二重純血犬種

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二重純血犬種(にじゅうじゅんけつけんしゅ)とは、二種類の純血犬種を交配して生まれたものを基礎として、両親の良点を組み合わせるために作られた犬種の事である。英語では俗にハイブリッド・ドッグ(Dog Hybrid's)などとも呼ばれ、近年作出された二重純血犬種の愛玩犬はしばしば是非を問う論議が行われることもある。

二重純血犬種の定義[編集]

二重純血犬種とは、上記にも述べたように二種類の純血犬種を掛け合わせ、それを何世代にもわたってブリーディングし、姿は両親の中間に固定されたものを指す。

二重純血犬種誕生の例として、ここではキャバプーを挙げる。まず、両親となるキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルとミニチュワ(又はトイ)・プードルを数つがい用意し、交配する。そして、それによって生まれた子であるF1雑種第1代、ハーフ犬とも呼ばれる)同士を交配し、F2(雑種第2代)を誕生させる。F2はクオーター犬とも呼ばれ、この犬が更に2世代交配する事によって生まれたものが初めて二重純血犬種と呼ばれる。

なお、日本のペットショップで見かける個体(「○○×△△」と表示がされているもの)は殆んどがハーフ犬であり、二重純血犬種ではない。

使役用の二重純血犬種[編集]

二重純血犬種は近年になってから始まったものではない。古くから犬質を向上させたり、もともと持っていない能力を植えつけるために異種交配が行なわれる事はしばしばあった。その組み合わせは膨大で数えられないほどだが、そのうちの数種類が二重純血犬種として発展し、現在も健全な固有の犬種となった。以下がその例の一つである。

ある程度古くから存在したもの[編集]

イギリスイングランドのガードドッグ犬種。その存在は18世紀から確認されており、かつてはブルドッグとイングリッシュ・マスティフを交配させた犬であった。19世紀に入ってから計画的なブル・マスティフの繁殖が始まり、交配を重ねて種となった。

比較的近年のもの[編集]

オーストラリアの珍しい大型サイトハウンド。1800年代後半からディンゴ狩りをするためにアイリッシュ・ウルフハウンドスコティッシュ・ディアハウンドを交配させたものを基礎として作出した二重純血犬種である。時折「キラー」という言葉を忌む人からは「ストラスドゥーン・ハウンド」、「オーストラリアン・ディンゴ・ハンター」と呼ばれる事もある。ちなみに、外見は少々小柄なアイリッシュ・ウルフハウンドといった形相である。

盲導犬聴導犬などの介助犬用二重純血犬種[編集]

ガードドッグや狩猟犬の他にも、目的があって作出された二重純血犬種が存在する。これらはからだの不自由な人を介助するための盲導犬介助犬として使役されるものである。なお、以下の二重純血犬種を作成するための親犬は厳正な検査を合格したもののみが使用されており、決して即席で作られたものではない。

両種は1980年代オーストラリアで作られた二重純血犬種である。ラブラドゥードルはラブラドール・レトリーバーとプードル、ゴールデン・ドゥードルはゴールデン・レトリーバーとプードルを交配させたものを基に作出された。どちらも盲導犬として作出され、プードルのように犬の毛にアレルギーを持つ目の不自由な人でも使える、従順で落ち着いた犬種を目指して開発されたものである。カナダ、アメリカ、オーストラリア、イギリスなど海外の多数の国で実際に盲導犬、介助犬、セラピードッグ等の使役犬として使用されている。

なお、ラブラドゥードルにはスタンダート、ミニチュワ、トイの3つのサイズ階級があり、近年はプードルとラブラド-ル・レトリーバーだけでなくアイリッシュ・ウォーター・スパニエルカーリーコーテッド・レトリバーアメリカン・コッカー・スパニエルイングリッシュ・コッカー・スパニエルなどの犬種が血統に加えられ、ラブラドゥードルは二重純血犬種ではなくなった。


この犬種はイングランドで作られた聴導犬用の二重純血犬種である。チワワの小型で飼いやすい体と、ラブラドール・レトリーバーの落ち着いた良好な介助性を併せ持つ犬種にするために両種を交配したものを基に作出された。その際選ばれたのは犬種基準よりも小柄なラブラドールのメスと、オーバーサイズで丈夫なチワワのオスであり、その交配によって生まれた子犬は丈夫で、すぐさま犬種にするべくして交配を進めていった。
そうしてできたラブラワワは小さなラブラドールの体を持ちチワワの顔をしており、介助性もあり主人思いの優しい性格を持つ犬種となったが、親である両犬種のブリーダーからは批判されている。原産地でも賛否両論で、このまま使役を任されるか、犬種廃止となるかは今の時点では分からない。

近代のペット用二重純血犬種について[編集]

