制限選挙

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制限選挙(せいげんせんきょ)とは、全ての人が選挙権を有する普通選挙とは反対に、選挙権の資格要件を設定して制限を設けた選挙制度を指す。

ただし、正確な政治的な意思判断が困難であると考えられる未成年者を対象とした年齢による資格制限や選挙違反などの選挙犯罪によって公民権を停止された者に対する制限は制限選挙の範疇には含まれない。また、普通選挙においても被選挙権の年齢要件を選挙権のそれよりも厳しくする例があるが、これも制限選挙とは別のものとされている。

概要[編集]

制限選挙の資格制限は主に次のようなものがある。

  • 身分 - 身分制議会。特定の身分の出身者にだけ参政権を与えるもので、イタリアやオランダの領邦など、近代以前に多い。
  • 学問 - 7月王政下のフランスでは学会の会員たることを要件にしており、他の国でも識字者であることを要件にした例がある(ただし後者に関しては普通選挙を取る現代の国家でも非識字者の問題は大きな問題であり、政党や候補者ごとに分かりやすいマークを投票用紙などに付ける等の対応を取っている国もある)。
  • 宗教 - かつてヨーロッパの一部の国ではユダヤ教徒イスラム教徒を選挙から排除するためにキリスト教徒である事を要件としていた例がある。
  • 納税 - 市民革命以後にむしろ強く主張された説で、議会において定められた法律に基づいて市民の私有財産の一部を租税として徴収してその使い道を定めるのであるから、租税を納める事の出来ない貧しい民衆が選挙権を有した場合、彼らの手で選ばれた議会によって作られた法律の名のもとに財産を有する者が不当な収奪を受ける危険性があると言われた。そこで清教徒革命の際のパトニ討論においてヘンリー・アイアトンがこの主張を唱え、続いて19世紀の選挙権拡大の動きに対しては納税と選挙権は表裏一体であるとする「代表なくして課税なし」という格言を元にして「課税なくして代表なし」という主張が行われた。納税額を基準にするものが多いが、1918年までのイギリスのように、住居あるいは土地の保有の有無など、資産ないし年収額によって制限した例もある。これは税制の違いにより、間接税が主であるなどの理由から、有資格と見なされるべき富裕な有産市民が必ずしも高納税者ではない場合があったため。
  • 性別 - 女性に参政権がない場合。(女性参政権
  • 人種 - アメリカでは長らく黒人に対して参政権が与えられていなかった。(公民権運動

こうした制限は、19世紀以後の普通選挙を求める運動によって多くの国では廃止されているが、完全に撤廃されたわけではない。

備考[編集]

現在の日本は、日本国憲法第15条「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」により普通選挙が実施されているが、選挙権は住民票が無いと行使できない。2007年大阪市では、日雇い労働者ホームレスなど、居住実態を持たない人々から統一地方選挙告示に合わせて住民票を抹消し、彼らは選挙権を失った(あいりん地区#住民登録問題を参照)。かつてのイギリスほどではないにしろ、住所不定を理由にした選挙権の制限が存在するといえ、ホームレスなどから事実上の制限選挙であるという批判がされた。大阪市の場合は、黙認してきた選挙権をわざわざ剥奪したので目立って報じられたが、他にも住所不定のため、事実上選挙権を失った例は少なくないと見られている。

さらに、被選挙権に関してであるが、日本における供託金の額は、極めて高い水準となっている。高すぎる供託金のため立候補が困難で、日本では有権者に対して開かれた政治が行われないのではないかという批判もあり、高額な供託金は日本国憲法第44条にある、「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。」に明らかに反しており、被選挙権が資産の多寡によって制限を受ける事実上の制限選挙になっており憲法違反であるとする解釈がある。このため、アメリカ合衆国フランスなどのように「立候補者に対して住民による署名を一定数集めることを求める」などの代替案が提案されている。また、イギリスでは供託金が低く日本よりも簡単に立候補できるため売名候補は多いものの、それにより目立った弊害が起きているとは認識されていない。

一方、普通選挙を導入してから軍部(戦前)や官庁(戦後)が台頭した、明治・大正時時代のほうが国が安定していた、政治家の質も今よりよかったなどの理由で、制限選挙を求める声もある。現在の制限選挙導入論者としては、舛添要一(『THE WEEK』などのTV番組で、所得税を納税していない者や学生などの選挙権剥奪を訴えている)などがいる。

関連項目[編集]