交代勤務

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交代勤務(こうたいきんむ)とは、所定労働時間(通常8時間/日)以上に及ぶ業務体系が必要なときに、労働者を交代で勤務させる勤務形態のことで、「交替勤務」という場合もある。

概要[編集]

従来は、病院やホテルなど一部の業種・職種を除き、労働基準法で女性を深夜や早朝などの交代勤務に従事させることができなかったが、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)の改正施行を受けた1999年の改正で女性の深夜・早朝勤務が可能となり、多くの職種に女性の進出が進んでいる。

国際的には国際労働機関の条約(夜業に関する条約 1990年 第171号条約)で夜業に関する労働条件が定められている。しかし、日本は批准していないため適用されていない。

交代勤務が必要な業務・業種[編集]

24時間切れ目なく業務が続く業種[編集]

民間企業による場合

製鉄所高炉、石油化学コンビナートや製紙メーカーの大型梳紙機など、停止や再稼動に非常に手間と時間がかかる大型機械を使う製造業では正月も問わず24時間の連続運転を行っている。これらの業種では一般に1日を8時間ごとに分けた『三交代勤務』[1]を採用している。また、自動制御の信頼性の向上やフェイルセーフ対策により労働密度を下げて『2交代勤務』や『宿直勤務』に変更し省人化を行う動きもある。

24時間営業を行う外食産業コンビニエンスストアなどでは、勤務時間は個人の状況に応じて細かく設定している。また、コンビニで販売する弁当や惣菜を製造する食品工場でも、連動して24時間操業が行われるため、交代勤務を行っている。

ホテルでは宿泊者に対するサービスや安全の確保を行うため、深夜でも多くの職種で切れ目なく勤務が必要になる。ビジネスホテルによっては、受付など一部の業務を深夜時間帯から朝まで閉鎖する(いわゆる門限)ところもある。

救急指定病院や入院患者のいる病院では、看護部門は日勤・準夜勤・深夜勤の3交代制、医師薬剤部・検査部門は宿直勤務が多い。

24時間連続で稼働する業務には、遠洋航海する商船軍艦なども含まれる。軍艦では乗員を半分に分けて担当を決めた「半舷」という交代勤務を取り、寄港地での休暇も「半舷上陸」が主体である。商船では、出入港時は総員配置、その他の場合は大型商船の場合は、0~4時・4~8時・8~12時・12~16時・16時~20時・20時~0時の4時間勤務2回当直を行う(例0~4時直の後は、12~16時直)。

公務員による場合

警察官消防吏員消防士)・自衛官(特にレーダーサイトの監視やスクランブルの待機要員)のような、国家・地域の安全に関わる公安職も、いつ発生するかわからない事件・事故にも迅速に対応しなければならないため、24時間切れ目のないよう待機ないし監視する任務に当たっている。

航空管制(空港ではなく航空交通管制部[2])も、24時間切れ目なく業務が行われている(日本に発着する飛行機以外にも、日本の領空を通過する、国外の航空機に対する航空路管理や位置報告受付などの管制業務もあるため)。

早朝から深夜まで業務が継続する業種[編集]

鉄道バスタクシーなどの交通機関のように、早朝から深夜まで継続して動きつづけている業種では、早出・遅出など勤務時間を細かく設定して切れ目のないサービスを提供し、またバス・タクシーなどで運行の管理に携わるものは、安全対策や入庫・出庫処理のため24時間切れ目のない宿直勤務となっていることが多い。

また、郵便事業運輸業などの通信・物流機関も同様で、郵便収集は早朝に始まり、配達は夜間にまで及ぶ。特に中継機関は深夜も絶え間なく、郵便物あるいは小荷物が区分けされて、それぞれ配送されている。

待機を伴う業務[編集]

消防署警察署交番)、警備業の施設警備部門(警備請負先施設の防災センター)や機械警備部門では、いつ発生するかもしれない火事・事故・事件に備えて、当番者が深夜も含めた24時間待機(および執務)の体制をとっている。

自動制御やフェイルセーフ対策が充実した無人運転が可能な工場でも、深夜稼動時間帯に、万一の事故があった時の連絡要員の確保的な意味合いで、宿直者を待機させる場合が多い。

年中無休で継続する業務[編集]

ゲームセンターショッピングモールなどの娯楽やサービス業全般では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)や各地の条例により、24時間営業が禁止されている場合もあるが、年中無休での営業はほとんど禁止されていないため、祝日年末年始も休まず、決まった時間に営業する店舗もある(例 : 10時〜19時のコアタイムは毎日開店している、など)。

業務時間が断続的な場合[編集]

たとえば、毎日読む新聞には朝刊と夕刊があるが、これは12時間ごとに執筆・編集され、印刷・配送される。一例として印刷業務では、朝刊は21時から3時、夕刊では10時から15時の間に仕事が集中している。これは一人の人間が毎日できる仕事ではないため種々の交代勤務体制が取られている。もっとも、本社や支局など取材部門では、事件取材に対応する必要がない限り、深夜から早朝までは宿直員は仮眠をとる場合が多い。

その他交代勤務が広く行われる業種[編集]

