代数曲線

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代数曲線(だいすうきょくせん、algebraic curve)、あるいは平面代数曲線(plane algebraic curve)は、いくつかの 2変数の多項式の値がゼロとなる点(ゼロ点)の座標が作るユークリッド平面上の点の集合である。

例えば、単位円は代数曲線であり、多項式 x2 + y2 − 1 のゼロ点の集合である。

その後、さまざまな技術的な思考方法により、多項式の複素ゼロ点が曲線になるという考えに至った。また、代数曲線の考えは、定義多項式の係数と曲線の点の座標が任意のに属することを許すように一般化された。この考えが次のような代数曲線の定義を導いた。

代数幾何学では、体 k 上で定義された平面アフィン代数曲線(plane affine algebraic curve)とは、K を k の代数的に閉じた拡大とすると、k に係数を持つ2変数の多項式のゼロ点が作る座標であるような K2 (K×K)の点の集合のことである。k に座標を持つ曲線の点は、曲線の k-点といい、それら全部を曲線の k 部分という。

例えば、(2,\sqrt{-3}) は x2 + y2 − 1 = 0 で定義される曲線の一部である。しかし、普通の単位円はこの曲線の実部のことを言う。この「単位円」は実数の点のだけではなく、すべての複素数での点を考えることで、初めて正確な意味がわかる。方程式 x2 + y2 + 1 = 0 は代数曲線を形成するが、実数部分は存在しない。

さらに一般的に、平面(複素次元 1 であり、実次元は 1 である)に含まれない代数曲線を考えることができるが、(埋め込めるユークリッド空間の)次元はもっと高くなる。平面に含まれない(埋め込むことのできない)曲線を、歪曲線英語版(skew curve)[1]と呼ぶ。歪代数曲線(skew algebraic curve)の最も単純な例は、ツイストされた3次曲線英語版(twisted cubic)である。代数曲線は、(複素 1次元の)射影空間の中に埋め込まれいていると考えることができ、射影空間への埋め込みとは異なる既にアフィン空間や射影空間に埋め込まれて定義されている代数曲線に対しても、(複素次元 1 の射影空間へ)埋め込み直すことが可能である。このことから、最も重要な代数曲線の定義を得る。

代数幾何学では、代数曲線次元英語版が 1 の代数多様体である。

チルンハウゼンキュ-ビック英語版は次数 3 の代数曲線である。

ユークリッド幾何学の中では[編集]

ユークリッド平面の中の代数曲線は、2変数の多項式の方程式 p(x, y) = 0 の解の座標である点の集合を言う。この方程式を、曲線を示唆している方程式(implicit equation)と呼ぶことがあり、一方、反対に曲線を、x の函数として明示的に y の値を表したものを函数のグラフという。

示唆している方程式により定義される曲線が与えられると、まず第一に発生する問題は、曲線の形を決定することと曲線を描くことであろう。この問題は、函数のグラフの場合のように解くことが簡単ではない。グラフを書く場合は y を x のさまざまに変わる値から計算するだけでよかったのである。しかし、定義する方程式が多項式であるということ自体は、曲線がこの問題を解く構造的な性質を持っていることを意味する。

任意の代数曲線は、一意に有限個の「注目すべき点」(remarkable points)と呼ばれるいくつかの点で繋がった滑らかな単調な(これを分岐と呼ぶ)へ分解する。滑らかな単調な弧は x-軸の開区間上で単調として定義された滑らかな函数のグラフである。それぞれの方向で、弧は、

1) 端点を持たない非有界(無限の弧とでもいうべき)な弧か、もしくは、
2) 端点として、特異点(以下で定義するが)か、座標軸の一つに平行に接している点を持っている弧か

