交響曲第10番 (ベートーヴェン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン交響曲第10番(こうきょうきょくだい10ばん)は、ベートーヴェンの未完成交響曲である。曲の断片的なスケッチが記されているにとどまり、本格的な作曲が開始されないまま作曲者が逝去してしまっている。

なお、この曲における『未完成』とは、シューベルトロ短調交響曲や、ブルックナー交響曲第9番マーラー交響曲第10番などのように、曲の一部は完成している(他者が補筆を行わなくてもある程度演奏することが可能である)という意味での『未完成』とは異なる。

構想[編集]

ベートーヴェンは、交響曲第7番交響曲第6番交響曲第7番交響曲第8番、といったように後期の交響曲を二曲一組として作曲している。その流れに沿い、交響曲第10番も元々は交響曲第9番と組にして構想された楽曲である。彼の構想の初期の段階では、交響曲第9番は純粋な器楽のためのものとされ、第10番は合唱を含むものとして計画されていたが、やがてベートーヴェンはこの二つの楽曲の構想を一つに統一し、より完成度の高い一つの交響曲の作曲へと方針を転換することとなる(ここで生まれた交響曲こそが「第九」である)。

交響曲第9番の完成後、ベートーヴェンの関心は弦楽四重奏曲の作曲へと移り、次の交響曲はスケッチ状態のまま手を加えられることはなかった。その後、ベートーヴェンは1827年に死去した。

交響曲第10番のスケッチであろうと考えられている断片的な楽譜は数多く発見されており、中には「かなりの可能性で実際の交響曲第10番のスケッチである」と見られているものもある。しかし、大半は判別がついていない。

補筆完成[編集]

バリー・クーパー版[編集]

バリー・クーパーは、遺された大量のスケッチを基に、1990年交響曲第10番変ホ長調を補筆完成したとされる。第1楽章のみの録音が市販されている。ただし、この版は必ずしもベートーヴェンが生きていれば完成させていたであろう「交響曲第10番」を思わせるものではない。クーパー版第1楽章の主要動機はピアノソナタ第8番『悲愴』の第2楽章に酷似している。数枚のCDが発売されているが、評価は分かれている。

ブラームスに関して[編集]

ロマン派の作曲家、ヨハネス・ブラームスはベートーヴェンの音楽を非常に高く評価し、自身の交響曲をベートーヴェンのそれに匹敵するほどの完成度にすることを目指して推敲に推敲を重ね、構想から20年のときを経た1876年交響曲第1番ハ短調を完成させた。この交響曲第1番は当時、その完成度から、「ベートーヴェンに10番目の交響曲ができたようだ」と指揮者のハンス・フォン・ビューローから高く評価されたため、現代でもこの逸話とともに、ブラームスの交響曲第1番は「交響曲第10番」との愛称で呼ばれることがある。

ゲーテ『ファウスト』との関連[編集]

第9番ではシラーの詩を用いたベートーヴェンであるが、第10番ではゲーテの『ファウスト』を用いるアイディアがあったとされている。後世、『ファウスト』に拠った交響作品としては、リストの『ファウスト交響曲』、マーラー交響曲第8番(第2部で『ファウスト』の終末部の詩を利用)が知られている。