仙台市天文台

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仙台市天文台
Sendai Astronomical Observatory
惑星広場から見た観測棟(2008年7月)
仙台市天文台の位置(宮城県内)
仙台市天文台
仙台市天文台の位置
施設情報
前身 仙台天文台(民営)
専門分野 天文学
来館者数 約50万人/年
館長 小野寺正己(第8代台長)
事業主体 仙台市
管理運営)仙台天文サービス(指定管理者[1]
年運営費 約3億円[2]
建物設計 NTTファシリティーズ[2][3]
延床面積 6,056.24 m2[2]
開館1955年昭和30年)2月1日
(新)2008年平成20年)7月1日
所在地 989-3123
宮城県仙台市青葉区錦ケ丘9丁目29番地の32[2]
位置 北緯38度15分25秒 東経140度45分19秒 / 北緯38.25694度 東経140.75528度 / 38.25694; 140.75528
アクセス JR仙山線愛子駅よりバスで10分
東北自動車道仙台宮城ICから車で約10分
外部リンク http://www.sendai-astro.jp
プロジェクト:GLAM
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仙台市天文台(せんだいしてんもんだい)は、宮城県仙台市青葉区錦ケ丘にある仙台市立の天文台である。1955年昭和30年)に仙台天文台として開台し、1956年(昭和31年)に仙台市へ寄付されて仙台市天文台となった。2008年平成20年)に現在地へ移転した[4]。2023年プラネタリウムのリニューアルが完了[5]

沿革[編集]

画像外部リンク
1954年撮影の天文台
戦後の占領期にアメリカ軍が撮影[6]
(旧)仙台市天文台
Sendai Municipal Observatory
西公園にあった頃の仙台市天文台(2005年12月)
コード 893
所在地 仙台市青葉区桜ケ岡公園1-1
座標 北緯38度15分33秒 東経140度51分44秒
開設 1955年2月1日 (1955-02-01)
閉鎖 2007年(平成19年)11月25日
望遠鏡
反射望遠鏡口径41cm
屈折太陽望遠鏡口径20cm
コモンズ ウィキメディア・コモンズ
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(旧)仙台市天文台・愛子観測所
Sendai Observatory,
Ayashi Station
コード 391
所在地 仙台市青葉区下愛子字舘37[注釈 1]
曹洞宗安養寺墓地内)[7][8]
座標 北緯38度15分55秒 東経140度46分42.3秒
開設 1975年 (1975)(昭和50年)[7]
閉鎖 2007年(平成19年)[7]
望遠鏡
ツイン反射写真儀口径20cm
写真望遠鏡口径30cm
コモンズ ウィキメディア・コモンズ
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(新)仙台市天文台
Sendai Astronomical Observatory
コード D93
所在地 仙台市青葉区錦ケ丘9-29-32
座標 北緯38度15分22.99秒 東経140度45分18.56秒
標高 165m
開設 2008年7月1日 (2008-07-01)
望遠鏡
反射式望遠鏡口径130cm
屈折望遠鏡口径10cm
コモンズ ウィキメディア・コモンズ
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仙台に天文台を建設しようという動きが起こったのは1950年代前半である。1953年(昭和28年)に天文台建設発起人会と天文台建設委員会が立ち上げられ、1954年(昭和29年)に募金活動および建設工事が行われた[9]。そして1955年(昭和30年)、西公園仙台市公会堂跡地に天文台が開台した[10]。この天文台は翌年、仙台市に寄贈され、仙台市天文台となった[10]。天文台の建設計画には東北大学教授の加藤愛雄が関わっており、加藤は天文台の初代台長となった。この時の仙台市天文台は、当時、日本国内で製造されていた望遠鏡の中では最大のカセグリン式41センチ望遠鏡を備えていた[9]

仙台市天文台の管理および運営は当初、仙台市の文化観光課が所管するものだったが、1960年(昭和35年)に仙台市教育委員会へ移管された。これ以後、仙台市天文台は天文台実習や天文普及講座を行うなど、教育施設としての役割を担うようになった。1962年(昭和37年)に屋外天球儀の設置、1964年(昭和39年)に展示室の併設[9]1968年(昭和43年)にプラネタリウムの開館と、天文台施設が次第に拡張されていった。このプラネタリウムは、1967年(昭和42年)に行われた東北大博覧会の展示品の一つで、博覧会終了後に河北新報社から寄付されたものである。その後も、展示室の増設や太陽望遠鏡の導入など、施設の拡充が続いた[11]

仙台市天文台は、建物の老朽化と耐震性の問題、仙台市地下鉄東西線およびその駅である大町西公園駅の新設、西公園の整備事業などの関係から、移転することになった。移転先は仙台市郊外の錦ケ丘で、旧天文台から西方へ約10キロメートルの位置に当たる。西公園の天文台は2007年(平成19年)11月25日に閉台し、翌2008年(平成20年)7月1日に旧天文台および仙台市泉区のミルポートSにあった「仙台市こども宇宙館」の機能を継承した新しい天文台が開台した。こども宇宙館は1990年(平成2年)7月12日に開館した施設で、プラネタリウムなどを備えていた。

