人間力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

人間力(にんげんりょく)とは、人間しているのことである。あらゆる分野使用されているのため、一般性を有する定義するのは、以上までが限界である。

目次

[編集] 概要

元々、日本において人間力の語は、近代から使用されていたものである[1]。人間力のそのものは、若者言葉と同様に通俗的に使われ始めたと考えられている。ただし、「人間力」を収録している伝統的な辞典・事典については、専門的な辞典・事典であっても見つけるのは難しい。このため、人間力の語の定義は場面によって異なる。

広義においては、人間が有している「体力」「学力」など、「○○力」と表現できる「個別的な力」が「人間力」である考え方がある。狭義においては、行政の諮問会議などで用いられている「総合的な力」が「人間力」であるという考え方がある。

言語学的には、人間力の語が冗語論理トートロジー)であるという指摘もある。「人間」の原義は「人同士の間に在る者」であり、現代においてもこの意味が含まれている。日本国外における諸言語(英語: human being)なども同様の意味合いがある。そのため、外国語に翻訳するにあたっては、安易な翻訳を行うと誤解を受ける可能性も高い。

「人間力」の語は、「人間味」「人間性」「人間らしさ」などの語と違い、人間の多様性を無視し、その語を使う人による観点によるものとなってしまうという批判もある[2]

[編集] 行政における動向

行政文書において「人間力」の語を初めて特記したのは、内閣府に置かれる「重要政策に関する会議」である経済財政諮問会議2002年平成14年)6月21日 金曜日経済財政政策担当大臣であった竹中平蔵答申し、32002年平成14年)6月25日 火曜日閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」であると認識されている。そこでは、「6つの戦略」として、(1)人間力戦略、(2)技術力戦略、(3)経営力戦略、(4)産業発掘戦略、(5)地域力戦略、(6)グローバル戦略の筆頭戦略として掲げられていた。

内閣府においては、東京大学 大学院教育学研究科教育学部教育心理学の分野を担当する教授である市川伸一座長とする「人間力戦略研究会」が2003年平成15年)4月10日 木曜日発表した『人間力戦略研究会報告書 : 若者に夢と目標を抱かせ、意欲を高める : ~信頼と連携の社会システム~』は、行政における「人間力」の語の取り扱いの最初の目安となった。内閣府に置かれた人間力戦略研究会は、まず「現状と課題」として内閣府文部科学省厚生労働省経済産業省を対象とし、人間力戦略研究会においては、これらの省庁の業務が大きな焦点とされていたと捉えられる。

文部科学省においては、政策の計画や、審議会等調査研究協力者会議等の「答申」「報告」等で、人間力の語が積極的に用いられた時期がある。ただし、所管の法令告示にはまったく用いられてなく、2008年(平成20年)4月1日(2008年度・平成20年度)以降は、計画通知解説答申報告にも一切使用されてなく、人間力の語を使用するのは、もはや過去のものとなったとも認識できる。

厚生労働省においては、2005年5月26日より、日本経済団体連合会経団連会長(第1回~第3回会議の時期は奥田碩、第4回会議以降の時期は、御手洗冨士夫)を議長とする「若者の人間力を高めるための国民会議[3]が開催され続けている。「若者の人間力を高めるための国民会議」は、2005年(平成17年)9月15日に「若者の人間力を高めるための国民宣言」を行い、この宣言に基づく形で、「若者の人間力を高めるための国民運動 : 若チャレ!」が実施されている。

経済産業省においては、各種の計画、報告文書、広報などにおいて「人間力」の語が使用されているものの、公共性が高い文書には、あまりみられない。また「人間性(人間力)」などと記し、「人間力」の語の積極的な使用を避ける動きも一部でみられる。なお、経済産業省で実施する事業は、補助金の交付が主であるあるため、「人間力」の語は、補助金の交付を受けた事業者等が報告をするにあたって使用されていることが多い。

2008年平成20年)4月1日(2008年度・平成20年度)以降の「人間力」の語の使用については、厚生労働省は特別な語として用いており、経済産業省は一般的な単語として用いている。

[編集] 定義

行政文書においては、内閣府に置かれた人間力戦略研究会2003年平成15年)4月10日 木曜日発表した『人間力戦略研究会報告書 : 若者に夢と目標を抱かせ、意欲を高める : ~信頼と連携の社会システム~』に定義を考察するにあたって参考となる部分がある。

