不適合元素

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不適合元素(ふてきごうげんそ、英語: incompatible element [1])とは、岩石学地球化学の用語であり、そのイオンの大きさ、またはイオンの酸化数、あるいはその両方が原因で、造岩鉱物結晶に入り込みにくい元素のことである。非適合元素とも呼ばれる。対義語は、適合元素compatible element)。

以下のような元素が該当する。

マントル[編集]

上記のような元素は固体マントルの中から追い出されやすく、何らかの原因でマントルが部分溶融英語版(母岩が不完全に溶融すること)すると、他の元素よりも先に溶融した部分、つまり、溶融体英語版(液体になった部分)へと選択的に追い出される。このような元素は溶融体へと選択的に濃集されるとも換言できる。このために不適合元素は、液相濃集元素(hygromagmatophile element)とも呼ばれる。当然ながら、このようにしてできた溶融体は母岩とは化学組成が異なるのは言うまでもない。ただし、一口に部分溶融とは言っても、その程度は様々で、さらに溶融が進めば、たとえ適合元素でも溶融体へと溶け出してくることも付言しておく。ともあれ、このように不適合元素は固体のマントルから溶融体へと選択的に移行するために、地殻が形成される時、マントルから地殻へと移動してしまう。このため、マントルにおける不適合元素は、マントルでは含有量が低下し、逆に地殻では含有量が増加する。

なお、実際にこのような現象が地球で起こっている証拠としては、例えばウランは、地球のマントルでは濃度が低く、地球の地殻では濃度が高いことなどが挙げられる。もし仮にウランが、現在の地球の地殻中の濃度と同じ濃度で地球全体に分布していた場合、ウランが原子核崩壊する時に発生する崩壊熱のせいで、地球の温度は上がり続けると見積もられいるものの、実際にはそのような温度上昇が観測されていない[3]。したがって、地球におけるウランの濃度は地殻において高く、マントルにおいては低くなければ理屈が合わないという間接的な証拠が挙げられる。

地殻[編集]

地殻においても、火成岩で造岩鉱物の結晶が成長する時に、やはり不適合元素が結晶から追い出されて、ペグマタイト熱水へと濃集する傾向がある。

脚注[編集]

  1. ^ 日本地質学会編 『地質学用語集 - 和英・英和』 共立出版2004年、321頁。ISBN 4-320-04643-9の日本語訳は「液相濃集元素」。
  2. ^ a b Francis Albarède (2003). Geochemistry : an introduction. Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-89148-6. (地球化学入門編)
  3. ^ 『元素111の新知識 : 引いて重宝、読んでおもしろい』 桜井弘編、講談社ブルーバックス〉、2009年、第2版、371頁。ISBN 978-4-06-257627-7

関連項目[編集]