人材派遣

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人材派遣(じんざいはけん)とは、主として労働者派遣を意味する用語で、これを行う業のことを人材派遣業という。この語が使用される文脈では、おおむね労働者派遣法に定義された「労働者派遣事業」と同義で使用される。労働者派遣事業については労働者派遣事業を参照。

多くの場合労働者派遣を意味する「人材派遣」であるが、この用語は、大手の労働者派遣事業者が用いている。例として、スタッフサービステンプスタッフがある。また、業界団体である社団法人はその名に「人材派遣」の語を用いている。

目次

[編集] 「人材派遣」の意味

人材という言葉は労働者以外にも意味することがあるため、「人材派遣」が意味する実体は民法上の請負や委任のようなケースを指すこともある。

家庭教師の派遣や、介護ヘルパーの派遣は、労働者派遣ではなく、民法上の請負であるが、実体として事業所から労働現場に出向く形態であり、一般に派遣という言葉が使用される例もまれではない。ただし、彼らが完全に自らの判断に基づいて完全に仕事を請け負っているわけではなく、実質的には事業所のある程度の指揮命令系統が存在しているのが普通であり、いわゆる労働者派遣事業法に基づく人材派遣ではない、とは必ずしも言い切れない。

[編集] 行政手続き上の取扱い

人材派遣という言葉の意味が明確ではないことの行政上の実例として、商業登記先例が挙げられる。2006年に、商業登記における会社の目的登記の取扱いが変更されるまでは、目的の表現には具体性が要求されており、会社目的の登記先例を掲載した目的事例集(日本法令や、各法務局が編纂)によれば、「人材派遣業」という用語は具体性を欠くものとして登記不可とされていた。このため、登記実務上は、「労働者派遣事業」等、労働者派遣法に則した表現を用いている。

2006年以降、人材派遣業でも登記は可能の扱いになっているが、一般労働者派遣事業の許可申請や特定労働者派遣事業の届出を都道府県労働局に対して行うに際し、提出しようとする事業者が法人である場合には、定款の目的には、「労働者派遣事業」を行うことが記載されていることが求められ(労働者派遣事業、労働者派遣業、一般労働者派遣事業、特定労働者派遣事業、いずれも可)、「人材派遣業」では認められない運用である。よって、労働者派遣事業を行おうとする事業者は、事業目的を、人材派遣業ではなく、労働者派遣事業と定める必要があるのが原則ではあるが、実際には労働局によっては「人材派遣業」「○○の派遣業務」でも「労働者派遣事業を行うことがわかる」と言うことで受理、許可をされている。

[編集] 事実上の事前面接の横行

労働者派遣法第26条では「派遣労働者を特定することを目的とする行為」は制限されており、「見学」「面談」「業務確認」などの様々な呼称で、実際に派遣企業が派遣先に派遣社員を紹介する行為が横行している。ただし、紹介予定派遣の場合のみ、事前面接を認めている。

労働者派遣事業は本来、派遣先企業の要望を受け、最適な人材を登録者の中から探し出し、かつ、派遣先企業の詳細を正確に登録者に伝達するサービスである。なかには業務を紹介する立場である派遣企業の社員が、その業務についてよく分からないと称して事前に面談を行なうケースが多い。これは法令順守以前の問題であり、単に派遣企業の職務怠慢と、学習努力の放棄である。近年派遣労働者の人数は急拡大しており、そのため政府は法令順守を強化するするよう派遣企業に求めている。

日本経団連は、政府に対する雇用・労働分野の規制改革の要望に、事前面接の全面解禁を盛り込んでいる。全面解禁になると、派遣労働者の立場が今以上に弱くなるのは決定的と見られており、派遣労働者からは、パワーハラスメントの更なる横行が懸念されている。

[編集] 契約更新の問題点

大手人材派遣会社に多く見られる3ヶ月更新の労働条件は、使用者と労働者双方にとって更新拒否の自由があることを意味するが、実態は労働者側からの更新拒否を、法律の原因なく甘受しない企業も少なくない。1年以上の長期間の就労を期待しつつも契約は3ヶ月更新を要求するといった、労働者にとって不利な提示がな されている。

[編集] 日本の国際競争力低下の懸念

日本は原材料を輸入して加工し、製品を輸出して成り立っている典型的な加工貿易国家である。日本は世界でも最高水準の品質の製品を多数生産し国際競争力を保持しているが、社外の人間であり、短期就労がほとんどの派遣社員に製品への忠誠心や品質意識を要求するのはほとんど不可能である。

現在は純粋にコスト面から人材派遣制度を利用する例がほとんどであるが、国際競争力保持を視点に入れた人材派遣制度に転換していかないとコスト面よりも主に品質の面から、日本の国際競争力を徐々に低下させる危険性があり、コスト・品質を両立させうる長期的観点からの対策が求められている。自動車総連が非正規雇用者について所属組合に実施したアンケート調査(カッコ内は回答比率、複数回答)では、「技能・技術の伝承で課題がある」(52.6%)、「製品・サービスの質が低下する」(28.3%)といった点へ影響が出ているとの指摘がある[1]

