年に「句集」も刊行されている。墓所は多磨霊園にある。故郷の松江市真光寺に旧墓地があり、分骨されている。家紋は蛇の目紋。

受賞・栄典[編集]

研究内容・業績[編集]

  • 当初は中国における土地制度史の研究を行っていたが、後に財政史、更に商業史に転じた。1925年から翌年にかけて刊行された『唐宋時代に於ける金銀の研究』全2巻は、の金融・商業制度について多角的に研究したもので当時としては画期的であった。1925年に文学博士号、1927年に学士院恩賜賞など学界で評価され、当時まだ講師身分ながら東京帝国大学の東洋史における中心人物の1人とみなされ、加藤をきっかけとして日本の中国経済史・社会史研究が本格化することになる。
  • 研究は、資料や統計に基づいた「考證」を重視して緻密かつ着実な論証を重視した。その成果は1944年に出された『支那経済史概説』や没後の1952年から翌年にかけ出された『支那経済史考證』全2巻などに集約されている。『史記』をはじめ、歴代中国正史の食貨志の翻訳も行っている(岩波文庫に、『史記平準書 漢書食貨志』と『旧唐書食貨志 旧五代史食貨志』の2点がある)。その一方で、万世一系の日本と易姓革命の中国の比較から、日本を「忠誠」の文化、中国を「革命」の文化と位置づけた。
  • 1922年吉野作造との共著で『支那革命史』、戦時中の1943年には『絶対の忠誠』を著している。

家族・親族[編集]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『支那古田制の研究』(法律学経済学研究叢書 京都法学会, 1916
  • 『唐宋時代に於ける金銀の研究』 (東洋文庫論叢 1925-1926
  • 『絶対の忠誠』(日本学芸叢書 丁字屋書店, 1943
  • 『支那経済史概説』弘文堂書房, 1944
  • 『支那学雑草』生活社, 1944
  • 始皇帝 其他』(日本叢書 生活社, 1946
  • 『中国経済史の開拓』榎一雄 編. 桜菊書院, 1948
  • 『支那経済史考証』 (東洋文庫論叢, 1952-53

共著[編集]

翻訳[編集]

  • 『続国訳漢文大成 経子史部 第18巻 資治通鑑公田連太郎共訳 国民文庫刊行会, 1930
  • グラス『綜合経済史』大鐙閣, 1930
  • 司馬遷『史記列伝』第1-3 公田連太郎 共訳註. 富山房, 1935-37
  • 司馬遷『史記平準書・漢書食貨志』訳注 岩波文庫 1942
  • 『旧唐書食貨志・旧五代史食貨志』訳註. 岩波文庫, 1948

記念論文集[編集]

  • 『東洋史集説 加藤博士還暦記念』富山房, 1941

脚注[編集]

  1. ^ 加藤繁訳注『史記平準書・漢書食貨志』岩波文庫 1942年 奥付、加藤繁『支那学雑草』生活社 1944年 奥付、加藤繁『支那経済史概説』弘文堂書房 1944年 奥付
  2. ^ 『絶対の忠誠』(日本学芸叢書 丁字屋書店 1943年 奥付、司馬遷『史記列伝』第1-3 公田連太郎 共訳註. 富山房, 1935-37 奥付
  3. ^ 瀧川政次郎『序並びに解題』1977年、5頁。 
  4. ^ 嵐 義人『浅井乕夫小傳』1977年、403 - 406頁。 
  5. ^ 恩賜賞に加藤繁・柴田雄次両博士『東京朝日新聞』昭和2年3月13日(『昭和ニュース事典第1巻 昭和元年-昭和3年』本編p485 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)

参考文献[編集]

回想[編集]