大規模な設備投資を要する製造業[編集]

製造業では、商品の大量生産で投資を早期に回収する目的から、交代勤務により工場、設備を長時間稼働させることが多い。例えば自動車の組み立てラインでは、早番6:00〜15:00、遅番15:00〜24:00のような連続2交代勤務が一般的である。連続2交代制の利点として、深夜勤務手当を節約できること、需要の変動を残業で吸収できることがあげられる。あくまでも経済性を目的とした交代勤務であるため、生産量に応じた勤務体制の変更がしばしば行われる。

水道・ガス・電力会社[編集]

  • 指令部門 : 4直2交代制、5直3交代制などが行われている。
  • 補修部門 : 宿直体制が多い。

コンピュータの運用業務[編集]

コンピュータメインフレームISPWebサーバなど)による大規模なシステム運用業務では、業務時間外のバッチ処理やシステムの監視・保守・トラブル対応などで、交代勤務を行うことがある。

放送局[編集]

NHK放送センター(東京都渋谷区)では、毎日6人の放送局アナウンサー(局アナ)が、民放では、毎日1人の局アナが男女関係なくそれぞれ交替で局に泊まり込み、夜間において重大な事件・事故・災害などの発生時に、報道特別番組をいち早く放送できるようにしている。NHKは「映像散歩」が放送されている時間帯に、報道特別番組の演習を毎晩行っている。これは、緊急事態発生時に全局員が対応できるようにするためである。

また、ほとんどの放送局は24時間放送を実施しているため、宿直はアナウンサーのみならず制作技術報道部門のスタッフも深夜の番組送出や放送機器の保守点検や緊急事態に備えるため、毎日数人が交替で局に泊まり込んでいる。さらに万一停電に陥っても放送が出し続けられるよう、ほとんどの局が自家発電装置や非常用バッテリー・送信機(送信所と本社演奏所との回線断絶対策)を備えている。特に、ラジオ災害の発生時における情報源として最も重要な役割を果たすので、万一停電に陥っても確実に放送ができるようにされている。

なお、地方局の場合は、人数が少ないことから宿直勤務制度を実施せず、代わりに早番・遅番交替制で対応している局が多い。

局アナが行う宿直の仕事は通常「夜間から翌朝にかけて放送されるラジオテレビの定時ニュースを伝えること」である。宿直制度を実施している局にはたいてい仮眠室があり、局アナの場合は「夜間の最終定時ニュース終了から翌朝一番の定時ニュース開始まで」の数時間、仮眠をとることができる(実際はこの時間を利用して雑用を片づける人も多い)。

ただし、この間に大事件・大事故・大災害がひとたび発生すれば宿直のスタッフは徹夜で慌ただしく対応することになる。さらに、それらの規模によっては日勤のスタッフにも非常招集がかかる場合が多い。

小売業[編集]

百貨店は一般に午前10時~午後8時頃までの営業、スーパーマーケットは午前10時~午後9時頃、店舗により午後11時頃まで営業している社もあることから早番・遅番・通し、3種類の勤務体制となる。コンビニエンスストアーファミリーレストランをはじめとする24時間営業の店舗は夜勤・深夜勤の勤務体制がある。さらにアルバイトパートタイマーなど非正規雇用による従業員が多い店舗では一人あたりの就労時間が短くなることが多いため、早番・遅番の勤務が午前勤・午後勤・夕勤とさらに細かく設定されていることも多い。

労働者の健康への配慮[編集]

勤務形態は労働条件の最も基本的なものであるため、会社(使用者)側と労働者側(会社組合)の相互理解と過半数組織組合または過半数労働者代表による協議が求められる。こと法定の1日8時間を越える労働時間をもって勤務体制を組む場合は、1箇月単位の変形労働時間制による労使間で合意された労使協定を、所轄の役所(労働基準監督署)に届けて、その内容を遵守するよう求められる。特に深夜にかかる交代制勤務の場合、労働者の健康のため次のような配慮が必要である。ルーテンフランツ原則も参考にされたい。

  • 深夜勤務の回数をなるべく減らす。
  • 変則的な出勤、退社時刻の設定をさける。する場合は合間に充分な休日を確保する。
  • 勤務と勤務の間の自宅での休養時間を十分取れるように勤務割を工夫し、深夜・早朝の帰宅の便を確保する。
  • 待機時間には充分な休養が取れるような設備を準備する。
  • 万一の場合にも十分な対処ができるような管理・設備の応急処置体制・危機管理体制を確立する。
  • 毎年健康診断を行い、心身の病気の早期発見に努める。特に深夜勤務者には半年に1度。
  • 健康を害した者には勤務上の配慮を行う。
  • 24時間勤務の後には最低でも24時間の休暇をおく。(労働基準法でも33時間以上の連続勤務は禁止されている)

交代勤務で働く男性の前立腺がんになる危険性が、日勤のみ働く男性に比べて3.5倍、心筋梗塞になる危険性が日勤のみ働く男性に比べて2.8倍あるといわれている。又、交代勤務で働いている人達には喫煙者が多い傾向があり、健康上のリスクはかなり大きい。

