中高一貫教育
中高一貫教育(ちゅうこういっかんきょういく)とは、前期中等教育(一般の中学校で行なわれている教育)と後期中等教育(一般の高等学校で行なわれている教育)の課程を調整し、無駄をはぶいて一貫性を持たせた体系的な教育方式のことである。
また、これを行なっている学校を中高一貫校(ちゅうこういっかんこう)と言う。
無試験で上級学校に進学する学校を俗に「エスカレーター式」「エレベーター式」と呼ぶこともあるため、中等教育学校や中高一貫校もこのように呼ばれることがある。
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[編集] 分類・統計
実施校には以下の3種類がある。(出典「学校基本調査-平成22年度(確定値)結果」)
- 同一学校型(中等教育学校)
- 中学校の課程と高等学校の課程を統合した一体の学校。中学校に相当する前期課程と高等学校に相当する後期課程がある。前期課程を修了すると中学校を卒業したものと同じ資格を持つ。通常後期課程の募集は行われないが、発足当初は生徒を募集することがある。
- 全48校。国立4校。公立28校。私立16校。
- 併設型(中学校・高校)
- 同じ設置者(都道府県・市町村など)が中学校と高等学校を設置して接続するタイプ。中学校から高等学校へは無選抜で進学することが出来る。また高等学校は外部からの募集も行う。
- 全273組。公立69組。私立203組。国立1組[1]
- 連携型(中学校・高校)
上記の数字は「学校基本調査」(文部科学省統計)で対象にしている中高一貫校のみであり、ある中学校からある高校に一般入試をせずに進学できる場合(内部進学)も、両校を中高一貫校と呼び慣わしているため、実質的な一貫校はもっと多い。代表的な一貫校はいずれも上記の数字には入っていない。このように、実際には私立中高の大部分が一貫校と考えられる。傾向としては、国立・私立には中等教育学校や併設型が多く、公立には連携型が多い。
[編集] 高校募集
外部からの優秀な生徒を入れることによって、生徒に緊張感を持たせて一貫校特有の中だるみを防ぐことを目的としている学校がある。中高一貫校の高校入学組は、中学受験失敗の巻き返しを目指した生徒も少なくない。国立の中高一貫校の場合は、中学から高校に進めない場合があるので、高校から入学したほうが良いという考えもある。
それに対して、高校募集をしない学校を完全中高一貫校と言う。高校募集を停止して完全中高一貫校になる学校が徐々に増えつつある。その背景として、外部生(高校入学組)は入学時の学力は高いものの、中高一貫したカリキュラムを受けた内進生に比べて進度が遅いことがある。高校募集を継続していても、高校から入学した生徒への未履修分野の補講が必要となったり、中には、高校から入学した生徒を中学からの内進生のクラスに組み込まず、別クラスにする学校もある。中等教育学校も基本的に後期課程募集はしない。
ただし、完全中高一貫校の場合、高校受験で入ることができないため、入学するには中学受験からでなければならず、一方で中学受験は多くの学校で年齢制限が厳しいため、高校受験が可能な年齢の受験生が応募できないケースも多い。つまり、完全中高一貫校になると、その学校に魅力を感じて高校に入学したいと思っても、年齢的な理由で中学・高校とも入学できなくなるケースが多いという実態がある。これは日本の中等教育が年齢主義の強い影響を受けているためである。
なお、中高一貫校と銘打ちながら、中学卒業段階で県立の進学高に生徒の多くが流出し、系列高校への進学が少ないため、中学は評価が高いものの、高校は中学と比較して評価が著しく低く、中高一貫校としての評価が全く得られていないという、東京、京阪神等の中高一貫校(履正社中学校・高等学校を除く)では見られない特異な現象が起きている学校もある(愛知県東三河地方の桜丘中学校・高等学校など)。
私立の中高一貫校では同じ学校法人によって、「高等学校のみ」の学校を別に設置している所もある。学校により、中高一貫校で「○○中学高等学校」、高等学校では「○○高等学校」と名称するところや中高一貫校を6年制、高等学校を3年制とコースづけしていたりする。
この場合、高等学校のみの学校が中高一貫校より学力が低くなる傾向があり、高校受験において公立高等学校に対する「滑り止め」と位置づけられることがある。その結果、同じ名を冠する学校でありながらそれぞれ「進学校」「教育困難校」という二極分化が起きることがある。
また、制服についても一見似ているが、中高一貫校の方が高価な素材を使ったり、校舎や卒業式挙行を別々に行ったりするなど、学校法人側でも差別化・序列化を図っていることがある。
[編集] 制度変更
中学・高校併設の私立校や国立校では従来から行われてきた教育方式だが、公立校では、東京都立世田谷工業高等学校が1959年から1973年にかけて付属中学校を設置したくらいしか例が無く、1998年の学校教育法改正により正式に認められ、積極的に一貫教育ができるようになった。
法的に中高一貫校の形をとっている学校としては、1999年度に公立中等教育学校の宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校、公立併設型の岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校、公立連携型の飯南町立飯南中学校(現・松阪市立飯南中学校)・飯高町立飯高西中学校(現・松阪市立飯高西中学校)・飯高町立飯高東中学校(現・松阪市立飯高東中学校)・三重県立飯南高等学校、私立併設型の横浜共立学園中学校・高等学校の4組が設置されたのが最初である。文部科学省は日本に500校の中高一貫校を設置する予定である。[3]
[編集] 中高一貫教育のメリット・デメリット
「中高一貫校#問題点」および「格差社会#教育による階層化」も参照
中高一貫校では高校・後期課程進学時に高校受験が不要または簡単な試験で済むため、6年間のうち大部分を試験勉強に追われずに過ごせるという点が人気の一因となっている。これは従来、一定以上の学力成績を達成していれば、確実に地元の公立普通科高校に進学できるようにした総合選抜制度などで実現されていたことでもある(その後総合選抜は、少子化の影響や、進路選択の余地が少ないなどの拘束性が嫌気されて、徐々に衰退していった)。
高校受験などの負担が少ないことは大きなメリットの一つであるが、主に生徒自身の学習態度の違いによって、学年が上がるにつれて、学校内での生徒間の学力差が顕著になる傾向がある。この傾向は、ほぼ確実にそのまま大学に進学できる、私立大学の付属校でより顕著に見られるが、国立大学の附属校では母体大学への進学枠は基本的に存在しないため、それほど多くは見られない。
中高一貫校の中には高校段階で募集をしていない学校も多いため、学校の校風が自分に合わなくても別な学校に進学しにくいという問題もある。それでも高校募集をしている高校に受かれば転校は可能だが、中学校によっては、外部の高校を受験すると、落ちた場合でも附設の高校に内部進学する資格を失ってしまうというペナルティ規定がある場合もある。なお、私立大学の附属校は一般入試を受けなくても大学に内部進学できる場合が多く、そのため、難関大学の附属校は人気が高くなっている。
また、中高一貫校では教育熱心で、そこそこ裕福な家庭で暮らしている生徒のみが6年間同じ環境で過ごす場合が多く、異質な生徒との交流機会が余り無い為、狭い世界しか知らない偏った考えの持ち主になってしまうという批判が有る[要出典]。教育学者の藤田英典は、中学校の選択は親の関心が優先しがちなため、公立中高一貫校も「選ばれた生徒だけの特別の学校」になるのは構造的な必然であると指摘している[4]。
しかし、一般の地元公立中学校にはゆとり教育(但し2012年度以降は学習指導要領が改訂され、授業内容が改善される)やいじめ問題や学級崩壊などの諸問題が発生する場合が比較的多い為、公立中学校に入学することへの不安も強い。また私学人の中には「知識を磨いてこそ徳性も磨かれるため、『知育・体育・徳育』のうち知育が欠けた公立学校よりほどよい」と主張している人もいる[要出典]。しかし、中高一貫校だからいじめ問題がないと言い切れるわけではない。
また、大学進学実績のみを重視する一部の中高一貫校の場合、素行に問題のある生徒や、成績の伸びない生徒を中学卒業時点で高校へ内部進学させないなどの手法により、ビジネスライクな発想で実績を維持している学校もあり(なかには教職員に対して大学進学実績のノルマを与えているような学校もある)、そのようなプレッシャーが生徒間のひずみを産んでいるという声もある[要出典]。
典型的な中高一貫校の教育課程は高校2年(中等5年)までに中高の内容を終わらせ、最後の1年で大学受験に特化した学習をするというものである。現在の学習指導要領では中学校の内容がゆとり教育のため薄く、その代わり高校の内容が濃い。それを5年間で均等に引き延ばしているわけなので、必ずしもこの方法が詰め込み型の教育とは言えない。ただ、2002年の学習指導要領において、中学段階で削除されて高校に移された内容(理科のイオンなど)については、2002年以降も引き続き中学段階で学習している学校が多い。
[編集] その他
中高一貫校は高い進学実績を残すのに有利とされている。例えば東京大学合格上位校の大部分を私立・国立一貫校が占めており、公立高校は浦和、宇都宮、県千葉、土浦第一、岡崎、一宮など少数にとどまっている。なお、一部の中高一貫校による(特に国公立の)医学部合格者の寡占状態が問題視されることも多いが、地方では地元の公立高校から大量合格者が出るケースも散見される[5]。
近年では公立改革が進み、日比谷や浦和などの名門公立校が進学実績を持ち直してきている。また、「公立中高一貫校」の設置も全国で進んでおり、小石川や県千葉といった名門公立進学校でも設置が相次いでいる。
一貫教育のメリットは中高にとどまらず、公立学校を中心として小中一貫校を設立するところも現れている。開智中学校・高等学校では、小学校も設置して小中高一貫校にする予定である。幼稚園から短期大学、大学まで擁している学校法人もある。ちなみに大部分[要検証]の特別支援学校は小中高一貫校である(幼も入る場合がある)。
また、トヨタ自動車・中部電力・JR東海の中部財界3社は、2006年4月に中高一貫校「海陽中等教育学校」を愛知県蒲郡市のラグーナ蒲郡内に開校した。イギリスの名門イートン校をモデルにエリート養成を目指しており、同時に設立された学校法人海陽学園(理事長:豊田章一郎)が運営する。
特異なケースとしては、叡明館中等部・高等部という中高一貫教育の全寮制校が石川県に1984年開校したが、1995年に廃校となっている。
[編集] 脚注
- ^ 名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校
- ^ 国立学校と公立学校との連携。具体的には横浜国立大学教育人間科学部附属横浜中学校と神奈川県立光陵高等学校、和歌山大学教育学部附属中学校と和歌山県立星林高等学校
- ^ 中高一貫教育の概要:文部科学省→(4) 今後の整備目標
- ^ 藤田英典 『教育改革…共生時代の学校づくり』 岩波書店〈岩波新書〉(原著1997年6月20日)、pp. 79-86。ISBN 400430511X。
- ^ 平成19年度 医学部合格実績と評価 (2007年、教育改革かわら版(小林勝広))
[編集] 関連項目
- 学校
- 学校教育法
- 中学校 - 高等学校 - 中等教育学校
- 中学受験 - 高校受験
- 中高一貫校
- 幼小中一貫教育 - 小中一貫教育 - 小中高一貫教育
- 中学校教員 - 高等学校教員
- 特別科学学級 - スーパーサイエンスハイスクール
[編集] 外部リンク
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