住民基本台帳ネットワークシステム

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住民基本台帳ネットワークシステム(じゅうみんきほんだいちょうネットワークシステム、通称:住基ネット)とは、日本において、地方公共団体行政機関で個々の日本国民を特定する情報を共有・利用することを目的として構築され稼働したシステム。市区町村住民基本台帳に記録されている者(=日本国民)に11桁の住民票コードが割り当てられる。準備期間の間に総務省によるe-Japan重点計画の一環と位置付けられて稼働開始した。カードの交付率は約5%[1]

住基ネットの構成[編集]

市区町村、都道府県、全国センター、および行政機関を結ぶ形で構成される[2]。全国センターは指定情報機関である地方公共団体情報システム機構が運営している[3]

市区町村[編集]

コミュニケーションサーバ (CS) という中継用のサーバが設置され、既存の業務ネットワークと住基ネット回線にそれぞれ個別のファイアウォールを介して接続する[4]。既存の住民記録システムとは業務ネットワーク側のファイアウォールを通して通信を行う[4]。また、CS端末と呼ぶ検索用端末があり、CSと通信して住基ネット上の情報を検索・表示することができる[4]。CS端末はCSと同一のネットワークセグメントに置く場合と、業務ネットワーク内に置いてファイアウォール経由でCSにアクセスする場合と、両方ある。

都道府県[編集]

都道府県サーバが設置されており、ファイアウォールを介して住基ネット回線に接続する[4]

全国センター[編集]

業務/DBサーバと情報提供サーバが設置されている[4]。業務/DBサーバは、住民票コードを割り当てられた者全ての情報を保持するものであり、情報提供サーバは行政機関からの検索に対して情報提供するものである[4]。住基ネット回線と行政機関との通信回線の双方にファイアウォールを設置[4]。なお、全国センターの所在地は地方公共団体情報システム機構の住所地が事務局として公にされているが、データセンターはこれとは別に平成18年度の時点で東京都内に設置されている。セキュリティ上の観点から外観からは一切判らないようになっており、住所も非公開である。

回線[編集]

住基ネットの回線は専用回線であるとされている[4]。具体的には専用線ではなく、IP-VPNが今のところ用いられている。

住基ネット内で管理される情報[編集]

住基ネット上に保有される情報は、本人確認情報と呼ばれる個人を特定するための情報である。本人確認情報は、住民票コードおよび4情報(氏名生年月日性別住所)と変更情報と呼ばれるこれらの変更履歴とからなり、変更情報には変更年月日と変更理由が含まれる[3]

本人確認情報の開示請求や訂正の申出は、都道府県知事または指定情報処理機関に対して行うものとされている。

住基ネットを利用する手続・方法[編集]

  • 住民基本台帳に記録されている者であれば特段の事前手続きなく基本的に誰でも利用できるもの
    • パスポート申請や年金の請求、各種検定試験の申し込みに住民票の写しの添付が不要となる。(年間約460万件の添付が省略されている。平成20年度実績。総務省公表値[5]
    • 老齢基礎年金受給者が、年1回生存している事の証明の捺印を市区町村の窓口でもらい葉書で社会保険庁に返信していた「年金受給権者現況届」(現況届)が2006年12月から不要となる[6]。(年間約3600万人分の現況届が省略されている。平成20年度実績。総務省公表値) ただし、住民基本台帳ネットワークシステムを利用して社会保険庁が確認を行うことから[7]、住民(受給権者)の住所地市区町村が住民基本台帳ネットワークシステムに参加していないような場合には行えない。[8][9]
    • この住民基本台帳ネットワークシステムは公的年金である国民年金および厚生年金厚生年金基金年金記録問題などの解決のための照合又は突合せ作業に使用される。ただし、住民である年金加入者および年金受給者の住所地市区町村がこのシステムに参加していなければその作業は行えない。
    • 居住地以外でも住民票の写しの交付を受けることができる。(住民基本台帳カード運転免許証やパスポートなどの官公庁が発行した写真付きの証明書が必要)
  • 住民基本台帳カードの交付を受けると利用できるもの
    • 身分証明書としての利用。 住民基本台帳カードは、氏名のみが印字されたAバージョンと、顔写真と氏名・生年月日・性別・住所を印字したBバージョンがあり、希望のカードを選択することができる。顔写真付きの住民基本台帳カード(Bバージョン)は、市町村長が交付する公的な身分証明書として使え、運転免許証健康保険証などがなくても本人確認が行える。このことから、高齢者が運転免許証を返上すると、特典として無料で交付される自治体もある。
    • 転出届を転出先市区町村にあらかじめ郵便で届出する(付記転出届)ことにより、窓口での手続きを転入時の1回で済ませることができる(付記転入届)
    • 公的個人認証サービス電子証明書秘密鍵の保存用カードとなる。(行政機関および地方公共団体へのあらかじめ定められた届出や申請などにおいて、印鑑と紙の印鑑証明書の組み合わせによる個人認証に変えて、電子証明書を用いることでインターネット経由での届出・申請等を行うことができるようになる。)
  • ただし、これらは住民票コードの割り当てを受けていない者や市区町村のサーバが接続されていない市区町村に居住している者とそこへの転入者は、ネットワークを利用できないため、サービスを受けることができない。