勤務の呼び名[編集]

勤務のことを「直」と呼ぶ場合が多く、勤務体制により次のように呼ばれる。

  • 日勤 : 昼間の一般的な始業・就業時間の勤務(8時~17時、8時半~17時半、9時~18時など)
  • 早番(早出) : 通常の日勤より早く出勤する勤務(5時~14時、6時~15時、6時半~15時半、7時~16時など)
  • 遅番(遅出) : 通常の日勤より遅く終業となる勤務(12時~21時、12時半~21時半、13時~22時、13時半~22時半など)
  • 中番 : 早番でもなく、遅番でもない勤務
  • 通し勤務 : 早番・日勤・遅番などを連続して勤務するもの(7時~21時、7時半~21時半、8時~22時、8時半~22時半など)この場合の休憩時間は最大の2時間となる。
  • 16勤 : 深夜を含む16時間拘束の勤務(仮眠ありの8時間以下の労働時間の勤務を夜勤として区別する場合がある)
  • 24勤 : 24時間拘束の勤務
  • 準夜勤 : (16時半~24時半など)
  • 深夜勤 : (20時~8時、0時~8時半など)
  • 新夜勤 : (17時20分~9時半など、郵便事業のみにある勤務体系 こちらが「しんやきん」と呼ばれ、上項は「ふかやきん」と呼ばれる)
  • 非番 : 勤務には就かないが急な欠勤者が出た場合に備えての待機態勢。実際には定数不足による強制的な残業となることが多い。または休日の場合に使われることもある。客室乗務員の世界では「スタンバイ」と称する。
  • 開放非番 : 泊まり勤務明けの事。鉄道・バスなどでは明番とされることが多い。
  • 宿直(しゅくちょく) : 狭くは日勤と日勤との間に事業所に宿泊し緊急事態発生に備えること。広くは24時間勤務なども含む。宿直の業務を日中にこなすことを日直(にっちょく)という。
  • 当直(とうちょく) : 狭くは監視業務に従事する時間のこと。広くは警察消防などの官公署の24時間勤務なども含み、鉄道・バスなど交通機関での24時間勤務の場合は、非番・明番に対し本番勤務と称されることが多い。この場合は下記の当務と同義である。
  • 当務(とうむ) : 当番勤務のこと。24時間勤務の意味も持つ。

勤務と勤務との間に空白時間を設けられない事業所では、日勤に一番近い時間の勤務から、二交代制の場合1直・2直(勤)、三交代制の場合1直・2直・3直と呼ぶことも多い。かつての炭鉱などでは一番方・二番方・三番方と呼んでいた[3]

2交代制の問題[編集]

人員の不足または人件費(割増賃金)を少しでも抑えようとする(増員できない)あまり、2交代制(拘束時間が12時間以上の勤務)のみになり、3交代を取り入れない場合もままある。24時間態勢で稼働する工場警備業ビルメンテナンス業などにて交代勤務を取り入れて勤務する場合、現場によっては3交代ではなく2交代のシフトしか取り入れず、実働時間と休憩時間を合わせた拘束時間が12時間になる場合もあるため、極めて不規則な生活となり、体調を崩しやすくなる。

例1:「9:00~21:00」「21:00~9:00」のように、実働時間と休憩時間を合わせた拘束時間が12時間もある(実働時間は10時間〜10時間30分程度)。
「自宅から勤務先までの通勤時間」および「終業〜帰宅の所要時間」も加算すれば、実質の拘束時間はもっと長くなり、「終業〜次の勤務までの空き時間」が12時間を下回るため、帰宅後すぐ睡眠を取らないと次の勤務に耐えられなくなる。
例2:8:00~翌朝8:00。隔日勤務(原則としてGWお盆年末年始の休暇はなし。公休の設定もなし)で年のほぼ半分が休養日と謳っておきながら、休養日でも0:00~8:00までは実際に勤務しているため(いわゆる「インチキ非番」)、実質は365日休みなしで勤務しているのと全く変わりはない。[4]
例3:18:00~翌朝09:00。通勤時間も含めると、自宅にいる時間が数時間。残業等が発生するとさらにその時間は短くなる。

脚注[編集]

  1. ^ 一般に「三交代」といえば、24時間勤務で当直―明け―休みを繰り返す体系。
  2. ^ 空港は騒音問題があるため、緊急時と一部の海上飛行場を除き、22時から翌日7時まで閉鎖され離着陸はできない。
  3. ^ 昭和63年3月14日基発第150号・婦発第47号でこの用語を使用。
  4. ^ 1年を通じて、(月)8:00~24:00 → (火)0:00~8:00 → (水)8:00~24:00 → (木)0:00~8:00 → (金)8:00~24:00 → (土)0:00~8:00 → (日)8:00~24:00 → (月)0:00~8:00 → (火)8:00~24:00 → (水)0:00~8:00 → (木)8:00~24:00 → (金)0:00~8:00 → (土)8:00~24:00 → (日)0:00~8:00のサイクルで勤務するため、終日休める日は全くない(休養日はいわゆる「インチキ非番」)。

関連項目[編集]