保証

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

保証(ほしょう)とは、法律用語の一つであり、民法上に規定された契約としての保証(保証契約)のことである。

民法について、以下では条数のみ記載する。

総説[編集]

保証とは、主たる債務者が債務を履行しない場合に、その債務を主たる債務者に代わって履行する義務を負うことをいう(446条)。

この義務を保証債務(ほしょうさいむ)とよび、義務を負う者を保証人(ほしょうにん)と呼ぶ。保証債務は、保証人と債権者との間で締結される契約(保証契約)によって生じる。

抵当権のように物の交換価値によって債務の弁済を担保する物的担保に対し、保証は、保証人の資力(財力)を弁済の担保とするため、連帯債務などとともに人的担保といわれる。保証人が自然人である場合は個人保証、法人である場合は法人保証という。特に、信用保証協会のように保証を業務とする法人によってなされる保証は機関保証という。

保証債務の性質[編集]

保証債務は、主たる債務との関係で以下のような性質を有する。

独立性
保証債務は、それによって担保されている主たる債務とは別個独立の債務である。
同一内容性
保証債務とそれによって担保された主たる債務の内容は、原則として同一である。もっとも、保証の内容は保証契約で定まるのであり、主たる債務の内容から一義的に定まるものではないから、同一内容性の原則はしばしば排されているといえる(例えば、サーカス公演契約を保証した者は自らサーカスを行うのではなく、違うサーカス団を探してきたり、損害賠償をしたりといった内容の保証債務を負っていると考えられる)。
付従性(附従性)
保証債務の成立、変更、消滅は、主たる債務の成立、変更、消滅に従う。つまり、保証債務は、主たる債務がなければ成立せず、主たる債務より重い債務となることはなく、また主たる債務が消滅すればともに消滅する。保証債務の付従性は、成立、(内容の)変更、消滅の各局面において、それぞれ、成立における付従性、内容における付従性、消滅における付従性として問題となる。後に詳述する。
随伴性
主たる債権について債権譲渡がされた場合、保証債務履行請求権も主たる債権と同時に債権の譲受人へと移転する。
補充性
保証債務は、主たる債務者が債務不履行に陥って初めてその補充のため履行する義務が生じる二次的な債務であること(446条)。
そのため、保証人は、債権者から履行を請求された場合に催告の抗弁権検索の抗弁権を持つことになる。後に詳述する。

保証債務の成立[編集]

保証債務は、保証人と債権者との間の保証契約によって成立する。その前提として、主たる債務者が保証人に保証を依頼する保証委託契約が締結されることが多いが、保証委託契約の有無は保証契約の効力に何ら影響を及ぼさない。

要式契約[編集]

2004年(平成16年)の民法改正により、保証契約には書面または電磁的記録が必要となった(446条2項、3項。要式契約)。これは、従来から軽い気持ちで保証を引き受けて重い負債を負ってしまうことがあるので、そのようなことを防ぐ目的である。

保証人の要件[編集]

保証人は、債務者が立てる義務を負う場合には、行為能力者であり、弁済をする資力を有することが必要である(450条1項)。保証人が弁済の資力を失ったときは、債権者は代わりとなる保証人を立てるよう請求することができる(450条2項)。債務者は450条1項に定められる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供することで保証人に代えることができる(451条)。 なお、保証人の要件について定めた450条1項・2項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には適用されない(450条3項)。

成立における付従性[編集]

成立における付従性とは、保証債務は主たる債務を担保するものであるから、保証債務が存在するためには、主たる債務が有効に成立していなければならないという原則である。主たる債務が無効であったり取り消されたりすれば、保証債務も無効又は消滅する。ただし、保証契約時に行為能力の制限によって取り消すことができる債務であることを知りながら保証した者は、主たる債務が不履行の場合又は主たる債務が取り消された場合において、主たる債務と同一の内容の独立した債務を負担したものと推定される(449条)。

保証債務の効力[編集]

保証債務の範囲[編集]

保証債務は、主たる債務に関する利息違約金損害賠償のほか、債務に従たるすべてのものを包含する(447条1項)。保証人は、その保証債務についてのみ、違約金・損害賠償額を約定することができる(447条2項)。

内容における付従性[編集]

保証人の負担が主たる債務より重いときには、保証人の負担は主たる債務の限度に減縮するので、保証債務が主たる債務よりも過大になることはない(448条)。これを内容における付従性という。