なお、住民票コードを民間が利用することは法律禁止されている[3]

住基ネットに対する問題提起[編集]

住基ネットは既存のインターネットと同一の技術で構成されていながらも、かなりの精度で孤立したネットワークとなっているが、導入に前後して思想・信条の枠を超えてセキュリティプライバシーの不安が取りざたされた。長野県はネットワークへの侵入実験を実施し、田中康夫知事(当時)は侵入可能であると公表した。実際には住基ネット内部に侵入することはできず、住基ネットに接続された庁舎内ネットワークに侵入したに過ぎなかったことが後日発表された資料により明らかとなった[10]

法的に関連する個人情報保護法関連五法が成立するまでは施行を「違法」ととらえ接続しない自治体も相次ぎ、反対運動も各地で起きた。

かつて接続していなかった自治体も順次接続しているが、現在でも福島県矢祭町は、接続していない。

次のような批判的な指摘もなされている。

  • 住民票の写しの取得は必ずしも頻繁に利用されるようなサービスではなく、膨大なコストをかけてシステムを構築するメリットがあるか疑わしいこと。また、全国どこでも住民票の写しを取得できるとされるが、遠隔地から住民票を取得できることには、ほとんどの国民にとってメリットがないと考えられること(ただし、利用頻度は地域差・個人差がありこの指摘は当たらない場合もある。また、住基ネットのメリットは住民票の写しの取得に限定されたものではないことから、これのみをもって膨大なコストと論ずることは当を得ていないとも考えられる)。
  • 東京にあるサーバにデータを集め、それを全国に送信できる体制にするという形をとっているが、それがネットワークセキュリティ上、望ましい形式であるか疑わしいこと。
  • 住基カードが市町村単位の発行であるため、転居時などに転出元への返還・転入先での新規取得を要し、住居異動の多い人にとっては恒久的な身分証明書としてのメリットが少なかった。パスポート運転免許証と違い一度取得しても全国で更新できなかったため、終身通用するわけではなかった。
    ※総務省はこの批判に応え、2009年1月、一度取得すれば転出入の際に内容と住所表記を書き換えることによって全国で通用するよう、法令を改める方針を決め[11]2012年7月9日より転入届を提出した日の90日以内に所定の窓口に提出し、住所表記を書き換えることで引き続き使用できるようになった。
  • 住基ネットは国家があらゆる個人情報を抱え込むことへの布石ではないか。

