二十年後

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

二十年後』(にじゅうねんご、: Vingt ans après)はアレクサンドル・デュマ・ペールによるフランス連載小説1845年刊行。

ダルタニャン物語』三部作の第二部。第一部『三銃士』の続編、第三部『ブラジュロンヌ子爵』の前編に当たる。第一部『三銃士』から「二十年後」の時代の話になることから、題名がつけられた。ダルタニャンと三銃士(アトスアラミスポルトスの3人)が、1648年-1649年フランスイギリスを股にかけて活躍する。史実の事件フロンドの乱イングランド内戦を舞台にする。第一部から20年後のため、『三銃士』の頃には20歳の青年で初々しかったダルタニャンも40歳とすっかり壮年になっている。

概要[編集]

フランス国王ルイ13世が崩御し、ルイ14世の治下になった。かつての仇敵であり、後の理解者になった枢機卿リシュリューも亡くなった。ルイ14世はまだ幼く、かつてのルイ13世の妻であり、ときのフランス太后アンヌ・ドートリッシュとその愛人であるイタリア人マザラン枢機卿が実権を握っていた。

その頃のフランスではフロンド派が興隆し、王室転覆の危機となっていた。マザランは敵対するものを片っ端から逮捕し、牢獄に入れていた。リシュリューの忠実な部下であったロシュフォール卿も、入獄されてしまっていた。そのためマザランには敵が多く、頼りになる味方を探していた。マザランはロシュフォール卿を仲間に引き入れようと画策するが失敗。マザランは銃士隊のダルタニャンと三銃士の過去の活躍をロシュフォール卿から聞き及び、是非とも召し仕えたいと考える。そこで銃士隊の副隊長であるダルタニャンを呼びつけて懐柔すると、三銃士を連れてくるように命じる。ところが三銃士アトス・アラミス・ポルトスは銃士隊を除隊していたため、ダルタニャンにも行方が分からなかった。そこでダルタニャンは少ない手がかりを頼りに探し始める。

最初に会えたのはアラミスで、従者バザンと共にイエズス会神父になっていて、見込みがなかった。ポルトスは裕福だが、爵位が無いことに引け目を感じていたので、活躍すれば男爵の位をマザランから与えてもらえると誘う。アトスは元の領地に戻り、隠居して子息ラウルと一緒に暮らしており、アラミスと同じく見込みがなかった。結局ポルトスのみを連れてマザランのもとに戻ると、ちょうどボーフォール公爵の脱獄の知らせが入ってきた。ダルタニャンは逮捕の役目を買って出て、ポルトスと共にボーフォール公を追跡する。

馬を何頭も潰しながらも追いつき、ボーフォール公に追いつき、その護衛と対決する事になる。ところがボーフォール公の護衛はアトスとアラミスであった。実は彼らはフロンド派であり、だからこそ国王に(しかし現段階では、実質マザランに)仕えようというダルタニャンの誘いにけんもほろろであったのだ。 ここに永遠の友情を誓い合った4銃士は敵味方に別れてしまうことになった。4銃士はそれぞれの立場を理解するために、後日再会することを約束した。ダルタニャンとポルトスは逮捕を諦め、マザランのもとに戻った。約束の日が来て再会はしたが、血気盛んなダルタニャンとアラミスが仲違いし、あわや決闘という事態になる。そこを最年長であるアトスが自ら武器を捨てると共に、アラミスにも武器を捨てさせる。ダルタニャンとポルトスもこれには感動し、仲直りする。そして、敵味方に別れはしても、かつての友情は永遠に変わらず、決して友の身体を剣で貫くことはないだろうと4銃士は誓い合うのだった。


登場人物[編集]

フランス[編集]

マザラン派[編集]

ダルタニャン
ガスコーニュ地方、タルブ生まれの40歳。『三銃士』の最後でリシュリュー枢機卿から銃士隊副隊長の位を授かってから、その職を務め続ける。マザラン派(とは言っても、銃士隊副隊長の職務として王室に忠誠を誓っているのであり、個人的にはピッシーナの大泥棒とマザランをこき下ろしたりもしている)。実在の人物。
ポルトス・デュ・ヴァロン・ド・ブラシュー・ド・ピエールフォン
かつての三銃士の一人。銃士隊を除隊後に金持ちの未亡人と結婚する。その未亡人も今はなく、広い土地と年金4万リーブルもの収入を相続する。爵位がないのを気にして、手柄を立てて男爵の位をもらおうと、マザラン派に就く。
ムースクトン
ポルトスの従者。本名はボニファス。ポルトスに付き従っている。ポルトスが金持ちになったため、ムースクトンも出世し、領民から尊敬される人物になっている。
ジュール・マザラン
太后アンヌの愛人にして、枢機卿。フランスの全実権を握る。元はイタリア人だが、帰化してフランス人になる。権勢を振るい、貴族と対立している。極度の吝嗇家。ダルタニャンと三銃士を懐柔し、仲間を増やそうとする。
アンヌ・ドートリッシュ
フランス太后。幼い国王ルイ14世の摂政も務めるが、マザランのいいなりになっている。『三銃士』から浮気性なのは変わらず、マザランを愛人にしている。
ルイ14世
フランス国王。まだ幼く、母アンヌと枢機卿マザランに実権を握られている。