催告の抗弁権・検索の抗弁権[編集]

保証債務には補充性から催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められる(446条)。

催告の抗弁権
保証人は、債権者から履行の請求をされた場合に、まず主たる債務者に催告をするよう請求でき、主たる債務について一時的責任を負わされることを回避することができる(452条)。
検索の抗弁権
保証人は主たる債務者が債務を(たとえ一部であっても)履行できるだけの資力を有しており、かつ執行が容易であることを証明すれば、債権者からの請求を拒むことができる。この場合、債権者はまず主たる債務者の財産について執行しなければならなくなる(453条)。

債権者が催告や執行を行っても主たる債務者から全額について弁済を受けられなかった場合、再び保証人に債務の残部の履行を請求することになる。しかし、これらの抗弁権が行使された場合、債権者が直ちに催告や執行をしなかったがために弁済額が減少したのであれば、その分までを保証人に負担させることはできない(455条)。例えば、主たる債務が100万円だったとして、検索の抗弁を受けた後すぐに執行をしたなら70万円は回収できたところ、それを怠ったがために50万円しか弁済を受けられなかったとする。通常なら残る50万円は保証人の負担となるが、抗弁の後すぐに執行すれば70万円を回収できたのであるから、債権者は保証人に対して30万円しか請求することはできないのである。

これらの抗弁権は債権者にとって厄介な負担であることから、特約によって排除されることが多い。このように、債権者が、主たる債務者に催告・執行をしなくても、いきなり保証人に債務の履行を請求することができる保証のことを連帯保証という(「特殊な保証」の項でも説明する)。

保証人の相殺権[編集]

保証人は債権者に対して主たる債務者が持っている債権により相殺しうる(457条2項)。

保証債務の対内的効力[編集]

  • 主たる債務に生じた事由
    • 付従性により、主たる債務について生じた事由は原則として保証債務にも効力が及び、主たる債務の時効(消滅時効)が中断した場合には保証債務の時効も中断する(457条1項)。ただし、保証債務の限界は保証契約で定められているから、主たる債務が加重されても、保証債務は加重されない。
  • 保証債務に生じた事由
    • 保証債務について生じた事由は、主たる債務を消滅させる行為(弁済、供託、代物弁済、相殺、更改)に限り主たる債務に効力が及ぶことになる。例外的に連帯保証の場合には連帯債務の規定が準用される(458条)。

保証債務の消滅[編集]

消滅における付従性[編集]

弁済や相殺によって主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する(消滅における付従性)。

ただし、主たる債務が債務不履行に陥って契約を解除された場合、主たる債務は損害賠償債務や原状回復義務による債務へと変化するが、保証債務はその債務をも担保する。

また、契約がいったんは有効に成立しながらも後に合意によって解除された場合、ここで生じる損害賠償や原状回復義務は合意解除の際の債権者と主たる債務者による新たな取り決めによって発生したものである。原則からいえば元の主たる債務は消滅しているのだから保証債務も消滅するのだが、この合意によって生じた債務についても保証の効果が及ぶとされる。ただし、保証人の関知しないところでなされた合意によって債務が生じるのだから、保証人に過大な責任を押し付けることも考えられる。そこで保証人を保護するため、保証債務が存続するのはその内容が従前よりも重いものではないときに限られるとされる。

求償権の問題[編集]

保証人が債権者に対して債務を弁済した場合(つまり肩代わりをした場合)、保証人は債務について最終的な責任を負うものではないから、主たる債務者に対して求償できる。しかし、保証人となった経緯に応じて求償できる範囲や方法が異なる。

  • 主たる債務者からの委託を受けて保証人となった場合(保証委託契約が締結されている場合)
    • この場合、保証人は、肩代わりした債務の全部について主たる債務者に求償することができる(459条1項)。この場合、求償できる範囲は、法定利息、必要となった費用、及び損害賠償まで含む(同条2項)。
    • また、債務が弁済期にあるときなど一定の場合には、保証人は、保証債務を履行する前でも、あらかじめ主たる債務者に求償することができる(460条、事前求償権)。
  • 主たる債務者からの委託を受けずに保証人となった場合
    • この場合、保証人は、肩代わりで弁済した当時、主たる債務者が利益を受けた限度で求償できる(462条1項)。この場合の求償権の法的性質は、不当利得返還請求権(703条)ないし事務管理の費用償還請求権である。
    • 利益が現存しないことの立証責任は求償を受ける主債務者の側にある[1]
  • 主たる債務者の意思に反して保証人となった場合
    • この場合、保証人は、求償の時点で主たる債務者が利益を受けている限度で求償できる(462条2項)。
  • 共同保証人間の求償権(465条442条