のどちらかである。

例えば、図のチルンハウゼンキュービック英語版(Tschirnhausen cubic)に対し、原点 (0,0) を端点として持つ 2つの無限の弧がある。原点は曲線の唯一の特異点である。一つの端点は原点を特異点として持ち、もうひとつの端点は水平に接線を持っている 2つの弧がある。結局、これらの 2つ弧は、最初の端点として水平に接する点を持っていて、第二の端点を垂直に接する唯一の点を共有している。これとは別の話題で、サインカーブは確かに代数曲線ではない。無限個の単調な弧を持っているからである。

代数曲線を描くには、注目すべき点とそれらの接線や無限個の分岐やそれらの漸近線を知ることとが重要で、(もしできるならば)弧と漸近線を結び付ける方法も重要である。注目すべき点として変曲点を考えることも有益である。これらすべての情報が一枚のシートに描かれると、曲線の形が明らかとなる。そこまで充分な情報がなくとも、曲線の記述するには、いくつか点と接線を考えに加えれば充分である。

注目すべき点とその接線を計算する方法は、下の射影曲線に記載する。

平面射影曲線[編集]

射影空間の中の曲線を考えることが、よく求められる。射影平面、あるいは平面射影曲線の中の代数曲線とは、その射影座標が 3つの変数 P(x, y, z) の斉次多項式のゼロ点である射影平面の上の点の集合である。

方程式 p(x, y) = 0 のすべてのアフィン代数曲線は、方程式 ^hp(x,y,z)=0, の射影曲線の中で完全になる。ここに

^hp(x,y,z)=z^{\deg(p)}p(\tfrac{x}{z},\tfrac{y}{z})

は、p の斉次多項式の結果である。逆に、 P(x, y, z) = 0 が射影曲線の斉次方程式であれば、P(x, y, 1) = 0 は三番目の射影座標がゼロでないような点のアフィン平面上へ、射影曲線を制限する方程式である。これらの 2つの操作は互いに相反的で、斉次多項式 P が z で割れないならば、直ちに、^hp(x,y,1)=p(x,y) であり、^hP(x,y,1)=P(x,y,z), である。

例えば、方程式 x2 + y2 − z2 の射影曲線は、単位円の方程式 x2 + y2 − 1 = 0 の射影的完備化である。

このことは、アフィン曲線とその射影的完備化が同じ曲線であると考えることが可能となる。さらに詳しくは、アフィン曲線は、完備曲線をうまく定義するための充分大きな射影曲線の一部であるということを意味する。この観点は広く知られているように、アフィン部分には所属しない射影的完備化の(無限個の)点をアフィン曲線の「無限遠点」と呼ぶことで表現される。

射影曲線自体は、よく研究されていて、射影曲線はアフィン曲線の研究にとっても有益である。例えば、 p(x, y) をアフィン曲線の定義式とすると、(普通は)偏微分は  p'_x p'_y であるが、無限遠点での微分は次の式と考えることができる。

 p'_\infty(x,y)={^hp'_z(x,y,1)}.

例えば、方程式 p(x, y) = 0 の (a, b) での接線の方程式は、

xp'_x(a,b)+yp'_y(a,b)+p'_\infty(a,b)=0.

である。

平面曲線の注目すべき点[編集]

このセクションでは、2変数の多項式 p(x, y) と射影的完備化により定義される平面代数曲線を考える。この射影的完備化は斉次化により p の式 P(x,y,z)= {}^hp(x,y,z) で定義される。

直線との交叉[編集]

与えられた直線と曲線との交点を理解することが有益であることがよくある。座標軸との交点や漸近線は曲線を描くためには役に立つ。軸に平行な直線との交点は、曲線の各々の分岐(弧)での少なくともひとつは点を見つけることができる。充分に求根アルゴリズムがあれば、y 軸に平行な線すべてとの交点をプロットすることと、x 軸上の各々の点をとることにより曲線を描くことが可能である。

曲線を定義する多項式の次数が d のときは、任意の直線は多くて d 個の点で曲線を横切る。ベズーの定理は、(例えば複素数のような)代数的閉体上の射影平面で点を探して多重度を込めて数えると、この数(交点数)がちょうど d 個であることを言っている。次に、この定理の計算方法を、簡単な例で示す。

