仙台空港鉄道仙台空港線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

空港ターミナルより見る仙台空港線
空港ターミナルより見る仙台空港線

仙台空港線(せんだいくうこうせん)は、宮城県名取市名取駅から同市の仙台空港駅までを結ぶ7.1kmの鉄道路線である。運営は第三セクター仙台空港鉄道が行う。

目次

[編集] 路線名称

様々な名称で呼ばれているため、以下に整理列挙する。

[編集] 路線データ

  • 管轄(事業種別):仙台空港鉄道(第一種鉄道事業者
  • 区間・路線距離(営業キロ):名取~仙台空港 7.1km
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:4駅(起終点駅を含む)
  • 複線区間:なし(全線単線)
  • 電化区間:全線(交流50Hz 20,000V)
  • 閉塞方式:特殊自動閉塞式
  • 保安装置:ATS-Ps
  • 最高速度:110km/h
  • SuicaICOCA利用可能区間:全線
    • 2008年3月29日よりPASMOTOICAも利用可能となった。(開始当初は係員による対応となる予定)
  • 仙台まるごとパス利用可能区間:全線
  • 1日の利用者数:6940人(2008年2月現在の平均。当初の見込みは1万人)

[編集] 運行形態

仙台空港駅に停車する仙台空港鉄道SAT721系電車
仙台空港駅に停車する仙台空港鉄道SAT721系電車
仙台空港駅に停車するJR東日本E721系電車
仙台空港駅に停車するJR東日本E721系電車
  • 仙台空港線の全列車が仙台駅(東北本線)へ直通運転を行う。
  • 1日あたり快速8本(4往復)を含む上下計80本(40往復)の列車を運行。
    • 所要時間(仙台空港駅~仙台駅間)
  • 運行頻度・運転両数
    • 朝夕のラッシュ時:2~3本/時(4~6両編成)
    • ラッシュ時以外の時間帯:2~3本/時(初電・終電の時刻付近を除く)(2~4両編成)
  • 初電・終電
    • 仙台駅:初電5:35、終電22:51
    • 仙台空港駅:初電5:49、終電22:53
  • 全列車、ワンマン運転
  • 運行車両
    • SAT721系電車(仙台空港鉄道所有車)
    • E721系電車(500番台)(JR東日本所有車)

ダイヤ・所要時間については右記リンク先を参照。 時刻表

[編集] ワンマン運転

仙台空港線における列車の運行方式は事実上、JR東日本が決定することになっており、同社は東北本線乗り入れ区間を含めて最大6両編成でのワンマン運転を検討していた。しかし、日本の地方鉄道でのワンマン運転は一般的に運転士が目視で安全確認をしやすい4両編成以下で行われている例がほとんどであり(地下鉄や都市鉄道ではホームなどに安全対策を施した上で6両編成以上でもワンマン運転を行っているケースもある)、仙台空港から仙台までの各駅にセンサーやホームドアの設置予定もないため、このことが地元マスメディアによって報道された後、安全性を懸念した宮城県がJR東日本に説明を求めるなどした。開業からしばらくの間は混雑時間帯に運転士以外にも乗務員が添乗する事となり、最終的には、仙台空港鉄道、JR東日本、宮城県がワンマン運転について協議して、これを判断することになった。

その後、運行する車両の運転台にホーム監視用のモニタを、仙台空港線と同線に乗り入れをする東北本線の名取~仙台の各駅に監視カメラとその映像を車両へ伝送する装置をそれぞれ設置した。そのほか、停車する各駅のホームに警備員を配置し安全性を確保している。

[編集] 運賃

仙台空港アクセス線の全ての列車は仙台空港駅から仙台駅まで直通で運転されるが、仙台空港~名取間は仙台空港鉄道の、名取~仙台間はJR東日本の事業区間であり、それぞれ別に運賃が定められている。仙台空港線の各駅と、JR東日本の仙台近郊の各駅では、仙台空港鉄道線区間とJR線区間の連絡乗車券が売られている。

大人片道普通旅客運賃

着発駅 名取 杜せきのした 美田園 仙台空港
名取 170円 210円 400円
杜せきのした 170円 170円 300円
美田園 210円 170円 210円
仙台空港 400円 300円 210円
※参考1:名取駅までのJR線普通運賃(大人)
  • 仙台駅~名取駅:230円
  • 岩沼駅~名取駅:190円
  • 白石駅~名取駅:570円
  • 古川駅~名取駅:950円(小牛田駅、仙台駅乗り換え)
  • 石巻駅~名取駅:1,110円(仙台駅乗り換え)
  • 福島駅~名取駅:1,110円
  • 原ノ町駅~名取駅:1,110円
  • 山形駅~名取駅:1,280円(仙台駅乗り換え)
  • 一ノ関駅~名取駅:1,890円(同上)
※参考2:地下鉄南北線泉中央駅~JR名取駅の運賃
  • 泉中央駅~地下鉄長町駅(350円)+JR長町駅~JR名取駅(180円):530円
  • 泉中央駅~地下鉄仙台駅(290円)+JR仙台駅~JR名取駅(230円):520円

