丘の家のミッキー
| 丘の家のミッキー | |
|---|---|
| 小説 | |
| 著者 | 久美沙織 |
| イラスト | 旧版:めるへんめーかー 新装版:竹岡美穂 |
| 出版社 | 集英社 |
| レーベル | 旧版:集英社文庫コバルトシリーズ 新装版:コバルト文庫 |
| 巻数 | 全10巻+α |
| その他 | 関連書籍参照 |
| 漫画 | |
| 作者 | めるへんめーかー |
| 出版社 | 白泉社 |
| 巻数 | 全2巻 |
| その他 | 1巻相当の内容を漫画化 |
| ■テンプレート使用方法 ■ノート | |
| 文学 |
|---|
![]() |
| ポータル |
| 各国の文学 記事総覧 出版社・文芸雑誌 文学賞 |
| 作家 |
| 詩人・小説家 その他作家 |
丘の家のミッキー(おかのいえのミッキー)は、久美沙織作の少女小説である。
第1作となる表題作は1984年に集英社の集英社文庫コバルトシリーズ(現:コバルト文庫)から出版され、以後1年に2作のペースで第10作までが出版された。最盛期には初版が10万部以上刷られていたとも言われている[要出典]。
作品発表当初から、実写化やアニメ化の提案が出版社に多く寄せられた。しかし、小説の文体から醸される繊細な世界観を愛するファンから反対の声が多くあがったという。何より原作者の久美沙織がファンの意見を尊重したことに加え、「どんな演出であっても限られた時間内、制約のある映像の世界では、きっと表現しきれない。また、映像化されてしまえば、イメージが固定されてしまう恐れがあるし、その時点で時間が止まって風化してしまいそうだから。何よりも私自身が見たくない」と首を縦に振らなかったため、未だ実写にはなっていない[要出典]。 2001年に、新装版として再版された。現代ではその一文を読んでもピンとこないであろう新たな読者層のために、1980年代の時代背景とその内容と意図をまとめて巻末で解説している。 挿絵は、当初の版ではめるへんめーかー。新装版では竹岡美穂。
めるへんめーかーによって1巻相当の内容が白泉社から漫画化(全2巻)されているほか、関連本が数冊出版されている。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
目次 |
[編集] あらすじ
主人公である浅葉未来(あさば みく)は、東京都心にあるカトリック系の超お嬢様学校『私立 華雅学園』の中等部の生徒。周囲からは洗礼名である“ミシェール”と呼ばれている。この学園には、家柄・住居の場所・保護者の職業など、一般に一流のセレブと言われる条件を兼ね備えた者のみが選りすぐられ、籍を置くことが許される「ソロリティー」という社交クラブが存在している。未来は幼なじみの琴子(トコ)と共にソロリティーに所属していることが誇りである。また、その代表である麗美に崇拝にも近い憧れを抱いており、同じクラブに所属していることが何よりの幸せであった。
温室のような学校で何不自由なく学生生活を送っていた中等部3年の4月の末、未来に青天の霹靂が訪れた。父が現在の住まいのある千代田区三番町のマンションを手放し、神奈川県の葉山の近くに広い庭付きの一戸建てを購入。長年の夢だったという、海に面した家に移り住むと言う。華雅学園には通学距離の制限があり、中等部の生徒は通学に掛かる時間制限もされていた。また、通学圏内であっても親戚などに身を寄せての通学も認められておらず、未来は転校を余儀なくされることとなった。転校先は、新居から程近い『私立 森戸南女学館』という中高一貫の女子校であった。