仙台市天文台は小惑星の発見に成果を挙げており、2008年(平成20年)までに21個の小惑星を発見し[10][12]、いずれも仙台にちなんだ命名を行っている[13]。一例として、1988年(昭和63年)に発見された小惑星の名称は当時の愛子観測所に因む「愛子」である[11]。(小石川正弘参照)

年表[編集]


設備[編集]

展示室(2008年7月)

建物の1階には展示室、プラネタリウム、ホール、ミュージアムショップ、天文ライブラリなどがある[28][29][30]。展示室では、模型やコンピュータグラフィックスにより、地球太陽系銀河系などに関わる展示、解説が行われている。江戸時代の渾天儀、天球儀、象限儀も収蔵されており、これらは「仙台藩天文学器機」として重要文化財に指定されている[31]。プラネタリウムは、270席を備える直径25メートルの水平型ドームで、光学式とデジタル式の複合システムである[32]。ホールは、初代台長と2代目台長の名前から「加藤・小坂ホール」と名付けられており、企画展や講演会がここで行われる[33]

建物の2階には学習室や資料室などがある。3階は観測室や観測デッキのフロアである[28]。観測室の望遠鏡は、口径1.3メートルの大型望遠鏡で、17等星ほどまで観測できる。「ひとみ望遠鏡」と呼ばれている[34]。この他に市民向けの観察用望遠鏡と大型双眼鏡があり、市民は研修を受けた上でこれらを使うことができる[35]

建物の外の広場は「惑星広場」で、太陽系の水星から木星の軌道がデザインの基となっている[36]。普通車125台(うち身体障害者用5台)、バス6台分の駐車場と、オートバイ16台、自転車32台分の駐輪場があり、いずれも無料である[37]

建物の施工者は戸田建設と橋本店JVで、NTTファシリティーズが設計と監理を担当した。

望遠鏡[編集]

  • シロースタット式太陽望遠鏡
  • 口径1.3m反射式天体望遠鏡(五藤光学製)
    • 2008年(平成20年)6月30日ファーストライト
    • 有効口径:1300mm
    • 焦点距離:F12 = 15600mm
    • 光学系:カセグレイン式
    • 架台:経緯台式(経緯儀式)
    • 制御方式:自動制御
    • 観測装置:冷却CCDカメラ、その他準備中

旧天文台の設備[編集]

  • プラネタリウム(座席200席)
  • 展示室
  • 望遠鏡
    • 口径41cm反射望遠鏡
    • 口径20cm屈折太陽望遠鏡
  • 移動天文車「ベガ」号
    • 口径20cm屈折望遠鏡

利用[編集]

  • 開館時間
    • 午前9時から17時まで。(土曜日は21時30分まで。ただし展示室は17時まで。)
  • 休館日
    • 毎週水曜日
    • 第3火曜日(この日が祝休日の場合はその直後の平日が休館。)
    • 年末年始
      • ただし、学校の長期休業期間中は開館する。
  • 観覧料
    • 展示室:一般600円、高校生350円、小・中学生250円
    • プラネタリウム:一般600円、高校生350円、小・中学生250円
    • セット券(展示室・プラネタリウム):一般1000円、高校生600円、小・中学生400円
    • 年間パスポート:一般3000円、高校生1800円、小・中学生1200円(発行日から1年間 展示室・プラネタリウム・天体観望会無料)

仙台都市圏及び周辺都市圏で発行される「どこでもパスポート」「AZ9パスポート」を使用することで、宮城県内に在住の小中学生は全館無料で利用すること出来る。

アクセス[編集]

オーナーサポーター[編集]

仙台市天文台は「オーナーサポーター」という会員制度を実施している。これは会員たるオーナーが天文台に資金面や物品面で援助するというもので、提供された資金は展示物制作費や研究費に当てられる。会員資格は個人、法人を問わない。以下はオーナーサポーターの法人である[38]

  • NTT東日本
  • 株式会社エルコム
  • Six Stars Consulting株式会社
  • 株式会社ジャパンビバレッジ東北
  • 島守クリニック
  • すえたけ皮膚科
  • 株式会社スターファイブ
  • 株式会社太陽事務機
  • タマヤ計測システム株式会社
  • 東北フローズン株式会社
  • トウホクメンテナンス株式会社
  • 株式会社名取屋染工場
  • パークサイドインなかむら
  • 株式会社ビクセン
  • 株式会社ポラリス
  • 株式会社ヨコハマタイヤ
  • 株式会社渡辺教具製作所
  • ワテックスペースベンチャーズ株式会社