当初、仙台駅~仙台空港駅間の運賃は片道700円程度(JR線区間230円+仙台空港鉄道線区間470円程度)で検討されていた。しかし、自家用車利用者を取り込むために割安な運賃設定が必要であるとの判断から、仙台空港鉄道は名取駅~仙台空港駅間の運賃を片道400円として運賃の認可申請を行い、仙台駅~仙台空港駅間の運賃は片道630円となった。開業前に運行されていた仙台市交通局のエアポートリムジンバス(仙台駅~仙台空港間・片道運賃910円)に比べて安い運賃となった。

杜せきのした駅と美田園駅の両駅前には、大空港で見られるような空港内ショッピングゾーンなどと似た店舗構成の商業施設が進出、または進出を予定している。

仙台駅より北側の仙台市営地下鉄南北線の各駅(泉中央駅~広瀬通駅間)から乗車して仙台空港に向かう場合、地下鉄仙台駅とJR仙台駅が離れているのに対し、地下鉄長町駅とJR長町駅は近接しているため、長町駅での乗り換えの方が便利である。どの地下鉄駅から乗車するかで仙台駅乗り換えと長町駅乗り換えのどちらが安いかは異なる。

(参考)JR長町駅西口広場:JR長町駅が地下鉄長町駅近くに移設された。乗り換えの利便性を考え、西口広場に地下鉄出入口が新設される。

[編集] 経緯

仙台空港駅付近で建設中の高架部(2005年3月10日撮影)
仙台空港駅付近で建設中の高架部(2005年3月10日撮影)

仙台空港線の構想は、仙台空港と仙台市都心部をつなぐ軌道系交通機関として1984年昭和59年)3月に仙台地方陸上交通審議会が可能性検討の答申をしたことに始まる。日本政府が1991年平成3年)11月に仙台空港の滑走路を大型ジェット機対応の3,000mに拡張することを決定したのに合わせ、12月に空港アクセス鉄道整備検討委員会が宮城県を中心に設置され、仙台市営地下鉄南北線の延伸、モノレール新交通システムの新設、JR線分岐などの案が比較検討された結果、1992年(平成4年)8月にJR線分岐案に決定した。しかし、運営母体をJR東日本へ打診したものの、採算面から拒絶され、新たに第三セクターを設置することに決定。2000年(平成12年)4月に仙台空港鉄道株式会社が設立され、6月に第一種鉄道事業の認可を取得した。

仙台空港線の建設は2002年(平成14年)12月5日に着工された。建設費は349億円(総事業費は416億円)である。建設と同時にJR東日本では仙台駅の改良や仙台空港線へ相互で乗り入れるための新形式の車両(E721系電車500番台)の製造を進め、仙台空港鉄道も同形の車両(SAT721系電車)を用意するなど、開業へ向けて準備が進められた。

また、宮城県は2001年(平成13年)に山形県へ仙台空港鉄道への出資を打診した。山形県は、山形県民の海外渡航において半数以上が仙台空港を利用しており、さらに、仙台空港の国内線旅客の2割が山形県民であること[1]を鑑みて、山形駅から仙山線・東北本線・仙台空港線経由で仙台空港駅まで直通運転(以下、「仙山線直通列車」)されれば山形県にメリットがあると判断し、5,000万円の出資を予算計上した。後日、山形・宮城両県で仙山線直通列車をJR東日本に要望したところ、ダイヤ上の問題や車両確保の問題から、臨時列車を含めて設定は困難との回答を受けた。出資の前提であった仙山線直通列車の運行がなくなり、山形県は予算執行停止を決めた。しかし、JTB主催のハワイ旅行商品に合わせて、ゴールデンウィーク中(2007年4月30日5月4日)に仙山線直通列車が臨時列車で運行されることが決まり、山形県は同年2月9日に予算執行を発表した。

2007年3月18日JRの春のダイヤ改正に合わせて予定通り開業。この1日で約2万人が仙台空港線を利用した(仙台空港駅・美田園駅・杜せきのした駅の自動改札利用の乗降人数の合計。有人改札利用者含まず)。杜せきのした駅直結のイオンモール名取エアリ(当時はダイヤモンドシティ・エアリ)への利用客が多かったため、下り快速2本が本来通過する同駅に停車した。

開業1年目の利用人数は、目標乗車数の7割程度であり、1日あたりの利用者も目標10000人のところ、7000人台に留まった。仙台空港鉄道では利用客を空港利用者・沿線から仙台への通勤利用者・沿線ショッピングセンターなどへの買い物利用者の3本立てに設定していた。空港利用者と買い物利用者は目標どおりの乗車率となったが、沿線の開発が始まったばかりであり、通勤利用が低迷していることが目標をたっせいできなかった主要因とされる。2008年(平成20年)3月15日ダイヤ改正では山形方面からの利用客取り込みのために、仙山線との接続を重視した時刻設定となった。