方程式 ax + by + c = 0 の直線と多項式 p により定義される曲線との交点の計算するには、x で直線の方程式を解く(もしくは、a = 0 であれば y で解く)。p の結果を代入して、その根が交点の一つの座標である多変数の方程式 1 = q(y) = 0 (あるいは、直線の方程式が y で解けたときは 1 = q(x) = 0 )を得る。他の座標は直線の方程式から導かれる。交点の多重度は、対応する根の多重度である。q の次数が p の次数よりも小さい場合は、無限遠点に交点がある。そのような無限遠点での交叉の多重度は、p と q の次数の差である。

点での接線[編集]

曲線を示唆する方程式により定義された滑らかな曲線(differentiable curve)上の点 (a, b) での接線は、方程式 (x-a)p'_x(a,b)+(y-b)p'_y(a,b)=0 の直線である。多項式の場合は、接線の別の式がより簡単な定数項を持っていて、さらに対称的になっている。

xp'_x(a,b)+yp'_y(a,b)+p'_\infty(a,b)=0

ここに p'_\infty(x,y)=P'_z(x,y,1) は無限遠点での微分である。2つの方程式の同値性は、P に適用されたオイラーの斉次函数定理英語版(Euler's homogeneous function theorem)からの 2つの方程式の結果の同値性が得られる。

p'_x(a,b)=p'_y(a,b)=0, であれば、接線は決定できず、その点は特異点となる。

このことは直ちに射影的な場合に拡張できて、方程式 P(x, y, z) = 0 の射影曲線の射影座標 (a:b:c) の点での接線の方程式は、

xP'_x(a,b,c)+yP'_y(a,b,c)+zP'_z(a,b,c)=0,

であり、曲線の特異性を持つような特異点は、次の式のような点である。

P'_x(a,b,c)=P'_y(a,b,c)=P'_z(a,b,c)=0.

(条件 P(a, b, c) = 0 はこれらの条件を意味する。オイラーの斉次函数定理)

漸近線[編集]

代数曲線のすべての無限分岐(無限の弧)は、曲線の無限遠点に対応していて、アフィン部分には含まれない曲線の射影完備化した点となっている。対応する漸近線は、無限遠点での曲線の接線である。射影曲線の接線の一般的な公式は適用できるが、しかしここで再度、確認する意味がある。

曲線を定義している多項式の斉次部分への分解を、p=p_d+\cdots+p_0 とする。ここに、 pi は次数 i の p の単項式の和である。このことは、

P={^hp}=p_d+zp_{d-1}\cdots+z^dp_0

P'_z(a,b,0) =p_{d-1}(a,b)

から従う。

曲線の無限遠点は、(a, b, 0) の形をした p のゼロ点である。同じことであるが、(a, b) は pd のゼロ点である。代数学の基本定理は、代数的閉体(典型は複素数体)上では pd 線形の要素との積へと分解する。各々の要素は、曲線上の無限遠点を定義する。bx − ay をそのような要素とすると、この要素が無限遠点 (a, b, 0) での点を定義する。実数上では pd は、線形と二次要素へと分解する。既約な二次要素は、無限遠点で実数ではない点を定義し、実数の点は線形要素により与えられる。

(a, b, 0) が曲線の無限遠点での点とすると、(a, b) は漸近方向ということができる。q = pd とおくと、対応する漸近線の方程式は、

xq'_x(a,b)+yq'_y(a,b)+p_{d-1}(a,b)=0

である。q'_x(a,b)=q'_y(a,b)=0 であり、p_{d-1}(a,b)\neq 0 ならば、漸近線は無限遠点で直線となり、実数の場合は曲線は放物線のように見える分岐を持つ。この場合には、曲線が放物的な分岐を持つという。

q'_x(a,b)=q'_y(a,b)=p_{d-1}(a,b)=0

曲線が無限遠点で特異点を持ち、いくつかの複数の漸近線を持つかもしれない。漸近線は特異点の接円錐を計算する方法により計算できる。

特異点[編集]

次数 d の多項式 p(x,y) により定義された次数 d の曲線の特異点は、次の方程式系の解である。

p'_x(x,y)=p'_y(x,y)=p(x,y)=0.

標数がゼロのとき、この系は次の式と同値となる。

p'_x(x,y)=p'_y(x,y)=p'_\infty(x,y)=0,

ここに、前のセクションの記号 p'_\infty(x,y)=P'_z(x,y,1). を使った。

同様にして、次数 d の斉次方程式 P(x,y,z) により定義される射影的曲線に対して、特異点は、同次座標として次の方程式系にの解を持つ。

オイラーの斉次函数定理英語版により、同値である。後者の系は d の代わりに次数 d-1 を 3番目の多項式の次数を同次座標として持っていることがわかる。

P'_x(x,y,z)=P'_y(x,y,z)=P'_z(x,y,z)=0.

(標数が正のときは、方程式 P(x,y,z) をこの系に加える必要がある。)

このことは、p(x,y) あるいは P(x,y,z) が二乗項のない英語版(square free)場合、直ちに、特異点の数が有限個であることを意味する。ベズーの定理は、特異点の数は最大でも (d−1)2 であるが、方程式の系が過剰決定系英語版(overdetermined system)であるため、この上限値は不明確であることを意味する。既約多項式であれば、上限値は d(d−1)/2 となり、この値は多項式が線形部分に分解する、つまり曲線が d 個の直線の合併であれば、この値となる。既約な曲線と多項式に対し、特異点の数は(以下に示すように)特異性の項の中に種数を表す式があるため、最大 (d−1)(d−2)/2 である。最大値には種数がゼロの曲線のときであり、(以下に示すように)すべての特異点が多重度 2 と別な接線を持っている。

特異点での接線の方程式は、特異点での多項式のテーラー展開のゼロではない最も低い次数の同次部分で与えられる。従って、原点が特異点となるように座標をとると、特異点の接線の方程式は、多項式の最も低い次数の同次部分であり、この同次部分の次数が特異点の多重度である。

非平面代数曲線[編集]

代数曲線は、次元英語版が 1 の代数多様体である。このことは、次元 n のアフィン空間内のアフィン曲線は、少なくとも n 変数の n-1 本の多項式により定義される。曲線を定義するためには、これらの多項式はクルル次元が 1 の素イデアルを生成するはずである。この条件は実際には検証することが容易ではない。次の非平面的曲線を表現する方法がとられている。

f, g_0, g_3, \ldots, g_n を 2 変数 x1 と x2 の n−1 本の多項式で、f が既約とする。次元が n のアフィン空間の中の点で、次の等式と不等式

\begin{align}
&f(x_1,x_2)=0\\
&g_0(x_1,x_2)\neq 0\\
x_3&=\frac{g_3(x_1,x_2)}{g_0(x_1,x_2)}\\
\vdots &\\
x_n&=\frac{g_n(x_1,x_2)}{g_0(x_1,x_2)}
\end{align}

を満たす点は、有限個の点が移動した代数曲線のすべての点である。この曲線は、f, x_3g_0-g_3, \ldots, x_ng_0-g_n により生成されるイデアルに g_0^kh が属するような整数 k が存在する多項式 h のイデアルを生成する系により定義される。

この表現は、曲線と f により定義された曲線の間の有理同値英語版である。すべての代数曲線は、この方法で表現される。しかし、変数の線形変換は、最初の 2つの変数への射影[2]がほとんどいつも単射とするために必要である。変数変換が必要なとき、無限体上で定義さえされていれば、ほぼすべての変換がうまくいく。

