分岐 (数学)

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系統的に分岐を図示:Y 上のほとんど全ての点のファイバーは、3個の点から構成される。しかし例外は、Y のドットでマークした 2か所の点では、ファイバーがそれぞれ 1つと 2つの点からなる。写像 f は Y のこれらの点で分岐するといわれる。

数学では、分岐(ramification)は、複素数に対する平方根の函数のように、幾何学的に分岐することを意味し、符号の異なる 2つの枝を持つことを言う。分岐は、空間の分岐点で被覆写像退化するときに、(分岐は互いに出会うので)互いに写像のファイバーを共通に持つ反対側(シート)の視点からも使う。

複素解析では[編集]

複素解析では、基本モデルとして、z = 0 の回りの複素平面を写像する z \to zn を取ることができる。これは指数 n の分岐のリーマン面上の標準的な局所描像である。例えば、種数についての写像の有効性についてのリーマン・フルヴィッツの公式で、このようなことが起きる。分岐点 (数学)も参照。

代数トポロジーでは[編集]

被覆写像で、オイラー・ポアンカレ標数は、シートの枚数をかけねばならなく、従って、分岐はかけることにより、落ちてしまうものを見つけねばならない。z \to zn 写像は、局所パターンとしてこれを示している。0 を除外し、言わば 0 < |z| < 1 で見てみると、(ホモトピーの観点より、)n-乗写像はオイラー標数が 0 のを円自身へ写すし、オイラー標数 1 の円板も写すが、z = 0 で互いに合流する n 毎のシートとして n – 1 個の点は失われてしまう。

幾何学的な項では、分岐は余次元 2結び目理論のように)やモノドロミー英語版を起こす。余次元 2 は複素余次元 1 であるので、局所的な複素的な例は、高次元の複素多様体のパターンを作り出す。複素解析では、シートを直線(一変数)に沿って、あるいは、一般的には余次元 1 の部分空間に沿って折り曲げて単純化することができない。分岐集合(上のベース上の分岐軌跡、二重点)は、取り囲んでいる多様体というよりも実次元が 2 次元低くなる。従って、2つの側へは分離しなく、局所的には、例の中にあるように分岐軌跡を追跡する系となる。任意の上の代数幾何学では、この類似により、代数的な余次元 1 となる。

代数的整数論[編集]

Q の代数拡大[編集]

ガロア拡大での素イデアルの分解を参照

代数的整数論での分岐は、ある素イデアルへの素数の繰り返しの分解を意味する。R を代数体 K の整数環とし、P を R の素イデアルとする。各々の K の体の拡大 L に対し、L の中の T の整閉(integral closure) S と S のイデアル PS とを考えることができる。PS は素であるかどうか分からないが、[L:K] を有限とすると、素イデアルの積

P1e(1) ... Pke(k)

となる。ここに Pi はそれぞれ S の異なる素イデアルである。すると P が L で分岐しているとは、ある i に対して e(i) > 1 であるときとを言う。言い換えると、P が L で分岐するとは、分岐指数 e(i) が 1 より大きな Pi が存在することを言う。全ての i に対して、e(i) = 1 の場合を不分岐と言う。同値な条件としては、S/PS が零でないべき零英語版(nilpotent)元を持つことである。べき零元は有限体の積ではない。リーマン面との類似は、19世紀に既にリヒャルト・デーデキント(Richard Dedekind)とハインリッヒ・ウェーバー英語版(Heinrich M. Weber)が指摘していた。

分岐は、相対判別式英語版(relative discriminant)により K にエンコードされ、相対差イデアル英語版(relative different)により L にエンコードされる。相対判別式は K の整数環のイデアルであり、P で割りきれることと、P を割る S のイデアル Pi が存在し分岐することをは同値である。相対差イデアルは L の整数環のイデアルであり、Pi が分岐するとき、S の素イデアル Pi で割り切れる。

分岐指数 e(i) が全て P の標数 p と互いに素であるときを、分岐が扱い易い(tame)と言い、そうでない場合を野生的(ワイルド)(wild)と言う。この条件はガロア加群英語版(Galois module)の理論に重要である。デデキント整域の有限生成なエタール拡大 B/A が扱い易い(tame)ことと、トレース \mathrm{Tr}: B \to A が全射であることとは同値である。

局所体では[編集]

数体での分岐のさらに詳しい分析は、局所的な問題であるので、p-進数の拡大を使い進めることができる。局所的な場合には、基本的にはどのくらいガロア群が計量から動くかを問うことで、分岐を測る量がガロア拡大に対して定義される。分岐群英語版(ramification group)の列が定義され、とりわけ、野生的(wild)な分岐が具体化される。つまり、幾何学的な類似を超えた意味を持っている。

代数では[編集]

付値論では、付値の分岐理論英語版(Ramification theory of valuations)で、 K の拡大体への付値の拡大英語版(extensions)の集合を研究する。このことが代数的数論、局所体、デデキント整域での概念へ一般化される。

代数幾何学では[編集]

代数幾何学では以下に定義する不分岐射(unramified morphism)の考え方があり、エタール射を定義するために役立つ。[1]

スキーム  Y の中の点  y に対し、対応する局所環の射
f^\# \colon \mathcal{O}_{X, f(y)} \to \mathcal{O}_{Y, y}
を考える。 \mathfrak{m}  \mathcal{O}_{X,f(y)} の極大イデアルとし、
\mathfrak{n} = f^\#(\mathfrak{m}) \mathcal{O}_{Y,y}
\mathcal{O}_{Y,y} の中の  \mathfrak{m} の像により生成されたイデアルとする。射  f 不分岐とは、局所的に有限型で、かつ、 Y のすべての  y に対し、 \mathfrak{n}  \mathcal{O}_{Y,y} の極大イデアルであり、誘導された写像
\mathcal{O}_{X,f(y)}/\mathfrak{m} \to \mathcal{O}_{Y,y}/\mathfrak{n}
有限次拡大分離拡大である場合を言う。この考え方は、代数的整数論での不分岐拡大の幾何学バージョン(一般化)である。

f: X \to Y をスキームの射とする。準連接層 \Omega_{X/Y} の台(サポート)を f分岐軌跡(ramification locus)と呼び、分岐軌跡の像 f\left( \mathrm{Supp} \Omega_{X/Y} \right)fブランチ軌跡(branch locus)と呼ぶ。\Omega_{X/Y}=0 であれば、f形式的に不分岐(formally unramified)と言い、f も局所有限表現であれば、f不分岐であるという[ヴァキル(Vakil)のノートを参照]。

脚注[編集]

  1. ^ 事実、有限型スキーム X, Y の射 f: X → Y が (i) エタール射であることと、(ii) f が平坦でかつ相対微分 \Omega_{X/Y}=0 であること、(iii) f が平坦かつ不分岐であることの 3つは同値である。スキームの射が、滑らかでかつ相対次元が 0 であることをエタールと言うのであるが、この同値性により不分岐を定義として使用することができる。

参照項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]