[編集] 名取市と仙台市の合併議論との関連

仙台空港アクセス鉄道構想が具体化し始めた1991年(平成3年)と、1994年(平成6年)から1996年(平成8年)にかけて、仙台市と名取市との合併について議論があった[2]。名取市が仙台市に編入されることで仙台空港も仙台市内となり、臨空工業地区への工場誘致が容易となるとの意見も聞かれたが、仙台市としては、名取市と合併することで早期に人口100万人に達することで国からの補助金増額を欲しかったのと、仙台空港線への出資を空港接続道路・臨空工業地区・仙台空港線等からの莫大な固定資産税によって回収する目論見があり、他方、名取市は予想される税収増を見す見す仙台市に渡すことを嫌って、結果として両市の合併は実現しなかった。

仙台空港線は仙台市内を走る部分がなく、仙台空港鉄道の本社も名取市に移転し、イオンモール名取エアリも名取市内にできるなど、名取市のメリットは多いが、仙台市としては、CBDや中心商業地の打撃を食ったり、仙台市営バスのドル箱路線であるエアポート・リムジンバスが廃止されて収入減少となったり、と、直近ではデメリットの方が多い。しかし、仙台駅と仙台空港が鉄道で結ばれることは、長期的には仙台市の拠点性向上にメリットがあるとのことで、仙台空港鉄道の採算性が問題視されても、出資を問題視する者は見られない。

[編集] 採算性の問題

会社では開業後30年目での黒字転換を見込んでいるが、この空港アクセス鉄道事業について、採算性を疑問視する声がある。

[編集] 建設費用と運賃のバランス

仙台空港アクセス鉄道の構想の段階で、JR東日本が運営主体となることを要請されたもののこれを断り(但し同社は仙台空港鉄道株式会社に出資)、結果的に宮城県が事業主体となったという経緯がある。ただし、仙台空港線は、2007年度の土木学会賞技術賞を受賞しており、その選定理由として、「新しい施工法の採用で、コストを計画より約20%縮減。工期も大幅に短縮して実質2年半で完成した」とも評価されている。

仙台駅から仙台空港駅まで、仮にすべてJR東日本の路線とすると、JR東北本線の仙台駅~名取駅が10.4km、仙台空港鉄道部分が7.1kmで合計17.5kmとなり、JR東日本の運賃体系では320円となる。建設費用の償還も考えると、他の空港連絡鉄道路線などに見られるような200円以下の加算運賃を含めても採算が見込めない。

[編集] 他の交通機関との競合

仙台駅と仙台空港間を結んでいたエアポート・リムジンバスは、仙台空港線開業と同時に廃止された。このリムジンバスは、仙台空港利用者の約4分の1が交通手段とし、1日約2,000人が利用していた。仙台空港線の事業計画は、これらのバス利用者が仙台空港線に移ることを想定して進められた。

これに対し、リムジンバスの廃止後に仙台市中心部と仙台空港を結ぶバス路線として、愛子観光バスが計51便・片道運賃800円、東日本急行が計30便・片道運賃700円で参入していたが、愛子観光バスについては仙台空港アクセス線への流出による利用率低下や原油価格の高騰による赤字を理由に2008年2月29日の運行を以って廃止となった。また、東日本急行についても同様の理由から減便を余儀なくされている。

また、都市圏自動車専用道路の候補路線として、東北道村田JCTから分岐して仙台空港に直線的に接続する宮城県横断自動車道および仙台空港連絡道が調査中である[3]。全通すれば、山形県や福島県中通りから仙台空港へアクセスするのに最短ルートとなって、仙台空港線と競合することになるなど、将来的にも仙台空港線の採算面での不安要素がある。

なお、宮城県横断自動車道に並行する道路として、県道25号・岩沼蔵王線および県道258号・仙台館腰線の通称「愛島バイパス」部分があり、仙台空港連絡道と並行する道路として県道20号・仙台空港線がある。25号岩沼蔵王線の村田~岩沼間は高舘丘陵を越える山岳道路、258号愛島バイパスは自動車専用道路(2006年度完成)、20号仙台空港線は片側2車線の一般道となっている。

[編集] 駅一覧

杜せきのした駅以外では列車行き違い可能。

駅名 営業キロ 接続路線 所在地
東北本線仙台駅まで直通運転
名取駅 0.0 東日本旅客鉄道東北本線常磐線(東北線直通) 宮城県 名取市
杜せきのした駅 1.8  
美田園駅 3.8  
仙台空港駅 7.1  

[編集] 脚注

  1. ^ 県広報誌「県民のあゆみ」平成17年9月号山形県庁
  2. ^ 名取市・岩沼市合併問題調査研究会
  3. ^ 仙台圏幹線道路図

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

他の言語