初日カバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
エチオピアで発行された川船切手の初日カバー(1974年)

初日カバー(しょにちかばー 英語:First day of issueもしくはFirst day Cover)とは、郵便切手の発行初日に、その発行日当日の消印が押された封筒類のことである。切手収集家や記念品収集家を対象とした郵趣品(記念品)である。英語では"First Day Cover"と呼ばれていることから、その頭文字をとってFDC(エフ・ディー・シー)とも呼称される場合も多い。また封筒ではなく切手に関連した写真もしくはイラストが入った絵葉書に添付して押印する場合もあり、こちらはマキシマムカード(MC)と呼ばれる。

概要[編集]

封筒に貼られている切手に発行日当日の消印があるものを初日カバーと呼ばれている。郵便利用者がたまたま切手発行日に窓口で購入した切手を即座に使用したばあいには、初日カバーが偶然的に生じる。このような使用例は切手が最初に使用されるようになった19世紀後半には偶然の産物であった。

しかし切手収集の趣味が世界的なものになると、郵政当局が新しく切手を発行した際に切手に因んだ記念印を用意して押印するサービスが行われるようになった。そのため初日カバーといえば、こうした意図的に消印が押印された封筒類に対して称されるようになった。ただし、現在も初日カバーを実際に郵便に使用した実逓カバーとして作る場合もあり、高額切手の時には書留便で差し出す場合もある。

この封筒は、切手収集家が自前で用意する場合もあるが、郵政当局ないしその関係機関もしくは民間の切手収集家を顧客とする切手商や美術商が、その切手にちなんだデザインを印刷した封筒を作成して押印する場合が多く、現在では後者の手段で製作したものを初日カバーと呼ばれることが多い。この後者によるデザインのことを「カシェ」といい、前者のカシェのない封筒を「白封」(はくふう)という。このような意図的な初日カバーは1920年代アメリカ合衆国で作られたのが最初といわれ、日本では1940年代後半頃から広く作られるようになった。

デザイン[編集]

国によっては郵政事業体の関連団体もしくは郵政自身が初日カバーを製作することがある。たとえば中華人民共和国の中国集郵総公司のように郵政事業体の関連企業が担当する場合がある。日本では初日カバーのデザインを担当するのは切手収集家に便宜を図る業者であり、多くの国では民間業者で製作する場合が多い。

初日カバーにする封筒は、どのようなものでも可能なので「白封」の場合があるし、後で「白封」の余白に切手収集家自身の手でイラストを書き入れる場合もある。ただし現在では業者製の初日カバーの方が大多数である。

初日カバーは多くの場合は左側に「カシェ」を入れる。対象切手に関連のあるイラストまたは切手図案の原画を使用したものであるが、発行される切手の枚数やサイズによっては下部もしくは全面にはいる場合がある。また印刷方法も芸術的な木版印刷をはじめオフセット印刷や凹版印刷など多岐にわたって存在している。

日本における初日カバー[編集]

「平和紀念」切手を官製絵葉書に貼り特印を押した郵趣品(1919年)
川瀬巴水による渡辺版初日カバーの例(1951年発行の十和田国立公園切手)
1959年に発行された国際航空運送協会総会記念切手の初日カバー(郵政弘済会製作)、このようにカッシュには関連する図案が用いられることが多い

日本で最初に記念切手が発行される際に記念印(正式には特殊通信日付印)が使用されたのは1906年4月29日に発行された日露戦争凱旋観兵式記念(切手面の表記は「明治三十七八年戦役陸軍凱旋観兵式紀念郵便切手」)である。この時には官製絵葉書も同時に発行されており、この絵葉書に切手を貼り付け初日印を押印したものが多数作られている。このような官製絵葉書に記念切手を貼り記念印を押印した郵趣品は、日本では数多く作られており、同様なものは日本の影響下にあった満州国などでも製作された。この頃は官製の絵葉書に切手を貼り初日印を押す、現在のマキシマムカードに近い郵趣品が一般的であった。

その後日本でも封筒に切手を貼り付けて初日印を押した初日カバーが作られるようになった。日本では初日カバーの業者(版元)が多数存在している。そのうち著名なものに渡辺木版美術画舗による「渡辺版」、松屋による「松屋版」と呼ばれる木版印刷で作製したものや、日本郵趣協会による「JPS版」などが有名である。

そのうち木版印刷によるものは、デザインの美しさや人気、または現存数によっては、未使用切手よりも高額で取引されることもある。たとえば、「渡辺版」の版元である渡辺木版美術画舗は銀座の一流店であるが、この渡辺版は会員制で製作数が多くなく、昔から人気があった。その渡辺版のカッシュ作者の一人に著名な版画家川瀬巴水(1883年 - 1957年)がいた。彼の作品を元にした初日カバーは1948年から1956年にかけて製作されたが、彼の手によるものは特に人気が高く、他の版元で製作された初日カバーよりも美術品的価値が高い為、状態が悪いものでも高価である。

