初体験 (性行為)

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初体験(はつたいけん、しょたいけん)とは、人生において初めて体験する具体的な性行為を指す。

性行為にはキスペッティングも含まれるが、主に生殖器が交わる性行為(セックス)にまで至った場合を意味することが多い。過去に性行為の体験が皆無であった場合、男性童貞[* 1]女性処女[* 2]と呼ばれる。このことから、初体験を経ることは男性にとっては童貞卒業(俗に筆下ろしと呼ばれる)、女性にとっては処女喪失となる。また、初体験後の男性を非童貞、女性を非処女と称す。なお、肛門に初めてペニスを挿入されることを、男女を問わずアナル喪失などと表現するAVメーカー[1]がある。

概要[編集]

ここでの「性交」とは、へのペニスの挿入[2]を意味する。指やバイブレーター等の異物の挿入あるいは激しい運動や事故での処女膜の損傷については処女喪失とはされないが、例外的にそれらを処女喪失と表現する例も見受けられる。従って、恋人関係にある男女のセックスであっても、性風俗でのセックスであっても構わないが、単独行為のオナニーは含まれない。なお、童貞や処女でなくとも、体験する性行為の内容(同性愛乱交顔射中出しなど)が初めてであった場合は初体験とすることがある。

同義語[編集]

処女喪失の同義語として、ロストバージン[* 3]破瓜初体験女になる男を知るエッチなどがある。破瓜は厳密には処女喪失ではなく、処女膜が損傷することを意味する。なお、初体験は、「はつたいけん」と読むのが正しいが、性交の場合は、「しょたいけん」と発音されることが多い[要出典]

破瓜(はか)
女子性交をはじめて体験し、処女膜が損傷を受けること。あるいは、処女喪失の文学的表現。性交以外の理由で処女膜が損傷を受けることも含む場合がある。由来は「八」(女陰)に「凸」(男性器)が挿入される様を見立てている、そのものが女性器としての暗喩を持つからなど、諸説ある。本来の意味(数え年16の女性)からは離れた用法であるが、対象としては強ち乖離してもいない。近現代ではこちらの意味での使用が多い。

女性の場合[編集]

処女信仰[編集]

ユダヤ教キリスト教イスラム教では婚前交渉は姦淫の罪にあたるとされる。

一部の男性が処女に対して信仰心を持つ。処女信仰の男性は女性が処女であることを喜び、価値を見出す。処女喪失は女性本人以上に男性の関心を集めており、それが交際の障害に繋がっている。オスカー・ワイルド曰く

男はいつも女の最初の愛人になりたがり、女はつねに男の最後の愛人になることを望む。 — 『何でもない女[3]

処女喪失と結婚[編集]

日本の性文化は、時代によって大きく異なる。近世まで処女喪失した後は、村の不特定多数の男性と性交[4]したり(乱交ではなく、相手が次々に変わったという意味)、年配の女性が男子の筆おろしをしたり…といった事が行なわれていた。これらは、レクリエーション的な側面や、豊作祈願などの祭りの側面などもあった。

ただし、武士公家などの身分の高い人々の間にはこのような風習は無かったとされている。

農漁村部における夜這いの風習は、高度経済成長期直前まで残っていた地域もある。

明治時代、日本では女性は結婚するまで処女を守ることが良いとされた。都会の女性のように処女を守る事が進んでいるとされ、逆に処女を守らない田舎の女性は遅れているとされた。これは文明開化と共に当時の西洋の考え方を導入した結果である。明治の思想家の与謝野晶子も「私の貞操観」「貞操は道徳以上に尊貴である」「女子と貞操観念」などで貞操や処女性の重要性を説いた。

1970年代頃までは、女性は処女のまま結婚するのが理想的とされた。貞操と引換に結婚していたのである。その後、フリーセックスやフェミニズムなどが日本にも浸透し、徐々に結婚前に肉体関係をもつ事が広がっていった。

処女喪失に伴う痛みと出血[編集]

処女喪失の痛みは処女膜が裂けること(破瓜)によるものの他に、性交に慣れていない膣の拡張や、膣粘膜と陰茎との摩擦による刺激や傷などによって生じる。処女喪失の出血は処女膜だけでなく傷ついた膣粘膜からの場合もある。しかし、膣が十分に発達している場合、出血しないこともあり、また出血したからといって処女とは限らない。

処女喪失の年齢[編集]

財団法人日本性教育協会2005年に行った調査では中学で性交経験がある女性は3%程度である。どの年度も2-4%でこれは昔とほとんど変わらない。まだ少数の若者の行動である。高校、大学と年齢があがるにつれて増えていく。性行動の低年齢化はどちらかといえば男子よりも女子にあらわれている[5][6]

各国の性に対する意識[編集]

日本近隣諸国との比較[編集]