以下のような失態(主に運用面)が起きている。

  • 2002年12月26日、福島県岩代町(現在の二本松市)でバックアップ用の個人情報と住民基本台帳システム稼働用のプログラムの一部が入った磁気テープの盗難事件が発生した。総務省によれば暗号化された情報を解読・利用するのは不可能ということである。
  • 2006年3月29日には、北海道斜里町の職員がAntinnyに感染し住基ネットの情報がWinnyのネットワークに流出したと発表した。住民基本台帳ネットワークの接続パスワードなどのほか水道料金や町税の未払い者など642人分の個人情報も流出(住基ネットに登録されている個人情報は流出していないものの、ずさんな管理が行われていることが明らかとなった)。
  • 2006年10月21日に、東京都足立区が住基ネットの取り扱い窓口業務16種類を足立区の独自の判断で民間の人材派遣会社に委託させていたことが判明。総務省はこの対応に対し「民間委託は想定外だ」と発言し、厚生労働省はこの扱いについて足立区に対し説明を求めることとなった。
  • 2007年末までに偽造された住民基本台帳カードによって偽の身分証明に使われる悪用とその犯罪が50件報告されている。他の種類のカードに比べて偽のカードを作りやすいとの指摘も有り、報道によれば総務省ではその対策として、本物と偽物のカードを判別するソフトウエアを開発し、金融機関や携帯電話会社に配布している。
  • 2008年12月京都市在住の当時17歳の女子高生が、19歳の姉に成り済まして住基カードを取得し、同市祇園クラブで、ホステスとして働いていたことが、翌2009年12月になって判明。京都府警は、この女子高生を有印私文書偽造・同行使などの容疑で逮捕したが、同市では「年齢の近い同姓の人物が、必要書類を揃えて申請に来た場合、防ぎようが無い」としており、新たな問題点として浮上している。しかし一方で、総務省は「本人確認を徹底する以外に無い」としており、特に対策は取らないとしている[12]

住基ネット漏洩事件[編集]

  • 2002年11月3日北海道新聞朝刊に記載された記事で、苫小牧市のある家に、東京の金融業者から、突然「カネを借りろ」という電話があり、その業者の男は11桁の番号を何度も読み上げ、その人の住基ネットの番号をピタリ言い当てた。その上で、「オンラインで調べればなんでもわかる」とすごみ、その人の口座番号や家族構成などその業者は言い当てて、その人の口座にお金を振り込むから、利子をつけて返せという「押し貸し」をされそうになった(即座に口座を凍結して未遂におわった)。いわゆるヤミ金融に情報が流出した事件である。
  • 兵庫県加古川市において、同市の複数の職員が、住民基本台帳に記載された住民情報を探偵業者に漏洩していたことが2013年に明らかになった。漏洩した住民情報が、恐喝未遂事件に悪用されていたことも判明している[13]

住基ネットへの不接続・選択制を選ぶ自治体と主張[編集]

接続しない自治体や市民選択制を導入した自治体とその後[編集]

  • 住基ネットに接続していない自治体は、福島県矢祭町である。
  • 国立市が接続していないことに起因する市の経費支出について、国立市民が市長に対する住民訴訟を起こしており[14]2011年2月4日、東京地裁は、住基ネットからの離脱は違法と指摘した上で、一部経費の支出差し止めと支出の一部を市に返還することを市長に命じた[15]
  • 横浜市は、以前、将来は段階的に住基ネットに参加することを前提にする市民選択制度をとっていた。この接続方法を報道などでは「横浜方式」と呼んでいる。横浜市は、2006年5月10日に、住基ネットの総合的な安全性が確認できたとして2006年7月から全ての住民の本人確認情報を住基ネットに送信する全面参加に移行することを発表した。
  • 杉並区は、区長の山田宏個人情報保護法成立後に横浜方式の市民選択制度を求めていたが実現しなかったため、法の下の平等に反する等として2004年8月24日に国及び東京都に対して訴えを起こした(プライバシー侵害については、神奈川県藤沢市、東京都目黒区などの個人情報保護審査会でも選択制の導入などを求める答申が出された)。2008年7月8日、東京都杉並区が国に求めていた「区民選択方式」の上告が最高裁で却下され敗訴が確定した。これを受けて、区は住基ネットへの全面参加を明らかにし、2009年1月5日から業務を開始した。これにより、国立市福島県矢祭町の2自治体のみが不参加となった。
  • 2006年4月に「住基ネット凍結」を主張していた元衆議院議員阪上善秀兵庫県宝塚市の市長に当選したことから、当時、同市も近く住基ネットを切断するのではないかと言う見方があった。
  • 2008年1月7日、長野県はそれまで田中康夫知事が費用対効果や安全性に対して疑問を指摘し利用していなかったが、知事が村井仁となり、市町村からの要望等を踏まえ、32の法律に係わる事務処理のうち5つの法律に係わるものから利用を開始した。利用状況を見ながら事務の利用の拡大を計る。
  • 2010年1月、名古屋市長の河村たかしが住基ネットの安全性に対する懸念を理由に、名古屋市を離脱させる意向であると報じられ、1月19日原口一博総務大臣に対し、ネット切断を含めた対応を検討中であることを伝えたが、同年2月2日には1年間かけて安全性などを検証・議論し、即時の離脱はしない方針を表明した。
  • 2012年2月、国立市が約9年間ぶりに再接続した[16][17]。これにより、不参加の自治体は矢祭町のみとなった。