フロンド派[編集]

アトス (ラ・フェール伯爵
かつての三銃士の一人。元々高貴の出であったが、身分を隠して銃士隊に所属していた。除隊後は身分を隠す必要もないので、本名を名乗っている。三銃士で最年長であり、最も理知的な人物。自分の名前を告げた際にそれはの名前ではないかと言われる場面がある。ミレディを処刑した事に罪の意識をも持っている。ひょんなことからシュヴルーズ夫人と通じ、一男をもうける。シュヴルーズ夫人が子どもを神父宅に預けたことを知り、引き取って育てる。
グリモー
アトスの従者で無口。アトスに命じられて、ヴァンセンヌ監獄の獄吏になり、ボールフォール公爵の脱走を手助けする。
シュヴルーズ夫人
ラウルの実母。かつてフランスから亡命する途中で、神父(実はアトス)に家を一夜借り入れ、出来心からアトスと知らずに誘惑する。旅先でラウルが産まれたが、亡命の邪魔になるため、神父宅に置手紙付きで預ける。亡命する必要がなくなって、自分の手で育てようと消息を尋ねるが、既にアトスが引き取っており、それ以来息子は行方知れずとなっていた。
ケティ
かつてのミレディの従者。『三銃士』後はシュヴルーズ夫人に仕える。アトスは神父宅でケティを見て、自分が情を交わした相手がシュヴルーズ夫人と悟る。
ラウル(ブラジュロンヌ子爵
アトスとシュヴルーズ夫人の実子。近所に住んでいる貴族の娘ルイズと将来を誓い合う。自分がアトスとシュヴルーズ夫人の実子ということは知らない。シュヴルーズ夫人の伝手で出兵する。
ルイズ
ラウルと将来を誓い合う。
アラミス (デルブレー神父)
かつての三銃士の一人。男性、43歳。第一部『三銃士』のときからの念願が叶い、僧籍に身を置く。かつては「アラミス」と偽名を名乗っていたが、神父になったため本名を名乗っている。『三銃士』では、シュヴルーズ夫人の恋人だったが、本作までに破局する。ロングヴィル夫人の恋人。
バザン
アラミスの従者。念願叶い、アラミスと共に僧籍に身を置いている。アラミスを再び銃士に誘い、現在の平穏を壊そうとするダルタニャンを恐れる。
ロングヴィル夫人
アラミスの恋人。フロンド派。
ボーフォール公
アンリ4世ガブリエル・デストレの孫で公爵。ルイ13世の崩御後に権勢を振るったが、次第に実権をマザランに奪われ、マザランと対立してヴァンセンヌ監獄に投獄される。牢獄の中でマザランを馬鹿にする歌を唄ったり、絵画を描いたりするが、脱獄してマザランに復讐することを夢見る。
ローシュフォール卿英語版
亡きリシュリュー枢機卿の腹心。『三銃士』ではダルタニャンと対立するが、その後友情を深める。マザランによってバスチーユ監獄に投獄される。ダルタニャンと三銃士の活躍をマザランに進言し、その登用を勧めた人物。マザランからボーフォール公を監視する役目を言いつけられるが、恩人を裏切ることはできないと断わる。バスチーユ牢獄へ送還される途中で、プランシェによって助け出される。
プランシェ
ダルタニャンのかつての従者。従者を辞めてからは菓子屋を営んでいた。ピカルディー生まれ。マザランを快く思っていないローシュフォール卿の脱走に荷担し、フロンド派の市民兵の士官として活躍する。フロンド派のアトス、アラミスにはもちろんのこと、敵対している王室派ではあっても、かつての主人ダルタニャンには妨害は行わず、便宜を図ってくれる。

その他[編集]

リール首切り役人
『三銃士』にてミレディーを私刑に処したことを後悔する。命尽きる前に神父に扮したモードントに懺悔をする。

イングランド[編集]

議会派[編集]

オリバー・クロムウェル
イングランド議会派の長であり護国卿。チャールズ1世と敵対する。
モードント
クロムウェルの忠実な部下。『三銃士』のミレディーとウィンター卿の実弟の間に産まれた息子。家督を継げず、無一文で投げ出したウィンター卿を恨む。後にリールの首切り役人により、母の死の真相を知り、ダルタニャン、三銃士、ウィンター卿への復讐を誓う。

王党派[編集]

チャールズ1世
イングランド王。政権を奪還しようとクロムウェルと敵対する。
ウィンター卿
チャールズ1世に仕える。『三銃士』でダルタニャンと仲良くなる。モードントの叔父。

日本語訳[編集]

第一部『三銃士』とは異なり、第二部『二十年後』の訳書は鈴木力衛訳だけである。

  • 『ダルタニャン物語』講談社文庫 ※初版は講談社で単行本、1968-69年。
  • 『ダルタニャン物語』復刊ドットコム ※講談社文庫を一部表現修正した選書版。

『ダルタニャン物語』全11巻のうち、第二部『二十年後』は第3巻『我は王軍、友は叛軍』、第4巻『謎の修道僧』、第5巻『復讐鬼』の3冊。

鈴木力衛訳・講談社文庫絶版だが、復刊ドットコムにて再版されている。詳しくはダルタニャン物語#日本語訳について」を参照。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]