[編集] 健康保険組合

「人材派遣」を行う事業者の業界団体である「社団法人日本人材派遣協会」は、2002年に人材派遣健康保険組合(通称「はけん健保」)を設立した。従来、派遣労働者は、派遣元である労働者派遣事業者との契約が月単位となっていることを利用し、継続雇用されていないことを理由に健康保険制度厚生年金保険制度に加入しないことが多かった(これら制度に加入するためには、3ヶ月以上の継続雇用が必要であるが、3ヶ月以上継続雇用されれば必ず加入させなければならない)。

この取扱いは、派遣労働者にとっては保険料を負担しないことによる手取り収入の増加、派遣元である派遣事業者にとっては保険料負担軽減および社会保険関係事務の軽減、派遣先企業にとっては派遣単価の圧縮、というメリットが存在したため、雇用関係が実質3ヶ月を超えても、健康保険制度への加入をさせない脱法状態が長く続いていた。特に労働者派遣事業を専業にしている者には、意図的に社会保険制度未加入を行うものも存在した[2]

しかし、2002年に会計検査院が厚生省に行った検査の中で違法であると指摘[3]。さかのぼって健康保険を適用し、多額の保険料が追徴される事態となった。この状況をみて、業界団体が主導して、やむをえず健康保険組合を設立するにいたったものである。政管健保に加入する方法もあったが、比較的若い派遣労働者のみで保険の母集団を構成したほうが、健康保険料率を低く設定できるため健康保険組合制度が採られたとされているが、後期高齢者医療制度の影響により現在では高い保険料率となっている(この制度は加入者数に応じた頭割り計算で拠出金を決めるため、若く所得が低い者が多い組合では非常に大きな負担となる傾向がある)。[4]


また、健保組合(組合健保)であるため、国民健康保険(国保)に比べ休業補償等の補償が手厚いというメリットもある。

労働者派遣事業者の中には、商社銀行系列を中心に、「はけん健保」成立前にすでに健康保険に加入しているものも多数あった。

なお、派遣事業者が商社や銀行、大手メーカなどのグループ企業の1つである場合、親会社の健康保険組合に加入する形式を採ることもある。

[編集] パート・アルバイトと比較して給料が高額な理由

派遣会社は原則として学生の就労は認めておらず、なんらかの職務経験を有した即戦力としての就労になるため(2008年現在においては未就業者への紹介も行われている)、一般的なアルバイトよりも時給は高く設定されるケースが多い。 有期雇用であることを雇用前に明確に設定できるため、労働者を長期間雇用することのリスクをある程度排除できることに加え、アルバイト・パートを自社で募集する際の求人広告費などを勘案すると派遣会社を利用することが費用対効果上メリットがあるという経営判断に基づいている。

また、大手派遣企業(前述のスタッフサービス等)の場合、交通費は時給に含まれているため割高になるという指摘もある。ただしその交通費相当額に対して課税されている場合があり、問題点とされている。


[編集] 批判とその反論

人材派遣業界への批判に対し、以下のような反論も存在する

[編集] マージンを多く取りすぎている

人材派遣会社は派遣先企業からの支払いのうち30%前後の額を派遣会社が徴収し、純益としているといった話が広く浸透しており、しばしば「派遣=奴隷制度」「搾取社会の象徴」、また人材派遣業者は「ピンハネで不当に儲けている」といった批判の対象となっている。
インターネット上では「マージンを50%以上抜いている」といった話も数多く見受けられるが、大半がその企業の決算報告書から導きだせる割合ではなく、真偽の確認が困難で信憑性に乏しい。真実と仮定しても、統計的見地から導き出された数値ではないケースがほとんどである。こうした噂は派遣会社特有の問題から来る労使トラブルや、未熟な対応を見せる派遣会社に対するスタッフの私怨・または逆恨みから来る虚言と考えられる。

アデコフジスタッフなどの独立系の人材派遣会社の場合、利益は社会保険(労使折半)や有給休暇の負担、福利厚生、事務所の地代家賃や人件費などの経費を加味してのことなので例えば一等地にある大型の人材派遣会社のマージンが30%だとしても、額面どおりの利益にはならない。 これは一般企業(たとえば印刷業や流通業)の年商を社員数で割った数字が、そのまま社員各々の年収となるよう分配することが出来ないことと同じ道理である。大まかにであるが有休には派遣社員の給料の5%程度が当てられ、社会保険には7~10%程度が当てらてれる。また、上記のような義務的経費に加え、経理担当者や営業担当者やスタッフへの指示担当者の人件費、広告費、大型ビルの地代家賃・光熱費また、など派遣事業にかかる経費などをも総合して加味すると、営利企業として利益を上げるには30%程度のマージンを取らざるを得ない。

実際の人材派遣業は薄利多売であることは人材派遣企業の財務諸表からも分る。例えば、人材派遣大手であるテンプスタッフの2007年度の売上高が1618億円なのに対して、営業利益が70億なことからも推察できる。売り上げ額の1600億円に対して70億円程度を純益としている場合は、派遣企業がマージンから経費を除いた純粋な利益は4.5%程度である。 また、2006年度の決算での業界上位五社の営業利益[5]はテンプスタッフの4.5%が最大であり、人材派遣最大手のパソナの営業利益は3%にしか過ぎない。したがって、派遣企業がマージンを過剰に徴収し不当な利益を上げているという話は検証可能性が無く、憶測に過ぎない話だといえる。