国側などの主張[編集]

完全に接続していない市区町村は違法状態であり、それら職務に従事する職員にも地方公務員法違反ではないかとの疑義もある。また、横浜方式の接続も一方的に始めたものであり、上記の未接続自治体と同様に違法状態であることには変わりはない。現に、札幌市も市民選択制度を取ろうとしたが違法状態を作り出すことになるとして断念しているし、住基ネット反対をマニフェストに掲げ当選した、埼玉県の上田清司知事、神奈川県の松沢成文知事も当選後に方針を翻している。その他、埼玉県志木市、北海道ニセコ町など同様に断念しているケースは多い。

不接続・選択制を選ぶ、ないし求める自治体や反対派の主張[編集]

住民基本台帳法における市区町村の業務は法定受託事務ではなく市町村自治事務である。さらに、住民票コードの記載を定めた第30条の2や、都道府県知事への通知を定めた第30条の5などは「するものである」条項であり「しなければならない」条項とは違って実施にあたっては自治体の裁量の余地が大きい。従って、扱われる個人情報の安全性への法的・技術的な問題点や不安が払拭されていないという正当な理由のもとで、自治体が不接続や選択制を選ぶのは適法であるとするものである。

住基ネットに関する訴訟[編集]

これまで、住基ネットを巡って各地で憲法訴訟が提起されているほか、関係経費の費用返還を求める住民監査請求、個人情報を外部に提供しないよう求める提供中止請求、個人個人に割り当てられた住民票コードの削除請求などの行政訴訟等が提起されている。これに対し、後述のとおり、2008年3月6日、最高裁判所第一小法廷は、住基ネットを管理、利用等する行為は憲法13条に違反しないとの判決を行った。 最高裁判決を含む住基ネットに関する訴訟の概要は以下のとおりである。