また、保証人が債務を弁済する場合、弁済の事前および事後に主たる債務者に対して自分が弁済する旨を通知しなければならないが(通知義務、463条1項)、これを怠った場合にも求償が制限される場合がある。

特殊な保証[編集]

連帯保証[編集]

  • 連帯保証の意義
    • 主たる債務の債務者が弁済できない場合に二次的に履行の義務を生じるという性質(補充性)が認められず、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証を連帯保証という。連帯保証をした者を連帯保証人という。
  • 連帯保証の特徴
    • 以下の点で補充性が認められる通常の保証(単純保証)とは異なる。
      • 単純保証の保証人には催告の抗弁権検索の抗弁権が認められるが、連帯保証の連帯保証人には催告の抗弁権検索の抗弁権がない(465条)よって債権者はいきなり保証人の財産にかかっていけることになる。
      • 通常の単純保証では、保証人が数人いる場合には各保証人は債権者に対して保証人の数に応じて分割された部分についてのみ債務を負担する(456条427条)。これを分別の利益という。連帯保証の場合には、この分別の利益がなく、連帯保証人が数人いる場合であっても、各連帯保証人は債権者に対して債務の全額について責任を負わなければならない。なお、連帯保証人間の内部関係においては、各連帯保証人には負担部分が存在するので、連帯保証人の一人が自己の負担額を超えて弁済した場合には、他の連帯保証人に求償することができる(465条1項・442条)。
      • 主たる債務者と保証人のどちらか一方に生じた事由が他方に及ぼす事項について連帯債務の履行の請求等の規定が準用される(458条)。
  • 商法上の特則
    • 民法では特約のない限り単純保証が原則であるが、商法は民法の特則として、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものである場合、もしくは保証が商行為である場合(これらを商事保証という)には、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても当該保証債務は各自が連帯して負担する連帯保証になるとする(商法第511条2項)。

継続的保証[編集]

一定の範囲で継続的に発生する不特定の債務を包括的に保証するという保証の形態を継続的保証(根保証)といい、その債務の範囲として金銭の貸渡しや手形の割引を含むもので保証人が個人であるものを貸金等根保証という(465条の2)。

継続的保証の例として、身元保証や信用保証がある。商工ローンで問題となることが多く、これについてはクレサラ問題の記事を参照。

「民法の一部を改正する法律」が平成17年4月1日より施行され、個人である保証人の保護を図るため、貸金等根保証についてそれまでの取扱いを大きく変える改正がなされた。 貸金等根保証契約では、極度額を約定しない場合、無効となる。また、5年以内の元本確定日を定めなければならず、定めなかった場合は3年となるほか、5年を超える確定日を定めた場合も3年となる。

共同保証[編集]

  • 共同保証
    • 保証人が1人の場合を単独保証というのに対し、保証人が2人以上いる保証の形態を共同保証という。保証人間に連帯のない通常の共同保証では、各保証人は債権者に対して均等に分割された保証債務の部分についてのみ債務を負担するという分別の利益(456条427条)が認められる。分別の利益が認められる共同保証の場合、保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときには民法462条が準用される(465条2項・462条)。なお、分別の利益は特約で排除される場合がある(後述の保証連帯)。
  • 保証連帯
    • 共同保証のうち、分別の利益を特約によって排除し、各保証人が債権者に対して債務の全額について責任を負うこととすることとするものを保証連帯という。保証連帯は分別の利益のない点で連帯保証と似ているが、保証連帯の場合には催告の抗弁権や検索の抗弁権が認められる点で連帯保証とは異なる。保証連帯の場合にも保証人間の内部関係においては、各保証人には負担部分が存在するので、保証人が自己の負担部分を超えて弁済したときには、超過部分について他の保証人に求償することができる(465条1項・442条)。

脚注[編集]

  1. ^ 潮見佳男『プラクティス民法債権総論(第3版)』信山社、608頁

関連項目[編集]