この表現は、非平面代数曲線のすべての性質を容易に導き出すことが可能であり、グラフィカルな表現も平面射影の対応する性質から導かれることを意味する。

方程式により示唆された曲線に対し、上記の曲線の表現は、より小さな変数ブロックは (x1, x2) であるようなブロック順序付け英語版(block ordering)にたいするグレブナ基底から容易に導出される。多項式 f は、x1 と x2 のみに依存する基底の中で、一意に決まる多項式である。分数 gi/g0 は、xi で線形な基底の中の x1, x2 と xi にのみに依存する多項式を、i = 3, ..., n に対して選択することにより得られる。これらの選択が不可能ならば、代数多様体ではないような代数的集合を定義するか、または、次元が 1 でない多様体か、座標変換せねばならない多様体かのどれかであることを意味する。後者は f が存在し一意的なときで、i = 3, ..., n に対し、その主要単項が x1, x2 と xi に依存する多項式が存在する。

代数函数体[編集]

代数曲線の研究は既約英語版代数曲線の研究に帰着する。双有理同値の下に、これらは函数体カテゴリ同値英語版となる。代数的函数体は、与えられた体 F 上に定義された 1 変数の代数函数体 K である。このことは、F の超越的な K で K が F(x) の代数的有限拡大であるような K の元 x が存在することを意味している。x は、F 上の不定元であり、F(x) は有理函数体である。

例えば、複素数体 C を考え、有理函数体 C(x) を定義する。y2 = x3 − x − 1 であれば、体 C(xy) は楕円函数体である。元 x は一意に決定されるのではなく、体は C(y) の拡大体とみなすことができる。函数体に対応する代数曲線は、単純に C2 の中で y2 = x3 − x − 1 を満たす点 (x, y) の集合である。

F代数的閉体でない場合には、例えば「曲線」はその上に点を持っていない場合もある。曲線を点の軌跡と考える見方よりも、函数体の視点で見るほうが、一般的であることを意味する。基礎体 F が実数体 R であれば、x2 + y2 = −1 は R(x) の代数的拡大体を定義するが、軌跡として考えられる対応する曲線は R 上に点を持たない。しかし、R の代数的閉包である C 上では点を持っている。

複素曲線と実曲面[編集]

複素射影的代数曲線は、n-次元複素射影空間 CPn の中にある。この空間は複素次元 n であるが、しかしトポロジー的な次元、つまり実多様体としての次元は、2n であり、コンパクトで、連結で、向きづけ可能である。トポロジー的な次元が 2 であるような代数曲線は、言い換えると、曲面である。非特異複素射影代数曲線は、実多様体としては滑らかな向きづけ可能な曲面であり、実多様体と見なすときは実次元が 2n であるコンパクト実多様体 CPn へ埋め込んで考える。

この曲面のトポロジカルな種数は、つまりハンドルやドーナツの穴の数は、代数曲線の幾何種数に等しく、幾何種数は代数的に計算することができる。一言でいえば、非特異な曲線の平面射影を考えると、多項式の次数は d で、通常の特異点(接線方向のことなる多重度 2 の特異点)のみを持つ場合は、k をこれらの特異点の数として種数は、(d - 1)(d - 2)/2 - k である。

コンパクトリーマン面[編集]

コンパクトリーマン面の理論は、実コンパクト曲面上にできる複素解析構造を通して非特異複素代数曲線を研究することになる。 リーマン面は複素次元 1 の連結な複素解析多様体で、連結な実多様体としては次元は 2 である。もし位相空間としてコンパクトであれば、リーマン面はコンパクトである。

複素数(体)上の滑らかな射影代数曲線(と射(morphism)としての有理写像英語版)カテゴリと、コンパクトリーマン面のカテゴリと代数函数体のカテゴリの間には、三つ組の同値関係がある。従って、これらの対象を研究することにより、ある意味では同じことを研究していることになる。このことは、複素解析的な方法を代数幾何学の中で使うことを可能とし、また、代数幾何学的方法を複素解析の中で使うことも可能で、体論での方法を他の二つで使うことも可能である。単純な曲線やリーマン面以上に非常に広い問題のクラスの特徴を扱うことができる。