  • 2004年2月27日プライバシー侵害として慰謝料を求めていた裁判で、大阪地方裁判所は原告敗訴判決を行った(原告の一部は控訴している)。
  • 2005年5月30日金沢地方裁判所は、住基ネットはプライバシーの保護を保障した日本国憲法第13条に違反する、と判断した。一方、翌5月31日、名古屋地方裁判所は、住基ネットはプライバシーの侵害を容易に引き起こす危険なシステムとは認められない、との判断を下した。相次いで相反する二つの判断が下された形となり、住基ネットの法的な位置づけの難しさが浮き彫りとなった。なお、石川県・愛知県の訴訟ともほぼ共通の訴えとなっており(細部では異なる部分もある)、「住民基本台帳ネットワークシステムはプライバシーの権利などを侵害し憲法違反である」などとして、石川県のケースでは同県の市民団体メンバー28人が、愛知県のケースでは住民13人が、それぞれ国や県・市などに個人情報削除や損害賠償などを求めた訴訟である。
  • 2006年11月30日、前記の大阪訴訟の控訴審判決として大阪高等裁判所は、住基ネットは個人情報保護対策に欠陥があり、拒否する人への運用はプライバシー権を著しく侵害し憲法13条に違反する、として箕面市守口市吹田市に原告の住民票コードの削除を命じる原告勝訴判決を言い渡した。なお、同訴訟の裁判長を務めた竹中省吾判事は、同年12月3日、自宅で首吊り自殺をしているところを発見された。
    • うち箕面市は2006年12月7日に箕面市議会で、上告を断念したと藤沢純一市長が表明し、12月15日午前0時、箕面市に対して判決が確定した。
      • これにより箕面市判決に従って勝訴した原告(1人)の住民票コードを削除する「為す給付債務」を負うことになった。箕面市役所の総務部情報政策課では、アイネスが提供する現行システムではデータを削除できるのは住民死亡した場合か、日本国籍を離脱した場合だけであるところ、どちらの入力もないまま1人少ないデータで府のサーバと交信すると、市のサーバがダウンしてしまうおそれがある。また、市のサーバ内のデータだけでなく、府や国のサーバ内のデータも削除する必要がある。さらに、削除できたとしても、その後の運用方法は原告のデータを削除して原告だけ文書で管理するか、原告を除く全市民のシステムを作り直し改めて接続する、の2通りであり、前者では住民票や納税通知書の交付について原告の分だけ手作業で行う必要があるし、後者ではシステム再構築に1500万円から3500万円の費用が発生する、と主張している(読売新聞12月9日)。なお、藤沢市長は12月12日に、高裁判決後、原告とは別の市民2人からコード削除を求められていることを明らかにしたうえで「こうした人たちの意に沿うため選択制導入の可能性について検討したい」と述べた(読売新聞12月12日)。
      • 2006年12月28日から2007年3月30日までの間、「平成18年度箕面市一般会計予備費の充当により、江澤義典関西大学教授秋田仁志弁護士園田寿弁護士・甲南大学法科大学院教授、黒田充自治体情報政策研究所代表による住民基本台帳ネットワークシステム検討専門員が設置され、原告の住民票コードの削除方法、原告以外の住民からの削除要求への対応が2007年3月31日までをめどに調査された。
      • 2007年3月5日原告らの呼びかけに応じた市民8人から個人情報保護条例に基づき住民票コードの削除が請求され、藤沢は「これは『ためにする請求』。当惑している」と報道された。その後箕面市は、高裁判決の効力は判決を得た市民1人のみにしか及ばないとして当該8人からの削除請求を認めない「非削除」の決定をしている。
      • 2007年3月7日の住民基本台帳ネットワークシステム検討専門員合議で、原告の住民票の職権消除と、住基ネットの選択制が検討されていることが報道され、2007年3月30日開催の専門員合議において、「控訴人について、住民票を改製し住民票コードを削除する。」「控訴人に係る本人確認情報に異動事由として「職権消除コード」を記録し、当該コードを含む本人確認情報を、住基ネットにより大阪府サーバに送信するとともに、住民票コード削除に係る本人確認情報を「文書」により府知事に通知する。」「住基ネットでの自己情報の運用を希望しない他の住民についても、控訴人と同一の方法により、住民票コードを削除する。」とする、原告以外からの削除要求についても受け入れ、全国初の選択制を導入するよう市長に答申された。
      • 答申を受けて藤沢純一市長は、2007年5月29日、箕面市役所内での記者会見において、2007年11月に実施される予定のRKK情報サービスの提供する新住基システムへの移行時を期に住基ネット参加の選択制を導入すると表明した。実際は新住基システムの移行が遅れ、納税記録情報の紛失事故が発生するなど、選択制の導入は見送られた。
      • 2007年6月12日開催の箕面市議会総務常任委員会において日本共産党議員から、先の記者会見での選択制導入報道と5月29日実施の議会各会派への説明内容との齟齬及び会見内容の真否についての質問に対し、藤沢は「否定も肯定もしない」、「議員はどういう報道になれば納得するのか」と答弁した。
      • 2007年9月6日大阪府知事から、住民基本台帳法第31条第2項の規定により、箕面市長に対し、「住民票コードを削除すること、すなわち住民票コードの記載を住民の選択に委ねることについては、住民基本台帳法第7条第13号の規定に違反するものである。」「現に区域内に住所を有する住民の住民票を、改製と称して職権で消除することは、住民基本台帳法第3条第1項及び第8条のに違反するものである。さらに、府知事に対し、職権で消除した旨を住民基本台帳ネットワークシステムにより通知するとともに、本人確認情報から住民票コードを削除したものを文書により通知することは、住民基本台帳法第30条の5第1項及び第2項に違反する。」「住民基本台帳事務を適正に執行するよう法第31条第2項の規定により勧告する」と3項目の勧告がされた。
      • 2007年12月20日、箕面市議会は、最高裁判所において大阪高等裁判所判決が見直される公算が大きいこと、顧問弁護士らが住民票コード削除の実施は最高裁判決まで待つよう求めていることなどから、最高裁判決まで「選択制」を進めないことを求める「住民基本台帳ネットワークシステムの適正な運営を求める決議」(自民党同友会、民主・市民クラブ、公明党の3会派の議員が提出)を賛成多数で採択した(市民派ネット・日本共産党が反対)。
      • 2008年2月14日最高裁判所判決を待たずに、原告の住民票磁気ディスクから、書面による住民票に「改製」し、住民票コードを削除を実施したと発表した。
      • 2008年2月18日、住民基本台帳ネットワークシステム検討専門員から、紙改製は違法であり、判決の履行に当たらない。答申に基づき、職権消除手法による住民基本台帳ネットワークから原告の本人確認情報の削除を実施しろとの意見書が藤沢純一に出されたと発表された。
    • 守口市吹田市最高裁判所に上告した。
      • 2007年11月16日の新聞各紙に、吹田市守口市の上告審について、最高裁判所が弁論期日を2008年2月7日に指定したことが報道された。判決の見直しに必要な弁論が開かれ、法令について違憲判決を出すための大法廷への回付が行われなかったため、違憲判決が行われず、原判決破棄・原告敗訴が濃厚となった。
      • 2008年2月7日最高裁判所で、吹田市守口市上告審弁論が行われ、同日弁論終結した。
        2008年3月6日、第1小法廷は、「法令等の根拠」に基づき、正当な「行政目的の範囲内」で行われて、「具体的な危険」が生じていないとの要件を示し、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものの、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された自由を侵害するものではないとし、『住民基本台帳ネットワークは憲法に違反しない』と初の合憲判断を下した。その上で二審の大阪高等裁判所の判決を破棄し、訴訟原告(被上告人)の請求を棄却した。
  • 2008年8月28日埼玉県民5人が求めた個人情報削除や損害賠償さいたま地裁の「情報漏洩に危険はなく、ネットワークのサービスも正当な行政の範囲」とした判決を東京高裁が支持、原告の控訴を棄却した。

最高裁判決[編集]

2008年3月6日、最高裁判所第一小法廷(涌井紀夫裁判長)は、住基ネットを管理、利用等する行為は憲法13条に違反しないとして、大阪訴訟の高裁判決を破棄するとともに、石川訴訟他3件の上告を棄却したがその理由の要旨は以下のとおりである。

  • 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有する。
  • 住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名生年月日性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。住民票コードは、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等を目的として、都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから、上記目的に利用される限りにおいては、その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。
  • 住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏洩する具体的な危険はないこと、受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏洩等は、懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること、住基法は、都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を、指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして、本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていることなどに照らせば、住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。
  • また、行政機関個人情報保護法8条2項2号、3号によれば、行政機関の裁量により利用目的を変更して個人情報を保有することが許容されているし、行政機関は、法令に定める事務等の遂行に必要な限度で、かつ、相当の理由のあるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し又は提供することができるとしているが、住基法30条の34等の本人確認情報の保護規定は行政機関個人情報保護法に優先して適用されるし、システム上、住基カード内に記録された住民票コード等の本人確認情報が行政サービスを提供した行政機関のコンピュータに残る仕組みになっておらず、データマッチングは懲戒処分刑事罰の対象となり、現行法上、本人確認情報の提供が認められている行政事務において取り扱われる個人情報を一元的に管理することができる機関又は主体は存在しないことなどにも照らせば住基ネットにより、個々の住民の多くのプライバシー情報が住民票コードを付されてデータマッチングされ、本人の予期しないときに予期しない範囲で行政機関に保有され、利用される具体的な危険が生じているとはいえない。
  • したがって、行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではなく、自己のプライバシーに関わる情報の取扱いについて自己決定する権利ないし利益が違法に侵害されたとする被上告人ら(原告ら)の主張にも理由がない。