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 1987年(昭和62年)10月31日まで宮城郡宮城町内。
  2. ^ 天文台建設当時よりさらに児童が増加したため、錦ケ丘小学校は別の用地に2015年に開校した。

出典[編集]

  1. ^ (平成20年度)指定管理者評価シート”. 仙台市. 2013年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月25日閲覧。
  2. ^ a b c d 年報 第6号 2013年度 (PDF) (仙台市天文台)
  3. ^ 建築作品集>仙台市天文台 - NTTファシリティーズ公式サイト、2015年9月12日閲覧
  4. ^ ごあいさつ・天文台のあゆみ”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  5. ^ 2023年春・プラネタリウムのリニューアルについて”. 仙台市天文台. 2023年8月24日閲覧。
  6. ^ Sendai Japan -- in the past -- by Abraham Lincoln
  7. ^ a b c d e 国立天文台博物館構想シンポジウム 集録 (PDF)国立天文台 2012年11月3日-4日)
  8. ^ 「伊達政宗がかわいそうで…」つけた天体の名前とは週刊朝日 2013年4月19日号)
  9. ^ a b c 『仙台市史』通史編8(現代1)525 - 526頁。
  10. ^ a b c d e f g h 仙台市天文台の歴史(仙台市天文台)
  11. ^ a b 『仙台市史』通史編9(現代2)544頁。
  12. ^ 小惑星ニュース特定非営利活動法人日本スペースガード協会 2008年7月8日)
  13. ^ 仙台市天文台で発見された小惑星”. 2007年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月5日閲覧。(仙台市。「小惑星への光州広域市(ガンジュ)命名確定と同市の訪問について”. 2007年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月12日閲覧。」 2002年6月19日市長記者会見) および2007年のメゴ
  14. ^ 仙台市議会だより 第108号 (PDF) (仙台市議会 2000年4月)
  15. ^ 平成15年度包括外部監査の結果報告書(土地)の概要” (PDF). 仙台市. 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月11日閲覧。
  16. ^ 仙台市天文台が開館します(資料)”. 仙台市. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月11日閲覧。
  17. ^ 開かれた宇宙への扉~天文台から星空にロマンを求めて~”. 東北放送. 2008年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月31日閲覧。
  18. ^ 100万人のキャドルナイトin仙台市天文台(仙台市天文台 2009年5月30日)
  19. ^ 入館者50万人を達成 仙台市天文台移転から1年”. 河北新報 (2009年6月28日). 2009年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月28日閲覧。
  20. ^ 2/6(土)-7(日) 「天文台まつり」を開催します!!(仙台市天文台 2010年1月20日)
  21. ^ a b c d 綺麗すぎてなめられない!? 仙台市天文台の「アースキャンディ&ムーンキャンディ」がネットで話題(Jタウンネット東京都 2015年8月20日)
  22. ^ “美しすぎるアースキャンディ…きょうも完売(宮城県)”. 日テレNEWS24 (日本テレビ). (2015年9月3日). オリジナルの2015年9月3日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20150903231935/http://www.news24.jp/nnn/news890109983.html 
  23. ^ a b 仙台市天文台 新名誉台長・新台長就任のお知らせ”. 仙台市天文台 (2020年6月25日). 2022年4月4日閲覧。
  24. ^ 【プレスリリース】仙台市天文台 新名誉台長・新台長就任のお知らせ”. 仙台市天文台 (2020年6月25日). 2022年4月4日閲覧。
  25. ^ 企画展 ありがとうケイロン ~ケイロンが映した15年の星空~”. 仙台市天文台. 2022年12月17日閲覧。
  26. ^ 仙台市天文台15年大規模修繕に伴うプラネタリウムリニューアル概要説明”. 仙台市教育委員会. 2022年12月19日閲覧。
  27. ^ プラネタリウムリニューアルに伴う投映休止について”. 仙台市天文台. 2022年12月17日閲覧。
  28. ^ a b フロアマップ”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  29. ^ ミュージアムショップ”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  30. ^ オープンスペース ”2020年5月3日閲覧。
  31. ^ [1]”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  32. ^ プラネタリウム”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  33. ^ 加藤・小坂ホール”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  34. ^ ひとみ望遠鏡観測室”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  35. ^ 観察室”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  36. ^ 惑星広場”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  37. ^ アクセス・観覧料”(仙台市天文台)2020年5月3日閲覧。
  38. ^ “オーナーサポーター - 仙台市天文台” (日本語). 仙台市天文台. http://www.sendai-astro.jp/support/owner.html 2018年10月12日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 仙台市史編さん委員会 『仙台市史』通史編8(現代1) 仙台市、2011年。
  • 仙台市史編さん委員会 『仙台市史』通史編9(現代2) 仙台市、2013年。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]