保科洋

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保科 洋
G.マーラー:交響曲第5番を指揮する保科洋 ~ 2006年12月23日岡山大学交響楽団第53回定期演奏会より(岡山シンフォニーホール
基本情報
生誕 (1936-01-31) 1936年1月31日(88歳)
出身地 日本の旗 日本東京都
学歴 東京芸術大学音楽学部
ジャンル クラシック音楽
職業
A.ブルックナー:交響曲第8番を指揮する保科洋 ~ 2003年11月16日岡山大学交響楽団第50回記念定期演奏会大阪公演より(ザ・シンフォニーホール(大阪))

保科 洋(ほしな ひろし、1936年1月31日 - )は、日本作曲家編曲家指揮者

人物・来歴[編集]

東京都生まれ。1960年東京芸術大学作曲科卒。作曲を長谷川良夫、指揮法を渡邉暁雄に師事。卒業作品にて第29回毎日コンクール作曲部門(管弦楽)で第1位受賞[1]。以後作曲活動の傍ら、東京音楽大学愛知県立芸術大学兵庫教育大学で教鞭をとり、現在は、兵庫教育大学名誉教授、作陽音楽大学客員教授、浜松アクト音楽院音楽監督[2]を務める。日本バンドクリニック委員会名誉顧問[3]。作品は管弦楽曲、オペラ、室内楽、ミュージカルなど幅広く、吹奏楽では日本を代表する作曲家の一人である。

管弦楽分野では、1966年より岡山大学交響楽団の常任指揮者となり、同団を全国的な水準へ押し上げた。保科アカデミー室内管弦楽団“アンサンブル=ハルモニア”(岡山大学交響楽団OBによる室内楽団)名誉指揮者および音楽総監督。

作曲家の兼田敏とは東京芸術大学の同級生であり[1]、吹奏楽の普及にともに尽力する。2009年、管弦楽作品:ホルン協奏曲「巫女の舞」がイタリアのポルチア国際ホルンコンクール本選課題曲に選ばれる[4]

保科の吹奏楽曲は、全日本吹奏楽コンクールの自由曲やコンサートで度々取り上げられ、「復興」「風紋」「古祀」は人気曲である。全日本吹奏楽コンクール課題曲としてはこれまでに4度取り上げられ、その全てが公募ではなく、全日本吹奏楽連盟の委嘱作品である。

神奈川大学吹奏楽部の演奏会に客演指揮として出演が多く、これまでに4度出演している(第40回、第46回、第48回、第50回定期演奏会)〈2018年時点〉。

2015年11月瑞宝中綬章受章[5]

主な作品[編集]

管弦楽作品[編集]

  • オーケストラのための「寂」(岡山大学交響楽団第20回定期演奏会記念作品)
  • 祀(岡山大学交響楽団第25回定期演奏会記念作品)
  • 祝典舞曲(岡山大学交響楽団第30回定期演奏会記念作品。1985年、吹奏楽版を関西学院大学応援団総部吹奏楽部が初演)
  • オーケストラのための「饗宴」(岡山大学交響楽団第35回定期演奏会記念作品)
  • 創生の詩(吹奏楽版は三木市吹奏楽団委嘱作品 管弦楽版は岡山大学交響楽団第40回定期演奏会記念作品)
  • 管弦楽のための変奏曲(岡山大学交響楽団第45回定期演奏会記念作品)
  • Jubilant prelude「祝祭前奏曲」(岡山大学交響楽団第50回定期演奏会記念作品)
  • Requiem 〜ある青年の死を悼んで〜(岡山大学交響楽団第51回定期演奏会委嘱作品)
  • 独奏ホルンのための管弦楽作品「巫女の舞」(保科アカデミー室内管弦楽団第10回定期演奏会にあたり、1969年岡山大学交響楽団を卒部した杉本賢志の為に作曲 第21回イタリア・ポルチア国際ホルンコンクール本選課題曲)
  • 「はだしのゲン」管弦楽セレクション(岡山大学交響楽団第55回定期演奏会記念作品 後にオペラ「はだしのゲン」を管弦楽曲に改編)
  • 風紋(原典版)[管弦楽版](保科アカデミー室内管弦楽団創立15周年記念特別演奏会にあたり、同名の吹奏楽曲から編曲)
  • 懐想譜 [管弦楽版](保科アカデミー室内管弦楽団第5回定期演奏会にあたり、同名の吹奏楽曲から編曲)
  • 復興 [管弦楽版](岡山大学交響楽団第60回定期演奏会のため、2013年に同名の吹奏楽曲から編曲)