現在でも新切手が発行されるたびに初日カバーが製作されるが、近年では切手収集家の減少に加え郵政民営化前後から切手が濫発されるようになったため、人気は以前よりも低下している。初日カバーは多くの場合には、新切手のために特別にデザインされた特印が使われることが多い。ただし普通切手ふるさと切手には特印が使用されない。そのため、特印がない場合には「ハト印」とよばれる日付印や記念印、風景印で代用される場合がある。また切手収集家は、新切手に縁のある地方の郵便局で押印された初日カバーを珍重することが多い。

郵頼[編集]

前述のように初日カバーを製作している業者から購入することも可能であり、多くの業者は頒布会を組織し会員に自動的に郵送する販売方法を取っている。その一方で個人的に初日カバーを製作する者も少なくない。この場合、郵便で依頼して返送してもらう手続きをとることになるが、この方法を「郵頼(ゆうらい)」という。

郵頼では、事前に公表(現在は日本郵便ホームページで新切手のリリースで「郵趣のための押印サービス」として情報が開示されている)されている初日印を取り扱っている郵便局の郵便窓口もしくは郵便事業会社の支店に次のものを送付する。

  • 所要の郵便切手代金(郵便普通為替もしくは郵便定額小為替)
  • 切手をはる位置と切手の種類及び押印箇所等を指定した封筒(23.5cm×12.0cm以内の台紙でも可)
  • 返送先を明記し、必要な郵送料分の切手を貼り付けたもの返信用封筒
  • 依頼状(必須ではないがトラブル防止のため切手の貼る位置と押印する位置を指定する依頼を書く)

この郵頼では、後述する押印希望の「手押し」もしくは「押印機」等を送付用封筒に朱書きで表示し、希望の郵便局の郵便窓口もしくは郵便事業会社の支店に期日までに郵送する事になる。また郵頼では初日カバーに切手を貼り押印しただけの「記念押印」と、初日カバーを実際の郵便物(これを実逓便という)として発送してもらう「引受消印」がある。また、多くの場合には郵頼引受先は東京中央郵便局が指定される場合が多いが、新切手に縁のある郵便局が指定されることもある。

窓口押印[編集]

新切手発行当日に初日印を押すだけは全国各地の郵便局で可能であるが、特印など特別に使用される初日印を押印できるのはごく一部の郵便局または支店のみである。郵便局会社の窓口で押印できるのは主に全国の中央郵便局名など大きな郵便局である。また郵便事業会社の一部の支社窓口でも押印を受け付けている。これらは毎回同じところが指定されることから定例局と呼ばれているが、新切手に特に関係がある場合には、地方の郵便局が指名されることもある。切手収集家の中には、新切手に縁のある風景印が使われる郵便局のものを押印するために、発行日当日に出かけて、そこで初日カバーを製作するものもいる。

押印される初日印[編集]

日本で現在初日印として使用されるものに次のものがある

  • 手押し初日用通信日付印
    • 特印
    • 和文ハト印
    • 欧文ハト印
    • 風景印(特印が作られない場合)
    • 記念印(切手関連のイベントのもの)
  • 押印機用特別日付印
    • 特印
    • 機械ハト印

特印は正式名には「特殊通信日付印」と呼ばれる直径36mmの消印で、鳶色のインクで押印される。新切手に関連のあるデザインで手押印と機械印(絵入り機械ハト印とも呼ばれる)がある。手押印はその名の通り人の手で押印されるもので、使用期間は手押印の場合には1週間使用される。一方の機械印は記念押印機を使用するもので、押印できるのは初日のみである。使用されるのは定例局および指定された郵便局である。

ハト印は正式には「初日用通信日付印」とよばれ、新切手発行当日だけに使用される。錆桔梗色(黒色に近い)のインクで押印される。サイズは通常の消印と同一である。この呼称の由来は印影にハトのマークが入っているためである。ハト印には「和文ハト印」、欧文ハト印、機械ハト印がある。和文ハト印は日本語元号表記による日付印である。欧文ハト印は局名の欧文(ローマ字)表記で西暦による日付印であるが、元々は国際郵便用であるため、国内向けに「引受消印」するのは禁止されている。機械ハト印は局名を和文と欧文で併記しているが、日付は西暦下二桁のみで、抹消部にハトのマークと英語による国名表記"JAPAN"が表示される形式である。

風景印や記念印はふるさと切手や普通切手の場合に用いられるものである。なお、2007年10月に郵政民営化されて以降、郵便局と郵便事業会社のいずれかが取り扱ったかを明らかにするために、郵便局で押印された日付印の年号の下にアンダーバー(下線)が入れられている。そのため、初日カバーでも郵便局または郵便事業会社のいずれかが押印したものかを判断することは可能である。

初日印の印影[編集]

切手発行初日以外の記念カバー[編集]

アメリカ合衆国では大統領就任などの記念カシェも発行されている[1]。また、アメリカ合衆国郵便公社は初日カバー用にデジタル印刷による多色刷り消印を用いるサービスも行っている[2]

ファーストフライトカバー

航空会社が新路線を開設した第一便に搭載される郵便物をファーストフライトカバー"First Flight Cover"と呼ばれている。このカバーの場合には発着地と到着地の消印が入ることで証明している。略称はFFCである。

引用・注釈[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]