住基ネットに関する年表[編集]

  • 2002年
    • 8月5日 - 第一次稼動
      • 住民への住民票コード通知開始
      • 住民基本台帳ネットワークシステムが稼動し、行政機関への本人確認情報の提供が開始された。これにより、従来必要とされた住民票の写しの添付が省略できるようになった。
    • 8月30日 - 総務省により住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会が設置された。
  • 2003年
  • 2004年1月29日 - 公的個人認証サービス開始。希望者には500円で公的個人認証サービスに利用できる電子証明書が交付できるようになった。
    • 公的個人認証サービスは住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を基にしており、現時点で利用できるカードは市区町村が発行している住基カードに限定されている。
  • 2006年10月 - 社会保険庁が住基ネットを活用した年金受給者の現況確認を開始。これにより、毎年、誕生月に提出が必要であった年金受給権者現況届(いわゆる「現況届」)の提出が原則不要となった。[1]

関係省庁[編集]

脚注[編集]

  1. ^ これは第二の「住基ネットワーク」 マイナンバー制度実は巨額利権だった現代ビジネス2013年5月28日、2013年7月4日観覧
  2. ^ 「住基ネット」って何?”. 総務省. 2014年9月8日閲覧。
  3. ^ a b c その他のFAQ”. 総務省. 2014年9月8日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 「住民基本台帳ネットワークシステム」の概要”. 住民基本台帳ネットワークシステム全国センター. 2014年9月8日閲覧。
  5. ^ 電子政府・電子自治体における住基ネットの役割
  6. ^ 加給年金額、加算額、加給金など加給年金額等を受け取る人(受給権者)の「生計維持確認届」と「障害状態確認届」については従来通り、はがきなどの返信方式で行う。
  7. ^ 住民基本台帳法第30条の7第3項の規定に基づき社会保険庁が行う。
  8. ^ 年金受給権の現況を誕生月の末日までに社会保険庁が把握できない、または各種の現況届に記入漏れがあった場合は、年金の支給が一時止まることがある。
  9. ^ また「年金受給権者現況届」(現況届)が送付され返信しなければならないのは次のような場合:住基ネットに加入していない市区町村へ転出、他の市区町村に転入したが転入手続きを行っていない、外国へ転出したなど。
  10. ^ 佐々木俊尚 (2004年1月21日). “「住基ネット侵入実験」をめぐる総務省と長野県の知られざる暗闘”. INTERNET Watch. 2014年9月8日閲覧。
  11. ^ 『住基カード、転居後もそのまま 総務省、法改正へ』2009年1月19日アサヒコム
  12. ^ 不正住基カード:女子高生、姉名義を入手 祇園でホステス 毎日新聞 2009年12月10日
  13. ^ 兵庫県加古川市:職員が探偵業者に住民情報漏えい 処分へ 毎日新聞 2013年5月28日
  14. ^ 「住基ネット離脱 是非再燃――「共通番号制度」めぐり」 (日本語)『朝日新聞』2011年1月27日付夕刊、第3版、第15面
  15. ^ 「国立市の住基ネット離脱に違法判決 東京地裁」 (日本語) asahi.com 2011年2月5日。
  16. ^ 住民基本台帳カード(住基カード)の発行、平成24年2月1日からサービス開始をします国立市・平成24年1月27日
  17. ^ 2012年2月1日接続再開住基ネットを再接続 9年間にわたり離脱の東京・国立市産経ニュース2012年2月1日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]