吹奏楽作品[編集]

  • 古祀(1980年 ヤマハ吹奏楽団浜松の委嘱により管弦楽曲「祀」を吹奏楽版に編曲。1998年に改訂)
  • 愁映(1984年 関西学院大学応援団総部吹奏楽部創立30周年委嘱作品 1999年に改訂)
  • 吹奏楽のためのカタストロフィ(1973年 静岡県立浜松工業高等学校吹奏楽部委嘱作品)
  • 吹奏楽のためのカプリス(1974年 ヤマハ吹奏楽団浜松委嘱作品 第1回笹川賞創作曲コンクール吹奏楽部門1位受賞作品)
  • 交響的断章(1972年 ヤマハ吹奏楽団浜松委嘱作品)
  • 懐想譜(2001年 兵庫教育大学吹奏楽部退官記念作品)
  • 五月によせて(1999年 日本吹奏楽指導者クリニック30周年記念委嘱作品)
  • 風薫る五月に(2001年 日本吹奏楽クリニック委員会委嘱作品)
  • 秋空への賛歌(2004年 神奈川大学吹奏楽部委嘱作品 ミッドウエストクリニックにおいて作曲者指揮により初演)
  • 交響曲(1996年 木村吉宏の委嘱作品)
  • イルミナッシォン《若き日への蜃気楼》(2000年 高槻市音楽団管楽部委嘱作品)
  • コンサート・マーチ「アンタルスの王子」(1966年作曲)
  • コンサート・マーチ「クリスタル・ロード」(1989年 兵庫教育大学吹奏楽部委嘱作品)
  • シンフォニック・オード(1986年 福井ブラス・アカデミー委嘱作品)
  • リフレクション-映像-(1992年 東芝EMIの委嘱〈新実践吹奏楽指導全集作成のため〉)
  • ファンファーレとセレブレーション(1991年 関西大学吹奏楽部委嘱作品)
  • 栄光を超えて(2004年 関西学院大学応援団総部吹奏楽部創部50周年記念委嘱作品)
  • 響宴I(1988年 ナゴヤ・ディレクターズバンド創立20周年記念委嘱作品)
  • 響宴II(1990年 兵庫教育大学吹奏楽部の委嘱により、管弦楽曲「響宴Ⅱ」を吹奏楽版に編曲)
  • 吹奏楽のための交響的変容「澪明」(1989年 大阪市市制100周年記念 大阪市音楽団委嘱作品)
  • 独奏テューバと管楽合奏のためのコンチェルティーノ(1988年 チューバ奏者香川千楯のための作品)
  • 遙かなる歌(1987年 熊本大学吹奏楽部委嘱作品)
  • Lamentation To ──(Theme and Variations)(1999年、弦楽曲“管弦楽のための変奏曲”を第2変奏を除いて吹奏楽版に編曲したもの。「Lamentation to 兼田敏」である。兼田敏との「お互いのためのレクイエムを書く」という約束から作曲した。なお、兼田敏は「[[第34回全日本吹奏楽コンクール課題曲#[B]「嗚呼!」|嗚呼!]]」を作曲していた。)
  • パストラーレ(1985年 日本吹奏楽クリニック委員会委嘱)
  • マリンバとバンドの為のカプリス(1991年 福井ブラスアカデミー委嘱作品)
  • 椛(はなのき)(1981年 東海吹奏楽連盟創立20周年委嘱作品)
  • そよ風(マーチ)(1994年 愛知県国民体育大会実行委員会委嘱作品)
  • メモワール(1996年 福井ブラスアカデミー委嘱作品)
  • 碧き彼方へ(1997年 航空中央音楽隊委嘱作品 新隊庁舎落成記念)
  • 音づくりのエチュード(2001年 福井ブラスアカデミー委嘱作品)
  • 復興(2010年 ヤマハ吹奏楽団浜松委嘱作品 1月にサントリーホールで初演され、同年に開かれた第58回全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞 英題は「The Rebirth」)
  • オルランド・ディ・ラッソの主題による変奏曲(2012年)
  • 翔陽(2012年 三田学園中学校・高等学校吹奏楽部 創部100周年記念演奏会委嘱作品)
  • オネイロス(2015年 第18回 21世紀の吹奏楽“響宴”委嘱作品)
  • 3つのコラール 教会の窓辺で/黄昏のうた/祈りのことば(2015年 ウィンズスコア出版 吹奏楽基礎合奏 スーパー・サウンド・トレーニングの中の一部)
  • 碧空の翼(2015年 航空自衛隊中部音楽隊委嘱作品)
  • 交響曲第2番(2016年 広島ウィンドオーケストラによる「保科洋80歳記念プロジェクト」のための委嘱作品)
  • 吹奏楽のための交響曲第3番(2020年 東京佼成ウインドオーケストラ創団60周年記念委嘱作品)

全日本吹奏楽コンクール課題曲[編集]

※4作品全て全日本吹奏楽連盟の委嘱作品

年度 曲名 備考 課題曲番号
1976年 カンティレーナ B
1987年 風紋 1999年 作曲当時の構想に基づいた原典版を出版 課題曲版の演奏時間が約5分に対し、原典版は約8分 A
1998年 アルビレオ III
2017年 インテルメッツォ III

声楽作品[編集]

  • オペラ「はだしのゲン」(1981年)
  • ここにあるもの(混声四部 作詞/藤谷貴暢 兵庫県小野市市制50周年記念)
  • 合唱組曲「このみち」(混声三部または四部 作詞/金子みすず 兵庫教育大学退官記念、同学芸術系音楽コース合唱団のために作曲)
  • 貝殻の歌(1964年 混声四部 作詞/保科洋)

室内楽作品[編集]

  • トロンボーン・テューバとピアノのための対話 [2017]
  • 2台のマリンバのためのシャコンヌ [2015]
  • 木管五重奏「無邪気ないたずら」[2010]
  • クリオネのワルツ -流氷と戯れるクリオネの踊り- [2008](金管バンドの為の)
  • Impression for Flute Orchestra [2003]
  • 薄明かりの歌(バスーン又はユーフォニウムとピアノのための)[2003]
  • 祈り そして 戯れ ~ 光りのもとの ~(オーボエとピアノの為の)[2003]
  • 寂燈(木管五重奏)[2002]
  • シェリアク(弦楽合奏)[2002]
  • 深淵(クラリネットとピアノの為の)[2000]
  • 3本のヴィオラとピアノの為のカプリス [1996]
  • Requiem 1995 ~ A L’aube de Kobe (for Clarinet Orchestra) [1995]
  • 妖精の夢(無伴奏フルート・ソロ)[1994]
  • ファンタジー(ユーフォニァムとピアノの為の)[1986]
  • ソナチネ(木管五重奏)[1982]
  • アラベスク(サキソフォン四重奏)[1979]

編曲作品[編集]

吹奏楽への編曲[編集]

管弦楽への編曲[編集]

著書[編集]

  • 生きた音楽表現へのアプローチ—エネルギー思考に基づく演奏解釈法(音楽之友社(1998/05) ISBN 4276140110
  • 和声応用のたのしみ — より色彩的な伴奏法をめざして(田畑 八郎との共著 音楽之友社 (1985/03) ISBN 4276315514
  • 楽曲分析と演奏解釈 〜「悲愴」「風紋」を例として〜 (Hoshina Music Office)

Hoshina Music Office[編集]

保科洋の個人音楽事務所。主に、作品管理、他社で出版されていない作品の楽譜の出版やレンタル等を行う。

脚注[編集]

  1. ^ a b 小久保まい (2017年). “保科洋 CD掲載インタビュー全文 | フィルハーモニックウインズ浜松”. フィルハーモニックウインズ浜松. 2021年9月8日閲覧。
  2. ^ 新着情報|浜松市アクトシティ音楽院”. 浜松市アクトシティ音楽院 (2021年5月). 2021年9月8日閲覧。
  3. ^ 2021 JAPAN BAND CLINIC - ジャパンバンドクリニック” (pdf). 日本吹奏楽指導者クリニック (2021年5月15日). 2021年9月8日閲覧。
  4. ^ 第20回ポルチア国際ホルンコンクール/「巫女の舞」の乱舞」『PIPERS』第342号、2010年2月、2021年9月8日閲覧 
  5. ^ 平成27年秋の叙勲 瑞宝中綬章受章者” (PDF). 内閣府. p. 17 (2015年11月3日). 2023年3月11日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]