さらに一般的な理論として、代数幾何学と解析幾何学(通称『GAGA』)も参照のこと。

特異性[編集]

接空間の直感的な考え方では、代数曲線 C の上の点 P は、滑らか、もしくは、非特異 とそうでない場合の特異点英語版となる。n+1 変数の n−1 個の斉次多項式に対し、偏微分の (n−1)×(n+1) 行列として、ヤコビ行列がある。この行列のランクが n−1 であれば、多項式は代数曲線を定義する(そうでない場合、この多項式は、より高い次元の代数多様体を定義する)。ヤコビ行列で曲線上の点 P で評価すると、ランクが n−1 であれば、点は滑らかもしくは正規な点で、そうでない場合が特異点となる。特に、曲線が f(x,y,z) = 0 で定義された平面射影代数曲線の場合は、特異点は正確に 1×(n+1) 行列のランクがゼロのところの点 P、つまり

\frac{ \partial f }{ \partial x }(P)=\frac{ \partial f }{ \partial y }(P)=\frac{ \partial f }{ \partial z }(P)=0

が成り立つところである。

f は多項式であるから、この定義は純粋に代数的であり、体 F の性質については何も前提がない。特に体 F が実数体である、あるいは複素数体である必要はない。もちろん、(0,0,0) は曲線の点ではないので、特異点ではない。

同様に、ひとつの多項式 f(x,y) = 0 で定義されるアフィン代数曲線の特異点は正確に 1×n ヤコビ行列のランクがゼロである「曲線の」点 P であり、つまり

f(P)=\frac{ \partial f }{ \partial x }(P)=\frac{ \partial f }{ \partial y }(P)=0.

が成り立つところである。

曲線の特異点は双有理不変ではない。しかし、曲線の特異点の位置と分類は、双有理不変量である幾何種数を計算するひとつの方法である。これを示すには、射影的に曲線を考える必要があり、F は代数的である必要がある。そうすると曲線の上にある特異点すべてを考えることができる。

特異点の分類[編集]

x3 = y2

特異点は、曲線が自分自身と交叉する多重点をも含んでいて、またカスプという様々なタイプも含んでいる。例えば、(0,0) での等式 x3 = y2 により示されるような曲線である。

曲線 C は多くとも特異点を有限個しか持たない。もし特異点を持たないようであれば、「滑らか」とか「非特異」とかと呼ばれる。この定義を正しくするためには、代数的閉体射影空間の中で曲線 C を考える必要がある(つまり、代数幾何学的な意味で完備(complete)である)。例えば、曲線を単に実アフィン平面の中にあると見ると、茎(stalk)を法(modulo)として特異点 P が存在するかもしれないし、あるいは特異点 P 上にある特異点に無限小に近い点 Q のすべての渡る多重度を m とすると和 m(m−1)/2 となるかもしれない。直感的にはデルタ不変数 δ を持つ特異点は、P で δ 通常に重点になっている。既約、もしくはすでに既約になった曲線と点 P に対して、δ を代数的に \widetilde{\mathcal{O}_P} / \mathcal{O}_P の長さと定義できる。ここに \mathcal{O}_P は P の局所環で、\widetilde{\mathcal{O}_P} その整閉包である。ハーツホーン(Hartshorne)の代数幾何学(Algebraic Geometry)の IV Ex. 1.8 を参照のこと。

トポロジカルな写像度の意味で、特異性のミルナー数 μ は、小さな半径 ε の球の上の写像の傾斜 f(x,y)/|grad f(x,y)| の次数である。ここに、grad f は f の(複素)傾斜(gradient)ベクトル場である。この値は、δ と r に次のミルナー・ジャングの公式英語版により関連付けられている。

μ = 2δ − r + 1.

