伊藤博 (万葉学者)

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伊藤 博(いとう はく、1925年大正14年〉7月1日 - 2003年平成15年〉10月6日)は、日本文学者万葉学者)。筑波大学名誉教授伊藤益(筑波大学名誉教授)は息子。

来歴・人物[編集]

長野県上伊那郡高遠町(現伊那市)出身。1952年昭和27年)京都大学文学部文学科卒業。斎藤茂吉の『萬葉秀歌』の影響により万葉集研究を志す[1]。京都大学在学中、澤瀉久孝の下で『万葉集』などの上代文学を学ぶ。

専修大学助教授筑波大学教授、共立女子大学学長等を歴任。その他には萬葉学会代表も務めた。

伊藤は、一首ごとに注釈を付けるという万葉研究の伝統的な研究手法に疑問を抱いており、万葉集は複数の歌からなる歌群によって構成され、全体で一つの物語となると考えていた[1]。この観点で執筆された注釈書『萬葉集釈注』(集英社、全10巻・別巻3)は1995年(平成7年)に刊行された。これは、個人による全巻全首を対象とした注釈書としては、師の澤瀉久孝以来の業績[2]となった。2000年(平成12年)に同著で第11回斎藤茂吉短歌文学賞を受賞した。

2003年(平成15年)、角川ソフィア文庫版『万葉集』の改訂作業の途上で没した。遺作となった『新版 万葉集 現代語訳付き』は2009年(平成21年)に刊行された。いくつかの新解釈がおこなわれ、死没による未筆部には『萬葉集釈注』に基づいた解説、口語訳が当てられた[2]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『萬葉集相聞の世界』塙書房〈塙選書〉、1959年。新版刊、2006年。
  • 『古代和歌史研究』(全8巻)、塙書房、1974年 - 1992年。
  • 『萬葉のあゆみ』塙書房〈塙新書〉、1983年。
  • 『萬葉のいのち』塙書房〈塙新書〉、1983年。
  • 『萬葉集全注 巻第1』有斐閣 、1983年。(全20巻、2006年完結)
  • 『萬葉集全注 巻第18』有斐閣、1992年。(同上)
  • 『愚者の賦 萬葉閑談』集英社、2000年。
  • 『萬葉歌林』塙書房、2003年。

注解[編集]

共著・共編著[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 伊藤益「文庫版のためのまえがき」『万集釋注 一』集英社〈集英社文庫ヘリテージシリーズ〉、2005年。ISBN 4087610136
  2. ^ a b 梅林史、川島二郎、田中大士のまえがき「はじめに 新版にあたって」『新版 万葉集(一) 現代語訳付き』角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉ibooks版 2014年。