八つ墓村

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八つ墓村』(やつはかむら)は、横溝正史著による長編推理小説。本作を原作とした映画が3本、テレビドラマが6作品、漫画が5作品、舞台が1作品ある(2010年8月現在)。9度の映像化は横溝作品の中で最多である(次いで『犬神家の一族』が映画3本、ドラマ5本)。1977年の映画化の際、テレビCMなどで頻繁に流された「祟りじゃ~っ!」というセリフ=キャッチコピーは流行語にもなった。

目次

[編集] 概要と解説

本陣殺人事件』(1946年)、『獄門島』(1947年)、『夜歩く』(1948年)に続く名探偵金田一耕助シリーズ長編第4作。

小説『八つ墓村』は、1949年3月から1950年3月までの1年間、雑誌『新青年』で連載、同誌休刊を経て、1950年11月から1951年1月まで雑誌『宝石』で『八つ墓村 続編』として連載された。1952年に「第5回探偵作家クラブ賞」候補にノミネートされる。

作者は、戦時下に疎開した岡山県での風土体験を元に、同県を舞台にした幾つかの作品を発表しており、研究者の間で「岡山編」と呼ばれることもある。本作は『獄門島』や『本陣殺人事件』と並び称される「岡山編」の代表作である。また、山村の因習や祟りなどの要素を含んだスタイルは、後世のミステリー作品に多大な影響を与えた。

物語は、冒頭部分を作者が自述、それ以降を主人公の回想手記の形式で進行する。冒頭に登場する「村人32人殺し」は、岡山県で実際に起こった津山事件がモデル。村の名前も実在した近隣の地名、真庭郡八束村(現在の真庭市蒜山)が元。犯人が猟銃と日本刀で殺戮の限りを尽くすシーンは衝撃的かつ印象的で、センセーショナルな殺害シーンの多い横溝作品の中でも特に際立っている。

登場人物が非常に多く、人物相関が入り組んでいる上、トリックが複雑で巧妙なことから、映像化作品はいずれも大幅な改編省略を余儀なくされており、特に里村典子(さとむら のりこ)は、事実上のヒロインであるにもかかわらず、1951年の松田定次監督作と1996年の市川崑監督作の各映画版と2008年の関智一演出の舞台版に登場する他は削除されている。


注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。


[編集] 物語

金田一ものには珍しく、冒頭の過去談を除いては、主人公寺田辰也の一人語りの形式をとる。物語はすべて彼の口から語られ、彼の体験の順に並ぶ。そのため、金田一による捜査や推理、それに説明は時系列上は遅れて出るところが多い。

[編集] あらすじ

戦国時代(永禄9年=1566年)のとある小村に、尼子氏の家臣だった8人の落武者たちが財宝とともに逃げ延びてくる。最初は歓迎していた村人たちだったが、財宝と褒賞に目が眩らみ、武者達を皆殺しにしてしまう。今際の際に、武者大将は「この村を呪ってやる! 末代までも祟ってやる!」と呪詛の言葉を残す。その後、村では奇妙な出来事が相次ぎ、祟りを恐れた村人たちは野ざらしになっていた武者達の遺体を手厚く葬るとともに村の守り神とした。これが「八つ墓明神」となり、いつの頃からか村は「八つ墓村[1]」と呼ばれるようになった。

大正時代、村の旧家「田治見家」の当主・要蔵が発狂し、村人32人を惨殺するという事件が起こる。要蔵は、その昔、落武者達を皆殺しにした際の首謀者・田治見庄左衛門の子孫であった。

そして20数年後の昭和23年、またもやこの村で謎の連続殺人事件が発生することとなる。物語は、寺田辰也の身辺をかぎ回る不審人物の出現から始まる。彼は母一人子一人で暮らしてきて、戦争に行き、戻ってくると、天涯孤独の身となっていた。ところが、彼をラジオで捜す者があり、諏訪弁護士の仲介で彼の元に老人と面会する。二人きりになったとたん、老人は血を吐いて死ぬ。

[編集] 登場人物

金田一耕助(きんだいち こうすけ)
私立探偵。
寺田 辰弥(てらだ たつや)
「私」で本編の主人公。要蔵の息子で田治見家の跡取りとして、八つ墓村に呼び戻される。酢の物が嫌い。
磯川 常次郎(いそかわつねじろう)
岡山県警警部。

[編集] 八つ墓村

[編集] 田治見家

落武者達の殺害の首謀者である田治見庄左衛門の子孫。東屋と呼ばれる村の分限者[2]。資産は昭和23年(1948年)当時の金額で1億2000万円以上にも達する。

田治見 小梅(たじみ こうめ)
田治見 小竹(たじみ こたけ)
一卵性の双子の老姉妹。要蔵の大伯母。両親を失った要蔵を育てた。田治見家の財産を狙う親族に嫌悪感を持ち辰弥に対して跡取りとして家督を継ぐことを心より願っている。
田治見 要蔵(たじみ ようぞう)
田治見家先代。26年前、妻子がありながら井川鶴子を無理矢理、自分の妾にした。辰弥の父親が亀井陽一という噂を聞いて、鶴子と辰弥に暴行。鶴子母子が家出して10日余り後、猟銃日本刀で武装し32人を虐殺し、山の中へと姿を消した。
田治見 おきさ(たじみ おきさ)
要蔵の妻。26年前の事件で、要蔵に斬り殺された。
田治見 久弥(たじみ ひさや)
要蔵の長男で、田治見家当代。肺病を患っており自分の寿命が短いことを悟り、辰弥に田治見家の跡取りとなることを心より願い、病床の中で辰弥を探し出し家を託す。
田治見 春代(たじみ はるよ)
要蔵の長女。1度嫁いだが、子供が産めない体となったため離縁され、実家に戻って小梅、小竹の身の回りの世話をしている。辰弥の気持ちを察しており辰弥に出生の秘密をしばらく隠していた。

[編集] その他

久野 恒実(くの つねみ)
村の診療所の医者で、要蔵の従兄弟。しかし医師としての腕は心もとなく診療所の薬品管理も杜撰である。県会議員選に幾度も出馬して落選しており選挙資金に湯水のごとく金をつぎ込む。子だくさん。趣味は推理小説を読むこと。
里村 慎太郎(さとむら しんたろう)
要蔵の甥。元軍人(階級は少佐)。戦後は没落し、村に戻って失意の生活を送っている。
里村 典子(さとむら のりこ)
慎太郎の妹。26年前の事件のさなかに8か月で生まれた。天真爛漫な性格。
お島(おしま)
田治見家に仕えている女中
野村 荘吉(のむら そうきち)
西屋と呼ばれる村の分限者。美也子の亡き夫・達雄の兄。
森 美也子(もり みやこ)
荘吉の義妹で、未亡人。
諏訪(すわ)
神戸の弁護士。野村家縁者。
新居 修平(あらい しゅうへい)
疎開医者。
井川 丑松(いかわ うしまつ)
鶴子の父で辰弥の祖父。
井川 浅枝(いかわ あさえ)
鶴子の母で辰弥の祖母に当たる。
井川(寺田) 鶴子(いかわ(てらだ) つるこ)
辰弥の母。郵便局で事務員をしていたが、田治見要蔵に拉致され、無理矢理妾にされた。亀井陽一との噂で要蔵に暴行を加えられ、「いつか殺される」と思い込んだ彼女は辰弥と神戸に避難。その後、15歳年上の寺田虎造と結婚。死去。
井川 兼吉(いかわ けんきち)
丑松の甥。鶴子が監禁された後に丑松の養子となった。
亀井 陽一(かめい よういち)
小学校の訓導で、鶴子の恋人。26年前の事件後、遠くの小学校に転勤する。その後の消息は不明。
長英(ちょうえい)
麻呂尾寺の住職。
英泉(えいせん)
長英の弟子。度の強い眼鏡をかけている。戦争中は満州の寺にいたが、終戦後に引き揚げて麻呂尾寺に入った。だが、その正体は…。
洪禅(こうぜん)
蓮光寺の住職。
妙蓮(みょうれん)
通称「濃茶の尼」。迷信深く八つ墓明神の祟りを恐れている。手当たり次第他人のものを盗む癖があるため、村人達からは疎まれている。夫と子供を26年前の事件で殺された。辰弥に対して敵対心を持つ。
工藤校長(くどうこうちょう)
小学校校長で辰弥の本当の父親のことを知っている唯一の人物。良心的な性格。
梅幸(ばいこう)
慶勝院の。妙蓮とは対照的な、きちんとした尼。
片岡 吉蔵(かたおか きちぞう)
西屋の博労。26年前の事件では新妻を殺された。それゆえに要蔵の身内である辰弥に憎しみを抱き、事件が進むに連れて次第に暴走していく。

[編集] メディア

[編集] 映画

  • 八ツ墓村1951年11月2日東映松田定次監督、主演:片岡千恵蔵
    • 『八つ墓村』最初の映画化作品。地方の旧家を舞台にした正統派のミステリー。片岡演じる金田一はスーツ上下にソフト帽というダンディなスタイルで登場。

[編集] テレビドラマ

[編集] 舞台

[編集] ラジオドラマ

[編集] 関連ドラマ

  • TRICK2 「六つ墓村」(2002年テレビ朝日
    • エピソード1(第1話~第3話前半)
    • 村の名前、名前は六つ墓村、侍の関係性など『八つ墓村』を題材とした作品だが同一ではない。

[編集] 漫画

本作品の漫画との関係は横溝正史#経歴および金田一耕助#漫画化作品に譲る。

  • 八つ墓村 :週刊少年マガジン1968年10月13日に連載開始、作画:影丸譲也、出版社:講談社
    • 少年誌で初めて取り上げられた劇画による金田一耕助シリーズの第1作目。影丸はその後、1979年に『悪魔が来りて笛を吹く』、2006年に『霧の別荘の惨劇』を発表。
  • 八つ墓村 :作画:つのだじろう、秋田書店(絶版)
  • 八つ墓村 :作画:掛布しげを、チャンスコミック社(雑誌掲載後未刊行)
  • 八つ墓村 :作画:JET、あすかコミックス、角川書店
    • 被害者一人が減らされている。また終盤のシーンが異なる。
  • 八つ墓村 :作画:長尾文子、秋田書店

[編集] CD

  • CD 八つ墓村 :CDブック、角川書店、1996年
  • 八つ墓村 :東宝映画『八つ墓村』オリジナル・サウンドトラック

[編集] ゲーム

[編集] 関連イベント

本作は幽霊が登場しないため1977年の松竹映画版の内容を再現している。

[編集] 脚注

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  1. ^ 鳥取県と岡山県の県境にある山中の寒村。作品中で金田一は「この向こう」の鬼首村(おにこうべむら)からの帰りに八つ墓村に立ち寄ったと説明され、前作『夜歩く』との連続性が示唆されている。
  2. ^ 岡山弁で『金持ち、資産家』の意味。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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