もうひとつの特異点は、多重度 m であり、m の差を同一視してすべての階数(order)での f の微分がゼロとなるような最大の整数として定義する。

すべての特異点のデルタ不変量を計算することは、曲線の種数 g を決定することを可能とする。d を次数とすると次が成り立つ。

g = \frac{1}{2}(d-1)(d-2) - \sum_P \delta_P,

ここに和は、複素射影平面曲線のすべての特異点 P を渡るものとする。これを種数公式と呼ぶ。

m を多重度、δ をデルタ不変量、r を分岐数とすると、特異点は三つ組 [m, δ, r] で決定できるかもしれない。これらの項で表すと、通常のカスプ(ordinary cusp)は、不変量 [2,1,1] の点であり、通常二重点(ordinary double point)は不変量 [2,1,2] の点である。通常の n-重点は、不変量が [n, n(n−1)/2, n] であるとして定義できるであろう。

曲線の例[編集]

有理曲線[編集]

有理曲線は、「一筆書き曲線」とも呼ばれるが、直線に双有理同値な曲線のことを言う。直線は射影直線としてとられ、従って、ひとつの変数を持つ有理函数体 F(x) を持つ曲線の函数体と同一視できるであろう。F が代数的閉体であれば、このことは曲線の種数がゼロであることと同値である。しかしながら、実代数多様体 x2+y2 = −1 の上に定義された総実代数函数体は、種数はゼロの体であるが有理函数体ではない。

具体的には、F 上の次元 n の有理曲線は、ひとつのパラメータ t の項で定義された n 個の有理函数たちにより(孤立例外点を除き)パラメトライズすることができる。分母を払うことにより、この曲線を射影空間の中の n+1 個の多項式の函数たちへ変換することができる。有理正規曲線英語版を参照。

F に有理点を持つ F 上で定義された円錐切断は、有理曲線である。有理点と平面二次曲線との交叉を通して、傾き t を持つ直線を描くことでパラメトライズすることができる。これは F-有理係数を持つ多項式を与え、F-有理な解を持つので、他の解も F-有理である(つまり F に属する)。

x2 + xy + y2 = 1

例えば、楕円 x2 + xy + y2 = 1 を考えると、(−1, 0) は有理点である。(-1,0) から傾き t を持つ直線を描くと、y = t(x+1) であり、これに楕円の方程式を代入し、分解し、x について解くと、次を得る。

x = \frac{1-t^2}{1+t+t^2}.

すると、y についての方程式は、

y=t(x+1)=\frac{t(t+2)}{1+t+t^2}\,,

である。ここに楕円の有理パラメータ化が定義され、従って、楕円が有理曲線であることが示される。楕円のすべての点が与えられる。ただし (−1,1) は例外で、t = ∞ に対応する。従って曲線全体は、実射影直線によってパラメトライズされる。

そのような有理パラメータ化は、第一射影座標をパラメータ化の分子へ、第二射影座標を共通の分母とすることにより射影空間の中で考えることができるであろう。射影直線の中でパラメータが定義されると、パラメータの中の多項式は斉次多項式化できる。例えば、上の楕円の射影的なパラメータ化は、

X=U^2-T^2,\quad Y=T\,(T+2\,U),\quad Z=T^2+TU+U^2.

である。これらの方程式から T と U を消去英語版し、再び次の楕円の射影的方程式を得る。

X^2+X\,Y+Y^2=Z^2,

この式は上の方程式を斉次化することで直接、容易に得ることができる。

Wikipediaの曲線リストに掲載されている多くの曲線は有理曲線であり、従って、上記と似ていて有理パラメータを持っている。

楕円曲線[編集]

楕円曲線有理点を持つ種数が 1 の任意の曲線として定義される。楕円曲線に共通なモデルは、非特異三次曲線英語版(cubic curve)で、任意の種数が 1 である曲線のモデルとして充分である。このモデルでは、特別の点は無限遠点で変曲点を持つように共通に取ることができる。このことは、曲線がテイト・ヴァイエルシュトラス形式で書くことができることを要求し、射影バージョンでは次のように書くことができる。

y^2z + a_1 xyz + a_3 yz^2 = x^3 + a_2 x^2z + a_4 xz^2 + a_6 z^3.