ここ数十年の間に、ペット用の二重純血犬種の数は爆発的に増加し、特にアメリカで作出されたものは数え切れないほど多い。論争のはじまりは、1960年代に作出されたコッカープーen:Cockapoo)というコッカースパニエルとプードルの交配を基に作出された二重純血犬種を認定するか否かということであった。ブリーダーは単に家庭用の愛玩犬種を作出しただけだと主張したが、伝統を守る両犬種のブリーダーたちは真っ向に反対している。この論争の最中にも同じような犬種プードルを用いた二重純血犬種(#プードル・ハイブリッドを参照)の作出が流行し、多数の犬種ができ、純血種のブリーダーたちの悩みの種となっている。今でもそれらを廃止しようとする純血種のブリーダーと、存続させようとする二重純血種のブリーダーの対立は続いている。

両者の主張[編集]

存続派

  • 二重純血犬種には雑交の丈夫さがあり、飼いやすい。
  • いろいろな犬種を交配させれば、面白い新種を作ることができる。
  • 有名犬種となれば自分自身が有名になれる。
  • そもそも純血種のブリーダーが騒ぐようなことではない

否定派

  • 2つの犬種を雑交させたからといって、必ずしも丈夫になるとは限らない。
  • 面白いだけでは犬種になりえない。また、予期せぬ生体上の欠陥を招く恐れもある。
  • そもそも二重純血種は雑交種なのだから、お金をかけてまで入手する価値がない。保健所にも似たような犬がたくさんいる。
  • 何百年も守られてきた大切な純血を、一時的なブームによって汚すのは遺憾である。
  • もともと作出に用いられた犬種をかけ合わせて作っても、元からその犬種の特徴があるのだから、全くの無意味である。

プードル・ハイブリッド[編集]

プードル・ハイブリッド (en:Poodle hybrid) とは、その名の通りプードルを片親として用いて作られた二重純血犬種の事である。プードルの毛はアレルギー反応が起こりにくく、また性格もよくしつけがしやすいために、よくペット用の犬種を作るために使われている。

プードルハイブリッドの多くは小型で、人気の愛玩犬種をメス親種に持つものだが、盲導犬用のラブラドゥードル、ゴールデンドゥードルの他、巨大な介助犬用のセント・バードゥードゥル(英;St. Berdoodle、セント・バーナードとスタンダード・プードルの交配を基に作出)のような大型のものも少数存在する。

ブームの終焉[編集]

かつて1960年代にブレイクしたコッカープーを模倣して同年代に作出された二重純血犬種は確認されているだけで17種にも及び、アメリカ国内でそれらを飼う事がとても流行していた。それらはみな同じようなうたい文句を売りにし、「雑交種を基にしているので丈夫」だとか、「面白い犬種名」といった看板を掲げていた。

しかし、伝統を守る犬学者や純血種のブリーダーらによる活動によってそれらの売りのみを語る二重純血犬種のブリーダーは減り、それぞれの種独自のデザインされた能力や魅力を新たな売りにする者が増え、一旦二重純血種の数の増加が穏やかになった。そしていつしか二重純血犬種のブームは鎮静化の方向へ向かっていった。

ブームが去ると、かつて人気であったプードル・ハイブリッド種が大量に棄てられるなど新たな問題も発生した。流行でもてはやされ、需要が高く愛されていた犬が易々と棄てられるのは、なんとも皮肉な話である。

禁止された・禁止が求められている犬種[編集]

ただ外見や特性などを重視して作られた二重純血種は現在でも禁止が求められており、中には既に禁止されたものもある。ここでは、その中で外科的に問題があった二重純血種の例を挙げる。

例1(既に作出が禁止されたもの)
  • ウルフワワ (英;Wolfhuahua)
    アメリカでかつて作出された愛玩用二重純血種。人目を引き話題を集める犬種を作るために、全犬種中で最も体高が高いアイリッシュ・ウルフハウンドのメスと、全犬種中で最も体高が低いロングコート・チワワのオスを交配させたものを基に作出された。しかし作出は不完全で、小柄なウルフワワが大きな仔犬を産めずに数頭が死亡し、その事件がアイリッシュ・ウルフハウンドとロングコート・チワワの両犬種のブリーダーに知れ渡ると即座に抗議が始まり、現在では作出が禁止されている。
例2(作出禁止が求められているもの)
  • チワックス en:Chihuachshund
    アメリカなどで作られている愛玩用の二重純血犬種。その名の通りチワワとミニチュア・ダックスフントの交配を基に作出された。チワワの細い足を受け継ぎ骨折しやすく、ダックスフントの長い胴を受け継ぎヘルニアを起こしやすいために批判され、作出禁止を要求されている。

なお、2008年現在のところ、ラブラドゥードル、ゴールデンドゥードル、コッカプーなどの使役目的がある種を除き、大半の新しい二重純血犬種が犬種でないと批判され、作出の中止が求められている。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 『デズモンド・モリスの犬種事典』(誠文堂新光社)デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年
  • 『アメリカ二重純血種の是非』(央端社)
  • 『Dog Hybrid's 』(Canis社)  William Edgar著 1989年