働かざる者食うべからず

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働かざる者食うべからず」(はたらかざるものくうべからず、en:He who does not work, neither shall he eat)は、労働に関する慣用句である。

意味[編集]

働こうとしない怠惰な人間は食べることを許されない。食べるためにはまじめに働かなければならないといういこと。

歴史[編集]

テサロニケの信徒への手紙二』3章10節には「働きたくないものは食べてはならない」という一節がある。

If any would not work, neither should he eat. 「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」

これが「働かざる者食うべからず」という表現で人口に膾炙している。ここで書かれている「働きたくないもの」つまり「怠惰なもの」とは、働きたくても働くことができないで人の世話になっているといった、止むを得ない生活をしている人のことではなく、正当で有用な仕事に携わって働く意志をもたず、拒んでいる者のことである。

ソビエト社会主義共和国連邦およびソビエト連邦共産党(前身はボリシェヴィキ、現在はロシア連邦共産党)の初代指導者レーニンは、同党の機関紙「プラウダ」第17号(1929年1月12日発行)にて論文「競争をどう組織するか?」を寄稿し、「働かざるものは食うべからず」は社会主義の実践的戒律であると述べた。かつて、レーニンがこの言葉を使った際には不労所得で荒稼ぎする資産家達を戒める為のものであった。その後憲法典では1936年制定のソビエト社会主義共和国連邦憲法(スターリン憲法)では第12条にこの表現がある(1991年ソ連崩壊でこの憲法は失効)。

In the USSR work is a duty and a matter of honor for every able-bodied citizen, in accordance with the principle: "He who does not work, neither shall he eat". 「ソ同盟においては、労働は、『働かざる者は食うべからず』の原則によって、労働能力のあるすべての市民の義務であり、名誉である。」

近年の日本では、本来の意味から離れ、経営者にとって都合の良いプロパガンダに変わり、「失業者は食わずに我慢しろ」「営業成績の悪い営業マンは給料を与えない」という意味で使われることがある。日本は社会主義国のように労働の機会のすべてを握っていないので、すべての失業者に適当な職業を紹介できない。よって職業安定法などで失業対策をする義務を負っている[1]。なお、職業安定法による失業対策自体は、雇用を生み出しているのではないため、不景気の際には雇用を生み出す施策を講じる事も求められる。 現実的に働いていない者の中から働きたくても働けない者を選別するのは簡単なものではない[2]ために、ベーシックインカムの議論も生まれている。

勤労の義務」は日本国憲法第27条第1項に規定されている教育納税と並ぶ日本国民の3大義務であるが、そもそも、日本のような資本主義社会において、労働は倫理的性格の活動でなく、労働者の生存を維持するためにやむをえなく行われる苦痛に満ちたものである[3]。 人類の最終目的が、全てを機械化・自動化するによることにより、生きる為に必要な労働から解放されることであるならば、「働かざる者食うべからず」は時代錯誤と言えるのかもしれない。

参考文献[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 憲法読本第3版 杉原泰雄 岩波書店 2004年 ISBN 9784005004713 p144
  2. ^ ベーシックインカム入門 山森亮 光文社 2009年 ISBN 9784334034924 p60
  3. ^ 東京大学社会科学研究所 1968, pp. 201-202

関連項目[編集]