楕円曲線は、群法則の単位元として、特別な点を持つアーベル群の構造を持っている。平面三次モデルでは、3つの点の和が群の中ではゼロとなることと、3点が直線上にあることとは同値である。複素数上で定義された楕円曲線に対して、群は対応する楕円函数周期格子英語版を法(modulo)とする複素平面の加法群に同型である。

2つの二次曲面の交叉は、もし有理点を持つならば、一般には種数 1 で次数は 4 の非特異曲線となる。特別な場合として、交叉は特異点を持つ有理二次曲線か、またはいつも異なったものなるわけではないが、より小さな次数の曲線に分解する。(三次曲線、1本の直線、あるいは 2つのコニック(conic)、あるいは 1つコニック(conic)と2本の直線、あるいは4本の直線となる。)

種数が1よりも大きな曲線[編集]

種数が 1 よりも大きな曲線は、有理曲線や楕円曲線と目立って異なっている。有理数体上で定義されたそのような曲線は、ファルティングスの定理により、有限個の有理点しか持たなく、双曲幾何構造を持つものとしてみなすことができる。例として、超楕円曲線や、クライン二次曲線英語版(Klein quartic curve)や、n が 3 より大きなときのフェルマー曲線 xn+yn = zn などがある。

日本語版の脚注[編集]

  1. ^ skew curveを歪曲線との用語を使用した。
  2. ^ 射影: 多様体の射 ρ がべき等である、つまり ρ∘ρ=ρ であるときの射 ρ を射影という。

関連項目[編集]

古典的な代数幾何学[編集]

現代代数幾何学[編集]

リーマン面の幾何学[編集]

参考文献[編集]

  • Egbert Brieskorn and Horst Knörrer, Plane Algebraic Curves, John Stillwell, translator, Birkhäuser, 1986
  • Claude Chevalley, Introduction to the Theory of Algebraic Functions of One Variable, American Mathematical Society, Mathematical Surveys Number VI, 1951
  • Hershel M. Farkas and Irwin Kra, Riemann Surfaces, Springer, 1980
  • W. Fulton, Algebraic Curves: an introduction to algebraic geometry available at [1]
  • C.G. Gibson, Elementary Geometry of Algebraic Curves: An Undergraduate Introduction, Cambridge University Press, 1998.
  • Phillip A. Griffiths, Introduction to Algebraic Curves, Kuniko Weltin, trans., American Mathematical Society, Translation of Mathematical Monographs volume 70, 1985 revision
  • Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977
  • Shigeru Iitaka, Algebraic Geometry: An Introduction to the Birational Geometry of Algebraic Varieties, Springer, 1982
  • John Milnor, Singular Points of Complex Hypersurfaces, Princeton University Press, 1968
  • George Salmon, Higher Plane Curves, Third Edition, G. E. Stechert & Co., 1934
  • Jean-Pierre Serre, Algebraic Groups and Class Fields, Springer, 1988
  • Claire Voisin LECTURES ON THE HODGE AND GROTHENDIECK–HODGE CONJECTURES;[2] ANTICANONICAL DIVISORS AND CURVE CLASSES ON FANO MANIFOLDS;[3] Voisin C. Hodge theory and complex algebraic geometry 1;[4] Green's canonical syzygy conjecture for generic curves of odd genus;[5] Green’s generic syzygy conjecture for curves of even genus lying on a K3 surface [6]
  • Montserrat Teixidor i Bigas ON A CONJECTURE OF LANGE;[7] Moduli spaces of vector bundles on reducible curves;[8] Green’s Conjecture for the generic r-gonal curve of genus g ¸ 3r ¡ 7 [9]
  • Ernst Kötter (1887). “Grundzüge einer rein geometrischen Theorie der algebraischen ebenen Kurven (Fundamentals of a purely geometrical theory of algebraic plane curves)”. Transactions of the Royal Academy of Berlin.  — gained the 1886 Academy prize[10]

英文の脚注[編集]