転校初日から、それまでの生活や学校内での振舞いの違いにカルチャーショックを覚え、酷く落胆。暫くは立ち直れない日々が続いたが、気風の良い同級生・西在家麗(にしざいけ うらら)をはじめとして、少しずつ友人も増えてきた。父とはまだギクシャクしたままで素直に会話が出来ない。また、近くに住む高校生たちに、家の船着き場を小さなヨット・ディンギーのデッキとして提供したのだった。その高校生の中の一人に、麗の兄、朱海(あけみ)がいた。人当たりが良く爽やかな美少年の朱海は気さくに未来に話しかけるが、女子校育ちで同世代の異性と話をしたことがない未来は戸惑ってしまう。顔を合わせる時間を重ね、徐々に打ち解けていく2人。メンテナンスを施されたヨットに朱海は未来の名前から“ミッキー”と名付けた。以来、未来のことを朱海は「未来ちゃん」と呼ぶが、麗は「ミッキー」と呼び始め、伝播するように森戸南の友人もミッキーと呼び始めた。
ソロリティーの仲間も遊びに来たディンギーの進水式の日。未来は、ミシェールと呼ばれる自分とミッキーと呼ばれる自分、どちらも自分であることに変わりはないのだと気付いた。また、この葉山の家は未来が幼い頃に夢見ていたものであったこと、“それを叶えるのが長年の夢だった”父の優しさに気付くのだった。
[編集] 登場人物
- 浅葉 未来(あさば みく)
- 主人公。初登場時は私立女子校・華雅学園中等部の3年生在籍。3月21日生まれ。華雅学園での呼び名は洗礼名から「ミシェール」。森戸南女学館でのあだ名は名前から「ミッキー」。おば・さえらの勧めで幼稚舎から華雅学園に通う、箱入りで世間知らずの「お嬢様」育ち。また、周囲の人間が向ける悪意や好意に鈍く、朱海に想われていることに気づいていないため、度々麗をやきもきさせる。引越しを機に、それまでの“井の中の蛙”的な考え方では世の中の様々な状況に溶け込めないことを知り、少しずつ色々な経験を重ね、前を向くようになっていく。
- 当初「高等部から華雅に戻る」つもりで、受験勉強に励み、外部生として受験。見事満点で合格するも、ある事件から入学を辞退し、三次試験を受けて森戸南の高等部に進学。
- 小堀 麗美(こぼり れみ)
- 未来が憧れている上級生。華雅学園高等部3年生。ソロリティーの会長。ショートカットでありながら大人びた容姿で女生徒たちの憧れの“お姉さま”的存在。浮世離れした温室のような華雅学園で安穏と過ごし、世の荒波を知らないまま家庭に入る生徒(先輩)が多いことに疑問を抱いている。自分も今まではそれが当たり前だと思っていたが、このままではいけないのだと意を決して、高等部卒業後はエスカレーター式に進学できる華雅学園の大学ではなく、他の大学の一般入試を受けて進学するつもりでいる(実際には推薦入試で4年制大学の仏文科へ進学を決めた)。
- バイオリニストの姉がいる。
- 麗と朱海の姉・香織の4年下で、在学中のことを覚えていた。
- 千葉 加奈子(ちば かなこ)
- 華雅学園高等部3年生。ソロリティーの一員。トコの憧れの人で、麗美との付き合いが長い。ディンギーの進水式以来、杉丸の憧れの女性になる。
- 逆井 琴子(さかい ことこ)
- 未来の幼なじみで親友。あだ名は「トコ」。実家は神田多町のお寿司屋。家は店のすぐ裏手で、典型的な日本家屋だが、自室は洋風に改造している。親の大反対に遭い、洗礼は受けていない。未来の家で杉丸と知り合い、友人関係に。
- メルヘンチックな性格だが、きちんと現実を見ている。久米かおりと西さやかの小説を愛読する“おきゃん”な素振りも見せる少女。
- 西在家 麗(にしざいけ うらら)
- 森戸南女学館で未来の友人となる。作中ではある理由から「うらら」とひらがな表記される。香道の家元、西在家家当代の令嬢。四女。ショートカットが似合うボーイッシュな少女。おてんばで活発。いつも健康的に日焼けしている。西在家の中ではその肌と活発振りから“ウリ坊”と呼ばれることが多い。
- 麗美たちの伝説の先輩・七代目華雅御前でもある西在家香織の妹で、華雅学園についての知識はあるが、自分には向いていないことを自覚している。また、現在の家に引っ越す前、華雅学園の幼稚舎を受験し、合格しているが、ある事情から入園しなかった。未来を“ミッキー”と呼び始めた最初の人物。
- 西在家 朱海(にしざいけ あけみ)
- 鎌倉にある御成学院高校の2年生。麗の兄。宝珠流香道の家元の次期後継者で、17歳の誕生日(10月9日)に免許皆伝し、若宗匠となる。バイクを所持。森戸南では「不可侵条約松の上」とされる、有名な人物。西在家の中では“みー君”と呼ばれることも。
- 友人たちと念願のヨットを手に入れたものの、繋留場所について考えあぐねていたところ未来の父と会い、未来の家の船着き場にヨットを置くことに。その縁もあり、未来とは頻繁に顔を合わせるようになる。以来、周囲の人間には微笑ましく映るほど、未来にアタックしているのだが、なかなか気づいてもらえなかった。
- 終盤では、国内の大学ではなく、海外の大学に2年間留学するつもりで、TOEFLの勉強を始める予定。
- 杉田 月子(すぎた つきこ)
- 森戸南女学館で未来に最初にできた友人。あだ名は「杉丸」。トコが未来を「ミシェール」と呼んだため「ミシェール」と呼び始め、仲間内に「ミッキー」が定着してからもそう呼んでいる。
- メルヘンチックな性格で、当初麗に憧れていたが、未来の家で加奈子と知り合い、美しい容姿や物腰に憧れ、華雅学園高等部入学を目指して猛勉強し、何とか合格する。
- 菅原 稲子(すがわら いねこ)
- 森戸南の「朱海さま親衛隊」の隊長的存在。長い黒髪の、日本刀のようなオーラを放つ上級生で、朱海と親しい未来を快く思っていなかったが、未来のある発言から変化を見せ、未来を認めるようになった。「手紙」を「文」というなど、やや古風な言葉遣いが特徴だが、根はややメルヘンチック。物事を全て1人で片付けようとする癖がある。名前のみ作者の本名に由来。
- 短編にて、小学校転入当初の朱海の同級生だったことが判明。以来、やや距離を置いた友人関係。
- 岩館 笙子(いわだて しょうこ)
- 公立中学から華雅学園高等部に進学した少女。ショートヘアで眼鏡をかけている。入試で未来と同じ部屋になった縁から友人になる。満点で合格した1人。
- 発表当時、「笙」の字が人名用漢字として認められていなかったため戸籍名は「生子」。
- 浅葉 譲吉(あさば じょうきち)
- 未来の父。某銀行の六本木支店長。長野県出身で昭和10年頃生まれ。太陽族に憧れていた世代である。千代田区三番町のマンションを売って堺惟(葉山と横須賀の境の海沿いにあるという架空の地名)にある大学時代の先輩の家を譲り受け、引っ越すことを決意した。頼りがいのある紳士。未来を溺愛しているが、思春期を迎えた愛娘の扱いに戸惑ってしまうこともある。
- 浅葉 英子(あさば えいこ)
- 未来の母。譲吉より5歳ほど年下。有楽町のカフェーで出会い恋愛結婚。結婚当初はポパイのヒロイン・“オリーブ”と同じウエストサイズ(54cm)が自慢だった。女学校を卒業して世間に出ることなく家庭に入り専業主婦になった。未来の箱入り娘の原点は母の教育と、学園生活の両方から培われたものである。
- 羅士丸(らしまる)
- 「庭付きの家で犬を飼う」ことが夢だった譲吉が、引っ越して早々に譲り受けてきたダルメシアンの子犬。名犬ラッシーのように忠実で賢い犬になって欲しいと、その名にあやかって“ラッシー”と命名。しかし、未来からは「ありきたり」と却下され、”羅士丸”と改名されてしまった(但し、譲吉は頑なに“ラッシー”と呼び、英子も従って同様に呼んでいる)。朱海には「らし君」と呼ばれる。
- 雌のヨークシャーテリアの子犬につられ、誘拐されたことがある。
- 西在家 香織(にしざいけ かおり)
- 西在家家長女。七代目華雅御前の異名を持つ。高等部在学中に「西 さやか」のペンネームで小説家デビューしたものの、ある事情で卒業直前に自主退学(その後、内密に卒業したことになっている)。
- 現在は1人暮らしだが、スランプに陥ると葉山の実家の蔵(改装済み)にカンヅメになる。度々、未来と同じ年頃の小熊という少女を付き人として従えている。
- 鈴原 みづゑ(すずはら みづえ)
- 麗、朱海の親戚。フェリシア女学院に通う18歳。朱海のことを「若」と呼び、中学生頃から恋をしている(幼い麗の策略が原因でもある)。そのため、朱海の想い人である未来を目の敵にしている節がある。年齢以上に大人びて見える少女。父親は宝珠流香道の専務を務めている。
- ウィンドサーフィンやヨット(ただし、「ミッキー」より新しい型の舟)も嗜む。
- 五木田 一穂(いつきだ かずほ)、小原 尚志(おはら たかし)
- 朱海の同級生で、ヨット仲間。一穂はトコに一目ぼれしたらしいが、口下手なのもあって少々奥手。
[編集] 用語
- 華雅学園(かががくえん)
- 四ツ谷・紀尾伊にある、名門のカソリック系私立女子校。校章は「聖なる盾と百合」。
- 幼稚舎から大学まで、ほぼエスカレーター式に進学できるが、その過程で校風に合わないと判断された生徒は篩いにかけられていく。四ツ谷近辺(三番町・神田多町など)に在住している生徒で、様々な条件を満たす者に限り、中等部・高等部合同の社交クラブ「ソロリティー」への参加が認められる。
- 学習範囲は公立のそれを大きく上回り、選択科目の中にはフランス語があったりする。学園祭は招待状がなければ、外部の人間は父兄ですら入れない。
- 生徒は誇りとともに華雅エンヌを自称することがある。
- 森戸南女学館(もりとみなみじょがくかん)
- 未来の編入先。葉山にある女子校。中等部と高等部がある。教頭と華雅の校長が知り合いらしい。
- 御成学院高校(おなりがくいんこうこう)
- 朱海らが通う、鎌倉の仏教系男子校。お寺の息子達が多く、学園祭には実家のツテを使ってテキ屋から機材を借りて縁日のような模擬店を開く。
- ミッキー
- 朱海らが近所に住む南部老人から貰い受けた、ディンギーと呼ばれる2人乗りの小型ヨット。旧型で、最近のものと比べると重い。放置されていた未来の家のボートハウスや桟橋とともに修理し、麗や未来も加わった5人で練習していたのだが、ある事件で大破。船名は未来のニックネームに由来。
[編集] 既刊一覧
第1巻から第6巻までは俗に"中学編"、第7巻から第10巻までが俗に"高校編"と呼ばれることもある。
新装版にはサブタイトルが付いている。
- お嬢様はつらいよの巻
- かよわさって罪なの?の巻
- 野の百合は暗くなるまで待てないの巻
- 行くべきか行かざるべきかの巻
- 永遠の麗美さまの巻
- 望んだものは天使の巻
- 未来進化するの巻
- ツルへの恩返しの巻
- きみといつまでもの巻
- 井の中の蛙世界に飛び出す!?の巻
サブタイトルの頭の一字を順に繋げて読むと「おかのいえのみつきい」=「丘の家のミッキー」となるよう遊び心が加えられている。
[編集] 関連書籍
著者:久美沙織、めるへんめーかー。以下の作品は「丘の家ミッキー」本編とは違い、新装版として再発行されることはなかった。
- デュエット - (集英社文庫コバルトシリーズ / 1985年12月15日初版発行)
- 四季をテーマとした小説。収録の短編『秋』に華雅学園出身の高校生が登場する。
- ミッキーのおしゃれ読本 - (集英社文庫コバルトシリーズ / 1987年12月15日初版発行)
- 丘の家のミッキーのガイドブック。短編『トコちゃん in ピンク』『稲子さま in ブルー』が収録されている。
- 短編本文のみ、現在著者の個人サイトで閲覧が可能。