人間力戦略研究会報告書の「II.人間力の定義」においては、「人間力に関する確立された定義は必ずしもないが、本報告では、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力と定義したい。」とされている。

ただし、人間力戦略研究会の座長であった東京大学 大学院教育学研究科・教育学部 教授の市川伸一は、冒頭「はじめに」の「人間力をどうとらえるか――社会に生き、社会をつくる人間をモデルに」において、以上の定義について次のように記した。

この定義は、多分にあいまいさを含んでいる。しかし、私たちは、人間力という概念を細かく厳密に規定し、それを普及させることをこの研究会の使命とは考えていない。人間力という用語を導入することによって、「教育とは、何のために、どのような資質・能力を育てようとするのか」というイメージを広げ、さらにそこから具体的な教育環境の構築が始まることにこそ意義があるのである。

[編集] 人間力のモデルの一例

内閣府に置かれた人間力戦略研究会が2003年平成15年)4月10日 木曜日に発表した『人間力戦略研究会報告書 : 若者に夢と目標を抱かせ、意欲を高める : ~信頼と連携の社会システム~』の「II.人間力の定義」の部分を整理したモデルは、次の通りである。

[編集] 構成要素

  1. 「基礎学力(主に学校教育を通じて修得される基礎的な知的能力)」、「専門的な知識・ノウハウ」を持ち、自らそれを継続的に高めていく力。また、それらの上に応用力として構築される「論理的思考力」、「創造力」などの知的能力的要素
  2. 「コミュニケーションスキル」、「リーダーシップ」、「公共心」、「規範意識」や「他者を尊重し切磋琢磨しながらお互いを高め合う力」などの社会・対人関係力的要素
  3. 「知的能力的要素」および「社会・対人関係力的要素」を十分に発揮するための「意欲」、「忍耐力」や「自分らしい生き方や成功を追求する力」などの自己制御的要素

などがあげられる。これらを総合的にバランス良く高めることが、人間力を高めることといえる。

[編集] 人間力を発揮する活動

  1. 職業人としての活動に関わる「職業生活面」
  2. 社会参加する市民としての活動に関わる「市民生活面」
  3. 自らの知識・教養を高め、文化的活動に関わる「文化生活面」

に分類される。

[編集] 連携・協力

人間力は、学校、家庭、地域及び産業等のそれぞれの場を通じて段階的・相乗的に醸成されるものであり、人間力強化のためには、学校、家庭、地域及び産業等という四者間の連携・協力が不可欠といえる。

[編集] 人間力の概念を推進しようとした人々

人間力の概念を推進しようとした人々に次のような人がいる。ただし、人間力の概念は、確立されたものではない。

中山成彬衆議院議員(第2次小泉改造内閣で第5代文部科学大臣に就任、2005年2月15日中央教育審議会総会にて)
国家戦略として、教育のあらゆる分野において、人間力向上のための教育改革を一層推進していく必要があります」[4]
サッカーアテネオリンピック代表監督、山本昌邦
オリンピックでは人間力が試される」
読売ジャイアンツ監督、原辰徳
阿部はこの人間力という部分において、非常に強いものを持っているのです。ちょっとやそっとのことでは動じない、精神的な強さ、プレッシャーをプラスに変える強さがある」

[編集]

  1. ^ 国立国会図書館および研究機関大学を含む)が有する蔵書の中で、最も古いもので、「人間力」を題名に含むものは、1945年昭和20年)1月に「朝日新聞」が発行した「朝日新聞大阪本社調査部パンフレット; 73」『近代戦と人間力動員 : 附イタリヤ降伏の教訓ほか』(総ページ数: 35ページ)である。なお、「朝日新聞大阪本社調査部パンフレット」は、少なくとも1940年(昭和15年)から1948年(昭和23年)7月までの発行が確認でき、現存するパンフレットの号から考察すると10年以上の発行があったものと考えられる。
  2. ^ 人間力を用語として頻繁に使用することを批判している者: 後藤和智本田由紀など
  3. ^ 厚生労働省:「若者の人間力を高めるための国民会議」の発足及び第1回会議の開催について
  4. ^ 中央教育審議会総会第47回における文部科学大臣あいさつ

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 参考資料