仮面浪人

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仮面浪人(かめんろうにん)とは浪人の一種であるが、実際は学校に入学・在籍しながら、その学校(以下「在籍校」)と同一入学資格の他校(以下「志望校」)を目指そうとしている人をいう。

概要[編集]

仮面」とは学校に在籍して「学生」「生徒」の仮面を被っている立場を指していい、その「仮面」をつけて現役で進学した人よりも1年以上遅れて入学しようとしている人のことを示している。したがって、「学校在籍者」でありながら「浪人生」でもあるという二重の立場を持った人である。

メリットとデメリット[編集]

メリット・デメリットはあるが、基本的には以下に記すようにデメリットの方が大きいと考えられている。

メリット[編集]

  • 本来は志望校ではない学校の学生・生徒であったとしても、学生・生徒としての社会的地位を得られる。
  • 学生・生徒の立場を確保しながら、次年度の入試で第一志望の学校を目指せる。
  • 結果的に失敗に終わっても、在籍校に残って卒業を目指せる。

デメリット[編集]

  • 「学生・生徒」と「浪人生」の中間という中途半端な状態となるため、在籍校の勉強をしながら志望校の受験勉強をする必要があり、二重に負担が掛かる。
    • そもそも、仮面浪人をする理由は「学校に現役合格した」という社会的な体裁をとるためである。したがって、失敗や挫折をした時の保険として在籍校に残れる環境を作っておく必要があり、受験勉強のみに専念できない。
    • 確実に合格するために在籍校を捨て石にする場合はこの限りではないが、その覚悟で勉強しても確実に合格できるとは限らず、結果的には受験に失敗した上に、在籍校においても留年ないしは退学するに至るという二重のデメリットをはらむ可能性がある。
  • 志望校に合格して在籍校を退学した場合、その在籍校への入学の際に納入した学費等は基本的に返還されない。むしろ、新入学先の学校(以下「新入学校」)に入学金や授業料などを支払わなければならないため、その分経済的な負担が大きい。
  • 元在籍校での在学期間が長いほど新入学校への入学年齢が本来の学生・生徒よりも高くなるため、入学後の学校生活などに影響を及ぼす場合がある。また卒業時における年齢も高くなるため[注 1]就職活動などに影響を及ぼす場合がある。

仮面浪人をせざる得ない例[編集]

在籍校や志望校などの性質上、やむを得ず仮面浪人をせざる得ない場合も存在する。

  • 大学短期大学を含む)卒業後に専修学校専門課程(以下「専門学校」)に入学する場合は高等学校卒業者等(以下「高卒等」)として1年次から入学し直す形になるため、結果として仮面浪人をしたことになる。
  • 高等専門学校(高専)の第3学年修了者においては高卒等に相当し[注 2]、大学など上位の学校を受験することができるが、第4学年または第5学年在学者であっても第3学年修了者として受験する扱いになるため[注 3]、やはりこの場合も仮面浪人ということになる。

過去の事例[編集]

かつては短期大学(学校教育法(以下「法」)第108条第2項)や高等専門学校(法第122条)と異なり、以下の学校・課程[注 4]については卒業・修了しても大学の学部への編入学が認められていなかった。そのため、在学生が学部を目指す場合、高卒等として1年次から入学し直す必要があり、結果として仮面浪人をせざる得なかった。

  • 専門学校 - その後、1998年の法改正により適用(法第132条)。なお、法改正後も大学側の判断により編入学が認められない場合があり、その場合は1年次から入学し直すために仮面浪人をする必要がある。
  • 下記の学校の各専攻科 - その後、2015年の法改正により適用。括弧内は適用後。

仮面浪人と呼ばれない例[編集]

大学受験予備校の本科(「大学受験科」「高卒生コース」など)は翌年に大学を目指す高卒等が対象であり、中には専修学校一般課程または各種学校のものも存在し[注 5]、それらの学校の在籍者からすれば同一入学資格の学校を目指すことになるが、それでも仮面浪人ではなく「受験浪人」などと呼ばれるのが一般的である。

その他の用法[編集]

「仮面浪人」は他校の入学試験を目指しているものだが、組織に所属(あるいは内々定を受諾)しながら他組織への就職活動を行っている場合は「仮面就活」と呼ばれる[1](「転職」も参照)。

著名な仮面浪人経験者[編集]

研究[編集]

政治・行政[編集]

法曹[編集]

経済[編集]

作家・出版[編集]

報道[編集]

芸術[編集]

教育[編集]

その他[編集]

仮面浪人の描写がある作品[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ さらに休学や留年をすればその分高くなるのは当然である。
  2. ^ 学校教育法第90条第1項の「通常の課程による12年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む)」に該当する。
  3. ^ 卒業後に大学の学部への編入学を目指す場合を除く。
  4. ^ いずれも修業年限が2年以上であるものに限る。
  5. ^ 厳密には、それらの学校については専修学校設置基準各種学校規程ともに入学資格は定められておらず、各校が独自に定めることができる(「各種学校#専修学校と各種学校の違い」を参照)。

出典[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]