中国の知的財産権問題

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中国の知的財産権問題(ちゅうごくのちてきざいさんけんもんだい)では、中華人民共和国(中国)における著作権をはじめとする知的財産権問題について取り上げる。

概要[編集]

中国においては、製造業を中心として著しい経済成長をみせる過程で、著作権侵害商標権侵害等の知的財産権侵害が多発し、国際的に問題となっている。

近年では、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟(これにより知的財産権に関してTRIPS協定が適用される)に伴い、対応する国内法の整備が概ね行われる等、知的財産権保護が強化されている。しかし、国家レベルでは知的財産権保護に積極的に取り組む姿勢が見られるものの、模倣品や海賊版等の実態は改善しておらず、むしろ悪化しているとも言われる。また、特に地方政府においては、地方保護主義によって取り締まりが充分に行われていないともされる[1]

実際に被害の実態を見ても、日本企業が受けた模倣被害は国別では中国におけるものが最も多く、模倣被害を受けた日本企業のうちの69%が中国での被害を経験している[2]。また、他の多くの海賊版や模倣品についての報告書でも同様に、中国における模倣被害の深刻さが明らかにされている。

このような中国における知的財産権侵害の状況に対して、日本、アメリカ、ドイツ、フランスなどの多くの国は改善の余地が大きいと指摘している。例えば、米国通商代表部(USTR)は、知的財産権侵害に関して、中国をスペシャル301条の優先監視国に指定しており[3]、2007年4月には知的財産権保護が不充分でTRIPS協定に違反しているとの理由で中国をWTOに提訴した[4]。 ちなみにこうした背景には、中国は富裕層と一般市民との格差が大きく一般市民には正規品の値段は高すぎるので安い模造品が好まれているというものがある。

原因[編集]

知的財産権問題が中国で飛び抜けて多く発生する理由として、そもそも中国人には知的財産権という考え方が乏しいことがあげられる。要するに「物を盗るのは悪い。」という考え方はあっても、「他人が考えたのと同じ物を作ったり、作り方を真似しても、『物』自体を盗んだのではない。何が悪いのか?」ということである。これは中国の歴史上上古からある庶民の考え方の一つで、これを多少自身への揶揄も含めて「山寨文化」(中国語山寨文化英語Shanzhai Culture)と呼んでいる。(山寨はこっそりいろいろな物を作れる、人里離れた山の中にある要塞のこと。参照:山寨手機。)

知的創造物についての権利[編集]

特許権[編集]

中国において、特許(発明)、実用新案、意匠を含めて「専利」と呼び専利法において定められる[5]。この専利法によれば、日本等の諸外国で出願された特許は、12ヶ月以内に中国にて専利申請しなければ、優先権を失い、第三者に特許申請される可能性がある(専利法29条)。また、専利申請日より前に製造された同一商品は特許侵害と見なされず、また、申請後であっても専利申請日までに製造準備が完了していた場合は、その範囲内であればこれも特許侵害とはみなされない(専利法69条第2項)。よって中国に対して専利申請しないものは、いくらコピーしても特許侵害には当たらない。また、専利申請し認められても、強制許諾の項目があり、一旦認めた特許権も強制的に徴収が可能である。中国に緊急事態あるいは、非常事態が起きた場合は、政府による特許の強制許諾が認められている(専利法49条)。中国政府は、公共の健康の為に、医薬品の特許を強制許諾でき、また輸出できる(専利法50条)。専利申請日から3年経過~専利許諾日から4年以内に、その専利権を行使しなかった場合も強制許諾が可能となっている。また、その専利権の行使が「十分でなかった」場合にも強制許諾が認められている。この未行使による特許権の召し上げは、中国当局に認められた第三者(個人よび組織)からも申請でき、中国当局が認めた場合は、使用料を払う規定があるものの、特許権は第三者が使用できる状態になる(専利法48条)。なお、この際の使用料とは「合理的な使用料」とあり、「適正な市場価格」と記載されていない事も留意すべきである。この様に、コピー防止の為にのみ特許申請しても、行使(製造等)を行わな場合、あるいはそれが不十分と認められた場合は、特許権を強制許諾させてしまう。

また、その専利権の行使が「独占的」と中国当局に認めら得た場合も、特許権の強制許諾が認められる(専利法48条)。その独占的とは「合理的な条件で特許使用を請求し、合理的期間内に許諾が得られない場合」と見なされる(第54条)。この様に、条文的に他者の使用を排除できない。また、後日発明された特許が「顕著な経済的意義」「重大な技術的進歩」が認められた場合にも強制許諾が可能となっている為に、合理的説明をクリアしても、後日に類似製品を発明され、経済的意義や技術的進歩が認められた場合も、特許を強制的に許諾させられる。これらの判断は、中国当局の国務院専利行政が行い、また、第三者による強制許諾も当局が認めた者のみであるため、一方的に海外勢が不利にとなっている。なお、中国国内で発明をした場合において、海外に特許申請する場合は、中国当局への申請と審査が行われ、これに認められないと海外への特許申請が認められない(専利法20条)。無視して行った場合は国家機密の漏洩として行政罰もしくは刑事罰に課せられる(専利法71条)。

この様に、中国にて特許権(専利権)を申請しなければ、自由にコピーして使用できるようになっていながら、申請した場合においても、中国当局が合理的と判断する準拠を満たさねば、強制許諾が可能となっており、コピー製品を阻止できない。また、海外から申請しなければ特許を認めずにコピーし放題な制度でありながら、海外に申請する場合は許可制であり、海外への技術流出を阻止しコピー出来させない制度となっており、一方的である。


実用新案権[編集]

ほぼ、特許権と同様である。

意匠権[編集]

ほぼ、特許権と同様であるが、特許権の海外出願後における優先権失効が12ヶ月であるのに対して、意匠権は、6ヶ月である(専利法29条)。

著作権[編集]

中国における動画共有サイトにおいて日本などのアニメドラマが無断でアップロードされるケースが後を立たず、更に動画共有サイト内においても他国に比べ野放しの傾向が極めて強い。最も動画共有サイトにおける著作権の問題は中国以外のニコニコ動画YouTubeなどでも問題になっているが、中国の動画共有サイトにおいては、日本などの権利者が削除を要請してもほとんど無視される傾向が強い。中国語話者向けの動画共有サイトであるYoukuTudouなどではニコニコ動画等では権利者により通常迅速に削除されるはずの日本のアニメ動画の本編が主なものは軒並み字幕等付で1話から最終話、もしくは最新話までアップロードされている。また、これらを見に来るのが目的で日本からのアクセスも多いとされる。ちなみにYoukuTudouでは日本の権利者の削除申し立てに対し、両者は日本からのアクセスを遮断することで対応している。

北京五輪の公式パンフレットに涼宮ハルヒの憂鬱のキャラクターに酷似したキャラクターが掲載された。なお、この問題は日本でも話題となり、日本のインターネットユーザーでは、毒餃子事件と時期が重なったためか、涼宮ハルビンと名づけられ、毒餃子を振舞うキャラクターという二次設定も行われた。

音楽[編集]

国際レコード産業連盟(IFPI)の2004年の調査によれば、中国のレコード・CD市場のうちの85%を海賊盤が占めている[6]

映画[編集]

中国における海賊版作成に関する技術力は年々向上しており、例えば2006年に次世代DVDとして発売されたHD DVDの海賊版が、翌年には出回っている[7]。(ようは隠し撮りだと思われる)

コンピュータ・ソフトウェア[編集]

マイクロソフトアドビシステムズなどのメンバーからなるビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)の調査によれば、中国のPCソフトウェアの違法コピー率はやや低下しつつあるものの、2009年で79%と、依然として非常に高い率で違法コピーが行われている(参考:日本は21%)[8]。2005年の時点では86%だったので率としては低下しているものの、金額ベースではむしろ増加しているとBSAは指摘している。

量販店が海賊版のWindows XPをインストールして販売したパソコンを購入した北京市民が、コピー品のWindows XPのせいで購入したパソコンが壊れたとして、海賊版をインストールして販売した量販店と、パソコン本体に正規品を付属させなかったマイクロソフトを訴えるという騒動も起きている[9]

キャラクター[編集]

石景山遊楽園
2007年5月、北京市にある国営遊園地石景山遊楽園で、ディズニーのキャラクターや、ハローキティドラえもん等に酷似したぬいぐるみによるパレードなどが行われていると報じられた[10][11][12]。これに対してウォルト・ディズニー社は、北京市当局に対して著作権侵害であると通報し、当局の指導を受けた遊園地はただちに酷似したキャラクターを撤去した[13]。また、北京市内のその他の遊園地でも、石景山遊楽園と同様に酷似したキャラクターを無許可で使用していることも報道された。

回路配置利用権[編集]

育成者権[編集]

営業秘密[編集]

営業標識についての権利[編集]

商標権[編集]

大手ファッションブランドを始め、電子機器やバイクなど工業製品、ソフトウェアなどの商標を不正に使用した模倣品や海賊版が多数製造され、一般店舗に並べられている。

また、「青森」「鹿児島」など商品と無関係な日本の地名が商標として登録される事も起きており、問題視されている。

クレヨンしんちゃん
クレヨンしんちゃん』の絵柄及び中国語名を、中国企業が正規の日本企業よりも早く中国で商標登録したために、2004年6月に正規の日本企業の商品が上海市で撤去されるという事件が起きた[14]。現在は、正規版の『クレヨンしんちゃん』の単行本及び商品が中国で販売されているが、商標登録については裁判で係争中である。

脚注[編集]

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  1. ^ 2007年版不公正貿易報告書 産業構造審議会WTO部会不公正貿易政策・措置小委員会(2007年7月19日閲覧)- pdfファイル
  2. ^ 2006年度模倣被害調査報告書について 特許庁・経済産業省(2011年5月24日閲覧)
  3. ^ USTR - 2006 Special 301 Report USTR(2007年7月19日閲覧)
  4. ^ 米、中国をWTO提訴・知財侵害で 日経新聞、2007年4月10日(2007年7月19日閲覧)
  5. ^ 専利法日本語訳(独立行政法人 工業所有権情報・研修館) )
  6. ^ 文化審議会 著作権分科会 国際小委員会(第1回)議事録・配付資料 [資料6-1] 文部科学省(2007年7月19日閲覧)
  7. ^ マーケティング - 次世代 DVD に早くも海賊版、終わらぬいたちごっこ Japan.internet.com Web、2007年1月23日(2007年7月19日閲覧)
  8. ^ Seventh Annual BSA and IDC Global Software PIRACY STUDY BSA(2010年10月27日閲覧)
  9. ^ 北京市民、海賊版OS搭載PCの故障を巡り、マイクロソフトなど提訴 ITpro、2007年6月15日(2007年7月19日閲覧)
  10. ^ 人気の石景山遊楽園-いつかどこかで見たような 中国情報局、2007年5月2日(2007年7月19日閲覧)
  11. ^ ディズニー? ドラえもん? いえ、オリジナルキャラです! 噂の石景山遊楽園に直撃! -北京市 レコードチャイナ、2007年5月3日(2007年7月19日閲覧)
  12. ^ 中国の遊園地にキティちゃん? - 中国特集 asahi.com、2007年5月7日(2007年7月19日閲覧)
  13. ^ 北京"偽ディズニー" 当局指導 大あわて模様替え 産経新聞、2007年5月12日(2007年7月19日閲覧)
  14. ^ 「クレヨンしんちゃん」の逆襲はあるか Hotwired、2005年5月31日(2007年7月19日閲覧)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]