償い (さだまさし)

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償い」(つぐない)は、1982年に発表されたシンガーソングライターさだまさしのアルバム『夢の轍』(ゆめのわだち)の収録曲の一つで、知人の実話を元につくられた楽曲。作詩・作曲さだまさし、編曲渡辺俊幸。6分15秒。

実際の裁判で引用され話題となり、命の尊さ、犯した罪への償いを考えさせるため、運転免許更新の際の放映ビデオ内で使われているほか、交通キャンペーンにも使用されている。

目次

[編集] 実話

この楽曲は、知人の実話を元に作られたものである。ただし曲中では、優しく真面目な心の持ち主である交通事故の加害者「ゆうちゃん」をメインに、それを見守る同僚の気持ちを歌詞にした物になっているが、実際にはさだの知人である被害者の奥さんの体験と事実を元に詩が作られている。(さだは、「ゆうちゃん」に該当する加害者とは会ってはいない)

さだの知人の女性が交通事故で伴侶を亡くした。加害者の男性は真面目な人らしく、毎月わずかずつではあるが賠償金を郵送してきていた。彼女は加害者の手書きの文字を見るたびに、事故の事や亡き夫を思い出しては辛い思いをしていた。事故から数年経ってもその送金は続き、知人は茶道の師範として経済的にも自立できていることから、「もうお金は送ってくれなくて結構です」と加害者に対して返事の手紙を書いた。しかし、被害者の許しの手紙を受け取ったはずの加害者は、償い続けるために翌月以降も送金を続けた。

[編集] 裁判での引用

2001年4月29日東京世田谷区東急田園都市線において、4人の少年が銀行員の男性に対し車内で足が当ったと口論の末、三軒茶屋駅のホームで4人がかりで暴行を加え、のちにくも膜下出血で死亡させるという事件が起きた。

後日出頭した4人の内、主犯格となった2名が傷害致死罪に問われて逮捕され、事件の重大さから地方裁判所の公開法廷で審理が行われることとなった。裁判の中で2人は「申し訳なく思います」「自分という人間を根本から変えてゆきたい」などと反省の弁を述べた一方、事件自体は酔った被害者がからんできたことによる過剰防衛であると主張し、裁判中の淡々とした態度や発言から、真に事件に向き合い反省しているかどうか疑問を抱く態度を繰り返していた。

2002年2月19日東京地裁において判決公判が行われ、少年2人に対して、懲役3~5年の不定期実刑が下された。判決理由を述べあげた後、山室惠裁判長が被告人2人に対し「唐突だが、君たちはさだまさしの『償い』という唄を聴いたことがあるだろうか」と切り出し、「この歌のせめて歌詞だけでも読めば、なぜ君たちの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と説諭を行った。

裁判官が具体的に唄の題名を述べて被告を諭すことは異例のことであり、『償い説諭』はマスコミに取り上げられ話題となった。

さだまさしは新聞社の取材に対して、「法律で心を裁くには限界がある。今回、実刑判決で決着がついたのではなく、心の部分の反省を促したのではないでしょうか」とコメントしたうえで、「この歌の若者は命がけで謝罪したんです。人の命を奪ったことに対する誠実な謝罪こそ大切。裁判長はそのことを2人に訴えたかったのでは」と述べた。[1]

[編集] ライナーノーツ

さだまさしは著書『さだまさし 夢のかたみに』にて、この楽曲に次のような引用をしている。

「ゆるすというのはことはむずかしいが、もしゆるすとなったら限度はない-ここまではゆるすが、ここから先はゆるせないということがあれば、それは初めからゆるしていないのだ」山本周五郎『ちくしょう谷』より

[編集] 収録作品

  • アルバム『夢の轍』
  • コンピレーションアルバム『償い~SONGS OF LIFE』
  • ベストアルバム『さだまさしベスト2~通』
  • ベストアルバム『さだの素~さだまさしベスト・入門編』
  • ライブDVD『風の交響曲(シンフォニー) さだまさし』(“まさしんぐWORLDコンサート”第20回公演特別記念)
  • シングル(ヤマト運輸製作・配布の非売品)2002年にヤマト運輸のドライバーに配布された。

[編集] 関連作品

[編集] 参考文献

  1. ^ 幻冬舎刊 長嶺超輝箸 『裁判官の爆笑お言葉集』P5~8より