[編集] 正社員が派遣で代替され、正社員としての雇用機会を奪っている

日本の正社員は身分保障が非常に強く、その分企業の労働力需要を抑制し、労働者の雇用機会を損ねているという指摘がある。実際新卒以外の人が正社員として企業に就職するには手段が限られており、派遣労働者が企業の労働需要を満たすと共に雇用機会を満たしている。派遣制度を無くせば正社員の雇用機会も増えるという見解も、「正社員を雇う体力のない企業が派遣会社をやむなく使う」というケースが少なく無いことから、本末転倒と言える。また、派遣社員を介することで正社員に登用される労働者も少なくない。

[編集] 派遣社員は低収入で、いわゆる格差ワーキングプアの原因にになっている

本来、人材派遣会社は同時通訳や財務処理、ソフトウェア開発など一般企業の正社員にも困難な、特筆すべき技能を有している者を一時的に外部から拝借する手段であるため、かつては派遣社員というのは一般的に正社員よりも高給取りで、様々な会社を転々とするスペシャリストだとみなすことが一般的であった。しかし、一般企業が人件費を圧縮する手段として人材派遣会社を利用する傾向が1999年(法改正後)から顕著化し、2008年現在においては技能未習得者のみならず、就労未経験者をも受け入れている。即戦力としてでなく定型的な単純作業を行わせるための人材確保の手段として派遣会社を利用する企業が急増し、こうした高給取りの派遣社員が相対的に減少傾向にあるとみなせるに過ぎない。

[編集] 人材派遣企業は本来労働者が全額を得るべき労働対価を収益源としている

企業が正社員を雇用するということは莫大な経費が発生し、かつその社員を原則、定年まで雇用し続けることを前提とした賃金設定を行う必要がある。さらに、たとえば1万人の派遣社員を正社員として雇用した場合、1万人分の労働管理や経理事務が発生する事を意味する。必然的に管理職や経理担当者の増員を迫られ、これらの人件費も発生する。また正社員は景気循環や季節変動にに応じた雇用の調節が困難である。 こうしたことから、企業が正社員を雇い入れるということはイニシャルコスト・ランニングコスト両面で大きな負担を強いられる。人材派遣会社が純利益とできるマージンを仮に5%得たとしても、企業はこの負担を相殺し、さらに企業にとって利益となる。人材派遣企業は派遣先企業の労務費に弾力性を与え、企業体質を強化するサービスの対価として利益を得るのであり、いわゆるピンハネによって利益を得るものではない。

[編集] 派遣先企業の誤った認識がトラブルの原因である場合も多い

派遣先の企業担当者が、派遣労働者に誤った認識を持って接し、トラブルにつながる例も多い。人材派遣を利用して日の浅い企業でよく見られるケースだが、派遣先担当者が派遣労働者に対して、社員に準じて仕事を自ら進んでするべきとの態度で接し、ノルマ・成績まで社員に準じて要求する場合がある。派遣社員側が保険加入でない場合は、短期のアルバイトとしか考えていないケースがほとんどのため、トラブルになり早期に派遣社員側が退職し、双方に不利益な結末となる例が多い。

また派遣社員側は外部の人間のため、派遣先の指示なしでは動けない場合も多い。また派遣会社も場合によっては指示なしで行動せず、言動には慎重を期すよう教育していることもあり、社員に準じて率先して自ら動く人材を求める場合は、準社員や契約社員の方が人材派遣よりも適している場合が有り、派遣先企業の認識不足で人材派遣がミスマッチとなっている例も多く報告されている。また人材派遣では派遣社員に完成責任は無いため、完成責任を有する請負の方が適した場合もある。

[編集] 派遣制度は労働者側にもメリットのある制度である

労働者としてのメリットとしては拘束が限定的であることが挙げられる。大手人材派遣会社の場合は原則3ヶ月更新の契約であるため、このことが精神的な圧迫になる者、逆にイニシアチブを一生就業先に預ける必要が無いと魅了される者も居る。 独身志向の男女の存在や、身軽であることを望む者が「願わくば正社員」とは考えず、逆に国内外問わず様々な企業を転々としていきたいとポジティブな観点で派遣会社を利用するものも少なくない。 正社員では社内規定に基づいた平均化された給与と同一化され、能力に応じた支払いを受けることが難しいケースがあるが、高度な技術を身につけた人材は高額な給与と時間的な自由度が高い派遣の形態を選ぶことにより、短期的に金銭面で成功するケースもある。派遣会社は原則、退職金やボーナスなどの待遇は無いため、業種や派遣社員の技能によっては月々の手取額が正社員よりも高くなることがある。このことで一時的だが貯蓄が容易であるため、留学や習い事に投資してさらなる能力を身に付け人生設計を立てる事が可能である。

[編集] 脚注

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[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク