使い走り (小説)

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使い走り』(つかいはしり、原題:Errand)は、アメリカ小説家レイモンド・カーヴァーが最後に書いた短編小説

概要[編集]

ザ・ニューヨーカー』1987年6月1日号に掲載された[1]。1988年5月刊行の精選作品集『Where I'm Calling From: New and Selected Stories』(アトランティック・マンスリー・プレス)と1988年8月4日刊行の短編集『Elephant and Other Stories』(コリンズ・ハーヴィル社)に収録された。

1987年の初め、E・P・ダットン社の編集者からフランス人伝記作家アンリ・トロワイヤの『チェーホフ伝』[2]が送られると、カーヴァーはやりかけていた仕事を中断しただちに読み始める。チェーホフの治療にあたっていたシェヴェラー医師がシャンパンを一瓶注文する場面でカーヴァーは「私は今一篇の短篇小説の中に送りこまれたのだと」感じ、本作品の執筆にとりかかった[3]。合計で1ダースほどの文章をマイケル・ヘンリー・ハイムの訳文から抜き取り、少しだけ言い換えた文章を使用した。「実際に起こった出来事から逸脱するわけにはいかない」と彼は考えていたという[4]。最後の場面でホテルのボーイがとる行動は、テス・ギャラガーの提案によって生まれた[5][6]

『プライズ・ストーリーズ 1988』の第1位に選出され、『ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ 1988』にも収録された。

日本語版は『マリ・クレール』1989年12月号が初出。翻訳は村上春樹。『THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 6 象/滝への新しい小径』(中央公論社、1994年3月7日)に収録された。村上が編纂した、12編の作品から成る『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』(同社、1994年12月7日)にも収録されている。全集第6巻はその後「村上春樹翻訳ライブラリー」シリーズでは、『』(中央公論新社、2008年1月10日)と『滝への新しい小径』(同社、2009年1月10日)の2冊に分かれて出版された。

あらすじ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ERRAND BY RAYMOND CARVER, June 1, 1987The New Yorker
  2. ^ 邦訳も存在する。『チェーホフ伝』(中央公論社、1987年11月、村上香住子訳)。
  3. ^ 『THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER 7 英雄を謳うまい』 中央公論新社、2002年7月7日、214-215頁。「『使い走り』について」より。
  4. ^ キャロル・スクレナカ 著、星野真理 訳『レイモンド・カーヴァー 作家としての人生』中央公論新社、2013年7月10日、670頁。 
  5. ^ キャロル・スクレナカ 『レイモンド・カーヴァー 作家としての人生』前掲書、671頁。
  6. ^ D・T・マックス「誰がレイモンド・カーヴァーの小説を書いたのか?」 『月曜日は最悪だとみんなは言うけれど』中央公論新社、2006年3月、村上春樹編訳、47-48頁。

関連項目[編集]