代本板

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プラスチック製代本板の例

図書館における代本板(だいほんばん、台本板代書板〈だいしょばん〉、: shelf dummy、または単に dummy)とは、図書雑誌が本来配架されるべき位置にない時に、現物に代わって置かれるである[1]。英語から、ダミーともいう。代本板は、館種によって使われ方が異なる。

形状や材質[編集]

形状は、直角台形[2]直角三角形長方形などさまざまである[3]。材質については、日本では製が一般的であるが、プラスチック製のものも登場している[4]。また、厚紙[1]段ボール[5]が使われることもある。

日本の小学校図書館における代本板[編集]

氏名や学年等を書かせる代本板のイメージ図。ただし、これは一例に過ぎず、代本板を導入しているすべての小学校が名前などを書かせているわけではないことに留意。

日本の小学校図書館においては、貸出に代本板が使用される場合があり、図書館用品・学校用品メーカーが代本板を販売している[6][7][8]。代本板が導入されている場合、借りるときに図書のあった場所に代本板を入れるように指導される[9]

これによって、図書が元々配架されていた場所に正しく返却すること、更にはその意識の向上が期待される[10]。また、低学年の児童は元に戻す位置が明らかであることから安心して図書が借りられる[11]。ただし、これらは、書架への返却を児童自身にやらせる場合の利点であり、学校司書や図書委員[12]等が行う場合はこの限りでない。一方、「考えることなしに」返却できるようになってしまうのは図書館教育上好ましくない[10]、煩雑であり学校図書館利用を減退させるという意見や、代本板を導入していると2冊以上の同時貸出が難しい[12]、(代本板以外の貸出記録を作っていない場合は)書架を見なければ貸出状況がわからない[13]、などの欠点も存在する。

また、学校図書館においても利用者のプライバシーを守ろう(図書館の自由に関する宣言第3条参照)とする機運が高まるにつれ、他者に読書記録が露見してしまうという欠点も指摘されるようになっている[14]

公共図書館などにおける代本板[編集]

公共図書館などでは、大型本の別置などに使われる[4]。別置の際は、別置されている資料のタイトルや請求記号、別置の理由、別置先などが背の部分に書かれる[3]。また、逐次刊行物(の特定の巻号)が実物でなく別の媒体、例えばマイクロフィルムなどで提供されている場合にもその旨を示すために使われる[15]

閉架式書架においても、代本板が使われることがあり、古くは一般的だった[4]。この用法としては、職員が資料を出納するときなどに資料のあった場所に代本板を挿入し、元あった場所に戻すときの目印にする[16]。これには、別な用件で資料を探しに来た図書館員を困惑させない目的も込められている[17]

出典[編集]

  1. ^ a b JLA用語委員会 2013, p. 184.
  2. ^ 図問研 図書館用語委員会 1982, p. 343 図表.
  3. ^ a b JLA用語委員会 2013, p. 185.
  4. ^ a b c 図問研 図書館用語委員会 1982, p. 343.
  5. ^ Joan M. Reitz 2004, p. 656.
  6. ^ 商品詳細 代本板”. キハラ. 2017年12月31日閲覧。
  7. ^ 商品のご案内 代本板”. サンワ. 2017年12月31日閲覧。
  8. ^ インターネットカタログ 代本板”. 伊藤伊. 2017年12月31日閲覧。
  9. ^ 大里文夫 1974, p. 40.
  10. ^ a b 小川敬一 1974, p. 47.
  11. ^ 大里文夫 1974, pp. 40–41.
  12. ^ a b 小川敬一 1974, p. 48.
  13. ^ 平塚禪定 1954, p. 48.
  14. ^ 志村尚夫『読書と豊かな人間性の育成』(改訂版)青弓社、2011年2月25日、173頁https://books.google.co.jp/books?id=oWpxDgAAQBAJ&pg=PA173 
  15. ^ V.K. Suraj, ed (2005). Encyclopaedic Dictionary Of Library And Information Science. Gyan Publishing House. ISBN 9788182052536. https://books.google.co.jp/books?id=0X9CSLFKKC0C&pg=PA751 
  16. ^ 資料提供部図書課「国立国会図書館のしごと」『国立国会図書館月報』第580号、国立国会図書館、2009年7月、10頁。 
  17. ^ 高橋良平「ビジュアル国立国会図書館博物館」『国立国会図書館月報』第545号、国立国会図書館、2006年8月。 

参考文献[編集]

  • 図書館問題研究会 図書館用語委員会 編『図書館用語辞典』角川書店、1982年10月。ISBN 4040310004全国書誌番号:83006760 
  • 日本図書館協会 用語委員会 編『図書館用語集』(四訂版)日本図書館協会、2013年10月31日。ISBN 978-4-8204-1311-0 
  • Joan M. Reitz (2004). Dictonary for library and information science. Libraries Unlimited. ISBN 1-56308-962-9 
  • 平塚禪定 著、全国学校図書館協議会 編『閲覧と貸出し』明治図書出版〈学校図書館学講座〉、1954年6月20日。 
  • 大里文夫「代本板貸出しへの賛否=賛成」『学校図書館』279号、全国学校図書館協議会、1974年1月10日。 
  • 小川敬一「代本板貸出しへの賛否=反対」『学校図書館』279号、全国学校図書館協議会、1974年1月10日。