結婚前は純潔を守るべきである(単位:%)
全くそう思う まあそう思う あまりそう思わない 全くそう思わない 無回答
日本 11.4 29.5 38.1 20.7 0.3
6.3 22.9 22.8 47.4 0.6
アメリカ 16.2 31.3 28.9 14.2 9.3
21.8 34.1 27.8 8.2 8.2
中国 40.2 32.7 17.7 7.7 1.7
43.6 32.9 14.5 7.3 1.6
韓国 28.5 42.7 20.5 7.8 0.5
43.1 33.5 18.7 4.2 0.6

日本青少年研究所 「高校生の生活と意識に関する調査」2004年2月

2004年に日本青少年研究所が発表した「高校生の生活と意識に関する調査」によると「結婚前は純潔を守るべきである」に対して「全くそう思う」と思う日本男子高校生は11.4% で同女子はわずか6.3%と米中韓と比べ圧倒的に低い結果が出た[7]

また純潔肯定派は米中韓のいずれの国でも男子より女子の方が多いが、日本は逆で男子の方が貞操観念がある。

アメリカ[編集]

アメリカは「古きよき時代のアメリカ」といわれた1940年から1960年代までは性の倫理面を重視していた。離婚は少なく健全な家庭生活が推奨された。1960年代後半、欧米中心に性開放の運動が広がり、フリーセックスの風潮も広がった。1990年以降は行き過ぎた性解放が見直された[8]。2000年頃には一部で純潔運動が起こった。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「童貞」という語は、元来性交経験のない男女双方に用いられたが(処女#語源と用法童貞#言葉の由来と歴史参照)、現在ではもっぱら男性について用いられる。
  2. ^ 「処女」という日本語漢語)には時代によって意味合いに変遷があるが(処女#語源と用法参照)、ここではもっぱら「性交を経験していない女性」の意味で用いる。
  3. ^ これは和製英語であり、英語で「処女喪失」を意味する語は「defloration」つまり摘花(てきか)。英語版の記述ではen:Virginity#Definitions of virginity loss

出典[編集]

  1. ^ アナル喪失 初イキ・初アナル・初2穴中出し 相川純菜”. duga.jp (2013年12月16日). 2019年10月25日閲覧。
  2. ^ 三葉 30歳の保健体育, 一迅社; p.42
  3. ^ 男はいつも女の最初の愛人になりたがり、女はつねに男の最後の愛人になることを望む。”. www.j-cast.com (2013年10月12日). 2019年10月25日閲覧。
  4. ^ 高校生のための小説案内、筑摩書房; pp.206-207
  5. ^ 日本性教育協会 | 研究事業について | 第6回青少年の性行動調査”. www.jase.faje.or.jp. 2021年11月24日閲覧。
  6. ^ みんなの初体験の年齢は何歳?478名にアンケート調査で初体験の平均年齢を出しました!”. Lovatomy (2021年7月21日). 2021年11月24日閲覧。
  7. ^ 高校生の生活と意識調査、純潔肯定派4カ国中最低”. 2012年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2004年2月25日閲覧。
  8. ^ 米国の性意識、性行動及び性教育の動向と我が国の課題 (PDF) 四天王寺国際仏教大学紀要

関連文献[編集]

  • 株式会社オウケイウェイヴ (OKWAVE)(編著)『助けて! イケナイ恋にハマッてます ネットだから聞けた、不倫の新常識』株式会社インプレス〈OKWave books〉、2006年10月、24頁。ISBN 978-4-8443-2313-6 
  • 斉藤勇『図解雑学 恋愛心理学』ナツメ社、2005年4月、184-185頁。ISBN 978-4-8163-3882-3 
  • 佐伯順子『「愛」と「性」の文化史』角川学芸 : 角川グループパブリッシング角川選書〉、2008年11月、95頁。ISBN 978-4-04-703431-0 
  • 世界日報社(著)、世界日報「自己抑制教育」取材班(著)『誰も書かなかった アメリカの性教育事情 ―最新現地レポート―』世界日報社、2007年12月。ISBN 978-4-88201-085-2 
  • 田中澄江『かしこい女性(ひと)になりなさい ―美しく生きたいあなたに―』PHP研究所、2008年6月、35頁。ISBN 978-4-569-70023-6 
  • 布川清司『民衆倫理思想の国際比較研究』西日本法規出版、2004年12月、176頁。ISBN 978-4-86186-211-3 
  • 三浦桃源『幸福論 ―幸せを3倍にふやす方法―』文芸社、2000年12月、57頁。ISBN 978-4-8355-0883-2 
  • 水野喬『闘った「のんき節」 ―タレント議員第一号・演歌師石田一松―』文芸社、2002年12月、397頁。ISBN 978-4-8355-4855-5 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]